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シリア反政府勢力がダマスカス掌握

北欧ニュース
この記事は約8分で読めます。

アサド政権はもう終わりかもね。

シリア反政府勢力、大統領が逃亡し国は「自由になった」と主張 首都ダマスカス掌握と

2024年12月8日 11:53

シリアの反政府勢力は8日朝、首都ダマスカスに入ったと表明した。ロイター通信は政府高官2人の話として、バッシャール・アル・アサド大統領がダマスカスを脱出したと伝えた。シリアの首相は、シリア国民が選んだ指導陣なら協力すると表明した。

BBCより

速報気味にお知らせする話なので、記事自体は短いのだが。

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ダマスカス陥落

アサド政権の終焉

先ずは、前回の記事だ。

反政府軍が狼煙を上げたのは、11月末のこと。

ロンドン拠点のNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、ダマスカスの空港から出発したプライベートジェットにアサド大統領が乗っていた様子。この飛行機が離陸した後、空港にいた政府軍は撤収したという。

BBC「シリア反政府勢力、大統領が逃亡し国は「自由になった」と主張」より

しかし、10日足らずで首都ダマスカスは陥落してしまった。

そして、シリア大統領アサド氏は亡命したという噂が。

シリア大統領が首都ダマスカス離脱、反体制派の進攻で-ロイター

2024年12月8日 14:43 JST

シリアのアサド大統領が航空機で首都ダマスカスを離れたと、ロイター通信が伝えた。反体制派が首都に進攻しており、住民によれば大規模な銃撃戦が行われている。

アサド氏の行き先は不明だと、匿名のシリア軍の上級将校2人を引用して伝えた。同氏の所在について臆測が飛び交う中、シリア政府は7日、大統領が引き続き首都から国を統治していると発表した。

Bloombergより

何処に飛んだかは不明だが、おそらく亡命可能な地域として考えられるのはロシアかその関係する国家なんだろうと思う。

しかし早かったね。

新しいシリアは誰のものか

さて、そうだとすると、次にシリアを掌握するのはハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)ということになるのだろうか。

HTSは、アサド政権によって国を追われたり投獄されたりした人は、家に戻れるようになるとして、「誰もが平和に暮らし、正義が行われる」「新しいシリア」になると主張している。

HTSのアブ・モハメド・アル・ジャウラニ(別名アブ・モハメド・アル・ゴラニ)代表は、「テレグラム」で、首都ダマスカス市内の政府軍部隊が「公共施設」に近づくのを禁止したと表明。政府庁舎について、「正式に移譲されるまでは、前首相の監督下にとどまる」としている。

シリアのモハメド・ガジ・アル・ジャラリ首相は8日朝、ソーシャルメディアで演説動画を発表し、自分は首都ダマスカスにとどまっており、国民のために最善の対応をするよう協力する用意があると述べた。

BBC「シリア反政府勢力、大統領が逃亡し国は「自由になった」と主張」より

激動のシリアは未だこれから試練を課されることになると思うのだが、とりあえずアサド政権は終焉を迎える。住民たちを虐殺するようなトップよりはマシなのだろうけれど、次のトップが平和を望む人物かどうかは、実際そうなってみないとわからないけれど。

追記

アメリカもそういう認識だよね。

シリア内戦に介入せず IS動向や周辺国波及を警戒―米高官

2024年12月08日14時36分

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日、西部カリフォルニア州シミバレーでの会合に出席し、反体制派が蜂起した内戦下のシリア情勢に関し、「軍事的に飛び込むつもりはない」と述べ、不介入の姿勢を強調した。

~~略~~

サリバン氏は、シリアのアサド政権の後ろ盾であるロシアとイランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが、ウクライナ侵攻やイスラエルとの戦闘で「弱体化し、気を取られていた」と指摘。アサド政権がこうした国々や組織から必要な支援を受けられず、反体制派の急速な攻勢につながったと分析した。

時事通信より

イスラエルの戦争の影響はこんなところにも出ているという分析なんだけど、ウクライナにも相互に影響する可能性はあるんだろう。

それと、アフリカ方面にも多分影響していくよ。この辺りはコメントでも指摘を貰っているけれど。

これはシリア周辺の地図なのだけれど、皆様御存じの通りロシアは黒海艦隊を運用するのに、どうしてもウクライナのクリミア半島を手に入れたかった。事実、2014年にロシアはクリミア半島を手中におさめたのである。

そして、黒海から地中海に抜ける為に、トルコ海峡を抜けねばならない。

が、地中海に中継拠点を持っていれば、トルコ海峡を頻繁に出入りする必要がなくなる。その役割を果たしていたのが、タルトゥース海軍補給処であり、これはシリアに存在している。

