ちょっと構図が分かり易くなってきたね。
木原防衛相「信頼損なった責任痛感」 引責辞任は否定、大量処分で
2024年7月12日 11時46分
木原稔防衛相は12日午前、安全保障に関わる機密情報「特定秘密」についての違法な運用や手当の不正受給などをめぐる自衛隊員の大量処分を公表し、「国民の信頼を損なったことに対する責任を痛感している」として自身の大臣給与1カ月分を自主返納すると発表した。
朝日新聞より
前回、陰謀論めいた記事を書いたけれども、情報を整理する為に短いのだがお付き合い願いたい。
自衛隊内部の特定秘密運用の厳格化
本当に不祥事なのか
冒頭に引用した朝日新聞の記事ではあるが、防衛大臣の木原氏に対して「辞任しろ」と圧力をかける形になっている。
先ずは前回の記事を引用しておく。
この時の話は3点の問題が明らかになったことで、騒ぎになった。
- 特定秘密の適用が緩い
- 潜水手当の不正受給
- 川崎重工の「裏金」疑惑
このうち、2と3は同じ話で整理できる。つまり、自衛隊員の給料が低く、特に特殊な分野に従事する自衛隊員の手当が低いという意味である。
現場に近い人間はそれを知っていたからこそ、こんな話になったという風に理解すれば分かり易い話になるのではないか。
特定秘密の話
さて、今回、防衛大臣の会見の話を取り上げた理由は、朝日新聞の記事の書き方が余りに一方的だったからである。
今回の記事、防衛省の発表を見ると、全く違う構図に見えてくる。
防衛大臣記者会見
日時:令和6年7月12日(金)10:36~11:28
○ 本日の閣議におきまして、令和6年版防衛白書を説明の上、配布いたしました。本年の防衛白書は、我が国を取り巻く安全保障環境や、戦略3文書を踏まえて進めている防衛力の抜本的強化のための防衛省・自衛隊の取組を、分かりやすく御理解いただけるよう、令和5年度の事象を中心にまとめております。また、将来を担う小中高生の皆さんにも、安全保障について理解を深めてもらうべく、防衛白書の内容を分かりやすくコンパクトにまとめた「まるわかり!日本の防衛」も同時に公表いたしました。これらが、我が国の防衛に対する国民の皆さまの御理解の一助になればと考えております。
○ 防衛省・自衛隊における不適切な事案について申し上げます。まず、特定秘密について、本年4月に公表した漏えい事案を受け、防衛省全体における特定秘密の取扱い状況について集中的に点検してきましたが、その結果、特定秘密保護法上の漏えいと評価される事案や不適切な取扱い事案が多数確認されました。いずれも各機関や部隊内部に留まる事案であり、部外への流出は一切確認されてはいないものの、事務次官、各幕僚長、情報本部長を含む関係者約120名に対し、停職・減給・戒告を含む処分等を実施いたしました。次に、海上自衛隊において、潜水艦、潜水救難艦「ちはや」及び「ちよだ」に所属する隊員による潜水手当の不正受給、厚木航空基地隊、東京業務隊及び対馬防備隊における不正喫食が確認されたことから、海上幕僚長を含む関係者約100名に対し、免職・降任・停職を含む処分等を実施いたしました。
防衛省のサイトより
今回の「特定秘密保護法上の漏えい」の話は、そもそも流出があったという話ではないのだ。
これは「漏れなければ良い」という話ではない。
もちろん、漏れてしまったら大問題ではあるし、そんなことはあってはならない。だからこそ、4月の事件を反省して、他ならぬ木原氏が徹底的な調査を命じた話なのである。
海上自衛隊及び陸上自衛隊で発生した特定秘密漏えい事案について
令和6年4月26日
今般、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」の当時の艦長が特定秘密の情報を取り扱う資格のない隊員1名を特定秘密取扱職員に指名し、戦闘指揮所(CIC)において特定秘密の情報を取り扱わせていたことが判明しました。また、陸上自衛隊北部方面隊隷下の部隊指揮官が特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員に対して特定秘密の情報を漏らしたことが判明しました。これらを受け、当事者及び関係者の懲戒処分を実施するとともに、陸上自衛隊の事案については警務隊に告発状を提出することとしました。
防衛省のサイトより
この事案、特定秘密の資格を持っている指揮官から、特定秘密の資格を持たない隊員に対して特定秘密の情報を漏らした事案であった。なお、この隊員から外部に特定秘密が漏れたという話では無いことに注意頂きたい。
