ちょっとネタに困ったので、お米について書いていこうと思う。
“米がない” 米不足はいつまで続く?
2024年8月20日 20時58分
「米がどこにもない」
SNSにはコメが手に入りづらいという反応が数多く見られます。 実際に在庫がなくなって販売できない直売所も。 今後、どうなるのでしょうか?
NHKニュースより
この記事、全体を読むと然程内容に破綻はないのだけれど、書き出しなどを含めてどうにも「煽り」を主体に書かれている。マスメディアは学習しないね?数年前にもトイレットペーパー騒ぎやら、マスク騒ぎを引き起こしたのに。
流通量が減った理由
米が入手しにくいのは
実際、僕自身も米の購入に少し苦労した。スーパーを5店舗回ったのだが、何処にも置いていなかったのだ。
ただ、そこで「米がない!」と騒ぎはしなかった。理由は2つあって、1つはこの話、以前から知っていたこと。もう1つは、スーパーの販売店にある表示が、「地震の影響で流通量が少なくなっています」という表記だったことだ。
1つめの理由はこちらのニュースが参考になる。
コメの価格が上昇 “低価格帯が不足気味”報告も
2024年6月12日 18時52分
さまざまな食品が値上がりする中、去年の猛暑の影響で、コメの価格も上がっています。農林水産省が12日に開いたコメの需給状況を話し合う会議では、参加者から低価格帯のコメが不足気味で、一部で価格が高騰している状況などが説明されました。
NHKニュースより
既に、6月の時点で価格の上昇と、流通量の減少が確認されていて、この予測は4月頃から分かっていた話なんだよね。
JAグループなどが卸売業者に販売した去年産のコメの価格は、ことし4月の段階で、すべての銘柄の平均で60キロ当たり1万5526円と、前の年の同じ月より1600円余り、率にして12%高くなっています。
NHKニュース「コメの価格が上昇 “低価格帯が不足気味”報告も」より
ただこの話、燃料価格の高騰や日本の運送業の混乱の話もあって、先を見通しても混乱を引き起こすような話とは理解されていなかった。
去年の不作の影響
後は、去年の米の不作の影響というのもあったと思う。
一方で、去年の夏の高温の影響で、新潟県産コシヒカリをはじめ、一部の産地で、不作や品質の低下などが起きたほか、主に加工用に使われるコメが少なく、代わりに低価格帯のコメの引き合いが増えたことなどが、価格を押し上げていると説明しています。
NHKニュース「コメの価格が上昇 “低価格帯が不足気味”報告も」より
そして、余り言及されていない話だが、転作助成を減らしたところも影響しているんだよね。
主食米「前年並み」30県 24年作付け意向 飼料用「減少」25県 転作助成減響く
2024年3月6日
農水省は5日、2024年産主食用米の作付け意向の第1回調査結果(1月末時点)を公表した。前年産実績と比べると、主産地を中心に30都府県が前年並みとした。一方、前年同時期ではなかった増加傾向との回答も5道県あった。転作作物では、飼料用米で減少傾向が25道府県に上った。24年産から助成を引き下げる影響が出たとみられる。
~~略~~
転作作物の作付け意向もまとめた。減少傾向が最多だったのは飼料用米。転作助成に当たる水田活用の直接支払交付金で、一般品種への助成単価が24年産から段階的に引き下げられることが背景にあるとみられる。大豆も減少傾向が目立った。
日本農業新聞より
構図としては、去年の夏の気候が米の作付けに影響したことと、飼料用米などの転作助成が減額される事が決定したこと。こうした話に影響されて、加工用米が減って低価格米の流通量が減った。一部が飼料用米に回ったんだよね。
そうして、相対的に高価格米の価格が高くなった。
つまり、これ、切っ掛けは農業政策のミスである可能性が高いんだよね。ただ、その後で燃やしたマスコミの責任は大きいのだけれど。
米の在庫は過去最少になったが
結果的に在庫が減ったよと言う話なんだけども、インバウンドが好調だからどうのという話ではないんだよ。

だって、在庫量は未だに156万t存在するわけで、ゼロになったということではない。
これに伴って、民間での在庫も減っていて、6月末の時点では、156万トンと前の年の同じ時期より41万トン、率にして20%減って、記録を取り始めた平成11年以降では、最も少なくなりました。
去年の猛暑などの影響で供給が見込みより少なかった一方、消費は順調で、その結果、在庫が今まででもっとも少なくなり、品薄になっています。
ただ、農林水産省は「主食用のコメの需給がひっ迫している状況ではない。消費者は安心してほしい」と説明しています。
NHKニュース「“米がない” 米不足はいつまで続く?」より
安心して欲しい、じゃないよ。政策失敗の可能性が高いのに、どうすんのさ?
