ファンボロー航空ショーにて、GCAPの原寸大模型が公開されたようだ。
日英伊の「次期戦闘機」の“全貌”ついに現る! うたわれた「実物大」どんな形に? こりゃド迫力だ!
2024.07.22
日本とイギリス、イタリアの3か国が共同で進める次期戦闘機の開発計画「GCAP(Global Combat Air Programme)」。大きな関心を集めるこの戦闘機の最新の“全貌”が2024年7月22日から始まった「ファンボロー(ファーンボロ)航空ショー」で、明らかになりました。英国担当メーカーのBAEシステムズがGACPの今の姿をフルスケール、つまり原寸大の模型で展示したのです。
乗り物ニュースより
やっぱり原寸大模型とか出てくると期待も高まるのだけれど、巧いことプログラムが進んでいるかというと、残念なことにそうではない。
イギリスの防衛予算の見直しの影響は必至
翼形状の変更など
先ずは、実物大模型の写真を紹介しておく。

こりゃ迫力があるね!
それらに対して公開されたフルスケール模型は、一見したところDSEI Japanで展示された模型と大きく変わったと分かるのは、主翼の後ろ部分の形で、フルスケール模型は後ろの部分の「く」の字型をやめてほぼ完全なデルタ(三角)翼としています。海外メディアはこれを航続距離や兵器搭載量などに重点を置いたため、と観測しています。
乗り物ニュース「日英伊の「次期戦闘機」の“全貌”ついに現る!」より
デルタ翼にしたのか。

