オーストラリア海軍だからなぁ。
現代とハンファ、110億豪ドルのフリゲート艦契約で日本と苦戦
2024年6月14日 (Gmt+09:00)
韓国の軍艦建造会社2社は、オーストラリアから最新鋭フリゲート艦11隻を建造する110億豪ドル(73億米ドル)の契約を獲得しようと奮闘している。この競争には、日本、ドイツ、スペインの3社も強敵として名を連ねている。
The Korea Economic DAILYより
アンザック級フリゲート7隻を運用中のオーストラリア海軍だが、アンザック級は2000年に入ってから建造した船なので、少々古い。現在、ハンター級フリゲートの建造が始まっているはずなんだけど、どうしてそこでさらに別の艦種を必要とするのかが良くわからない。
オーストラリア海軍は本気でフリゲート艦の新規採用をするのか
アンザック級フリゲートは順次退役
まず、アンザック級の話だが、1番艦アンザックは今年5月18日に退役し、2番艦アランタも2026年退役予定となっている。

設計はドイツでMEKO 200型フリゲートがベースになっているようだ。本国ドイツ海軍ではMEKO 200型は採用されていないんだけれども、最も多くが建造された艦型らしい。
アンザック級はニュージーランド海軍が採用したのと同型艦なのだが、ニュージーランド海軍は何が気に入らなかったのか2隻作っただけで調達は終了している。
これは当初の設計思想よりも随分と大型化してしまったらしいことが原因かも(MEKO 200型は360型をスリム化して基準排水量2,000t級の大きさで建造されたけど、アンザック級は基準排水量3,300tである)。
真相はよくわからないんだけれども。
ハンター級フリゲートの製造数削減
さて、もうちょっと新しい設計となったハンター級フリゲートがこちら。

絵じゃん……。
2009年に承認を受けて計画が開始されたのだが、計画の概要が固まったのが2018年になってから。どういう訳か2024年2月になって、海軍再編計画の一環として製造数を9隻から6隻に削減。1番艦の完成予定は2028年となっている。……あれ?
えーと、ハンター級の原型は26型フリゲートで、イギリス海軍が採用予定である。

2022年の時点でこの状態なんだな。いちおう、進水式は2022年12月3日に終わっていて就役の予定は2024年度中くらいだと言われていたんだけど、そういえば噂を聞かないね。
受注合戦開始
ハンター級フリゲートを作り始めたにもかかわらず、アンザック級フリゲートの後継艦を模索し始めたオーストラリア、外国から買うことにした模様。
オーストラリア政府は最近、老朽化したアンザック級軍艦に代わる海軍の新たな110億ドルの汎用フリゲート艦プロジェクトについて、造船会社5社に3週間の猶予を与え、最初の売り込みの概要を示した。
このプロジェクトを争う造船会社5社は、韓国の2大軍艦建造会社であるHD現代重工業(HHI)とハンファ・オーシャン、日本の三菱重工業(MHI)、スペインのナバンティア、ドイツのKMSである。
The Korea Economic DAILYより
で、手を挙げたのが4カ国5社なんだそうな。
政府は来年、優勝した設計案を選定し、2026年に建造を開始し、2029年までに最初の船を受け取り、2030年に就航させると誓約している。
The Korea Economic DAILYより
建造開始は2026年で、2030年には就航させるプログラムらしいので、1から設計というのは無理。という訳で、手を挙げた人はみんな手持ちの艦でプレゼンする積りらしい。
韓国は2社が競う
で、手を挙げた日本、スペイン、ドイツはそれぞれ1社ずつなのだが、韓国は何故か2社が別々に手を挙げたようだ。
じゃあ、韓国のハンファオーシャン社は何を俎上にあげたのか?というと、「あの」大邱級フリゲート艦である。

ええぇ?本当でござるかぁ?
実はこの艦、駆動系にトラブルを抱えていて、それが解決したという話を聞かない。
一方、韓国のHDヒュンダイヘビー社は、忠南級フリゲート艦を提案したらしい。忠南級フリゲート艦って何だっけ?