実際のところ、新米が出回り始める9月以降は流通量が増える予想になっているので、品薄状況の改善には繋がっていくと思う。
それは良いんだけど、今の状況を招いているのは、小売業者の売り惜しみが影響しているものと考えるべきだろう。
低価格な米が出回らなくなって、安さを売りにしているスーパーの棚から米が消えるというのは、ある意味当然というか。
米価の調節
なお、米価というのは下がりすぎないように政府によって調整されていることは、割と知られた事実であると思う。
人によっては、こうした事実に反対して「減反を廃止しろ」ということを言っている人もいる。
米価引き下げ輸出を 減反廃止、消費者にも恩恵
2024.05.09
―日本が備えるべき食料危機とは。
「食料危機には二つの種類がある。一つは食料の供給が減り、価格が上がって買えなくなること。発展途上国では所得の60%以上をパンやコメに充てている人も多い。そういう人たちは、価格が2倍、3倍になると必要な量が買えなくなり、飢えることになる」
~~略~~
―どう備えたらいいのでしょうか。
「最も有効な備えは、コメの事実上の減反(生産調整)をやめ、輸出することです。平時に輸出しているコメは有事となれば国内消費に回せる。農林水産省は食料安全保障が大事だと言いながら、実際には減反で供給を絞り、食料生産に必要な農地は大幅に減少した」 「コメの生産は1967年の1445万トンから半分以下に減ったが、減反をやめれば長期的には1700万トンぐらいまでは増産が可能でしょう。普段は700万トン程度を国内で消費して残りの1千万トンを輸出し、いざ食料輸入が途絶えたら輸出用のコメを食べればなんとかなる」
キヤノングローバル戦略研究所のサイトより
国は、米の需要量予測と在庫量の調整を行っていて、その調整機構として機能するのが「減反政策」であり、それに派生して出てくるのが営農型太陽光発電とか、そういった話でもある。尤も、「減反政策」そのものは平成30年に終了したんだけれども、生産調整は続けているんだよね。

農林水産省の予測では、米の需要量が減っているので、民間の在庫も絞ろうという話になっている。
ところが、輸出量は随分と増えてきているので、結果的に減産政策というのは米の流通の足を引っ張ることになっているんだよね。
キヤノングローバル戦略研究所のサイトでは、そういった理由で減産政策の反対を主張しているわけで。
まあ、今回の混乱も、こういった政策の影響を受けているのだろう。そして、そうであれば、現在の傾向は農林水産省の政策ミスってことになりそうだ。
追記
関連記事を幾つか追記。
売場にコメがない 不作と地震注意で殺到
2024.08.21 12808号 01面
関東や関西の都市部では、小売の棚にコメがほとんどない状態が見られる。コメ卸の在庫も「枯渇している」という声も聞こえる。猛暑と渇水による23年産米の不作と歩留まりの悪化で、端境期の6月ごろから徐々に売場に穴が空き始め、7月には特売件数も減少。8月8日に出された南海トラフ巨大地震注意の呼び掛けを機に、消費者が買いに走ったことも拍車を掛けた。商品棚には「1家族2袋まで」「同1袋まで」など、購入制限の貼り紙が目立ち、アイテムも複数原料米に絞られる売場が多い。
日本食糧新聞より
こんなメディアがあったとは。
書いてある内容は、少々雑な書きっぷりのようにも思えるが、事実を並べた感じの構成になっている。似たネタを扱っていた東京新聞は最悪だったが。

アジビラを情報源にしてはいけないのかも知れないが、内容は日本食糧新聞と似ているのに、書き方は酷い。

農水省の「米に関するマンスリーレポート」より作ったグラフを引用するが、グラフの解釈について、「とはいえ、2008年の18.8%や2011年の22.0%は上回っており、農水省は「(卸業者などを含め)在庫はある」と強調する。」と、農水省を揶揄するような書き方をしている。
需要に対する在庫の割合のグラフは、需要の取り方が怪しく、以下のような光景を目にした需要者が慌てた結果、過剰需要が発生している可能性についても示唆程度に留まっている。

2008年に何があったかといえば、世界的な米需要の不安定化である。ただ、この時は然程騒がれることはなかった。寧ろ騒いだのは平成の米騒動といわれる1993年のこと。

過剰に騒いでタイ米を輸入した結果、タイ米の認識を過剰に毀損してしまった。長粒種の調理方法を知らない日本国民が困惑した事件である。結果、輸入米のうちおよそ98万トンが売れ残った事実はあまり知られていない。
現在、米は流通している。
