むしろ、「なんとかなる」と思っていたとしたら、そちらの方が驚きなのだが。
EUのEV追加関税、ドイツと中国の双方に打撃=王商務相
2024年9月18日午後 12:18
中国の王文涛商務相は、中国から輸入する電気自動車(EV)に対する欧州連合(EU)の追加関税は貿易・投資協力の「深刻な妨げ」となり、中国とドイツの双方に打撃を与えるとの認識を示した。ドイツのハーベック副首相兼経済相との17日の会談について、商務省が18日に声明を発表した。
ロイターより
この関連ネタは過去にブログで扱ったので、その辺りを含めて少し説明していきたい。
関税は回避できそうにない
EUのいつもの手口
ええと、何の話かというとこちら。
去年頃から、「EUに支那製のEVが氾濫していて困る」という話が出ていて、ちょっと問題だから「関税をかけちゃおう、制裁的な関税な」という話があった。
そもそも、EU領域内で自動車の販売というのは己のアイデンティティに関わるとして、かなり拘っている。突然、「ディーゼルは環境にイイから」「コレからはディーゼルだから!」とかいいだしたかと思ったら、「環境に配慮してEVにする」とか言い出す。
結局、EUでトヨタ勢を始めとする日本製の自動車が売れまくったことで、なんとか欧州勢に味方しようとしておかしなことを言い出したのだけれど、劣勢だったので「エンジンに頼らない車にしようぜ!」という発想になった。
ところが、構造が簡単になったら、今度は支那が猛烈な勢いでEV販売をし出したというわけだ。
EU、中国製EVに最大38.1%の相殺関税 中国は対抗措置の構え
2024年6月12日 20時16分
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は12日、中国から輸入する電気自動車(EV)に最大38.1%の相殺関税を課す方針を発表した。中国政府の補助金で不当に価格が抑えられ、競争がゆがめられていると判断した。中国は対抗措置をとる構え。欧州車への報復関税などが想定され、EU中国間の貿易摩擦が激しくなる恐れがある。
朝日新聞より
で、報復関税が設定されたわけだ。
40%の報復関税
まあ、EUならではという手口ではあるが、支那としては困るわけだ。なにしろEV売り上げの4割はEUから得ているのだが、価格が上がっただけで売り上げは激しく落ちること請け合いである。
ハーベック氏との会談では、世界貿易機関(WTO)のルールに沿った解決策を可能な限り早期に見いだし、中国とEUの経済・貿易摩擦激化を回避したいと述べたという。
ロイター「EUのEV追加関税、ドイツと中国の双方に打撃」より
失笑モノのはなしだが、支那がWTOのルールに沿って解決したいって、自分たちは経済の自由化をせずに有利に戦える環境を作っておいて、WTOにはその立場を保全しろという何ともふざけた話である。
しかし、それはそれとして、これまでOKとしてきた話を、いきなり報復だというのも苦笑いするしかない。
ドイツは迷走中
なお、支那と同調しているのがドイツなのだが……。
商務省の声明によると、ハーベック氏は、ドイツは自由貿易を支持し、中国の自動車・部品会社による欧州への投資を歓迎するとし、欧州委が中国との間で適切な解決策を見いだすよう働きかけ、貿易摩擦を回避するためにあらゆる努力を払うと述べた。
ロイター「EUのEV追加関税、ドイツと中国の双方に打撃」より
いや、先日、ボルボが泣き言を言ってたけど、大丈夫なの?これ。支那と組んでEV戦略を進めようというのは、どう考えても悪手だと思うが。
自国の産業が食い潰されたのは、支那製EVや部品のせいだと思うんだけども、そのあたりはどうなんだろう?
