外交・防衛ニュースばかりでも息が詰まるので、違うネタを扱っていこう。本当は、エネルギー基本計画の話に触れたかったのだけれど、データに触れるのには結構大変である事が分かったので、先送りである。
で、ナニを扱うかというと、空気から水を作る話である。
“空気から水”給水器を導入 1台1日最大33リットル 群馬 富岡
2024年12月17日 13時50分
群馬県富岡市は、民間企業が開発した空気から水をつくる給水器を試験的に導入し、今後、1年かけてマイボトルの利用による二酸化炭素の削減効果などを検証することにしています。
NHKニュースより
「やったー、空気があれば無限に水が作れるよ!という夢の装置を開発した企業がいる、日本スゲー」(棒)というニュースなのだ。
グンマーはこれだから。
印象とは違う運用実態
大気から水を作る
以前、このブログでひやっしーのネタを扱ったことがある。
水に関わる技術に、碌なモノはないというのが定番で、「水商売」などと揶揄されるのだが。富岡市が採用した「空気から水」を作る「無限水」はどんなアイテムなのか。
ああ、ひやっしーを引き合いに出したのだが、この装置自体はそこまでイロモノというわけではないよ。先に断っておくが。

このアイテム、公式サイトに構造が一切説明されていないのだが、こんな表示が踊っている。

……ナニが世界初なんですかねぇ。
以前の「ひやっしー」の時にも触れた気がするが、空気から水を作り出すネタというのは割とありがちで、星新一のショートにもあったんだよね、火星で水を作る話。
AWGウォーターサーバーは結構ある
なお、大気中から水を取り込むタイプのウオーターサーバーは、AWGウオーターサーバーと呼ばれるもので、結構販売されている。

ウチにもあるよ?ウォーターサーバーではなく、エアコンだけど。
やっていることは、「電気を使って水を結露させて集める」なので、エアコンと大差ない。むしろ、デカイ除湿器にフィルターを組み合わせたというべきだろうか。
そして、この商品は過去にもニュースになったことがあるんだよね。
ENELL、空気から飲み水量産 結露・ろ過装置レンタル
2022年1月17日 2:00
一見、よくあるウオーターサーバーだが、どこを見てもボトルがない。理由は水を空気中から作り出しているから。そんな夢のようなウオーターサーバーを開発し、レンタル事業を始めたのがENELL(東京・港、赤石太郎社長)だ。
日本経済新聞より
会員限定の記事なので詳細は書けないのだが、タイトルにある様に「結露」と「濾過」がこの商品の本質である。
つまり、除湿器と同じだ(メーカーサイトにはそういう説明がないので、あくまで推測ではあるが)。
温度差による飽和水蒸気量の違いを利用して、空気から水を搾り取る。だから、空気と電気で水を作り出すことが出来るというわけだ。除湿器にはフィルターが付いていないけれども、水タンクに溜まった水をフィルターで浄化すれば飲み水のできあがりである。


この「無限水」は、レンタル商品なので15,000円/月+1,000円/月の電気代で維持出来る。なお、水の生成能力は毎時1L程度らしい(メーカーサイト参照。ただし、ニュースでは1日33Lとあるので、ちょっと仕様は異なるかも知れない)。
この仕組みだと、冬季は水を作る能力が減退しそうだね。
川の水を浄化
また、こんな機能もある模様。
また、この給水器は、特殊な浄化技術を使って川の水などから1日600リットルの飲み水をつくることができ、災害時に活用することも見込まれているということです。
NHKニュース「“空気から水”給水器を導入」より
ここの部分の記載は、公式サイトの説明に見当たらないのだが、内部にROフィルターを使っているということなので、恐らくは川の水などから取水してROフィルターを介して水を得るということなんだろう。
逆浸透現象はこちらの説明が分かり易い。この図は塩水を純水に変換する説明になっているけれど、塩水を川の水に置き換えればいい。

