あれは、マジだったのか。
“ミニイージス”韓国海軍最新鋭3600トン級護衛艦「忠南」進水
2023年4月17日 10:00
「ミニイージス」と呼ばれる韓国海軍のフリゲート艦、蔚山(ウルサン)級バッチIII号1号艦である「忠南(チュンナム)」艦(FFG-828)がこのほど進水した。
「忠南」艦は韓国海軍初の3600トン級護衛艦として製造され、長さ129メートル、幅14.8メートル、高さ38.9メートル。5インチ(127ミリ)艦砲、韓国型垂直発射システム、対艦誘導弾防御誘導弾などを装備している。
AFPより
韓国海軍に新顔が登場したというニュースではあるのだけれども、フリゲート艦はなぁ。
待望のミニイージスが登場
韓国主力のフリゲート艦
現代の海軍事情を考えると、大型の巡洋艦、中型の駆逐艦、そして潜水艦あたりを揃えて艦隊を組み外洋に出て行くのに対し、小型のフリゲート艦や更に小型のコルベット艦を揃えて沿岸警備に運用されるといった感じに棲み分けがなされている。
尤も、沿岸警備に使う船はカッター(巡視船)と呼ばれるらしいし、大きさに決まりはないので、日本なんかは概ね護衛艦という名前で統一しているので、名前で能力とか大きさが分かるというわけではない。
韓国海軍においては、概ねフリゲート艦が主力級となっている様に思う。何しろ、韓国周辺の海域は浅い海が多くて、小回りの効く艦艇の方が使い勝手が良いのだ(私見である)。
その、重要なフリゲート艦は以下のようなラインナップになっている。
- 蔚山級フリゲート(FF):2,180t級
- 仁川級フリゲート(FFG):2,300t級
- 大邱級フリゲート(FF):2,800t級
- 忠南級フリゲート(FFG):3,600t級 ← New!
フリゲート艦の系統としては蔚山級 → 大邱級、仁川級 → 忠南級、という風なのかもしれない。なお、アメリカ軍ではFFGはミサイルフリゲート艦という位置づけで、魚雷じゃなくてミサイルを主力に搭載している艦の事を示すらしい。
大きさの比較もしておこう。
大きさ比較 | 満載排水量 | 全長 | 最大幅 |
---|---|---|---|
蔚山級フリゲート | 2,300 t | 102 m | 11.5 m |
仁川級フリゲート | 3,090t | 114 m | 14 m |
大邱級フリゲート | 3,592 t | 122 m | 14 m |
新型フリゲート | 4,300t | 129 m | 15 m |
段々大きくなっている様子が分かる。
「忠南」艦は韓国海軍初の3600トン級護衛艦として製造され、長さ129メートル、幅14.8メートル、高さ38.9メートル。5インチ(127ミリ)艦砲、韓国型垂直発射システム、対艦誘導弾防御誘導弾などを装備している。
AFPより
さておき、忠南級フリゲートとして新登場したフリゲート艦だが、何故「バッチ3」なのかはよく分からない。
仁川級フリゲートがFFX計画のバッチ1、大邱級フリゲートがFFX計画のバッチ2、忠南級フリゲートがFFX計画のバッチ3というカウントになっているらしい。
……蔚山級フリゲート・バッチ3が忠南級フリゲートなら、何故に蔚山級フリゲートはバッチ1になっていないのかはよく分からないが、韓国では、建造する際にバッチ1、バッチ2、バッチ3と進むにつれて艦形の発展と性能の改善が行われるらしいので、そういうことかもしれないが、ここではさておこう。しかし何故に、ここまで大きくしたんだ?!