中国 ノルウェーやスペインと首脳会談 EVなどでEUに揺さぶりか
2024年9月9日 22時43分
中国の習近平国家主席は、中国製EV=電気自動車の主な輸出先であるノルウェーとスペインの首相と相次いで会談し、EVなどの分野で協力関係を拡大する可能性を強調しました。EU=ヨーロッパ連合が中国製EVへの関税上乗せ案を採決する見通しとなる中、EU側に揺さぶりをかけるねらいもあるとみられます。
NHKニュースより
色々画策はしているようで、支那のこういった動きに同調したのが、現在ドイツだけって事のようだ。
……ドイツはいつも組む相手を間違える敗者だ、ということを言われたことがあるが。今回も間違えているのでは無いか?それとも分かっていてやっているのだろうか。
追記
労使交渉の果に
コメントを頂いた、IGメタルだが、VWと交渉をしているようだ。
VWとIGメタル、新労働協約交渉を1カ月前倒して25日に開始
2024年9月13日午後 12:02
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)と同国最大の産業別労働組合IGメタルは、国内6カ所の工場における新たな労働協約を巡る協議を予定より約1カ月前倒しして今月25日に開始する。従業員を代表する労働評議会が12日明らかにした。
VWは今週、雇用の保障などを盛り込んだ一連の労働協約を破棄すると発表。高い人件費とエネルギーコストに加え、競争の激化に苦しむ国内工場を同社史上初めて閉鎖する提案を巡り労組と衝突した。
ロイターより
ほーん。
IGメタルのニュースは他にも何処かでみたような。労使交渉については、割と有利に進めているという話も見かけていたんだが。
鉄鋼産業、8.5%の賃上げと週32時間(週4日)勤務を要求 ―IGメタル
2023/11
ドイツ最大の産別組合である金属産業労組(IGメタル、215万人)は23年11月中旬から始まる鉄鋼産業の労使交渉で、8.5%の賃上げと現行の週35時間から32時間への労働時間短縮(賃金はそのまま維持)を要求する。同労組は数年前から産別交渉において週労働時間の短縮を主要な要求項目としている。40年前にIGメタルが長い年月をかけて獲得した週40時間から週35時間制への労働時間短縮を彷彿とさせる要求内容で、交渉の行方に注目が集まっている。
労働政策研究・研修機構より
なかなか強気な交渉をしていて、この記事を見る限りは上手く行っていたようだ。

これは、ドイツの労働者の平均年間総実労働時間らしいが、なかなかの勢いで減っている。
なお、当時の週35時間制の導入を振り返ると、短期間の要求ですぐに労使が妥結したわけではない。かなりの年月をかけて労組が要求し続け、時にストライキも実施しながら妥結に至っている。妥結も、まず週40時間から週38.5時間、その後、週37時間、週36時間、週35時間と、4段階に分けて労働時間短縮を行い、達成した。
その間、反対派が懸念したような生産への悪影響も、賛成派が期待したような高失業率の大幅な低下も生じなかった。
労働政策研究・研修機構より
週35時間ということは、7時間労働で5日か。これを週32時間に短縮して8.5%の賃上げを求めるのが、2023年11月頃の交渉らしい。そして、徐々に労働時間を短縮しても、生産性の悪化は避けられているという分析のようだ。
鉄鋼産業の労働者数は過去50年で2/3に減少しており、現在は環境に優しいグリーン・スチール(鉄の製造過程で二酸化炭素の排出を極力減らすこと)への変換が進んでいる。二酸化炭素を多く排出する石炭の代わりに水素を多く使用することで、一部の生産分野(コークス工場など)の労働力余剰が見込まれており、労働時間短縮は、ワークシェアリングによる労働者全体の雇用確保につながるという考えだ。
労働政策研究・研修機構より
しかし、ドイツは安価な褐炭を使用して鉄を生産していたはずなのだが、燃料を水素に転換?上手くいくのか??
