支那における豪雨災害のニュースは今日も今日とて。
中国陝西省、高速道路の橋崩落で12人死亡、30人行方不明 車25台が落下 豪雨の影響
2024/7/20 19:15
中国陝西省商洛市で19日夜、高速道路の橋の一部が豪雨の影響で崩落し、12人が死亡した。国営メディアが伝えた。川に車25台が落下したとみられ、約30人が行方不明となっている。当局が救助と捜索活動を続けている。
産経新聞より
ニュース自体、痛ましい事件の報道なのでお悔やみ申し上げたい。しかしこのニュースを取り上げる気になった理由は別にある。
驚くべき違い
手抜き工事か?そういうレベルなのか?
ええと、驚いた理由は橋の構造にある。
崩落したのは全長が約360メートルある橋の片側車線の約40メートル。習近平国家主席は、救助に全力を挙げるよう指示した。
産経新聞「中国陝西省、高速道路の橋崩落で」より
「片側車線」と書かれているが、2車線+2車線の道路らしく、中央で分離しているために片側が落ちても片側は無事であったようだ。

おわかりだろうか?
気になったのは、これが高速道路であるという事実である。

引きで見るとこんな感じの場所のようで、見た感じ橋脚は無事であるようだ。橋脚は無事で橋梁に問題がでて床版が落ちたということのようだが、橋脚が無事である以上は洪水の影響とも言い難いような。
写真では判別できないが、もしかしたら橋脚のスパンから考えると、1箇所橋脚がなくなっているのかもしれない。

別の角度からの写真を見ると、やっぱり橋脚が1箇所なくなっている風だね。
ただ、これらの写真からわかることは、橋梁に用いているはずの鉄材が見当たらないってことなんだよね。相変わらずというか。
日本の場合
しかしそもそも、日本の高速道路はこういう構造になっているかというと、チョット違う。もしかしたら、場所によっては採用しているかもしれないが……。

これは東名多摩川橋の写真だ。
もう1つくらい紹介しておこうか。

適当な角度のものがないのでわかりにくいけれど、これも東名高速の橋で長良川橋だ。

もう1つ、こちらは名神高速の「芹川橋」で、ここは老朽化が進んで架替えが検討されているそうな。
お分かりいただけただろうか?
日本の場合は床版の下に太い主桁と呼ばれる道路の進行方向に走る鋼材が用意され、その上に床版と呼ばれる構造物を敷いていく感じになる。分かりにくいと思うので、構造図も紹介しておこう。

このような感じになるわけだが。
何れにしても、日本の橋梁はどの橋もロングスパンだ。桁長さを長くしている理由は、川の流れを遮るとろくなことにならないので、できるだけ流れを阻害しないようにスパンを広げることと、橋脚を太くすることを心がけた設計になっているというもの。
支那のソレは、人が歩いて渡る橋のような貧弱さで作られていることに驚いた。なにか特殊な工法なのか?と思って考えてみたが、どう考えてもメリットがない。いや、コストを安くするというメリットはあるのか?
橋を車が通過する時に発生する振動の吸収とか、どんなふうにやっているのかが非常に気になる構造なのだが、どうなっているのだろうね。
追記
この記事を書いて、「そういえば」と思い出したのがこちら。
広東省の高速道路の崩落事故、死者48人に 降り続いた大雨の影響か
2024年5月1日 18時11分(2024年5月2日 17時02分更新)
中国南部・広東省梅州の高速道路で1日午前2時(日本時間同3時)すぎ、路面が突如崩れ、多数の車が巻き込まれる事故があった。国営新華社通信によると、2日午後2時現在、48人の死亡が確認され、30人が負傷した。降り続いた大雨の影響で地盤が弱くなっていたとみられている。
朝日新聞より
このニュースも、見かけた時は「大雨の影響で大変だな」くらいの感想だった。

