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韓国のK1A1戦車はついにK1A2仕様にアップグレードが完了

韓国陸軍
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予定通りなのかな。

韓国防衛事業庁、K1A1戦車をK1A2にアップグレード完了…戦場可視化能力向上

2024.09.12 14:20

韓国防衛事業庁が陸軍と海兵隊に配備されたすべてのK1A1戦車を迅速作戦能力が強化されたK1A2戦車に性能改良し、最近の陸軍部隊引き渡しを最後に戦力化を完了したと12日、明らかにした。

中央日報より

韓国の現役戦車K1戦車だが、これにも色々な逸話がある。今回のニュースは大した話ではないんだけど、なんだか分かりにくいので少し整理しておきたい。

そうそう、先に言っておくが、追っかけているテーマ的には「お笑い韓国軍」なのだが、今回は特にお笑い要素はない。記録のために書いておく程度の話である。

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近代化改修する話

韓国陸軍の主力戦車

まずはこのブログで扱った話。

で、以前も整理したんだけど、K1戦車には2系統の種類がある。それが、K1系とK1A1系だ。

もともと、K1戦車はアメリカのクライスラー・ディフェンス社(現ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社)が設計・開発を行った戦車である。が、韓国陸軍は砲塔の威力が気に入らず、砲身を大きくすることにした。

その結果、この2タイプが存在する。

  • K1戦車(1997年までに1,027両生産、FCS制御のK68 51口径105mmライフル砲搭載)
  • K1A1戦車(KM256 44口径120mm滑腔砲に改修し、後期型として484両生産)

途中の魔改造は実はあまりよろしくなかったのだが、ハイパワーな主砲が欲しかったという事情はなんとなくわかる。実は、1990年代に北朝鮮が旧ソ連からT-72を大量に購入したという話が出ていて、105mmライフル砲では装甲を貫けないという話が出回ったのだ。

で、K2戦車の開発が急がれたのだけれど、保険としてK1戦車の一部に主砲の換装をしてパワーアップする話が出た。で、韓国は思い切っちゃったんだよね。2001年に配備が始まったのが、44口径120mm滑腔砲を搭載したK1A1戦車なんだ。

C4ISRシステムを搭載

現代の兵器の多くに搭載されている情報処理システムC4Iシステムは、実に画期的なシステムである。従来は無線通信のみで情報伝達が行われていたのだけれども、コンピューターの発達によって伝達されるべき情報量は飛躍的に増えた。

その結果、情報処理システムを兵器に搭載して情報処理をし、双方向での情報伝達を果たすようになった。そのためのシステムが、C4Iシステム(Command Control Communication Computer Intelligence system)である。

難しい言葉を使っているようだが、Command and Control(C2)自体は古くから使われていた。つまり、指揮・統制であり、情報伝達によって指揮官の意志を兵隊たちに伝え、陣形などを組んで敵を攻撃していた。

ここに通信(Communication)が加わったのが、電気通信の技術が発達した近代であり、無線通信を含んだC3Iという概念は第二次世界大戦までに浸透した。コンピューター(Computer)が発達した現代においては、さらにCが1つ増えてC4Iとなっている。C4ISRだと、更に監視(Surveillance)と偵察(Reconnaissance)が加わっている。

考え方としては割と単純なんだけど、各種センサーなどの情報も吸い上げて作戦にフィードバックしているので、かなり高度化した作戦を遂行することが出来る。

で、K1戦車とK1A1戦車の時代には、韓国陸軍にそれが普及していなかったので搭載されていない。そこで、バージョンアップをしたというのが冒頭の話になる。

  • K1戦車 → K1E1戦車(C4ISRシステム搭載)
  • K1A1戦車 → K1A2戦車(C4ISRシステム搭載)

尤も、その他にも色々改修しているみたいなんだけど、大まかにはそんな感じになっている。

K1A2戦車は2021年11月から今年9月まで進行された4回の量産事業を通じて陸軍と海兵隊に順次配備され、性能改良で戦闘の効率性と運用者の便宜性、安全性が大きく向上した。

中央日報「韓国防衛事業庁、K1A1戦車をK1A2にアップグレード完了」より

K1A2開発に関しては、先に開発に着手したK1E1の技術を踏襲する形で行っている。K1からK1E1のアップグレードは2014年からオーバーホールが始まり、事業完了予定は2026年であるから、未だ先のはなし。何しろ、1,027両生産されて、現在何両生き残っているかは把握していないがそれでも1000両近くはあるはず。アップグレード作業には1両あたり5ヶ月近くかかるらしく、作業量もかなりある。

で、K1A2開発も2014年から開始されたのだが、K1A1は484両生産されただけなので、K1E1事業よりも先に完了したって話だ。記事にある「2021年11月から2024年9月まで」というのは、第4ロット改修の話なのだろう(第3ロットが2022年に終了している)。

作戦の迅速化が可能

そんなわけで、先に改修事業が完了したK1A2戦車だが、この改修のお陰で作戦遂行の迅速化が図られると書かれている。

K1A2戦車はK2戦車、K21歩兵戦闘車両などと協同戦闘が可能になるようK1A1戦車の性能を改善したモデル。特にK1A1戦車と比べて戦場管理体系、味方・敵識別装置、前方・後方監視カメラなどが追加され、迅速作戦対応能力が大幅に強化された。