ココで問題視されたのは、「漏れなければ良い」という現場の認識だったというわけだ。
特定秘密保護法で規定される秘密保持の考え方は、あくまで資格を持っている人間同士で秘密を共有し、それ以外の人物に情報が開示されうる状態に特定秘密を置いてはいけないということである。
実際に、情報漏洩が確認されなければ良い、という話ではなく、漏れうる状態にしてはいけないというところがポイントで、その事が現場に周知徹底されていなかったことが問題だったのである。
これが4月に発覚し、木原氏が「徹底的に調査せよ」として調べた結果、今回の大量処分に至ったという経緯となるわけだ。
共同開発していく上では必須
何故に防衛大臣の立場でこのような判断をしたか?だが、これは共同開発をしていく上で必須だからである。
今年の4月辺り、そんな話が色々と出ていたことは記憶に新しいと思うのだが、こういった多国間での開発をするにあたって、どうしても特定機密保護法の適用が厳密に行われている事が示される必要がある。
防衛省・自衛隊の信頼回復に向けては、幹部のみならず隊員一人一人がしっかりと取り組んで行くことが不可欠と考えています。そのため、私から隊員一人一人に向けたビデオメッセージを発出することといたしました。再発防止策を徹底し、二度とこうしたことが起きないよう防衛省・自衛隊一丸となって取り組み、国民の信頼を取り戻していきたいと考えています。
防衛省のサイトより
ある意味では、そうした政治的メッセージを今回のことで明らかにしたのだという風にも理解できる。そして、恐らくはこれから陸上自衛隊にも航空自衛隊にも及ぶのではないかと。
そうすると、メディアが悪のりして自衛隊を批判していて、その背景に財務省がいるという構図も強ち笑い事ではなくなってしまう。
コメント
この特定秘密の話もはっきり言って全自衛隊の人手不足が絡んで来ますよねぇ。
セキュリティクリアランス的には現場で働く隊員全員にセキュリティチェックが済んだ状況じゃ無ければ船の上で働けない位特定秘密が溢れてますし、そもそもセキュリティクリアランスって一回取ったらそれでokかって言ったらそうじゃなく何年か毎に更新しなきゃあかんって話だし、それこそその間特定秘密の無い部署に置いておく余裕なんて自衛隊に絶対無いし、じゃあ簡単にセキュリティクリアランス取れる様にしたらそれこそ盛大にお漏らしするのが目に見えてますしねぇ…
ご指摘の通りですね。
やりたいことと、実際出来ることの乖離が激しく、そこを埋めていこうとしているのが現状だと認識しています。
それに加えて、前回の記事で説明した通り、「特別防衛秘密」の方の規則との関係も話を複雑にしているようで。
昭和29年に作られた特別防衛秘密のルールと、今回の特定秘密のルールは重複しているらしく、人によっては2つとらなくてはならないのだとか。ところが、特別防衛秘密のルールの方が厳しいので、特別防衛秘密の資格があれば特定秘密の方の資格が無くても問題ないだろう、という認識が現場ではあったようで。
今回発覚した中では両方ともの資格の無い人間も関わっていた可能性は高そうですが、実態と運用の乖離があるようで、その辺りを埋めていく作業も必要なのだと思います。その為にも人員と時間が必要なんですが……。
マスコミと予算削減したい財務省がマッチポンプに……という説は説得力あると。
木霊様と七面鳥様に個人的報告を、これの前記事のコメ欄の七面鳥様への返事に書いてあります。色々と激励いただきながら心苦しいが、そのようになりました。御容赦を。
財務省の動向はまた見ていきたいと思いますが、彼等とて道理のわからぬ手合ではありません。
理を解けば自ずと方向性は示されるものです。それが出来る政治家が必要ではありますが。
個人的な報告に関してはそちらの方にお返事をさせていただきました。
こんにちは。
>メディアが悪のりして自衛隊を批判していて
そして気が付くと、『ソース』から芋づるをたぐられて、メディアの中の人が幾人か『行方不明』になるのですね、分かります。
ていうか、そこまでやらないと、バカ共は気付かないと思うので、是非やっていただきたい。
あと財務省は、外務省と併せていずれ大規模粛正が必要かと……
こんにちは。
メディアもしっかり調査しないと、おかしな方向に記事を展開することになりそうなんですが。
どうなりますことやら。
財務省は、再編しないとダメでしょうね。