しかしこのニュースも随分とおかしな記事だった。
写真を見ていただくと分かるが、山の斜面に形成された高速道路なのにも関わらず、周囲の整備をした様子が見られない。日本の高速道路だと路肩に擁壁が作られることが多いのだけれど、そうでないところもそこそこあるか。
ともあれ、路面の厚みがやけに薄いと感じるのは事実。
ただ、このニュースを思い出した理由は別にある。
> 1日午前2時(日本時間同3時)すぎ、路面が突如崩れ
真夜中の事故なのである。
ご覧の通り、支那の高速道路、外灯が見当たらない。上の橋の写真もそうなんだよね。そして夜間に橋が落ちたというニュースであったので、おそらくは次々と崩落箇所に車が来たのではないか。
中国で高速道の橋が崩落し12人死亡、約30人と連絡取れず…夜間に複数の車が川に転落
2024/07/20 17:52
中国中央テレビによると、中国内陸部の陝西省商洛市で19日夜、豪雨の影響で高速道路の橋が崩落し、複数の車が川に落ちた。12人が死亡し、約30人と連絡が取れなくなっている。
讀賣新聞より
そうすると、この記事も別の意味に読める。
つまり、橋の崩落後、床版が落ちていることを知らずに、次々と車が落ちていったという意味に読めるのである。おそらくは「そういう意味」なのだと思う。真っ暗な道路の途中が破損していて、それも高速道路である。スピードが出ていれば止まれるわけがない。運転者は何もわからないうちに命を落としたのではないだろうか。
追記2
ネットには詳しい人がいるもので、いつもコメントを頂くと感心するようなコメントを頂く。こちらのニュースは見逃していたのだが……。
大雨の影響で一部が落ち込み通行止めの橋 架け替えへ 日田市
07月04日 15時32分
日田市の花月川にかかる橋の一部が曲がって落ち込み、通行止めになっている問題で、橋を管理する県は架け替えを行う考えを示しました。
NHKニュースより
こちらのニュースは日本での出来事である。大分県日田市の橋、三郎丸橋で橋脚の1つが傾き、その上の道路が曲がって落ち込んでいるのが発見された。今年の7月2日なので最近のニュースだね。
道路を管理する県では、橋の下を流れる花月川が大雨で増水した影響とみていて、崩落のおそれがあるとして、橋を通行止めにしています。
NHKニュースより
やはりこれも写真を見ていただいたほうが何が起こったのか分かりやすい。

コメントでは「カルマン渦」のことに言及されているのだけれど、多くの人は知らないと思う。理系の学生であればおそらくは聞いたことがあるかもしれないが、建築学をやらないと触れない領域なのかな?