ただ、品薄になっているので、常に店頭に商品が並んでいる状況ではないという、それだけのことなのである。だとすれば、真っ先にやるべきは国民に過剰に反応して買い占めをしないようにメッセージを出すことだろう。グラフに現れているように在庫はまだ十分にあるのだから。
追記2
週末に、米が尽きたのでスーパーに買い求めにいったのだが、売っていなかった。それどころか、米の売り場にはカップラーメンが置かれていた。
「コメ騒動」農政に転換迫る 8月購入量1.5倍・価格4割高
2024年9月2日 2:00
8月に入り、スーパーなどの小売店でコメやパックご飯の購入量が例年の1.5倍に増えたことがわかった。品切れを懸念し、多くの消費者が商品の確保に走った。混乱の裏側には、供給を抑え米価の維持を優先する旧来型の農業政策がある。今こそ政策を見直す好機といえる。
日本経済新聞より
そしてこのニュースである。
腹立たしいにも程がある。
米は結局、農協で手に入れることにしたのだが、単価は普段の1.5倍であった。店長に聞いたら、「高価格で農家から買い集めないと、他の場所に散って欠品してしまう」とのこと。
バカバカしい話だ。
日本経済新聞の原因分析である、「混乱の裏側には、供給を抑え米価の維持を優先する旧来型の農業政策がある」とか書かれているが、購入量が例年の1.5倍になったという結果が出ていて、どうしてそういう分析になるのかサッパリ分からない。
需要に対して供給が上回った原因があって、それが「品不足になる」というデマなんだけれども。
コメント
う〜ん……家内の一族の農園住まいですけれど、米の事は解らないんですよ。栽培してないから。特殊な地形で風力が活用できる事やブランド商品作物やってる事は前に書きましたけれど、それ故に稲作は難しいんてすね。商売的には。やるとJAとの関係が面倒らしいし。棚田もあるのですが、それらは保存会のNPOに任せていて、ほぼタッチしてない。もともと観光資源?として残して欲しいという役場の要請でやってるので。
いちおう私は農園の「米担当」てもあるのです。が、これは神社に奉納する赤米で、
一切に流通してない。農業というより宗教的な神事に類する事なんです。
なので米の流通には知識がないのですよ。
ただ……付き合いのあるバッタ屋(50円飲料自販機とかの)の社長が6月に、空いている倉庫が無いか?尋ねてきたので、小売に流通する過程で何かあるのかも知れません。
その後、倉庫の事でメールしたら、不要になった旨の返信来ましたから、木霊様の仰る新米が市場に出る前に捌き終えたというお話なのだろうと(記事を読んで)推測しております。
稲作は個人的には関係していましたけれど、まあ、大変ですよ。
JAにお願いしないと、先ず栽培すら覚束ない感じですし。
ただ、流通はJAより向こう側の話なので、サッパリ分かりません。何かありそうだ?とは思いますけれど。
こんにちは。
実を言うと。
七面鳥宅は、息子二人も米を良く喰うので、10キロが2週間もたないくらいなのですが、為に、常に安くて普通に旨い米を探してます。
で、某ミスターX(某になってない)という量販店で加州米を買って糊口をしのいでますが……
この加州米も在庫が無い状態。
という事は。
天候天災の影響が考えられない加州米が売り切れる≒みんなが買いまくった、であって、オイルショックの二の舞でしかないのでは、という事も考えられます。
ただ、普段米買ってる近所の米問屋は、夏前から売れ線の安い米が払底していたので、そのころから「安い米」は在庫がなかったのでは、つまるところ需要と供給のバランスが崩れていたのでは、とも思う次第。
「米が高くなったのではない、今までが安すぎ」という農家の声も聞きますから、このあたりで適正価格、適正流通量へのシフトがあると良いなと期待するものです。
※米の値段の適正化≒その他の全ての値段(サービス含む)の適正化≒賃金適正化(賃上げ)、となってくれると非常に嬉しいのですが。
こんにちは。
ちょっと追記で言及しましたが、結局のところは在庫や流通量ではなくて、需要とのバランスってことだと思っています。我が家にもいますよ、米喰うモンスターが2人。流石に10kgが2週間で消え去ることはありませんが……、1月は保ちませんねぇ。
米の価格調整という話も今後はあると思いますが、そもそも政府が価格操作をやっていますから、そう上手くは行かないかも知れませんね。
一月で20キロのオコメ……草食少食男子の多いこの時代、御子息らの生命力ありそうな話には、少し安心しました。若き子らにも丈夫がいるってね。
しかし、私しゃ思うんですが、日本の未来を案じるならば、次世代を育てている家庭(特に子どもたちのメシ代と教育費)には、
家計支援しろっての!!