うーん、このだるまのような艦橋構造はどこかで見たような……。あ、これだ。
ミニイージスとか言っていなかったか?そして、この間はまだ韓国海軍に就役していない。予定通りだと2024年12月のハズだが、問題は大邱級フリゲート艦と同じ駆動装置を積んでいることなんだな。
詳しいことは報じられていないが、どうやら大邱級フリゲートの駆動系は韓国で設計製造されたギアボックスを採用していて、これがどうもトラブルの元っぽい。そういえばK2戦車もギアボックスにトラブル抱えていたな…。
大丈夫か?
ドイツはMEKO A-200型か
さて、アンザック級はドイツの設計だったので、一番の有力候補だと勝手に考えていたのだが……、実はハンター級フリゲートもドイツの設計なんだよね。26型フリゲートとしてイギリス海軍が採用したけれど。
どうにもオーストラリア海軍が採用する艦船は、元型より大型化する傾向にあって、ハンター級フリゲートは26型フリゲートよりも艦型が25%以上増大して燃費とランニングコストが増加。にもかかわらず出力を強化していないので、最高速度や航行性能が低下する懸念があるというおかしなことになっている。
ドイツ海軍で採用されたニーダーザクセン級かバーデン・ヴュルテンベルク級を提案してくる可能性はあるけれど、ニーダーザクセン級はハンター級よりも大きいんだよね。でも、バーデン・ヴュルテンベルク級はハンター級と似た設計なので、あえて選ぶメリットがない。
そうすると、ドイツ海軍では採用されていないMEKO A-200型だろうというのが、大方の読みらしい。MEKO A-200型は200型の設計をブラッシュアップして更に安価にカスタムメイドしやすいモジュール型に改良したもののようで、南アフリカ海軍、アルジェリア海軍、エジプト海軍が採用したようだ。
しかし……、MEKO 200型に似た形(部品は殆ど共通ではないらしい)の艦を選ぶかねぇ。
そして、ドイツが建造というパターンはこれまでの経緯から考えてもちょっとないだろう。オーストラリア国内建造というのであれば、オーストラリアとしては嬉しいかもしれないが、現在ハンター級を頑張って建造している。余裕があるかどうか。
スペインはAlfa3000
さて、情報があまりないスペインの艦はAlfa3000と呼ばれる型のようだが、おそらくはボニファス級フリゲートをベースにしたタイプだと思われる。
ボニファス級フリゲートの1番艦ボニファスは、就役が2025年予定になっているのだが、イマイチ情報が見当たらない。そして、ボニファス級フリゲートは現在5隻まで計画されていて、順次建造しているようだが、5番艦の就役は2029年予定。
1番艦から1年1隻ペースで納入することになっているらしいが。

じゃあ、アルファ3000は一体?といえば、どうやらスペインのナバンティア社がギリシャ海軍に提案中のフリゲート艦らしい。
Spain’s Navantia Proposing Two New Frigate Designs To The Hellenic Navy
2 Apr 2021
Spanish shipbuilder Navantia is proposing two new and modern designs for the Hellenic Navy frigate requirement: The F110 Frigates, currently being designed for the Spanish Navy are part of a wider package offer by the shipbuilder with full support of the Spanish government.
~~対訳~~
スペインのナヴァンティア社、ギリシャ海軍に新型フリゲート2隻を提案
2021 年 4 月 2 日
スペインの造船会社ナヴァンティアは、ギリシャ海軍のフリゲート要求に対し、2つの新しい近代的な設計を提案している: 現在スペイン海軍のために設計されているF110フリゲート艦は、スペイン政府の全面的な支援のもと、造船会社が提供する幅広いパッケージの一部である。
Nabal Newsより
このアルファ3000はボニファス級フリゲートの原型であるF110フリゲート艦をギリシャ海軍用に構成したものらしく、スペイン海軍が運用するのであればギリシャ海軍にもメリットは有るはずだ。記事によると4隻はベネズエラ海軍、5隻はサウジアラビア王国海軍向けに建造を始めているらしい。
記事からすると、この艦もオーストラリアで建造される流れになりそうだな。
もがみ型護衛艦
さて、そんなわけで、残るはにほんのもがみ型護衛艦なのだが、こちらは順調に5番艦の就役が行われた。
海自もがみ型護衛艦(FFM)5番艦「やはぎ」が就役 京都・舞鶴に配備
5/21(火) 10:31
海上自衛隊のもがみ型護衛艦(FFM)5番艦である「やはぎ」が5月21日、就役した。三菱重工業長崎造船所(長崎市)で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。
Yahooニュースより
予定通りであれば12隻建造するハズなのだが、当初は22隻作るつもりだった。そして、現在は新型FFMの建造に乗り出していて令和10年に配備予定になっている。

