ロシアは金持ちだね!
ロシアは軍事支出を新記録まで増額、戦争費用は2025年に1,420億ドルに達する
2024 年 9 月 23 日
ロシア政府は、すでにロシアの納税者に22兆ルーブルの損害を与えているウクライナ戦争の費用を支払うために、軍事への予算支出を再び大幅に増やす準備をしている。
Moscow Times より
戦争にお金をバンバン使っているわけだが、ウクライナの戦線を維持する為には仕方がないのかも知れない。
GDPが膨れ上がる理由
国庫に占める軍事費の割合は3割
2025年には、ロシアは国防費として過去最高の13兆2000億ルーブル(1420億ドル)を支出する予定なんだそうで。
2024年(10.8兆ルーブル)と比較すると軍事費はさらに22%増加し、2023年(6.8兆ルーブル)と比較すると2倍、戦前の2021年(3.5兆ルーブル)と比較するとほぼ4倍になる。軍事予算は国内総生産(GDP)の6.2%に達し、アフリカの軍事独裁政権の水準(南スーダンのGDPの6.3%)に達する。国庫に占める軍事費の割合は約30%で、ソ連時代以来の空前の水準にとどまる。
Moscow Times より
日本の歳出は114兆円(令和5年度当初予算)で、うち防衛費は8兆円規模になるというから、7%程度を占める計算になる。尤も、GDP比では1.6%程度であるので、世界的にも規模が大きくはない。
他方ロシアは、2024年の歳出は38兆ルーブルで、そのうち軍事費は10.8兆ルーブルだというから、驚くべき比率である。また、GDPの6.3%ということらしい。
2025年には予算の1/3が軍事費になると予想されているから、なかなかの大盤振る舞いである。
子どもをこの国で育てたくない
そういえば、こんな記事が出ていたな。
「子どもをこの国で育てたくない」 ロシア人口減少危機 国を去る若者の決断
2024/09/23 19:34
ウクライナへの侵攻を続けるロシアで今、人口減少が急激に進んでいます。その背景の一つに「子どもをこの国で育てたくない」と、国を出て戻らない子育て世代の決断がありました。
~~略~~
ロシアで今年、上半期に生まれた新生児は59万9600人。ソ連崩壊後の混乱期の水準まで低下しました。
出生率の低下に加え、人口を減少させているのは、帰国しない覚悟でロシアを出た多くの子育て世代の存在です。
テレ朝ニュースより
まあまあ感傷的な記事で、参考にすべき内容でもない。内容が本当かどうかも確かめようがないしね。
ただ、ロシアが財政的に苦しんでいるというのは本当で、冒頭に紹介したように、軍事費に多額のお金を注ぎ込んでいることもそうなのだが、GDP比が紹介されているが、そのGDPの嵩上げが戦争によって実現している。つまり、GDP比の数字はあまり信用出来ない。
インフレ傾向が強い話は以前にも書いたけれども、未だに改善できていないようだ。
メディアは、「ロシア経済好調」と、ピンぼけした記事を書いていたが、実情はかなり酷い。
洪水などが発生したという話も紹介したのだけれど、インフラの状況が宜しくないという話も合わせて書かせて貰った。
こういったことを併せて考えていくと、「この国の未来はない」とロシア国民が感じても不思議はない。特に、モスクワ以外のところでは悲惨みたいだからね。
出生率の低下と労働力減少
それと、出生率の低下という話題がでていたけれども、この話は年始あたりにもあった。
ロシアの内政むしばむウクライナ侵略、出生率低下や貧困が一段と深刻化…プーチン大統領5選
2024/03/19 06:40
17日開票のロシア大統領選で当選したプーチン大統領は、5月7日の大統領就任式を経て、通算5期目の任期に入る。ウクライナ侵略が、出生率の低下や貧困の解消、人手不足などの課題を一段と深刻化させている。大統領選を終えたプーチン氏が、財源確保のため増税に踏み切るかどうかが注目されている。
讀賣新聞より
ただ、「低下した」と嘆くほどではないんだよね、未だ。
ロシアでは、1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数である合計特殊出生率が、2015年の1・78人から22年に1・42人に減った。プーチン氏は演説で「若者は教育を受けキャリアを築き、生活を向上させ、子どもを産むのを後回しにする」と述べた。「大家族」「多子世帯」の重要性も訴え、「今後6年で出生率の持続的な伸びを達成しなければならない」と強調した。
讀賣新聞「ロシアの内政むしばむウクライナ侵略」より