タルトゥースは、ロシア海軍で唯一の地中海の修理と補充のスポットで、ロシアにとって非常に重要な拠点である。それ故に、シリアのアサド政権はロシアから支援を引き出すことが出来ていた。ところが、今回のことでこれがなくなってしまった。

ロシアにとっても、ロシアの支援を受ける国々にとっても、非常に宜しくない出来事である。世界最強のアメリカと対等に戦うことが出来るロシアという位置づけだったはずなのに、いつの間にかウクライナとの戦争にも勝てない弱い国になってしまった。そこにかかりっきりで、大切なシリアに軍事支援ができなくなっていたという。

ロシアのメンツは丸潰れなんだけれど、今後、どうなる?

追記2

あー、やっぱりロシアに。

シリア アサド政権が崩壊 “大統領はロシアに亡命”

2024年12月9日 8時46分

内戦が続くシリアで反政府勢力が8日、首都ダマスカスを制圧し、アサド大統領は後ろ盾となってきたロシアに亡命したと伝えられ、政権は崩壊しました。アサド政権から反政府勢力側に平和的に政権の移譲が行われるかが当面の焦点となりそうです。

~~略~~

ロシア外務省の発表によりますと、アサド大統領は辞任することを決め、平和的に政権を移譲するよう指示した上でシリア国外に去ったということです。

NHKニュースより

報道ではアサド氏がシリア大統領を辞任すると決めたことを伝えているが、おそらくロシアとしてはアサド氏が亡命先でも大統領を名乗り、シリアの正当なトップであるということにした方が都合が良いと思う。

尤も、アサド氏が乗っていた航空機が墜落したという噂もあって、本当にロシアに亡命したのかどうかは定かでない。あくまで、ロシア側の発表だから。

また、現時点でロシアはシリアを掌握したHTSのアブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏との連絡をつけている最中だと思う。ロシアの工作が実ってジャウラニ氏がロシアとの関係を続けるのであれば、アサド氏は用済みということになるのだろう。

上でも紹介したけれども、ロシアがタルトゥースを維持出来るか?は、今後の展開にも大きく影響するだけに、シリアが何処の勢力に荷担するかが焦点になってくるはずだ。

追記3

出てきたな。

イスラエル軍 シリアの首都ダマスカスなどで空爆

2024年12月9日 0時45分

イスラエル軍のラジオ局が伝えたところによりますと、イスラエル軍は8日、シリアの首都ダマスカスなどで空爆を行いました。

崩壊したアサド政権が保有していた兵器が反政府勢力の手に渡らないようにするためだとしています。

NHKニュースより

イスラエル軍は空爆だけでなく、地上展開もしているようだ。

「歴史的な日」 対シリア境界、軍備強化も―イスラエル首相

2024年12月09日09時06分

イスラエルのネタニヤフ首相は8日、シリアとの境界に位置する占領地ゴラン高原を訪れ、「中東にとって歴史的な日だ」と述べた。アサド政権の後ろ盾イランなどに加えたイスラエルの軍事作戦が奏功したとの見方を示した。

時事通信より

ここぞとばかり出てきたイスラエルだが、狙いは「シリアにいるテロ組織の撲滅」「兵器の破壊」ということらしいが、不自然な点もある。

シリア反政府勢力が政府軍の武器を手にしたら、どうしてイスラエルに都合が悪いという話になるのだろうか?シリア反政府勢力とイスラエルとの仲が良ければ、そういうことにはならないハズなのだけれど、そうではなかった。このことが一体何を意味するか。

米、シリアの「イスラム国」拠点を空爆 政権崩壊に乗じる兆候、勢力拡大を阻止

2024/12/9 07:49

米中央軍は8日、シリアで同日、過激派組織「イスラム国」(IS)の多数の拠点を空爆したと発表した。アサド政権崩壊の混乱に乗じ、活動を強める兆候があったとし、権力の空白の中で勢力を拡大する可能性を阻止するのが目的だったとしている。

産経新聞より

似たような事をやっているのがアメリカだ。こちらも、テロリストを攻撃する目的があるということみたいなんだけど、さて、本当の狙いは何なのだろうね。

追記4

なかなか洒落にならんニュースが。

シリア刑務所から大勢を解放、子どもの姿も 多数がまだ地下房に閉じ込められている恐れ

2024.12.09

シリアを全国的に掌握した反政府勢力が、各地の刑務所で収容者を解放している。首都ダマスカスにある悪名高い「サイドナヤ刑務所」では、小さい子どもと母親も自由の身となり、その映像が出回っている。地下の監房にも、大勢が閉じ込められているとの情報も出ている。

この動画は、トルコを拠点とする「サイドナヤ刑務所拘束者・行方不明者協会(ADMSP)」がインターネットに投稿した。解放される女性たちと一緒に、小さな子ども1人が映っている。

「彼(バッシャール・アル・アサド大統領)は倒れた。怖がらないで」と、女性たちにもう安全だと伝えている様子の声も入っている。

同刑務所をめぐっては、別の動画もいくつか浮上している。

BBCより

ど、どういうこと?

