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北の長射程砲を焦土化する戦術兵器を韓国軍が作戦配備

韓国空軍
この記事は約7分で読めます。

捕捉し損ねていた記事で、偶然に見つけたので紹介しておきたい。

地中に潜り北朝鮮の長射程砲焦土化…韓国軍が戦術兵器KTSSMを初めて作戦配備

2025.02.18 16:40

有事の際に韓国首都圏を向けられる北朝鮮の長射程砲を狙う戦術地対地誘導兵器(KTSSM-Ⅰ)が実戦任務を与えられた。延坪島砲撃戦を契機に開発に着手してから15年ぶりだ。

中央日報より

スゴイ兵器が作戦配備されたのに、たいして騒がれなかったな。

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精密誘導がウレ……ウリだ

名品精密誘導兵器

韓国が開発した「最先端精密誘導兵器」のKTSSM(Korea Tactical Surface-to-Surface Missile)だが、このブログでは以前に紹介している。

なんと、100km先の標的にホールインワンできる性能を持っているらしい。スゴイネ!

KTSSMは北朝鮮の長距離砲を迅速に無力化する為に開発された弾道ミサイルで、弾頭に熱貫通弾頭(ブロック I 版)と高爆発弾頭(ブロック II 版)の何れかを用いることが出来る。

熱貫通弾頭というのは、おそらくは地下施設を攻撃するための成形炸薬を用いる弾頭で、高爆発弾頭というのは説明がないので不明だ。ただ、アメリカ製のATACMSよりはかなり安いコストで運用が可能らしい。そして、形状などを見るとどうやらATACMSのコピー商品っぽい印象を受ける。そういえば、韓国ではATACMSのライセンス生産をしていたっけ……。

韓国軍合同参謀本部は18日、長距離火力を破壊できる最先端精密誘導兵器のKTSSM-Ⅰを第一線部隊に作戦配備したと明らかにした。韓国軍当局はこの兵器システムに「ウレ(雷)」と名付けた。雷のように短期間で目標物を焦土化させるという意味だ。

中央日報「地中に潜り北朝鮮の長射程砲焦土化」より

いずれにせよ、もの凄い命中精度を誇るこの弾道ミサイルなのだが……、誘導方式は慣性航法装置とGPSを用いているという。

GPSは結構ズレるのだが、そこは慣性航法装置で補正しているのだろうか。

射程120kmとも言われているので、実戦配備されれば平壌にある建物を狙い撃ちするのも容易い。

狙い撃ち

120kmだと、どうしても地平線が効果範囲に入ってくる。そうすると、まさか目視で狙いの修正をするわけではあるまい。

韓国軍当局はKTSSMを通じて北朝鮮の長射程砲が発射の兆候を見せればすぐ破壊に出る計画だ。先制対応概念であるいわゆるキルチェーン戦力の一環だ。浸透貫通型熱圧力弾を持つKTSSMは地表を貫き地中で爆発する。1~2メートルにすぎない誤差範囲で北朝鮮の坑道陣地を精密打撃し焦土化できるというのが軍当局の説明だ。

中央日報「地中に潜り北朝鮮の長射程砲焦土化」より

慣性航法装置によるミサイルの誘導方式は割と一般的ではあるが、原理的に加速度計を用いて本体にかかる加速度を計測し、コレを積分することで速度、距離を求めていくため、誤差が積算しやすいという特性を持つ。また、ジャイロで方角を検知して、起点からの移動距離算出に用いるため、こちらも誤差積算の影響を受けやすい。

自分自身で到達点までの経路を割り出すために、悪天候や電波妨害の影響を受けにくい特性を持つ一方で、GPSなどを用いて補正しないと積算した誤差を解消する方法がなく、長距離攻撃には適さないという弱点を持っている。

で、韓国軍は自前で衛星通信による補正手段がないので、米国製のGPSに頼らねばならないのだが、GPSの誤差って軍用でも最大で数mの誤差は出るのよね。その辺りの突っ込みは前回もしたけれども。