いや、上手く行かなかったからこその、冒頭のニュースってなことになるのかな。
VW、10月下旬に労働者50万人参加のスト発生も-工場閉鎖計画巡り
2024年9月5日 17:54 JST
ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)では、10月にも労働者の大規模なストライキが発生する可能性がある。国内最大の労組が明らかにした。数十年前に結ばれた雇用保障協定の撤回とドイツの2工場の閉鎖を経営陣が検討していることが背景にある。
金属産業労組(IGメタル)でVW経営陣との交渉担当トップを務めるトルステン・グレーガー氏は5日、「雇用保障は、とりわけ今回のような危機のために会社側との間で策定された基本的な合意の一部だ」と記者会見で主張した。
Bloombergより
しかし、それにしたって、50万人規模のストライキやったからって、改善する話なのか?これ。
新技術の開発に投資
そもそも、この話には前提がある。
独自動車産業、新技術への投資なければ雇用崩壊=労組IGメタル
2021年5月7日午前 9:46
ドイツ最大の労組IGメタルのイェルク・ホフマン代表は、同国の自動車産業は電気自動車(EV)用の電池をはじめとする新技術に投資しない限り、「雇用の崩壊」に直面することになると警告した。
同国のIFO経済研究所の調査によると、EVへのシフトによって、企業が従業員の再教育を加速しない限り、2025年までに内燃機関生産に携わる約10万人の雇用が失われる可能性があるという。
ホフマン氏はロイターに「雇用の喪失分が完全に補えると主張する人は偽りの期待を抱かせている」と強調。
ロイターより
IGメタル側も、EVに傾倒すると雇用が失われることは理解していたらしい。そういえば、レカロも倒産したんだっけ。
レカロ(RECARO)が破産申請 従業員には知らされず 自動車用シートの名門
2024年7月31日 15時25分
自動車用シートを製造するドイツのレカロ・オートモーティブ(Recaro Automotive)社が破産を申請した。
liveDoorニュースより
む、そういえばBBSも。
有名なアフターマーケット企業RecaroとBBSが倒産。原因は?
02 Agustus 2024, 09:40
自動車アフターマーケット愛好家に悪い知らせが届いた。業界の2大企業、RecaroとBBSが深刻な財政難に陥っている。有名なシートメーカーのRecaroは破産を申請し、象徴的なリムブランドのBBSは破産宣告を受けた。
~~略~~
一方、BBSの最近の倒産も驚きだった。しかし、倒産したのはBBSドイツではなく、BBSジャパンだった。BBSアメリカの社長Craig Donnellyさんは、BBSジャパンはBBSドイツやBBSアメリカとは別のグループが所有していると説明した。「BBSジャパンはモータースポーツ事業を手掛ける全く別のグループです。一方、BBSアメリカはKWオートモーティブが所有しており、先週金曜日にドイツで申請された倒産には関与していません」とDonnellyさんは述べた。
VOIより
まあ、BBSの破産は4回目なんだけれども。でもおかしいな、BBSジャパンは倒産していないって。ドイツの産業は結構ボロボロなんだね。
理想と現実の違いを理解できない国民性なのかもしれない。
コメント
トヨタ プリウスよりも先にスプリット式ハイブリット(ストロングハイブリット)を搭載したスクールバスを製造していたGM、次世代型をダイムラークライスラー(当時)・BMWと共同開発したがダイムラークライスラーとBMW1年で撤退した。
ドイツ最大の労組IGメタル(ドイツ金属労組)のせいで今までにない機械部品の品質管理が出来ないって本当?
