あー、なるほど。
生産中止の航空機を想定した設計、鬱陵空港の再設計避けられず
Posted September. 05, 2023 08:20, Updated September. 05, 2023 08:20
2025年の開港を目標に、すでに30%ほど工事が進められている鬱陵空港が、再び設計変更に動いていることが分かった。韓国に1台もない50人乗りの小型航空機を想定して設計したが、航空市場の条件上、それより大きな航空機の投入が必要で、滑走路などをさらに広げなければならないからだ。
東亜日報より
色々ニュースはあるんだけれども、最近の国際情勢はややこしい話が多いので、偶には肩の力の抜ける話をすることにしよう。
韓国にはややこしい事情を抱えた空港がいくつかあるんだけれども、これもその1つ。
空港建設の想定が甘かったようで
鬱陵島に空港を作ろう
日本海に浮かぶ鬱陵島だが、竹島との絡みで日本でもそれなりの知名度のある島だと思う。

位置関係はこんな感じ。

竹島までの距離はこんな感じだ。鬱陵島から竹島までの距離は約90kmだね。
辺鄙な場所にある島なので、空港が欲しいと言うことになって、2013年から調査を始めて2025年に開港することを目標に建設を始めたんだ。計画推進は1980年かららしいんだが。
ところがこの話がおかしな話になってしまっている。
小型機が着陸する空港
鬱陵島の広さは72.82平方kmである。昨日紹介したフィリピンのバタン島は95.2平方kmだったので更に小さい。広さ的には日本の洞爺湖(北海道:70.72平方km)程度しかない。