KTSSM-IIの開発も

そして、更に飛距離を伸ばしたバージョンの開発も進めているのだとか。

韓国軍当局はKTSSM-Ⅰの戦力化を2028年までに完了し、KTSSM-Ⅱの開発も推進している。KTSSM-Ⅱの場合、韓国軍当局は最近戦力化目標時期を2034年から2030年までに繰り上げる。固定式であるⅠと違いⅡは多連装ロケット(MLRS)の移動式発射台から発射され、移動性と隠匿性が向上し、射程距離も180キロメートルから300キロメートルに伸びるものとみられる。軍事境界線(MDL)周辺に配備すれば鴨緑江(アムノッカン)付近まで打撃が可能という意味だ。このほか韓国軍当局は600億ウォンをかけてKTSSM-Ⅲを開発する案も議論している。

中央日報「地中に潜り北朝鮮の長射程砲焦土化」より

移動式発射台からの発射方式は是非とも採用したいだろうから、この開発自体は続けられると思うが、射程距離も伸びるとか。燃料を沢山積むんですかね?

というか、ATACMSっぽい能力を獲得するながれになっている気がして仕方がないんだが。

北朝鮮に技術譲渡した疑惑

そういえば、ATACMS絡みではこんな話があったな。

驚愕、韓国が北朝鮮に弾道ミサイル供与か

2019.8.14(水)

北朝鮮は8月10日、新たな飛翔体を発射し、「もう一つの新しい兵器システム」を完成させたと公表した。

韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が10日に短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表。高度は約48キロ、飛翔距離は約400キロ、最大飛行速度はマッハ6.1以上で、ロシア製「イスカンデル」の北朝鮮版「KN23ミサイル」の可能性が高いと分析した。

~~略~~

ATACMSのミサイル部分は、韓国の固定サイロに入っている「玄武2号A」としても採用されているものだ。

JB Pressより

この話は、「似ている」と言うだけの話で裏付けのある話ではない。ただ、韓国の玄武ミサイルがそもそもあちこちの国で開発した技術に基づくコピー商品である疑いが強いことと、KN23ミサイルはイスカンデルMというロシア製のミサイルベースに作られているが、どうも玄武2ミサイルに近い技術であるという分析がなされてはいる。

何故なら、イスカンデルMとKN-23のロケットモーターは構造が大きく異なり、別の形態の技術が流用されている可能性が高いと指摘されているからである。そして、ウクライナ戦線に用いられるためにロシア軍に引き渡され、実際に使われたKN23ミサイルの破片から、誘導制御装置の部品の75%が米国製の部品をベースにしているとい分析がなされている。

North Korea used US parts in ballistic missile Russia fired at Ukraine: Report

February 21, 2024

A North Korean ballistic missile that Russia used against Ukraine last month heavily incorporated foreign-sourced parts, including from the U.S., according to a new report.

Researchers from Conflict Armament Research (CAR) found that over 75% of documented components in the DPRK missile fired at Kharkiv on Jan. 2 came from U.S. suppliers, demonstrating the DPRK’s ability to source parts in defiance of sanctions.

~~対訳~~

北朝鮮は、ロシアがウクライナに発射した弾道ミサイルに米国の部品を使用した: 報告

新しい報告書よると、ロシアが先月ウクライナに対して使用した北朝鮮の弾道ミサイルには、米国を含む外国製の部品が多用されていた。

Conflict Armament Research (CAR)の研究者によれば、1月2日にハリコフに向けて発射されたミサイルに含まれる部品の75%以上が米国のサプライヤーから供給されたものであり、北朝鮮が制裁を無視して部品を調達する能力があることを示している。

KN NEWSのアーカイブより

北朝鮮が何処からこの部品を調達し、この部品を用いる技術を導入したかは言及されていないモノの、部品が手に入ったからミサイルに流用できるというわけでもないだろうから、何らかの技術調達ルートがあったと考えて然るべきである。

表向きは敵対国同士であり、お互いを攻撃するための兵器の技術を融通し合うというのは、凡そ考えられない話ではあるが。

コメント

  1. 匿名 より:

    地上の基準基地局が要るけどGPSでも数cmの精度は出せます。「RTK GNSS 耕運機」でググッて見て下さい。
    個人で頑張れば10万円以下(笑)

    • 木霊 木霊 より:

      技術的にはGNSS利用のRTK測位で精度は出せるわけですが、これって原理的に運用する機器の周囲に簡易な基地局を作らねばならないわけで。
      GNSS利用耕耘機であれば畑にアンテナ埋めておくことでかなりの精度がだせますが(cm級の精度は安価に出せるようで)、ではこれをミサイルに使う為には、撃ち込む地点にアンテナが必要になるという話になるはずです。