省力化推進中の護衛艦の1つではあるが、上手く機能しているかは定かではない。
が、オーストラリア海軍への売り込みという意味では順調だという評価になっている。
業界関係者は、日本の三菱重工業が入札でライバル企業より優位に立っていると述べた。
~~略~~
また、「もがみ」はオーストラリア海軍が所有する米国の兵器システムとも互換性があるという。
日本は、オーストラリア、英国、米国が参加する防衛・安全保障協議機関AUKUSと緊密な協力関係を維持している。
日本は、三菱が落札した場合、三井造船とフリゲート艦の建造を分担する「J Defense Industry One Team」を結成し、このプロジェクトに応札する見込みだ。
The Korea Economic DAILYより
性能面では既に運用中のもがみ型護衛艦の確認は容易だし、なによりアメリカの兵器システムとの高い互換性を維持している点は大きい。
また、オーストラリア海軍が出している基準を満たしているといわれているので、特別仕様に設計し直す必要もなさそうである。建造能力も、三菱重工と三井造船で分担するので有利だしね。
とはいえ、オーストラリア海軍に潜水艦を売り込んで失敗した実例があるだけに、あまり信用ならんのよね。
韓国は安値で提供可能だが
一方の韓国の強みはコストが安いということ、おそらくだがオーストラリア国内での建造にも柔軟に対応するだろうことだ。
アナリストによると、韓国の造船会社の強みは、競合他社に比べて比較的低コストで軍艦を建造できることだという。
主力となる3600トン級のフリゲート艦を擁するHD現代重は、フィリピンを含む世界各地に軍艦を輸出している。
The Korea Economic DAILYより
何より、韓国は輸出経験豊富なので、色々なオーダーに柔軟に対応出来るところも強みなんだろうね。
心配な点は、上に挙げた駆動機構の問題が未解決であることと、国内で2社が手を挙げてお互いに係争中であるという点らしい。

