近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
スポンサーリンク

韓国軍が原潜用小型原子炉開発に向け動き出す

韓国海軍
この記事は約6分で読めます。

ネタだと思っていたけれど、本気なのか。

韓国軍が原潜用小型原子炉開発に向け来年陸上試験場建設…「低濃縮ウラン」で制裁回避【独自】

記事入力 : 2024/08/06 16:05

独自報道です。韓国が、じきに原子力潜水艦を持つことができそうです。盧武鉉政権時代から配備を推進してきましたが、同盟国である米国が友好的ではなく、原子力推進のための燃料であるウラニウムを確保するのが難しくて毎回白紙になっていました。ですが、原子力潜水艦のエンジンである小型原子炉の開発のために来年、陸上試験場を作る計画であることが確認されました。

朝鮮日報より

記事にあるように、この計画を思いついたのはノムタン(盧武鉉)であり、その弟子であるムン君(文在寅)が推進した計画である。

ただ、韓国にその能力ありや?というと、これがなかなか厳しい。

スポンサーリンク

建造技術の獲得の途はあるが

悲願の原子力潜水艦

そもそも原子力潜水艦というのは、外洋で使うのが基本である。長時間潜水が可能で速力が出る代わりに、静粛性には通常動力潜水艦に一歩譲る。その理由は、原子炉を停止させることが困難なので、常に原子炉の駆動音(及び冷却循環設備)が出てしまうからである。

一方で、通常動力潜水艦に比べて大きな船体を作り、武器を沢山載せて置けるという点で、「戦略的」な運用も可能である。

だからこそ、島山安昌浩級潜水艦バッチ3(KSS-III計画)では、4000t級の潜水艦に原子力駆動を載せる計画になっている。

原潜用小型原子炉は、ウランの濃縮度が19.75%の低濃縮燃料を使用するといわれています。

濃縮度が20%を超える高濃縮燃料は核兵器製造に使用され得るので、国際原子力機関、IAEAの査察を受けなければなりませんが、低濃縮燃料は対象から除外されます。

朝鮮日報「韓国軍が原潜用小型原子炉開発に向け来年陸上試験場建設」より

そして、その動力に使う小型原子炉の開発をするために、研究施設をつくるというのが今回のニュースの内容である。

ただ、韓国海軍に本当に原子力潜水艦が必要なのか?というと、甚だ疑問ではあるのだが。だって、韓国沿岸海域は浅瀬が多いので、済州島付近にしか原子力潜水艦を展開できないし、潜んでいる場所がわかっている原子力潜水艦など、その存在意義は半減である。

寧ろ、出口付近に待ち伏せされると、容易に撃破される可能性すらある。

韓国海軍における原子力潜水艦の運用の幅はかなり狭いだろうと予想されるのだ。寧ろ、日本海ではなく早々に太平洋に出てしまってから運用すべきだが、韓国軍はそんな長射程のミサイルを持っていないし、核弾頭も持っていない。そうすると、原子力潜水艦を何に使うのかちょっと疑問となる。

韓国のSMR計画

なお、これとは別に韓国ではSMRの計画が進行している。

韓国 2038年までに大型炉とSMRの新設を計画

07 Jun 2024

韓国の産業通商資源部(MOTIE)の諮問委員会は5月31日、「第11次電力需給基本計画」の草案を発表した。草案によると、2038年までに大型原子炉を3基と小型モジュール炉(SMR)を1基建設する計画である。

原子力新聞より

ムン君が大統領だった時代には、どういう理屈か知らないが「原子力発電を止める」と息巻いて、再生可能エネルギー発電100%を目指していたのだが、流石にユンユンが大統領になってからは現実路線に路線変更をしたようだ。

一応、韓国も韓国標準型原子炉APR-1400が開発されて、運用されている。名前こそ「韓国標準型」だが、実態はABB-CE社の開発したSYSTEM80+をベースに拡大設計した原子炉である。第3世代原子炉の中では最も設計が新しいとされている。

2038年までに建設する計画の大型原子炉が、第3世代のAPR-1400なのか、新開発の第4世代原子炉なのかは不明だが、SMRの方はおそらくは第3世代原子炉ということになるだろう。この小型モジュール炉(SMR)は、原子力潜水艦に搭載するためにも流用可能な技術であると思われる。