      スマート農業は、そういった観点で簡易ではなくてもう少し出力の出る基地局を地域に置いたら利用出来るよね、という話もでていて興味深いですね。
      https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/smart/attach/pdf/forum-10.pdf

      ただ、今回のKTSSM-Iは100km先にミサイル撃ち込むのですから、撃ち込む地点側に何かアンテナの役割を果たすものが必要になります。例えばF-35Aをセンサーノードの使いましょうとか、そういう話も出はでていますが、韓国はその手段を現状で持ち合わせないわけでして。

      • 匿名 より:

        ん? 基地局そんな近くになくても例えば123km離れた基地局で平均誤差5cmという測定結果も
         https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/006/815/01_rtk-gnss_manual.pdf
        のp.5 グラフ

        100km先狙うなら基地局はランチャー位置に置けば十分

         ただし基地局とシステムの通信がしっかり確保されていることが必要。上記リンク例では携帯電話インターネット回線を使ってますね。(p.8あたりから)
         
         でも話題のミサイルは地を這う巡航ミサイルじゃなく弾道ミサイルですから着弾まで殆どの時間ランチャーから見通せて、直接波で通信でき問題なしです。具体的には
         https://keisan.casio.jp/exec/system/1204505832
        あたりでちょちょいと計算すると

        60度で打ち上げ100km先着弾だと初速≒着弾速度≒1064m/sec
        なので着弾直前1秒での高度は1064*sin(60°) = 921m
        https://keisan.casio.jp/exec/system/1179464017
        から高度921mの見通し距離は114.9kmで100km以下

        すなわちランチャーに基地局置いてミサイルと直接波通信すれば着弾1秒前まで誤差5cmの測位は可能。十分でしょう

        – – – – –

        もっとも現実にはミサイル降下域ではGPS信号がジャミングされて使い物に多分ならない。
         よってRTK-GNSSの使いどころはミサイル飛程前半のジャミング影響小で基地局近く精度の良い場所の測位で、INSのジャイロやGセンサの学習補正パラメータを微調整して命中精度を上げる、、、てとこかしら?

        • 木霊 木霊 より:

          ほえー。
          確かに、紹介頂いた資料ではそうなっていますね。なかなか興味深い。

          ただ、僕の理解が正しければRTK測位(VRS方式)で精度を出す前提になっているのは、国土地理院がが約20km間隔で設置した全国1,300カ所に設置のGNSS連続観測点が電子基準点とするというもの(電子基準点は自身の位置が正確にわかっている)。
          自作のアンテナを用いる場合は通信距離が携帯電話の受信範囲にとどまる必要があったと思います(基地局との通信誤差で自身の位置を割り出す)。そして、慣性航法装置は積算誤差が問題になりますから、できるだけ補正地点は着弾点の近くで行いたいはずです。GPSの補正についても同じ原理だと思うのですが……。
          それと、RTK-GNSSに使う電子基準点の数はスタティック法の場合は3つ以上だったと思います。3点測量と原理は同じはずなので、基準点との距離をミサイル自身が知らないと(ミサイルは自身の位置を慣性航法装置によって積算して把握ができるが、その誤差の修正をしたいはず)、使えないような気がします。ここは僕の理解が不十分かもしれませんが。
          ランチャー基地に大きなアンテナを置いて補正の基準点として使うとしても、どこか遠くに補正に使うための基準点が他にも2つ欲しいと思います。あれかな、測位用の航空機を飛ばしていれば基準点に使えるかも知れませんね。ただ、結構強い電波を発信しなければならないので、発射地点も測位用の機体も位置がバレバレになる欠点は出ちゃうかも知れませんが。

          • 匿名 より:

            >僕の理解が正しければ

            申し訳ないですが、色々別々の概念をゴッチャにされていて、ぶっちゃけ理解が間違ってます(^^;

            また明日以降に説明試みます

          • 木霊 木霊 より:

            お手数をかけて申し訳ない。
            理解の助けになるサイトなどを紹介頂けると助かります。文字だけでは限界が……。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >お互いを攻撃するための兵器の技術を融通し合う
    互いの裏にアナハイムが……ってなると、ガンダムの世界ですが(笑)
    事実は小説より奇なり、でない事を祈ります(大体祈りはカミサマに無視されますが)。

    相手の砲を無力化するなら、ピンポイントじゃなくて面制圧の方がいいと思うんですが、韓国はクラスター条約批准してましたっけ……