イージスシステム搭載
フェーズドアレイレーダーと高度な情報処理・射撃指揮システム(C4Iシステム)を積んでいれば、イージス艦と言うことになるらしい。
- NTU改修艦の場合のような数個程度ではなく、十数個〜数百個という非常に多数の空中目標への同時対処が可能な防空能力を備えている
- 高度に統合された戦闘システムを備えている
- フェーズドアレイ・レーダーを搭載している
- 多機能レーダーの運用に重点を置いた船体構造に設計されている
- 垂直発射式のミサイル・ランチャー(VLS)を搭載している
Wikipediaの「イージス艦」の項目を見ると、こんなことが書かれている。仁川級フリゲートからC4Iシステムを、大邱級フリゲートからVLSを搭載しているようで、今回の忠南級フリゲート(FFG)には、4面固定型位相配列レーダーが搭載され、ステルス型設計も適用されたらしい。
レーダーはイージスと類似した4面固定型位相配列レーダーで、対空・対艦標的を全方位から探知・追跡する。また、先端科学技術を集約した複合センサーマストを採用、赤外線探知追跡装備も備え、ステルス型設計が適用された。
AFPより

こんなシルエットらしいのだが、写真じゃないね、これ。
写真はTwitterで見かけたな。
書いてあることを見ると、ミニイージスではなくしっかりイージス艦になっているのではないか?と言う気がするが。
トラブル満載のCODLOG方式を採用
ところで、気になっていたのは大邱級フリゲートで失敗したCODLOG方式をまた採用しちゃったかどうか?という点である。
こちらの記事でも言及しているが、大邱級フリゲートがいまいち上手くいっていなくて、その原因になっているのがCODLOG方式のギアボックスである。
主機には、ディーゼルエンジンと発電機からなる「ディーゼル・エレクトリック」に、ガスタービンエンジンを組み合わせた、「CODLOG」と呼ばれるハイブリッド推進方式を採用しており、巡航速度は15ノット(約27.8km/h)、最大速力は30ノット(約55.6km/h)を発揮します。
乗り物ニュースより
そして、今回も同じモノを採用しちゃったようだ。お陰で最大速力は30ノットを実現できているらしいが、大邱級フリゲートは切り替えが上手いこと行かない。コレをどれだけ解消できたのかが見物ではある。
CIWSはファランクスを採用
そうそう、気になっていたCIWSだが、どうやらファランクスを採用したらしい。
船体サイズは、全長129m、幅14.8m、排水量は約3600トン。乗員は約120名で、5インチ(127mm)単装砲や近接防御火器(CIWS)20mmファランクス、対艦ミサイル発射機などを搭載するほか、各種ミサイルを発射可能な垂直発射装システムなどを装備し、艦載ヘリコプター1機の運用能力も有しています。
乗り物ニュースより
あと、米国製ファランクスも採用しちゃったらしい。従来は和蘭製ゴールキーパーを好んで採用していたのだけれど、独島級揚陸艦でやらかしてから、ファランクス派に転向したらしい。
オウンゴールだけは嫌なんだろう。
ただ、以前はCIWS-IIを採用するという話があったんだけど、アレは流れたのだろうか。「新しいCIWSを採用」ってあったと思うんだけど。
バッチIIIは、長さ129 m、幅15 m、変位3,500トン、最高速度30ノットになります。その主要な兵器には、Mark 45 5インチ主砲、艦対艦ミサイル、および新しい近接兵器システムが含まれます。
NAVAL NEWSより
この「新しい近接兵器システム」というのがCIWS-IIの事だと思っていたのだ。
South Korea Developing The New ‘CIWS-II’ Close In Weapon System For ROK Navy
01 Jun 2020
South Korea’s Defense Acquisition Program Administration (DAPA) has approved the development of a new close in weapon system for the Republic of Korea (ROK) Navy. Known as the CIWS-II program, the new system will defend ROK Navy surface vessels against anti-ship missiles and fast attack craft.
~~対訳~~
韓国の防衛事業庁(DAPA)は、韓国海軍のための新しい近接武器システムの開発を承認した。CIWS-IIプログラムとして知られるこの新システムは、対艦ミサイルと高速攻撃機から韓国海軍の水上艦艇を守るものです。
「NAVAL NEWS」より
これは、既に開発が進められていたはず。


なかなか格好いいと思ったけれど、結果的にはファランクスにしたんだねぇ。
来年末に就役
ところで、このタイミングで進水して来年末には就役することになるらしい。
来年12月末に海軍に引き渡され、作戦配置される。
AFPより
いつものパターンだと、就役してから色々とトラブルが報告されることになる。実際に、大邱級フリゲートは、次々の問題発覚してドック入りしている。214型潜水艦も似たような経緯を辿っているが。
お楽しみはこれからだ!
コメント
こんにちは。
・韓国軍、特に海軍では、「バッチ」という概念がどうも他国のそれと違っているようで、本邦では外見的にはほぼ同じ潜水艦「そうりゅう」型が本格的にリチウム電池積む「たいげい」型に置き換わりましたが、恐らくこの程度の変更は、あの国では「バッチいくつ」で済まされるでしょう。
なにしろ、御存知の通り、「島山安昌浩級潜水艦」のバッチ3は「原子力」になるそうですから……
・そもそも「ミニイージス」なる造語がおかしくて、そんなシステムはこの世に存在しないのですよね。「チップ4」と同様、どっかの誰かが言い出して、使い勝手が良いから使い回されているのだと思います。イージスシステムのキモは戦闘指揮システムとネットワークですから、それに対してミニという概念は有り得ないですよね。
純粋に「レーダの性能が低い」などのハードウェアによる廉価版であって、その意味では、本邦の「あきづき」型などはミニイージスは名乗ってないと思いますが、国産レーダその他で実質的には「艦隊防空をしない」イージスシステムになってますし……(多分、「あきづき」は、初期のイージスと同等の能力はあるように思いますが)
・どっちにしても、まあ、4000t未満の船体によくぞ色々つめこんだもので、まるで帝国海軍の駆逐艦のようですね。第四艦隊事件みたいなことが起きないと良いのですけど……機関に問題があるとしたら、それ以前ですが。
KF-21は「ミニラプター」ですから、韓国らしいネーミングだと思います。
イージスシステム積んだら、イージス艦なんですが、何かの機能をオミットしたという意味なんでしょうね。
韓国の伝統のトップヘビー構造は健在ですから、おかしな事にならないと良いのですけれどね。