合計特殊出生率が1.42って、日本よりも全然マシ(1.20:2023年度)だし、隣国韓国に至っては異次元(0.72:2023年度)である。
まあ、ロシアの場合は出生率よりも人口減少の方が問題なのである。
ロシアで深刻化する人口減少と労働力不足
2023/06/21
先進国による経済制裁、海外企業撤退の打撃に加え、ウクライナ侵攻後のロシア経済に大きな悪影響を与えているのが、深刻な人口減少、労働力不足問題だ。
ロシアの人口は1994年に1億4,900万人でピークに達した。その後は変動を繰り返しながら減少トレンドを辿り、2021年時点では1億4,500万人だった。
NRIより
それでも日本の全人口より多いのだから、気にすることはないのかも知れない。ただ、労働人口の縮小が結構痛いのだ、という話は以前にも書いた。
ウクライナ侵攻後には、前線への兵士の派遣や民間人の国外移住が加速したこと、約30万人が戦争に動員されたことから人口減少が加速した。その結果、労働市場の逼迫が強まり、経済活動の逆風となっている。
ウクライナ侵攻以来、これまでに100万人以上がロシアを出国したとの試算がある。これは2020年時点での人口の0.7%程度に匹敵する規模だ。今回の人口流出は、1917年のロシア革命後、1991年のソ連崩壊後と並んで、ロシア史上最大規模となっている。
NRI「ロシアで深刻化する人口減少と労働力不足」より
ロシアから労働人口が消えている。戦争に駆り出されたり、ロシアから脱出したり。ロシアの統計資料が信用出来ないってのもあるのだけれども、そのうちには明らかになるだろう。
ただ、労働人口不足は深刻らしい。
ロシア全体の労働者不足数は480万人に=地元紙
2023年12月26日午前 9:53
ロシア全体で今年不足している労働者の数は約480万人に上り、来年も深刻な不足状態が続く──。
ロイターより
何より、高度人材が既に出国済みというところが厳しいだろう。
増税の予定
そして、気になるのは最後の一文である。
2025年から、ロシアは個人所得税(PIT)の累進制を導入し、事業利益税も引き上げる。財務省の計算によると、これにより国庫に2.6兆ルーブルが追加される。
Moscow Times より
増税が必要なのは分かるのだけれど、所得税と事業利益税を上げるのは、果たしてプラスとなるのだろうか。
インフレで随分と苦しんでいるようだが、増税しちゃうんだ。増税すると、通貨供給量が減少して経済活動は停滞し、インフレ対策にはなると思うんだけど、それは一般的な話。
ロシアのインフレは物資の供給が滞っているタイプのインフレなんで、市場に出ている通貨を回収しても需要が減って供給が回復する、なんてことは期待ができない。現状金利が19%になっているのに、インフレが続いている事を考えても、増税の効果があるのかはちょっと怪しい。
そもそも経済が停滞中なので、増税してきたいした税収が得られるかも謎なのだけれど。
コメント
う〜ん…とうなんたろう?
GDPでは必ずしも国力を測れないと想うんですよ。GDPは一定期間に国内で算出された付加価値の総額のカウントでしょう?
すると今のロシアのそれらの指標の多くは軍事産業と戦力物質でしょうし。
国内での付加価値の総額ならば、それフローキャッシュてあって、ストックした経済力の指標にならんと想うんですね。
鉄や石油や穀物といった実体経済と合計しないと本当の国力、余力は測れないと想うんですよ。その「実体」については資源国のロシアは強い。
さらに例のマリの話に繋がるけれど、ロシアって中国みたいに自国民と産業を連れてバッタの大群みたく貿易相手国を貪食しない。基本的には植民しないし(人的資源が足らないから)、シナの一帯一路の債務の罠にかけない! てのは物質・資源で払える分だけ支援しますが売りで、それでアフリカで勢力を伸ばしてる。
マリだけでなく、例えばニジェールはウランとゴールドの産出国だけど、昨年だかのクーデターの後にフランスへの金とウランの販売を禁止してますね。
で、どこに流れているかというと、ワグネルを尖兵とした経済+安全保障のロシアに流れてるんてすね。そのワグネルは木霊様の記事で、シナのノリンコから補給を受けられるのが決まってる。そして物で払うだけで、
シナみたいな高利貸しないので、ロシアとの取引を求めるアフリカの資源国はサヘル地域で爆増してる。
ロシアはまだまだ息切れしないのではないですかね。GDPの半分を突っ込んでるから、息切れ近いと見るのは、それ金融に主産業が移ってしまい、実体経済を見失った西側先進国の誤算でないすか??