K1A2戦車は従来のアナログ通信をデジタル化した戦場管理体系で、デジタル地図基盤の迅速な情報共有と戦場状況の可視化が可能だ。また標準化した送受信体系の地上戦術データリンク(KVMF)を通じて地上武器体系間で迅速かつ正確な戦術情報交換が可能だ。

新しく装着された相互識別装置は敵と味方を明確に区分して誤認射撃を防ぎ、前方・後方監視カメラは乗務員の外部露出なく前方・後方の障害物を確認でき、密閉機動時の視野確保に有利で、安全上の事故による非戦闘損失を予防できる。

中央日報「韓国防衛事業庁、K1A1戦車をK1A2にアップグレード完了」より

戦車の近代化が一番遅れていたというオチではあるが、戦車は何しろ数揃えているので、近代化改修を終えるにも時間がかかる。

なお、今後も改修されていく予定で、K1E1戦車はK1E2戦車という性能改善仕様が提案されていて、装甲の強化や照準装置の換装等の近代改修が図られることになっている。

実は過去の記事にも書いたのだが、ヒューズ社(現レイセオン社)製GPSS砲手潜望鏡の交換が必要で、この改修事業が2025年から開始される予定となっている。

同様の改修をK1A2戦車にも施す必要があり、こちらは砲塔を強化したことでパワー不足に陥っている点を改善するために、STXエンジン社が開発した1360馬力のK1A3用新型エンジンSMV1360を搭載する予定らしい。砲手潜望鏡はハンファ・システム社が開発して搭載したKCPSというタイプが使われているので問題ないのだとか。

開発と改修には時間がかかる

この手の数揃えるタイプの兵器というのは、なかなか近代化を図ることが困難で、アメリカだってM1エイブラムスを1979年に制式採用してから、改良に改良を重ねて用いている。今はM1A2SEPというタイプになっているハズだ。2023年にはM1E3の開発がスタートしている。

折に触れて書いているが、ウクライナ戦線で戦争の常識が大きく書き換えられてしまっていて、戦車という兵器のあり方についても考え直されている。

今欲しい戦車が、将来まで有効であるとは限らないというのが、世知辛い世の中である。

コメント

  1. 匿名 より:

    最近の戦争を考えて戦車の有効性が希薄になってきているとは言え、それに対応するアップグレードを韓国さんですらちゃんとしてるのに、日本ときたら…
    机の上で電卓叩いてる財務省の役人がジャベリンだけで戦えとか寝言言ってますからねえ…
    万が一戦争状態になったら役人自ら重量40キロ超のジャベリン担いで戦ってくれるなら納得しますけどw

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    K1系戦車は、決して能力の低い戦車ではないので、C4I対応とかのアップデートは喜ばしい事ですね。
    「友軍」としては。

    本邦は、74退役に伴って、とにかく駆けつける役の16式キドセンと、念入りにお相手する役の10式との二段構え、かつ、120mm相当の貫通力があるらしい105mm砲弾とか、他所様から見ると羨ましい装備を持ちますが、なにしろ数が足りないし、10も16も上や横から撃たれたら……今時の戦車はみんなそうですが……(16は戦車じゃないし、防盾だって大したことないですが)。

    とにかく、K1もK2も、いざという時にちゃんと動いて、その方向は常に北の方を向いていてくれることを祈るばかりです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      K1戦車は悪くはなかったのですよ、K1系の戦車の方は。K1A1系の戦車は、ちょーっと問題アリですがコンセプトの違いという考え方であれば、一応納得できなくもありません。寧ろ、僕の中の評価では、未だ完成したとは言い難いK2戦車よりも高いです。いや、K2戦車の方が性能は優れているのでしょうけれど、信頼性などの面ではK1E1戦車の方が分があるように思います。C4ISRを搭載できたことは、評価して良いかと。何より、数があるというのは素晴らしいことですね。稼働率は気になるところですが。

      • 七面鳥 より:

        いやいや、K2だって、戦車壕にダックインして使えばいいんですから(笑)
        砲と防盾だけなら世代最強でしょう。
        FCSとパワープラントは……まあ、韓国の地形では、どうせ機動戦はないでしょうから……

        • 木霊 木霊 より:

          そうなんですよね…。
          K2戦車は何故あんなに重くしたのか。寧ろ軽量にして機動性を確保する方向の方が良かったのに。

          • 七面鳥 より:

            K2は、周回遅れの対90式というか、第三世代の重戦車思想の末裔ですよね。
            その意味では、第三世代でありつつもM1の(いい意味で)モンキーモデルでスリム化されてたK1の方が使い勝手がいいのでは……って気がしてなりません。

            要するに、「一番良いものをくれ」だったんですよね。時代的に(陸自もですが。その90対抗がK2という皮肉)。
            ただ、紆余曲折あって、K2はデビューが第四世代直前にずれ込んじゃったから……

            ※面白いことに、広い意味で、K1もK2も第三世代なんですよね。
            ※第三世代のおおざっぱな定義:非曲面装甲or複合装甲(対APFSDS装甲)、120mm滑腔砲(一部105mmライフル砲)、1000馬力級エンジン

          • 木霊 木霊 より:

            技術の進歩という意味では、K1戦車からK2戦車になったことは、自国で生産した戦車が欲しかったということで。
            実際に自国生産が実現して、国産化がすすん……、パワーパックが未だにちょっとダメみたいですね。

            そして、K1戦車は第2.5世代くらいだったんですが、無理矢理第3世代にしちゃいましたから。
            でもあれ、良かったかというと、まえのコメに書いた通りの評価なんですよね。