週プレNEWSも似たような分析をしていたが、ここの情報は見た限りちょいちょい怪しいんだよね。もちろん、僕よりもプロの書いた記事の方が信用が置けるはずなんだが……。アメリカが出てきて話をひっくり返す可能性というのは、流石に無いんじゃないだろうか。
オーストラリア陸軍はK9自走砲とかレッドバックとか韓国製の兵器を採用しているので、採用に抵抗はないと思うんだよね。そして、安ければ採用しやすいだろう。もがみ型護衛艦は高いからねぇ……。
コメント
あのう……フリゲート艦の定義が解らない。いや知ってるけど、それはネルソン提督時代のもの。小型快速で射程の短い
小型砲や旋回砲(回転式の大型散弾銃みたいなの)を搭載した小型砲艦ですね。
ネルソン提督はこれを指揮して、大型のフランス艦を「バトルシップ」みたいな奇策で負かしてます。(大型艦が追尾してきた時に艦を回頭し、相手が回頭を終える前に反対に舵を切り、敵側面をすれ違いながら片舷全砲を至近で一斉砲撃)
この戦法で解るのは、フリゲート艦は至近砲撃で敵甲板を掃討し、斬り込む為の砲艦だと思いました。拿捕した船を売れるからです。英文で船の代名詞はSheで、
敵船の代名詞はHeですが、制圧して敵艦を乗っ取るとSheになる。これは帆船時代からの伝統で、この拿捕に使われる艦船をフリゲート艦と呼びました。
しかし、内燃機関と装甲と回転式砲塔を軍艦が備えるようになってから、フリゲートの名称は消えていたはすですが。
(空母や戦艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦などのような和名が見当たらない)
今のフリゲート艦て何ですか??
いまどき敵船切り込みは無いと思いますが。新選組の土方歳三が官軍戦艦への切り込みが、最後の敵船切り込み戦だと想うのですが。なんでフリゲートなのだろ? 不思議じゃありません??
追記)無煙火薬以前の大砲はようわーらんのですが、ナポレオン時代(つまりネルソン提督と同時代)の大砲は、射程が
100㍍くらいで、マスケット銃とそんなに変わらなかった(ナポレオンは突進してきた敵歩兵の銃剣で大腿を負傷してる)
はずですので、至近砲といっても、その時代に長射程砲があったかは不明。
今のスラッグ弾ハーフライフル散弾銃と同じで、推進火薬でなく爆薬が装薬てさから、どうあがいても(口径を大きくしても)射程は200メートルないでせう。
銃弾の威力は銃身長と装薬で決まりますから。フランス艦の大型砲艦とは、砲の口径がでかいというよりも、砲身が長めの前装砲をたくさん積んでいたのだと思います。
申し訳ないけれども、最近のフリゲート艦は駆逐艦より小さい高速運用できる艦艇くらいの意味しかないようです。
僕も気になって調べたことがあったのですが、名乗ったもの勝ちのようでして、例えば我が国の艦艇はデカくても小さくても護衛艦であります。
一時期、アメリカのフリゲート艦は巡洋艦クラスのデカさになって、その後、基準排水量5670トン以上の艦を巡洋艦、それ以下のものを駆逐艦とすることにしたようです。それ以降、アメリカ海軍のフリゲート艦は消えちゃったみたいですね。(去年になって復活させる話が出ていますが)
イギリスはというと、駆逐艦より小型で速力24~32ノット、航洋性に富む艦をフリゲートと呼ぶようにしたようです。
今はイギリス基準がスタンダードになりつつあるとか、なんとか。
韓国のフリゲートは機関系にトラブルを抱えているようですが、それ以前に外洋で運用できるんですかね。
オーストラリアの周りの海には内海なんてないんてすが。
韓国海軍の船は外洋での作戦が出来ないとまことしやかに言われていますが、リムパックには韓国海軍も参加しておりますから、外洋運用NGという訳ではないようです。
ただ、運用的にはトップヘビーの伝統がありますから、何というか不安な要素は消えませんね。
>韓国は輸出経験豊富なので、色々なオーダーに柔軟に対応出来るところも強みなんだろうね
きちんと運用できている実績なんでしょうか。
あの国のインフラなどの「ある意味大型製品」は国内で数々のトラブルがあるけれど、
「輸出品」の品質は大丈夫なんですかねぇ。
なかなか辛辣ですね。
「きちんと運用」するのは外国の軍隊なので、問題になることは多くないですよね。
結果の分かりやすい建造物なんかは、壊れたり崩れたりして大変ですから、兵器だけは優秀ってことはないと思います。
ただ、兵器は基本、消耗品だし他の国の兵器と比べることはあまりないので、よほど大きなトラブルにならない限りは問題になることはないかもしれませんね。
こんにちは。
正味な話、商売上手な韓国が取ると思ってるのですが、安物買いの銭失いにならない事を祈るのみです。
もがみ型が採用されればこれは非常に嬉しい。
日本海の荒波に揉まれた日本の船は、南氷洋でも音を上げないでしょう。
※韓国の利点は、アメリカの造船所を買収している事かと。ハンファでしたっけ?
※実績欲しい韓国政府が、企業に無理を飲ませて強引に一本化を図るのでは無いかと……
こんにちは。
韓国の兵器商売は、客観的に見てなかなかスバラシイ。
ハンファがアメリカの造船所を買収したので、あちらで作る話になったら、かなり韓国有利に運ぶでしょうね。恐らくはアメリカの後押しがあるでしょうから。
もがみ型を買ってくれれば、日本の防衛面では極めて大きな意味があるのですが……。