当局によると、電子ドアが開けられないため、「監視モニターに映っている10万人以上の拘束者」を解放できずにいるという。

インターネットやアルジャジーラなどの報道機関には、大勢が刑務所の低層部に到達しようとしている様子とみられる動画が出回っている。その動画では、男性が支柱のようなものを使って壁の下部を壊しており、向こう側に暗い空間が見えている。

BBC「シリア刑務所から大勢を解放、子どもの姿も」より

うーん、この。

アサド政権の悪行が明かされるターン始まったということなんだろうけれども、これはまだまだ出てきそうだ。

コメント

  1. 山童 より:

    木霊様の予感は当たる……確率高い。
    はっきり言うて、アサド亡命はさらなる流血の始まりでせう。
    そもそもISISって何で始まりました?
    イラクのフセインのバース党員だったスンニ派がさ、いちおうシーア派のアサド政権にのるスンニ派弾圧に対して、「亡命ついての参戦」したのが始まりでせう。
    んで、そこにシーア派のイランが裏から絡んできて面倒が拡大したと。
    そこで重石が取れたという事は「中東戦国再現ドラマ」になりますわね。
    たって木霊様の前記事を読めば解るけど、
    実質的なシリア情勢って群雄割拠の軍閥状態でないすか。日中戦争前のシナ大陸みたいにさ。その中の最大勢力がコケれば、一気に春秋戦国になるのは目に見えてる。
    まして、そこにイスラエル、イラン、トルコ、エジプト辺りの思惑に、英仏露米あたりの大国の思惑もある。
    モメないわけなく、流血は必須。
    まぁ、ただ移民難民でEUは苦しんでますから、煽る事はしないでせうが。
    困った事にトランプ氏はEUの安定に興味なく、プーチン氏はEU不安定を喜ぶという図式がある。エルドアンにしたって、EUの米に継ぐ軍事力という視点からも、シリア界隈で治安が流動化しとる方が何かとEUに発言権が強まる。くだらないポリコレでぶんだんしとる独仏くらいでせう、シリアかこれ以上になって欲しくないのは。
    そうは問屋が卸さないと、イランやロシアが仕掛けると思いますね。
    木霊様の杞憂は的中しますと!!

    • 山童 より:

      訂正)
      EUの米国に次ぐ軍事力 
      →NATOの米に次ぐ軍事力

    • 七面鳥 より:

      横合いから失礼。
      報道を見る限り、シリアの反政府軍は「今のところ」割と頭使った行動をとっているように見えます。旧政府の要人を皆殺し!とかせずに、公的機関への無断侵入を禁じているあたり。
      それがどこまで末端まで浸透するか、いつまでもつか、でしょうね。
      国連がテロリスト認定している団体が主導権取っちゃったっていう、安保理が頭抱える事態になってるって話ですし。

      まあ、あの地域は、民主主義である必要はないんですよね。
      ある程度広大な面積を抑えられるカリスマ的部族長(指導者)も見当たりませんが……

      • 木霊 木霊 より:

        随分と西側に配慮した通達をしていた印象がありますね、反政府軍は。
        西側諸国から支援を受けていたのであれば、当然の判断であるという見方も出来ますが、どちらかというとアサド政権が市民虐殺をやり過ぎたので、それに反旗を翻す為にはやり方を真似るわけには行かなかったという見方もできます。
        そうすると、結構、頭を使うことの出来る指導者がいるのかもしれません。

    • 木霊 木霊 より:

      今回の話、後から考えてみるに、アサド氏がそもそもやる気がなかったようにしか思えないんですよね。
      あっさり亡命しちゃいましたし。

      問題は、反体制派のトップがロシア側に付くか否か、ではないでしょうか。
      案外、反体制派も最初からロシアと通じていて、単にアサド氏が切り捨てられただけという可能性も残っていますから、この話はもう少し注意深く見ていった方が良いと思います。
      アサド氏、実はシリアに居なかったという噂もあって、今回の政府軍の士気の低さを考えると、信憑性が高そうに思っています。そうすると、11月より早い段階でアサド氏は何らかの事情からシリアを捨てていたというケースも想定できますね。この辺りも出てくる情報を待ちたいと思います。