ただ、この方法を使う時に問題になるのが、ROフィルターの交換頻度である。水道水を濾過する時にも多段フィルターを使って濾過する商品が多いのだけれども、交換サイクルは6ヶ月とか1年とかを推奨する所が多い。
外付けパーツでフィルターを用意するのかな?
説明がないので何とも。なお、ROフィルターを使うためには水圧を必要とするので、多分、ポンプを別に用意する必要があると思うんだ。自家発電でポンプを動かすのだろうか??
その辺りニュースにも触れられておらず、もうちょっと解説があっても良いと思うのだが。
社会実験的な位置づけ
というわけで、富岡市のちょっと変わった取り組み的なニュースなので、特に批判するようなネタではない。でも、NHKは「エコバンザイ!」というテイストで記事を書くのはダメじゃないかな。
特にこの取って付けたような「検証」の話はいただけない。
市はこの給水器を5台借り入れ、16日から市役所や市民体育館などに設置して、今後、1年かけてマイボトルの利用による二酸化炭素の削減効果などを検証することにしています。
~~略~~
富岡市ゼロカーボン推進課の北村謙二係長は「多くの市民に利用してもらい、マイボトルの普及や環境意識の向上、それに災害対応力の強化につなげていきたい」と話していました。
NHKニュース「“空気から水”給水器を導入」より
水の生成能力は毎時1L程度で、1日に24Lの水が生成できる計算になる(ニュースでは33Lとある)。で、ウォーターサーバーに利用されるガロンボトルで約12Lだから、ボトル2本分位の水が毎日作られる計算になるのだが、水の消費量は常に一定というわけではない。
それと、装置内に溜めておけるのは12.5L(メーカーサイトより)なので水生成能力があっても、フル活用できないケースも想定される。そうすると、市役所の職員が使う想定であれば問題ないと思うのだけれど、体育館はどうだろうなぁ。利用したい人が殺到すると、困ったことになるのでは。
災害時、停電すると水の確保ができなくなるけど、一応、本体内にタンクを持っているので、その分の水は貯めておける。でも、それは室外に貯水タンクを持っていて、必要なときにフィルタ通して供給しても問題ない気も……。
まあ、あくまでテスト運用なんだろうけどね。
個人の感想ですが
というわけで、面白い取り組みだとは思うのだけれど、実際には一長一短はありそうだ。
そして、ポストでも呟いたんだけど、冬季は空気が乾燥しがちなので、オフィスでは加湿器が用いられることも結構ある。この「無限水」の隣で加湿器使っていたら、笑えないなぁと、そんなことを思った次第である。
市民の税金を使って大々的にニュースにして貰う前に、実際に導入して運用した結果を報道してくれないかなぁ。
コメント
まぁリハビリ室勤務の時に、院内の施設での洗濯物(小さい医院だから病院みたいなリネン室はない)を室内干ししてたす。
割とまともな家庭用除湿機で2リットル×1.5〜2台の水が朝に溜まってましたね。
だから「大気から水を生成」って、そんな威張る事なのかなぁ?と感じます。
病院の院内空気の水とか飲みたくない!
緑膿菌とかウヨウヨしてんでねすか?
逆浸透膜を用いた浄水なら、割と普通の技術で、私はストロー式とか持ってます。
最新の海水の浄水化技術ならUAEやサウジに輸出てきそうだけれど。
なんか、こう、そんな威張る程の技術かねぇ?という感が拭えません。
ウオーターサーバーの1つと考えれば、アリなんじゃないかなと。
ただ、ご指摘のように確かに病院内の空気から絞った水を提供されたくはありませんね。
ナニやら最近ドコロか放射性物質もフィルターで濾過できるのがROフィルターって売り込みですが、気分的に嫌です。
まあ、ボトル交換が不要というところは魅力ではありますが、コストが特別安いというわけではありませんし。除湿器と何が違うの?というレベルではありますから、ねぇ。
横合いから失礼。
知る人ぞ知る、田中圭一氏の傑作4コマ漫画「ドクター秩父山」のネタで、「エアコンの排水を貯めて『クーラー水』として売る」ネタがありましたが、やってる事は多分似たような感じですね。
ROフィルターは、砂漠ばかりの乾燥帯国や原潜での海水淡水化と、超純水製造のプレフィルター意外の用途では、要求エネルギー(すなわちコスト)がオーバースペック
大気湿気を冷却結露させる方法は、要するに蒸留器の熱源を自然熱源としたもので、ならこれも冷却源を自然に求めないと、要求エネルギーコストがオーバースペック
などと言った計算は、恐らく専門家なら5分ぐらいでカンタンに出来て
計算するなら金取るけど一言アドバイスなら「無駄だからやめときなー」程度は 殆どタダで教えてくれるでしょうに、それでも公共予算付けるのは、
恐らくバックマージン利権なのか、本気なら馬鹿なのか?
一応、
個人的に災害時備えとして計算してみた経験から言ってます。私は専門家じゃないの調べ物して計算、、、で延べ2時間ぐらい?
記事の方法はエコには全く役に立たないでしょう。
非常、災害時の備えとしては?
公共で33L/dayじゃ2桁ほど足りないですよね(苦笑)
脱線、、、個人の防災用には、細かい計算出すのは面倒なのでパスして結論だけ
中空糸フィルターと消毒剤(プールに投げ込むようなヤツ、個人向けだと風呂残り湯用でプール用と似た成分のがある)がベスト。
エコではないですよね、絶対。
非常時の備えとしてもかなり怪しく、自己満足ではないかなーと。
たふん本気でバカなのだと思います。
バックマージン貰ってるとしても、都合よく解釈してる(つまりバカ)でせう。
ROフィルターを用いた浄水のコストを色々見るとかなりお安くなっているんですよね。
淡水化技術に使われるモノはかなりのエネルギーを要するという話を、僕自身も見たことがあるのですが、かなり改善されたのか、別物なのか。
RO(reverse osmosis:逆浸透)は、その名の通り浸透圧に逆らって(逆)浸透膜に水を通過させる方法ですので
最低でも浸透圧に逆らう圧力印加が必要で、実用的には海水淡水化で6MPa(60気圧)、その辺の泥水濾過で約1MPa(10気圧)の圧力が必要です
圧力掛けるだけだと元濃度が上昇して浸透圧もどんどん上がって濾過出来なくなるので、
バイパスや逆・逆浸透による系再生のシステムの併用が、普通は必要
上記はそれなりに継続的・大量(例えば、生活用水として)にRO水を得る場合に必要な要素なので ROフィルターやシステム を ①数回or②数日or③数ヶ月 (or④数年)の消耗品と捉えれば、随分桁違いのシステムコストとなります
アマゾンなどで見掛けるバカ安品は最悪1回以下で寿命となり ○国などに見積もり取るなら気を付けないと(笑)
またR&Dなら③でもOKなケースも多くマトモな業者に見積もり取る場合も、自分のスペック、気を付けないと(笑)