経済評論家の試算では、おそらくあと1年くらいはロシア経済は維持できるそうで。
ロシアのGDPは戦争経済で嵩増しされていますから、戦争していない国のそれと並べて語ることがそもそも間違いです。その辺りはご指摘通りだと思いますよ。ただ、河太郎さんの感想の「未だ大丈夫」というところは違うとは思っています。随分無理をしている状況なのだと思います。おそらくは国債を乱発して中央銀行が買い取りをやっている、いわゆる財政ファイナンスをやっているのでしょう。ただし、これは西側の常識の範疇の話でありますから、独裁主義国家の範疇ではなんとかなるレベルかもしれませんが、そこは不明であります。対外債務は2022年にデフォルトしていますから、その結果財政ファイナンスに頼り、そしてインフレ圧力が高まって金利を下げられない。その先に何があるのかと言えば、ドイツが既に経験しているアレなんだろうと思いますが。ロシアがもう分水嶺を踏み越えた世界にいると考えているのは、そういう理由からです。
また、資源国のロシアではありますが、石油精製基地を随分とやられていて、実のところちょっと焦っている部分はあるようです。
国内で修理するための機材や部品が足りないというのもあるので、多分、支那にお願いして色々と調達していると思います。
継戦能力という意味では、ロシアはまだやれると思いますが、おそらく今この時点で戦争がロシアの勝ちで終わったとしても、真っ当な方法で立ち直し不可能なところには来ているんじゃないですかね。
前に木霊様に「グローバルサウスは海のものとも山のものとも知れない」旨を言われたのですが、調べてみるとそうでもないですぜ。
iMFの推計をみてみたら、G7の名目GDPの合計は1986には世界の68%でした。
んが、一昨年の2022には43%にダウン。
対するグローバルサウスの国々の合計は44%で抜いてるんですよ。
たしかに「グローバルサウスってどっからどこまてだよ?」ちう国の数の多さはある。しかし、コレは南北問題が逆転しつつあるちう話でもありますね。
この30年くらいのグローバル化とは、北半球の先進国による世界の市場化たったわけですが、それが今、国連加盟国の大半は専制的な国家になっていて、他国に自国の文化や制度に口出しされたくない派が多数派になってきてる。利害で繋がり、「普遍的な価値観」には見向きもしない国が過半数。
現に2022・4/7の国連総会において、ロシアを国連人権理事会から追放しようという米国の決議が採択されましたが、その時は反対・棄権を合わせると、ほぼタイになってます。棄権した国々は、ブラジル、エジプト、メキシコ、タイ、インドネシア……などなど、人口や経済発展では、ローカル地域では地域大国とも言えるような「そこそこの最近の中進国」です。
これらの国々の「普遍的な価値観より自国の利益」な動きを見ると、ロシア寄りというか、ロシアと関係悪化を嫌ったとしか思えない。その向きは加速してると想う。
故にロシアはまだまだ息切れしないと見るんですね。そもそもの数ヶ月前の投稿にもとると、西欧の価値観を軸に回ってきた世界秩序が崩れ始めたって話で、そうそうロシアは簡単に音をあげないと思いますね。
そこは惡いけど、木霊様の希望的観測たと思いますね。
こんにちは。
膨れ上がる軍事費を捻出するのは、大変ですよね。
見かけ上のGDPは上がって、数字しか見ない「似非経済学者」は騙せますが……
七面鳥は、軍事費にアップアップする政府という構図は、「父親たちの星条旗」で知ったクチです。
いえば、ここから「監督としてのイーストウッド」に心酔しているわけですが。
資本主義かつ民主主義だから早期にその問題が浮き彫りになるわけで、独裁制かつ共産主義だと、国がどっ潰れるまで公にならなかったりするのでしょうね……