これは国防やスパイ防止法と共に大事です。私には血を引く子供はいませんが(家内も閉経してるから今後も産まれない)、
他家の子のためでも税金を多く払うよ!
これは農園主である義弟も同じで、こども食堂への産物の無料譲渡してます。
日本国民がどんな時でもくってゆけるよう、未来の日本人たる子供たちのためにも、資金と技術ある大企業の農業参入を考えるべきです。実際、わたしどもの農園のように特別なブランド農産物を作る農家では食糧危機に対応てきないし、規模も大きくできないんですよ。
ええと続報です。農園絡みで色々と聞いて周ったのですが。
結論から言うと木霊様の仰る通り「減反」です。これ米の代わりに他作物を植える事で農家が貰える補助金は税金なので、わざわざ税金払って米を高価格にしている矛盾なのてすが、いきなり止めると離農が増えてしまう。んで痛し痒しで……。
んで、米収穫量の作況指数を見ますと今、流通している分は101で、タイ米輸入した「平成の米騒動」は74ですから、ぜんぜんに余裕あると。
んが……品質が落ちてるらしいす。
①猛暑酷暑の影響で粒色形が崩れるため、
2番米になっている。1番米は78%→54%。
味は素人舌なら変わらないのですが、コレは流通に関係してしまう。(後述)
②カメムシの大量発生。
九州、関西、関東で大発生して品質を落としている。
後述)①も②も品質問題となるわけです。
で、品質を落として2番米になると、まず削る部分が多くてカサも食う量も減る。
そこへ来て米農家はアグリビジネスやホテル旅館業、飲食店などと契約を結んている為に、そちらに粒揃いな米を優先して渡さねばならない。そこでスーパーや直売店からも姿を消しているらしいんです。
んで、米に飢える事は8月下旬から9月の新米で補填されるので、富士山が噴火するとかしない限り、作況指数もさほど変わらず
棚に戻るでせうという話してました。
んが、育ち盛りのお子様のいる木霊様や
七面鳥様には気の毒だけれど、価格は現在例年より14%UP状態で、この高価格は10月中旬あたりまで、まぁ地域によっては初秋まで高値が続くだろうとの事でした。
因みにインバウンドによる和食の消費量については、外人観光客が10日間滞在して、毎食を和食していても、影響は0.5〜0.6%くらいなもので、気にする事はないようです。ウチの農園も米農家ではないので、多少は数値にズレあるかも知れませんが、いちおう房総から神奈川へ米を仕入れている食品会社の営業さんに説明された話なので、そんなに大きなズレは無いと思います。
品質が落ちているのは、販売側としては痛いのでしょうね。
当家では、2番米でもそれほど気にしないのですが……(米が割れちゃうのは、炊く時困りますが)。
一番米の流通量が減るのは、確かに影響大きそうです。
でもまあ、作状指数が100越であるなら、そこまでの心配はない、という理解で良さそうですね。
おお、気がつきませんでしたが詳しい続報をありがとうございました。
僕自身も親父のコネを使って色々聞いて貰ったのですが、JAが品質管理にかなり手を焼いているという様な話を聞きました。
去年の作柄が宜しくなくて、猛暑の影響によって例年よりも落ちているのだとか。現時点での話ですが。
それと、カメムシの話はやっぱり伝わってきていて、去年も随分とトマトがやられて実感しているのですが、今年も。当然、米にも影響が出ていたらしく、これがなかなか。そういえば、「減反」政策ではなく「減産」政策ですね。
ご指摘のように値段は下がらないようですね。
政府がコントロールしているものの、JAのように米の保管を一手に任されているところとか、機械を運用しているところは、燃料費が嵩んでいて今の値段を維持するというのはかなり難しいのだとか。恐らくは2割程度は上がるだろうという噂を聞きました。