そうすると、流石に大きな空港を作るのは無理なんだよね。

これが計画図なんだけど、現在は埋め立て工事を行っている段階のようだ。
ソウルから鬱陵島まで飛行機で行く?…鬱陵空港設計中
登録:2020-01-15 02:18 修正:2020-01-15 09:11
2025年から50人乗りの小型航空機がソウル~鬱陵を航行する見通しだ。
慶尚北道鬱陵郡は14日「事業費6633億ウォン(約629億円)をかけて50人乗りの小型航空機が就航できる幅140メートル、長さ1200メートルの滑走路工事を行っている」と発表した。鬱陵郡鬱陵邑沙洞港で行われている鬱陵空港の建設工事では、滑走路とともに6つの係留場、ヘリポート、延べ面積3500平方メートルの地上2階建て旅客ターミナル、3900平方メートルの駐車場などを同時に建設する。釜山地方航空庁と大林産業から成るコンソーシアムが同事業に当たっている。計画では、完成は2025年。
ハンギョレより
2020年の記事ではこんな話になっていたんだけど、この計画は右往左往している。
鬱陵空港、予備妥当性調査 通過…早ければ2015年頃 着工
2013-07-10 23:35
鬱陵島に空港を作る事業に弾みがついた。
~~略~~
鬱陵空港は鬱陵郡鬱陵邑沙洞港に4932億ウォンの予算を投入して長さ1.1km、幅30m規模の滑走路2本と係留場などを建設する。 鬱陵郡は 沙洞港にそびえている海抜192mの可頭峰を削り、その土で海を埋立てて滑走路を建設する予定だ。
ハンギョレより
2013年に遡ると、滑走路の長さは1,100mで発着帯幅80m(幅30mの滑走路2本)になっている。滑走路1,200m、着陸帯幅150mで計画されたのだが、「経済的妥当性がない」と却下されて規模が縮小されたのだ。
鬱陵空港は1980年から推進されてきたが、経済性が低く国費支援事業から除外されていた。 2010年12月の企画財政部の予備妥当性調査でも、経済性分析0.77(基準値1.0)、総合評価0.43(基準値0.5)という結果で脱落した。 しかし最近予備妥当性調査を再申請した結果、「空港規模を縮小するという条件」で経済性分析1.19、総合評価0.655と評価され、事業推進が可能になった。
ハンギョレより
ところが、2020年の記事では滑走路1,200m、着陸帯幅140mとなって工事がスタートする運びとなったのである。
使える航空機がない
更に、冒頭の記事にあるように、滑走路1,200m、着陸帯幅140mの空港では50人搭乗クラスの小型機しか離発着できない。しかし、韓国内の旅客機は50人搭乗クラスの小型機の保有はないらしい。経済性がないので、使っていないそうな。
4日、東亜日報の取材を総合すれば、国土交通部などは、現在80人まで搭乗できる航空機「ATR72」と「E190-E2」の鬱陵島への就航を考慮している。しかし、現在建設中の空港は、それより小さい「ATR42」や「DHC-8-300(Q300)」など50人乗りの航空機が離着陸できる大きさ(2C級)だ。航空業界では、50人以下の航空機は経済性がなく、現在保有しているところも、導入を計画しているところもない。さらに、Q300は2009年に生産中止となっている。
東亜日報より
いや、計画前にそんなことも分からなかったのか。
政府主導の計画だったハズなんだけど、何でこんなことになるのかが、ちょっとよく分からない。韓国政府のポンコツっぷりがよく分かる話である。
一歩遅れて事態を把握した政府は、80人乗りの航空機が離着陸できる空港基準に合うよう、滑走路の両側の安全区域(着陸帯)などを拡張する方向で設計を変更することにした。このため、総事業費も、現在の6651億ウォンから少なくとも数十億ウォン、多くは数百億ウォンがさらにかかる見通しだ。
東亜日報より
仕方がないので、再設計して拡張するとのこと。でも、工事は既に始まっているんだよね。進捗は30%程度なんだそうで。30%がどの程度かは分からないが、設計変更による影響は避けられない。
何時気がついたのか
でも、何年か前に何かのデモをやっていた気がするんだけど。その時には気がつかなかったのだろうか?
8月15日8時15分…鬱陵島・独島無着陸飛行を予告した韓国慶尚北道
2021.07.14 13:19
8月15日8時15分に「50人乗りチャーター機」が鬱陵島・竹島上空を無着陸飛行する。光復節(解放記念日)に「韓国の領土」独島を考え、2025年に開港予定の鬱陵空港、大邱慶北新空港移転地選定1周年を記念・広報するという趣旨だ。
~~略~~
飛行中に鬱陵島・独島上空では太極旗万歳パフォーマンスなどが行われる予定だ。航空機はフランス産ATR72-500。ハイエアが保有する50人乗り機種だ。2025年の鬱陵空港開港時に実際に運航可能な機種であり、鬱陵空港の開港を控えて行われるテスト運航の性格もある。
~~略~~
鬱陵空港は50人乗り以下の小型航空機が就航する空港として建設される。慶尚北道によると、総事業費6633億ウォン(約637億円)が投入され、幅40メートル、長さ1200メートルの滑走路と旅客ターミナルなどが建設される。滑走路と駐機場は釜山地方空港庁が、旅客ターミナルなど付帯施設は韓国空港公社が建設する。
中央日報より
この記事だ。実際に50人乗りの航空機を飛ばす話になっている。

この時に使っているのはATR72-500だったんだけど。「ハイエアが保有する50人乗り機種だ」と書かれているんだけど、どういうことかな。調べて見るとハイエアは4機のATR72-500を保有していることになっている。

謎だな。ハイエアは2017年設立で、2019年にATR 72-500の1号機を受領している。

……なるほど、上の記事にはATR72は80人乗りクラスの大きさってことになっているね。50人乗りだとする2021年の記事が間違っていたと言うことか。このATR72は、定員が最大74席なので確かに50人乗りとするのは間違いだったか。
で、ATR42クラスならば離発着できるけれど、それは無いと。

