K-2戦車「黒豹」も、もちろん韓国の名品武器でもある。ええ、名品ですよ!(笑)

今でこそ、海外セールスが成功して「成功した兵器」的なイメージが作られているが、出来上がるまでにはかなり苦戦した事実はある。苦労に苦労を重ねて「使える」兵器になった、のだとは思うんだけど、実際の評価が出てくるのはもう少し先の話だと思う。
K-2戦車列伝!
長らく未完の名機だったK-2「黒豹」
先に説明したように、K1戦車はアレコレ問題を抱えている。
しかし、後継機となる次世代戦車のK-2の開発には念には念を入れて……、1995年から開発を開始して2014年に量産車両が納入されるまでに19年も費やしてしまった。どんだけ開発時間かかってるんだよ!
長期化の原因は、戦車の心臓部品であるパワーパックが開発できなかったためらしい。
結局、取り敢えずはドイツ製のパワーパックを搭載する方向で解決し、国産パワーパック実現に向けて努力している最中である(2024年12月現在、完成して採用に向けて動いているとのこと)。
トルコがサウジに20億ドル分の戦車輸出、技術伝授した韓国戦車はテスト中
Posted May. 14, 2013 08:09,
韓国の次世代戦車「黒豹」(K2)の技術提供を受けて開発されたトルコの戦車「アルタイ」が最近、サウジアラビアと輸出契約を結び、国内の軍需産業界が動揺している。韓国が軍需産業技術を伝授した後発走者に逆に追撃される状況が現実になりつつあるためだ。
「東亜日報」より
姉妹機であるトルコのアルタイ(K-2ベースで開発されたトルコの戦車)は、素直にドイツのパワーパックを搭載して、輸出を決定したと報じられた。尤も、トルコは政治的問題からドイツからのパワーパック輸入の目処が立たなくなってしまったこともあって、アルタイの製造計画も遅れた。
そして、2021年になってトルコは韓国からパワーパックの技術支援を受けることが決定したと報じられている。
なお、この時点では韓国国産パワーパックの開発も遅延に遅延を重ねている段階だったので、韓国がパワーパック問題を解決したという訳ではなかったのだろう。そうすると、トルコが韓国から技術支援を受けるパワーパックの技術は、一体どんなものなのかは気になるな。
国産パワーパックは完成したが……
「完成」が幾度も報じられた韓国産パワーパックなのだが、遡ること2014年に「とうとう韓国産パワーパック搭載のK-2が完成した」と報じられたのが最初だったと思う。
が、K-2のテストをしたら韓国陸軍の要求仕様を満たさないことが発覚!!
[単独] 0.7秒遅れて.. K2戦車国産化、水の泡の危機
入力2014.09.23 04:47
陸軍の次期主力戦車であるK2(黒豹)戦車が加速性能試験で0.7秒遅れの国産化が水の泡になる板である。
「Daum」より
政府は、2005年以降10年目K2戦車を開発するのに1,300億ウォンを注ぎ込んで国産名品武器に宣伝してきたが、軍当局の釈然としない基準に足かせになって国産化するかどうかの最終的な結論を下すことができない。
んで、どうしたかというと何とも斜め上の解決方法を採った。
K-2戦車の国産心臓甘くなった
【中央日報】 入力2014.10.29 10:38
軍がK-2黒豹戦車のパワーパック(エンジン+トランスミッション)を国産化するために作戦要求性能(ROC)の一部下げ国産化することにした。
軍は当初、K-2戦車が停止状態から時速32㎞まで到達する時間が8秒以内でなければならないというROCを提示した。
しかし、持続された性能検査で8秒を少し超過したことで国産化に赤信号が点灯。そこで9秒に遅らせることにしたもの。
軍関係者は、「当初ROCは敵攻撃した時、瞬発力に避ける最悪の条件を想定したもの」とし「9秒に遅らせても作戦には問題がないと判断を下した」と話した。
「中央日報」より
それは、基準を甘くして採用決定というとんでもない方法だった。第3世代の戦車の中では、K-2に当初求められた性能は決して高いものではなかったが、「そこには目を瞑る。国産化を!」と、やっちゃった訳だ。
もちろん、技術的に解決できない問題というのは、何処の世界にも存在する。だが、採用テストをやってみるまでそれが分からなかったというのはあんまりである。
でもまあ、韓国の誇る最強戦車である。配備されれば、きっと北朝鮮の戦車など物の数にもならないハズだ!(棒)
危ぶまれる国産パワーパック
で、完成したはずのパワーパックだったのだが、何故か(棒)上手く行かない。
韓国の国産戦車部品に欠陥、生産中断へ=韓国ネットからは「つくれないなら国産化にこだわらなくても」の声も
配信日時:2017年3月18日(土) 23時30分
2017年3月17日、韓国・聯合ニュースによると、韓国国内技術で開発したK2(黒豹)戦車のパワーパック(エンジンと変速機)で欠陥が見つかり、本格生産のための手続きが中断している。
「レコードチャイナ」より
どうやら、耐久性の要求仕様を満足できない模様。試験用のスペシャルメイドではなく、量産品は欠陥があっちこっちで出てくる始末。
そして、パワーパックの一部である変速機担当の韓国メーカーは、逆ギレして怒りのクレームをドイツメーカーに入れちゃった。いや、部品供給しているのはドイツなんだろうけど、ハウジングにヒビ入っているって報じられているよね?それ設計の問題だよね。韓国メーカーの責任だよね?