層流と乱流の話をしだすとなかなか面倒なので、簡単に「柱の近くに渦が発生すると、柱が引っ張られる」という風に説明しておこう。

これなんかはなかなか美しい写真だと思うのだけれど、これの効果はなかなかエグい。
有名なのはアメリカのタコマナローズ橋だろうか。横風による橋の自励振動により完成より3ヶ月でタコマナローズ橋は崩落してしまう。
で、コメントでは大分県日田市の三郎丸橋では馬蹄形渦(カルマン渦の影響だと理解してもらえば良い)の発生により、川底が掘れてしまい、その結果、橋脚が傾いたのだという分析をされている。
こうした事例は珍しいものの、実際に学会でも研究される程度には問題視されているわけで、激しい流れに晒されるとどうしてもこういった現象は起きやすい。このため、橋脚は強固な岩盤の上か、もしくは基礎を深く打ち込んでの建造が望ましい事になっているのだけれども、想定外のことは起きるわけで。
支那の事例では、橋脚がこうした状況が発生したために耐えられなかったと想定されるという話なんですな。確かに、他の橋脚が残っているし橋脚の残骸が写真に写っていないことを考えると、綺麗に流された可能性が高く、部分的に条件が悪かったところに影響が出たと考えるべきだろう。
何にせよ、失敗を積み重ねた上での技術が建築業界で活かされるからこそ、日本の土木建築技術は優れているのであって、そういった土壌がなかった支那でこのような事故が発生したのは、不幸だと言わざるを得ない。真摯に対策をうって欲しいと心から願っている。
追記3
行方不明者が増えてしまったね。
中国北部で橋が崩落 死者12人、不明者31人
2024.07.21 Sun posted at 13:45 JST
中国国営中央テレビ(CCTV)によると、北部・山西省の商洛市で橋が崩落し、少なくとも12人が死亡、31人が行方不明になった。
当局によると、最近の大雨と川の増水により、19日夜に橋の一部が崩れた。
国営メディアによると、乗用車17台とトラック8台が川に転落し、20日正午になっても捜索救助作業が続いた。
CNNより
トラック8台とは。
写真のイメージから、さほど深さのない川のように感じていたのだけれど、実は結構深い川ってことなのかな。
コメント
今日は。
橋の構造や橋脚が頼りなげ。増水によるスコアリングで橋脚の下流側河床が削剥され、橋脚がもって行かれたように見えますね。
こんにちは。
橋脚、洪水で持っていかれちゃったんですかね。
何が起こったのかは、なんとも。
構造的に不可解なのは日本の常識をベースにしているからという理由はあるんで、なにか構造的な常識が違う理由があるかもしれません。僕が理解できないだけなので。
増水による急流が橋脚に当たると上流側に馬蹄形渦が発生することで橋脚の根本で洗掘が起きます下流側に発生する渦はカルマン渦で橋脚から少し離れた場所に発生します。
日本で今月発生した大分県日田市の橋脚は上流側に傾いていたので馬蹄形渦による洗掘が原因と思われます、中国の橋脚も写真の川の状況からだと馬蹄形渦による洗掘の可能性がありますが橋脚自体が手抜き工事による強度不足なところに運悪く流木が当たって壊れた可能性も中国だとありえるから困ったものです。
洗掘での事故は橋脚を支える基礎となる底版を設置する深さが十分でなかったり想定より急流が激しかったなどの設計上の問題と以前の増水で洗掘が起きていたのが放置され洗掘が繰り返された結果起きるメンテナンス不足の問題が考えられますね、日本も地方の橋脚だとメンテナンスの課題がありそうです。
また専門的な解説を(苦笑
せっかく言及いただいたので、少し噛み砕いた感じに追記させていただきました。
支那の場合は、この失敗が活かされるかどうかは微妙な感じではありますが、日本の場合はどうでしょうな。
日田市の事例、おそらく建築時の想定以上の水量が流れているからという可能性も考えられます。メンテナンス不足ということも十分に考えられますが、それだと日本各地にある橋梁の多くでも似たようなリスクが考えられますから恐ろしい話であります。老朽化が進んでいますから。
>>支那の高速道路、外灯が見当たらない。
と
何度か写真を見直しましたが、元々照明がなかったような写真です。
照明が設置されていれば、照明もいっしょに落下し橋の上が真っ暗となる。
異常を感じとった走行車は、落ちる前に停車したろうに…
いやいや、元々 夜、煌々と光輝く橋であったなら
崩落し真っ暗になった橋を渡ろうとしなかったでしょうね。
外灯が見当たらないんですよね、不思議なことに。
なにか別の方法で照らしている可能性もありますが、こんな真っ暗だと何もトラブルが無くとも事故が発生しそうでなかなか怖い。
まあ、何らかの照明設備があったとしても、突然、床版がなくなっていたり道路が寸断されていれば、間違って突っ込みそうですけどね。高速道路はそういう意味でもなかなか怖いところだと思います。スピードが出ていますから。
中国の公共工事は国営企業受注案件が多く、手抜き工事をしても糾弾されにくい社会体制がこのような惨事を引き起こしているものと考えられます
割と良く手抜き工事の話は聞きます。
ですが、構造がこれではねぇ。
別ネタです
韓国でKF-21用にF414-GE-400相当のエンジンをするそうです。
わー凄い(棒)、できたいいな。
自国開発ね。
そ、そのネタに触れてしまいましたか。
とりあえず記事にはしてみますが、結構怪しいんですよね。
こんにちは。
橋脚、ほっそ!
って思いましたが、首都高横羽線の、今架け替えてるあたりも太さ的にはこんなもんかと。
もうコメント出まくってますが、洗掘でしょうね……これは、相当に深くパイルぶち込まないとどうにもならない、置くだけ工法では避けようが無い。
のは仕方ないとして、人死にの量が半端ないのが……
故人の冥福を祈ります。恨むなら国の指導者を恨めよ、と。
こんにちは。
確かに首都高速は支柱が細いところが多い気がします。ただ、鋼鉄製なんでアレでも耐性は高いのでしょう。
それでも、架替えは困難を極めるとか。