一回り小さいだけなんだけどね。
これから再設計して2025年に間に合うの
で、どんな大きさの空港にするか?という話なんだけど、80人乗りの航空機が離発着できるようにするとなると、3C級ということになるらしい。
調べても詳しいことは分からなかったんだけれども、滑走路の拡張工事は必至である。
工事が進んじゃった部分、どうするんだろうか。
そして、経済性に問題があるという部分は結局解消しない話になるのだが、そこは良いのだろうか?もともと鬱陵島への観光客ってさほど多くない。
韓国、独島観光客が大幅に増加
2022.01.06 11:42
昨年鬱陵島と竹島を訪れた観光客が大きく増えた。
慶尚北道鬱陵郡が5日に明らかにしたところによると、2021年に鬱陵島を訪れた観光客は27万1901人で、2020年の17万6151人より9万5750人(54.4%)増えた。
鬱陵郡はコロナ禍の長期化で海外旅行に行けない国民が国内旅行に足を向けており、大型旅客船の就航で大きな問題もなく鬱陵島を訪れたためとみている。
しかし鬱陵島観光客はまだコロナ禍前の水準を回復できていない。鬱陵島観光客は2011年に初めて35万人を超えたのに続き2012年が37万5000人、2013年が41万5000人水準で、2019年には38万6501人まで増えた。2020年の場合、コロナ禍で鬱陵島観光客が急減した。
一方、昨年独島に上陸したり船から独島を見た訪問客は14万3680人で2020年の8万9374人より5万4306人(60.8%)増えた。
中央日報より
日本だと対馬への観光客数がこの規模だったはず。
でも、対馬には空港があってATR42-600(定員48名)やDHC-8-400(定員74名)なんかが離発着しているんだよね。対馬は708.7平方kmと鬱陵島よりも随分広いので比較するのには適切じゃないけれど。
おっと話が逸れたが、鬱陵島への観光客は島の大きさにしては多い方かも知れない。が、観光客の多くは船舶を利用しているようで、航空機が飛んだら「気軽に観光できる」ということになるのかはよく分からない。
作っても赤字、作る前から経済性が見通せないってのは、かなり厳しそうだね。
コメント
表向きは旅客機の発着かもしれないが、竹島への軍事プレゼンス強化を主眼に考えてたんじゃないですかね?
F-15
離陸滑走距離 274m
着陸滑走距離 1067m
F-16
離陸滑走距離:260m
着陸滑走距離:600m
なるほど、その発想はなかった!
そりゃ、経済性がなくても鬱陵空港の建設をやりたがるわけだ。
だけど、その為には基地も作らないとダメで、地形的になかなか骨の折れそうな仕事になりそうですね。
こんにちは。
>これが計画図なんだけど
この計画図、駐機しているのは民間機っぽいですけど。
沖にいるのと、滑走路脇にいるの、どう見ても軍艦ですよね。
もうちょっと、隠す努力しようよ……って思いました。
※軍用としても、1000m級じゃろくな運用出来そうにないですが。
あ、F-35Bを運用するつもりなのかな?
※こんなもん、緒戦で叩かれるに決まってますが、運良く生き延びたとして、(位置からしてどう考えても)本邦に出張ってきた攻撃機の補給拠点としてしか使いようがない、つまり降りられないと困る、けど、上記緑の鳥様のおっしゃる通り、F-15Kだと降りるのがカツカツ(ミスると即死)という……
あー、注意を払ってはいませんでしたが、確かに軍艦ですね。
元々の構想の段階で欲望ダダ漏れ……。
だったら、割り切って軍民共用ですと言い切って、予算貰えば良かったのに。
島国日本でも赤字が不可避な離島路線にはATR42が投入されていますね
鬱陵空港専用で1機か2機入れれば済む話
空港の拡張と飛行機の購入を天秤にかけたら、どっちが安くて早いのか一目瞭然の筈なのに
工程を増やして利益を得ようとするアレなんですかねえ…
(軍事は疎いので旅客輸送の観点で読ませていただきました)
ここは本当に何が狙いなんですかね。
小型機を導入して運用させればOKという話で、この話は終わっちゃうんですよね。
戦闘機を使いたいのか?という邪推もしていたんですが、どうもそんな感じじゃなさそうですし。
これ、韓国空軍が導入予定のエンブラエルC-390がギリで運用可能な滑走路長なんですよね、F-35B導入計画と言い、予想図の滑走路を防波堤代わりに軍艦を停泊させる桟橋設置と言い、明らかに竹島関与を強化させる計画の一環ですわ、本邦への軍事作戦も考慮してるのが又ねえ
前大統領のムン君が推進した背景には、そういった狙いは間違いなくあったと思います。
今そうなのか、ということに関しては悩ましいところですが、計画を修正していないことを考えるとダメなんでしょうね。潜在的な敵国という認定をしておく必要はあるのでしょう。表向きは、協力すべき国という位置づけにしておかないと面倒ですが。