結局、当面はドイツ製パワーパックを使うことで凌ぐこととなった。
2019年2月のニュースでは、既に納品された第1次生産分100両(ドイツ製パワーパック搭載)に加えて第2次生産分80両(ドイツ製変速機+韓国製エンジン搭載)、第3次生産分54両 (ドイツ製変速機+韓国製エンジン搭載) は製造されることが決まったらしい。
前途多難だな。
とうとう国産化(ただし性能と共に値段もディスカウント)
さて、そうこうしているうちに2020年になって国産化の目処が付くような話も出てきた。
何と、性能が要求スペックに満たないので、価格をディスカウントして販売する計画があったというのだ。
基準に満たない戦車向け部品、韓国防事庁が安価買い入れを検討
記事入力 : 2020/07/28 11:20
韓国政府の防衛事業庁(防事庁)が、16年にわたり開発を進めているK2戦車のパワーパック(エンジンと変速機を結合した動力装置)国産化事業と関連して、S&T重工業が開発中の変速機の耐久性基準を70%へ下げる代わりに価格も70%とする案を検討していたことが27日までに分かった。
「朝鮮日報」より
ただ、現状分かっている限りの情報では、加速性能の基準は変更していない模様。同じK2戦車でも性能が違うと、色々と戦略的にも問題は出そうだけれど、ね(注:そもそも要求仕様やテスト環境がおかしいという主張もあって、採用に足るだけのところに漕ぎ着けた状況かもしれない)。
ポーランドに大量に売れる
そんなわけで、K2戦車の開発は紆余曲折を経て、韓国陸軍への配備は始まった。それと並行して輸出戦略が色々練られたのだけれど、しばらくは泣かず飛ばすであった。
ところが、ロシア軍がウクライナ侵攻をした事を切っ掛けに、その事態が大きく動くことになる。尤も、その前から色々な兆候があって、オーストラリアにK9自走砲やらが採用されたり、歩兵戦闘装甲車「レッドバック」が採用に向けて大きく動いたりと、韓国軍の兵器が評価されつつあった。そこへ来てウクライナの隣国であるウクライナにロシア軍が侵略してきた。他人事ではなかったポーランドにとって、軍の近代化は喫緊の課題になった。
ポーランドは1,000両の戦車を購入します。Błaszczak:追加のF-35またはF-15を入手する予定です[インタビュー]
07/26/2022 06:38
現在、F-35に焦点を当てたメーカーの方針により、新しいF-16を入手することはできません。私はこのトピックについてアメリカのパートナーと何度も話し合ってきました。待つことはできず、FA-50の配達は来年配達されると、国防省の長であるMariuszBłaszczakがDefence24.plとのインタビューで強調しています。大臣はまた、技術移転とともに韓国のK2戦車とK9榴弾砲を取得する次のステップについて話します。
「Defence24」より
そこで、ポーランド政府は韓国から戦車を「大人買い」してしまう。いきなり1000両の契約というのはスゴイが、うち800両はポーランド国内で内製化する計画のようだ。
先ずは先行納入分28両がポーランドに届けられ、1次生産分180両が韓国で製造されて2026年中に輸出される段取りになっている。残りの800両は、2次生産分として契約する予定になっている。
また、これを切っ掛けにおそらく韓国陸軍の採用したK2戦車は大きくコストを下げられる可能性が出てきて、更に世界に売れる期待が高くなる。ポーランドに続いてアルメニアとか色々噂は出ているしね。
実際に、韓国大統領はトップセールスで、各国に売り込もうとしているらしい。ただ、韓国国内の戦車製造能力は輸出に耐えられるほど精強ではないので、果たして更にバックオーダーを積み上げられるかは謎ではある。
おかしな事にならなければ良いが、K2戦車の国内配分から10両をポーランドへの輸出に回す決定もあって、配備計画に大きな影響が出るのは避けられないぞ。戦車の老朽化も喫緊の課題として抱えている韓国、果たして、どうなる?
そしてついに国産化を果たす
とまあ、色々と紆余曲折はあったが、どうやら国産化の目処は立って、第4次生産分からの国産パワーパックの採用が決定された。
一応、どんな感じになっているのかまとめておこう。
- 第一次量産計画:2014年にドイツ製パワーパックを搭載した100両の納入開始
- 第二次量産計画:2018年に国産エンジンとドイツ製トランスミッションの組み合わせで、80両の納入決定、2019年より引き渡し開始
- 第三次量産計画:2020年に国産パワーパックを採用し、性能と価格をディスカウントして118両の納入計画が発覚(注:結局、第三次量産計画では、韓国産エンジン+ドイツ製トランスミッションの組み合わせが採用されて製造されている)
- 第四次量産計画:2024~28年で、150両を生産する予定で、国産パワーパックが搭載されることに決定。
ドイツ製のパワーパックが「優秀だった」とはいえ、それは2014年時点の評価であって、それ以降韓国はずっとパワーパックの国産化に尽力した。その結果、第4次量産計画では国産パワーパックの採用に漕ぎ着けることができた。
テストの結果と、採用決定までのプロセスが報道通りであれば、若干不安要素は残したままだと思うが、その辺りは多分修正可能なことだと思う。ここからトラブルが出るのが韓国の真骨頂であるから、油断せずに観察していきたいモノである。
ただ、これで大まかにではあるがK2戦車の国産化は完了したといえ、輸出にも弾みが付くと思われる。そして、海外での使用経験をフィードバック出来れば更に改良できる可能性が生まれるので、改善していけば今度こそ「名品」を名乗っても恥ずかしくない戦車と言えるのではないだろうか。
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