一年目はGM製部品だった、ドイツ製部品に切り替えられなかった。
トヨタと提携したBMW、スプリット式ハイブリットを諦めて燃料電池へ。
燃料電池がまた酷いことに…。
プリウス自身は先進的でしたが、あれは製品化したのが凄いのであって試作機自体は結構ありましたからねぇ、ハイブリッド車も。
ただ、バスに搭載するのはイタダケない感じでしたね。バスに乗せるならシリーズハイブリッドのほうが。
IGメタルの方は追記させていただきましたが、なかなか凄い団体ですね。
支那と・・なんて言っているやつはどこのドイツだ。
カビが生えたギャグしか思いつきません。
Kの法則とかありますが、D(英語ではG)の法則もあるのかもしれません。
次はドイツ抜きで。
こんにちは。
>構造が簡単になったら
これなんですよね。
技術の粋であったエンジンとミッションが無くなり、ソフトで何とでもなるモータになったことで、電気屋が大量に業界に参入してきている(経験値もいらない、ソフトはネットに転がっている←ちと言い過ぎ?)のですが、だからといってサスとかNVHとかは経験がモノを言う世界のはず……なのに、欧州出羽守の本邦『高級』自動車評論家が、そこらへんを問題視しているのは、あんまり見かけないですよね。
ゴルフをあんだけ有り難がって、国産ホットハッチをあれだけ蔑むくせに。
重くて防音材マシマシなだけの、タッチパネルで操作性最悪なスマホに毛の生えたEVを有り難がる評論家と記者は、基本信用しません。
※タッチパネルからハプティック操作系への回帰が起こり始めているとも聞きます。
>ドイツはいつも組む相手を間違える敗者
で、ドイツですが……
三国同盟とか踊らされた本邦は耳が痛いですな。
イタリアとだけ組んどきゃ良かった、が、七面鳥の自論です。
※総統は擁護できな部分も多分にあるけど、ドゥーチェはただ失敗しただけに近いかと。
※そもそも、三国同盟の裏で中国に武器売ってたドイツを、七面鳥は信じません。
まあ、チャイナドレスのお姉ちゃんに、ケツの毛羽まで握られてるんでしょうけれど。
20世紀からこっち、ドイツは対外戦争で勝ったことが無いイメージです。
※プロイセンの時代は割と調子がいいのですが。一次大戦のイメージが最悪なので。
※ビスマルクが凄かったのでしょうか?そこら辺、詳しくないので……勉強してみます。
>理想と現実の違いを理解できない国民性
これっすね。
フランスの兵器:「何がしたかったのかはわかるが、やりかったことというのはその程度なのか?」
イタリアの兵器:「どうしてそうなるのかはわかるが、そうするしかないものなのだろうか?」
イギリスの兵器:「何がしたかったのかはわかるが、どうしてこうなったのかはわからない」
ソ連の兵器 :「どうしてこうなったのかはわかるが、何がしたかったのかはわからない」
ドイツの兵器 :「こうするしかなかったのはわかるが、そこまでしてやる理由がわからない」
日本の兵器 :「こうするしかなかったのはわかるが、まさか本当にやるとは思わなかった」
アメリカの兵器:「必要なのはわかるが、そこまで沢山作る理由がわからない」
あれ?やっぱり耳が痛い……
こんにちは。
EVはデカイスマホだ、というのは誰が言い始めたのか。
確かに、モーター回して走っているだけですから、そりゃそうなんですが。ただ、チョロQやラジコンをデカくしたところで、乗り物としてはどうなのかという話は別ですし、本邦の自動車評論家達が、挙って「欧州の自動車文化」を褒めちぎっていた時期がありましたが、今EVを褒める姿を見ると、哀愁すら感じます。「おまえ、どうしちゃったのか」と。
ドイツに関してはもう、「頑張って」と遠目に見るくらいですが、残念な国ですよね。
技術力で売っていた時代があって、今でも凄い製品はありますが……。
徳大寺有恒さんあたり、草葉の陰で何言ってるか知りたいですよね。
※七面鳥は、徳大寺さんは、黎明期の本邦自動車ジャーナリストの草分けとして、その功績に対して尊敬するものではあります。レビューについては是々非々ですが。
徳大寺有恒、草葉の陰で泣いていますよ、きっと。
イギリスの旧車大好きでしたから、そもそもEVなんて冗談じゃないと思っているのではないでしょうか。
ライトウェイトスポーツカーが好きな僕とは好みの被る部分も結構ありましたから、まあまあ、大徳寺節は気に入っていました。
実のところ、EVはライトウェイトスポーツには親和性が高いんで、気になってはいるんですけどね。
セヴン160のEV化なんて、スゴいの出来そうですよね。
※発進トルクに対して車重軽すぎてまともに走れないかも。
いやー、間違いなく真っ直ぐ走りません。
むしろ、軽自動車用の660ccでも十分走るような車体ですからねぇ。
あれ、いつかは購入してみたいのですが……、まだまだ先の話でしょうね。
ドイツの科学力はぁ、世界一ィィー!
ジョジョでしたっけ?
調べたらシュトロハイムの台詞みたいですね。今も世界一だと良かったんですけれど。