過去に紹介されたCGはこんな形で翼の後ろの部分の形状が「くの字」になっていたのだが、これを止めたよと言う話のようだね。

写真としてはこちらの方が分かり易いかも知れない。
スターマー新政権は「国防政策見直し」を
ところが、こうしたプログラムが進行中だったのだけれど、このほど政権交代をした結果、どうやらちょっと先行きが危なくなっているようだ。
前回も少し触れはしたのだけれど。
次期戦闘機「開発中止も」 英新政権の国防見直しで―報道
2024年07月19日23時17分配信
日本、英国、イタリアによる次期戦闘機の共同開発を巡り、英メディアは19日、スターマー新政権による包括的な国防政策見直しの一環で、開発計画が打ち切られる可能性があると報じた。多額の開発費が見込まれる上、ウクライナ戦争などの差し迫った脅威に国防予算を振り向けるべきだとの声が政権内で浮上しているという。
時事通信より
槍玉に上がるのは無理もないのだけれど、ここで見直されてしまうと共同開発の約束すら怪しい話になってくる。現状では何も決まっていないのだから、心配しても仕方がないのだが。
ただし、国防長官も「見直す」と言い出しているので。
Mr Healey touched on a sweeping review of defence that the government launched last week, pledging to establish a “new era” for the armed forces.
Noting that “these are really serious times” with “rapidly increasingly global threats”, the defence secretary said he wanted to avoid age-old tactics by the army, Royal Navy and Royal Air Force of squabbling among each other over limited funds to back pet projects.
“We must be fit to fight not fight amongst ourselves,” Mr Healey said.
~~対訳~~
ヒーリー国防長官は、先週政府が開始した国防の抜本的見直しについて触れ、軍隊の「新時代」を確立することを約束した。
国防長官は、「グローバルな脅威が急速に増大」している「本当に深刻な時代」であると指摘し、陸軍、英国海軍、英国空軍が、限られた資金をめぐって互いにいがみ合い、個人的なプロジェクトを支援するような古くからの戦術を避けたいと述べた。
ヒーリー氏は、「われわれは、仲間内で争うのではなく、戦えるようにならなければならない」と語った。
SKY Newsより
少なくとも国内で予算の奪い合いをやっている状況なので、一旦防衛予算を枠組みから見直すような話になっている。
GCAPのスケジュールは遅れるか、或いは瓦解する可能性も視野に入れておかねばならないだろうね。イギリス抜きでやれるのか?も検討する必要があろう。
追記
NHKは、共同開発は大丈夫っぽいという報道をしているな。
英で航空ショー開幕 日英伊共同開発の次期戦闘機の模型を公開
2024年7月23日 5時14分
世界有数の航空ショーがイギリスで開幕し、日本がイギリス、イタリアと共同開発を進める次期戦闘機の実物大の模型が公開されました。スターマー首相は次期戦闘機について「大きな進歩を遂げている」と述べ、開発の重要性を強調しました。
~~略~~
航空ショーを訪れたスターマー首相は「この計画でわれわれは大きな進歩を遂げている」と述べ、開発の重要性を強調しました。
NHKニュースより
記事を読む限りは、イギリス首相のスターマー氏が「開発継続を確約」したということではないようで、「開発の重要性を強調」したとのこと。
産業にも大きな影響があるから、いきなり「止めます」とは言わないだろうけれど、これで安心という訳ではなさそうだ。
追記2
火消しが大変そうだね。
自衛隊「武器等防護」英軍に適用 3カ国目「準同盟」安保協力強化
2024/07/24
木原稔防衛相は23日(日本時間同)、英国のヒーリー国防相とロンドンで会談し、自衛隊が他国の艦艇や航空機を守る「武器等防護」を英軍に適用すると確認した。イタリアのクロセット国防相を交えた3カ国防衛相会談では、次期戦闘機の共同開発を推進し、開発管理を担う国際機関「GIGO(ジャイゴ)」を2024年中に設立する方針で一致した。
共同通信より
……共同通信ソースというのが不安ではあるけれど、共同開発の話がいきなり止まったという状況ではなく、会談は予定通り行われているようだ。
日英伊の防衛相会談 次期戦闘機は2035年配備で一致
2024年7月24日 6時15分
イギリスの新政権発足後、初めてとなる日本、イギリス、イタリアの防衛相会談が行われ、3か国で進めている次期戦闘機の開発について、2035年の配備に向けて引き続き取り組んでいくことで一致しました。
~~略~~
会談のあと、イギリスのヒーリー国防相は次期戦闘機の共同開発について「それぞれの国で開発している技術や経済成長の可能性など、進捗状況を話し合った。計画は次の段階に進むことになる」と述べました。
NHKニュースより
雰囲気的には、「予定通り進める」という空気ではあるんだよね。
それでもイギリスが予算を組み替える可能性は十分残っているので、油断はできないか。
コメント
英新政権のGCAP再考への言及は、どこか国内政治上の駆け引きが絡んでいるように思われます。戦闘機開発は大きな投資なので、どこに利益を配分するかは政権にとって重要事項でしょう。労働党はただ選挙して勝った、というわけではないでしょうからね。
イギリスとしては、GCAPの他にもFCASを抱えていて、テンペスト構想は未だに放棄していない状況ですからねぇ。
GCAPにFCASを統合する話もありましたが、どうもそういうわけにもいかないようです。
政治的な駆け引きは色々あると思いますよ。
三カ国で仲良く開発ということも難しそうで、主導権争いをしつつ開発も進めて行くのではと思います。
イギリスは、ユーロファイター・トランシェ3も宙に浮いたままですしね。
こんにちは。
・FCASは、ジャガイモとカエルが関わってる以上、歴史を繰り返すとしか。
・GCAPは、本来のテンペストより大型化しており、これは日本の要求が強い。
・GCAPとFCASは、双発という以外に共通点が無いくらい、統合は困難極まる。
・つか、そんなこと言いだしたら真っ先に日本が降りる。
・GCAPを反故にすると英国内航空防衛産業が死ぬ。
・とはいえ、陸軍から見ると破格の費用を食うGCAPを殺せば、来るべき陸戦への備えが充実するのも事実。
・海軍も、ロートル原潜と故障ばかりの艦船ぶら下げて、少しでもお金が欲しい。
状況、こんな所でしょうか。
「国対国ではなく、国対BAeになるだけでは?」なんてコメントも「航空万能GF」さんの所で見ましたが、むしろそうなってくれた方が話が早く進むかも……
こんにちは。
予算がないのにFCASとかGCAPとか色々魅力的な計画をぶら下げていますから、何処かに絞らないとどう考えても予算が足りないんですよね。
BAeも「いい加減にしてくれ」と怒っているかも知れません。