現実を直視できる野党の国民民主党からの提案が、実現する運びとなってきた。国民民主の提案の全てが良いかというとそうは思わないんだけど、議論する価値のあるテーマはしっかりと話し合って欲しい。
「103万円の壁」見直しへ 自公と国民 経済対策修正案で合意
2024年11月20日 19時59分
新たな経済対策をめぐり、自民・公明両党と国民民主党は、いわゆる「年収103万円の壁」の見直しにつながる内容を盛り込んだ修正案で合意しました。 3党は経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を早期に成立させることなどを確認しました。
NHKニュースより
このブログでこのテーマを取り扱うのは2回目だね。
改正には動く模様
そもそも何の壁なの?
前回も触れたが、税制との関係で現状はいくつかの「壁」と呼ばれるものが存在する。
「壁」の表現が正しいかどうかは、良く分からないが。
日本経済新聞が「年収の壁」の話を表に纏めていたので、参考にしていこう。
税・社会保険料を巡る「年収の壁」 | ||||
年収 | 住民税 | 所得税 | 社会保険料 | 配偶者特別控除の減少 |
150万円~ | かかる | あり | ||
130万~150万円 | かかる | なし | ||
106万~130万円 | かかる | 原則かかる | なし | |
103万~106万円 | かかる | なし | ||
100万~103万円 | かかる | なし | ||
~99万円 | なし |
注:ミスがあったので修正しました
要は、住民税や所得税、社会保険料、配偶者特別控除など、税制に関わる閾値が幾つかあって、それが103万だとか106万だとか、130万だとか150万だとかの議論になっている。こちらの方が分かり易いかな。

そしてこちらは以前紹介した図だね。
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例えば、年間所得が103万円未満だと所得税がかかってくるが、年間所得が103万円以上になると所得税の対応になるということになる。
そうすると、103万円未満ギリギリより、103万円となった方が手取りが減る(所得税がかかって数百円分が手取りに影響する)という構造になっている。
ただ、こちらの記事で説明されるように106万円の壁や130万円の壁の方が大きな意味があると言われている。

とはいえこの記事もちょっと語弊はあるんだよね。
緩和策はあるけど使いにくい
もちろん、こうした点に関する問題意識は与党も持っていて、緩和策というのは既に存在する。
支援パッケージの紹介が厚生労働省のサイトに紹介されているので、この制度を使えば106万の壁や130万の壁は一時的に解消できるのだが、「事業主がその旨を証明」するという構造になっている他、2年限定などの時限政策であること、制度が複雑であること、等の理由からなかなか使われない制度(就労調整人口の3%程度しか利用していない)だということのようだ。
恐らくは、わざわざ使いにくい制度設計されているんだろうと思うけれども。
単なる閾値に過ぎない
前回も書いたのだが、こうした閾値というのは平均給与だとか最低賃金だとか、生活保護だとか年金だとか、そういった金額との兼ね合いで変更されるのが当たり前だと思うのだが、これが28年間変わっていない。
変えない理由が良く分からないのだが、インフレが進んでいる日本でこのままの閾値を維持すると、結果的に増税と同じ効果がある。
例えば、収入が変わらないのに課税の閾値を下げていくと、課税対象になったことで、手取りが減ってしまう。インフレで収入が増えれば同じ効果が出るわけで。
自民・公明両党と国民民主党は、先週、税制調査会長らが個別に会談しましたが、20日は3党がそろって協議に臨み、自民党の宮沢税制調査会長、公明党の赤羽税制調査会長、国民民主党の古川税制調査会長が出席しました。
この中で、3党は、新たな経済対策の修正案で合意する見通しとなったことを受けて、国民民主党がいわゆる「年収103万円の壁」を見直し、所得税の基礎控除などを178万円に引き上げることや、ガソリン税の暫定税率の廃止など減税の内容を説明したあと、具体的に意見を交わしました。
また、自民・公明両党は、できるだけ早く来年度の税制改正大綱をまとめる必要があるとして協力を呼びかけました。
3党の税制調査会長は、来週改めて会合を開き、国民民主党が主張する税制改正の項目の制度設計などについて協議することにしています。
NHKニュース「「103万円の壁」見直しへ 自公と国民 経済対策修正案で合意」より
そんなわけなので、勿体つけて「合意した」と騒いではいるが、大した話でもない。国民民主党は象徴的に「103万円の壁」というようなことを使っているが、結局閾値を適正にしましょうという、だけの話である。
全国知事会が反対
ところが、文句を付ける団体が各地から湧いて出ていて、大きな勢力になっているのが全国知事会らしい。
この中で、広島県坂町の町長の吉田隆行全国町村会長は「年収103万円の壁」の見直しについて「町村に与える影響を慎重に見極め、財政運営に支障が生じないよう国に対し強く求めていく」と述べました。
また、このあと吉田会長は記者会見し「地方税収が減れば、行政サービスの低下につながる懸念もある。穴の部分を政府、国会でどのように対応してもらえるのか心配していて、全国の町と村の強い意志を訴えていきたい」と述べました。
NHKニュース「「103万円の壁」見直しへ 自公と国民 経済対策修正案で合意」より
コイツラは……。
財務省からの圧力があったのか、他の官僚組織からのレクチャーなのかは知らないが。
関係者が一様に“根回し”を否定するなか、国民民主党は15日…。
国民民主党 榛葉賀津也幹事長
「総務大臣、すぐ否定していましたけど、我々、今週の初めに大臣から全国知事会に連絡を入れているという、複数の筋から確認されていますので私はあったのだろうと思います」
テレ朝Newsより
全国で一斉に「減収になる」と大騒ぎになっている。ところが、この試算が正しいかどうかは公表されていないのでハッキリ分からない。ガソリン税の見直しに関してもかなりの抵抗があるようだが、いろいろと混ぜて反論している所も多いようだ。
声が大きい、大合唱になっているだけに「正しいのでは?」と思われる方も多いと思う。ただ、実際のところは精査しないとよくわからない。特に、首長の中には「分かってないけど、数字を鵜呑みに反対」という人もそこそこいるようだから。
とはいえ、減って困るという主張は分かる。その辺りは話し合って決めたらイインジャナイのかな。頭から反対するのは違うと思うんだけどね。
追記
そうそう、立憲民主党も「案」を出しているのだから、紹介しておかねば不公平だと思う。一応紹介しておこう。
「130万円の壁」等を給付で埋める「就労支援給付制度の導入に関する法律案」を再提出
2024年11月13日
立憲民主党は11月13日、「130万円の壁」を越えないよう就労を調整している人に対して壁を感じなくなるように支援すること等を目的に、「就労支援給付制度の導入に関する法律案」を衆院に提出しました。今年2月に提出した法案が、衆院の解散に伴って廃案となったため、対象者の年収の上限を明記した上で、今回、再提出しました。
配偶者の扶養家族だった方が年収130万円を超えて働く場合、国民年金・国民健康保険の保険料負担が生じて手取り収入が急激に減ってしまう「年収の壁」に直面します。本法案には、この手取り減収分を補うため、「就労促進支援給付」として、年収が130万円を上回って200万円に達するまでの間、年収の増加に伴って、徐々に金額を減らしながら給付金を支給することを盛り込んでいます。
~~略~~
また、 「働き控え対策という意味では、(国民民主党が対策を提案する)「103万円」をもしやるのであれば、「130万円」もセットでやらないと、「103万円」だけでは実効性がない」と強調しました。
立憲民主党のサイトより

ふむ。
これの言っているところは、「税金でとって、給付する」という意味である。
一見、良さそうな案に見えるのだけれども、限定的な条件で給付するということになるため、経済効果はちょっと疑問である。給付案はこの制度がなくなると給付されなくなるという設計である。恒久的に徴税しない案とは、異なる案なのだ。
もちろん、やらないよりは良いのだろうけれど、代案のほうがショボいというのはちょっとね。
コメント
図が間違っているみたいです。
https://www.nikkei.com/topics/23032900
と同じものと思われますが。
103万~150万のところです。(130万~150万だと思われます)
もしかしたらサイレントで引用元のほうがシレっと変えたかもしれませんが。
どことは言わず新聞社ってところはやりかねないので。
や、すみません。ミスだったので修正しました。
ご指摘感謝。
こんにちは。
全体に、国民(政党のことでは無い)vs財務省、という構図になりつつありますが……
問題なのは、マスゴミが改革に及び腰、自民の中の人も財務省に鼻薬嗅がされてるって事ですね。
マスゴミなんか、今までだったら真っ先に乗っかってきそうなのに。
ウチのガキが、「年末年始受験期の稼ぎ時のバイト代を搾り取る改悪しやがる」って腐ってます。
こんにちは
石破内閣の経済対策って、他の記事で指摘しましたが、財務省の振り付けそのものだと思うんですよ。
今後、レームダック化していく可能性がたかそうですねぇ。