尤も、韓国の原子力研究機関が、原子炉を1から設計できる能力があるかどうかは不明だ。何かをベースに改良するということはやるかもしれないが、しかし小型化となるとなかなかハードルは高い。

フランス製の原子力潜水艦

ただし、低濃縮ウランを使う原子力潜水艦であれば、現状ではフランス海軍が保有しているリュビ級原子力潜水艦とシュフラン級原子力潜水艦が存在するので、技術さえ移転してもらえればすぐにでも建造は可能である。

実は、シュフラン級原子力潜水艦は、オーストラリア海軍がアタック級原子力潜水艦として採用する予定だったのだが、その計画はどうやら御破算になってしまったようで。したがって、フランスでは原子力潜水艦を輸出するだけの準備が出来ているとも言える。

最近、米国のインド太平洋軍司令官が韓国の原潜配備について公に賛成の立場を表明するなど、米国が友好的なスタンスを示しており、低濃縮ウランの供給源確保にも一部進展があると伝えられています。

朝鮮日報「韓国軍が原潜用小型原子炉開発に向け来年陸上試験場建設」より

あとは、アメリカさえ首を縦に振ってくれれば。

核協議

何故、ここでアメリカが出てくるかといえば、「朝鮮半島から核兵器をなくす」というのが、アメリカと北朝鮮との約束であり、かつアメリカと韓国の間でも核開発に関しては合意がなされている。

米韓首脳、対北朝鮮で拡大抑止強化で合意 潜水艦派遣や核協議グループ新設など

2023年4月27日

米政府は、同国の北朝鮮に対する核兵器使用の計画に、韓国が関与することを認めた。

韓国はその見返りとして、自国の核兵器を開発しないことに合意した。

バイデン氏は、「ワシントン宣言」と呼ばれる今回の合意が、北朝鮮の攻撃を抑止するための同盟国間の協力を強化するだろうと述べた。

尹氏は、ウクライナ戦争や気候変動、サイバー協力、核問題などを話し合うため、国賓としてワシントンを訪問している。

BBCより

そして、2023年には改めてムン君ユンユンはバイデン氏との約束を取り付けているんだよね。韓国が核兵器を開発しない代わりに、アメリカから原子力潜水艦を派遣して寄港させるという約束を。

今回の合意のもと、アメリカは「1980年代初頭以来行われていない、弾道ミサイルを搭載可能な米原子力潜水艦の韓国派遣を含む、戦略資産の定期的な配備を通じて、抑止力をより可視化する」措置を講じることを目指すと、複数当局者は今週、記者団に述べていた。

米韓はまた、核・戦略計画をめぐる問題を議論するための、核協議グループを発足させるという。

BBCより

一応、韓国国内での核開発ができる余地を残した合意ではあるのだけれど、アメリカの本音としては韓国に原子力潜水艦を持ってもらうのは嬉しくない。

ただ、トランプ氏が大統領に当選すれば、この話は容易に覆るだろう。トランプ氏は自国ファーストな大統領になることは確実で、他国のことは基本的に他国が解決すべきだと考えている。この考えは実に正しいが、しかし、アメリカの核の傘という概念はなくなる恐れがある。そしてその考えは原子力潜水艦開発にも繋がっていくだろう。

韓国が容易に小型原子炉の設計、施工ができるとは思えないが、可能性だけならば十分にある。やらかす可能性のほうが高いと見てはいるが、不可能ではないだろう。

コメント

  1. arere より:

    〉〉2023年には改めてムン君はバイデン氏との約束を取り付けている

    上記記載ですが、『ムン君』ではなく『尹錫烈(ユン君)』ではないでしょうか?

  2. 河太郎 より:

    素直な感想。
    また始まった……。なにか一つきちんとモノにしてから進むという事を知らんのですかね??
    国際情勢とか抜きで、また……と思ってしまいました。

    • 木霊 木霊 より:

      バッチ1が燃料電池、バッチ2がリチウムイオン二次電池、バッチ3が原子炉搭載ですから、韓国の意欲は留まることを知りません。
      ……何がしたいんでしょうね?

  3. 砂漠の男 より:

    国際常識として信じてはいけないこと:
    支那「できました!」
    半島「できます!」
    日本「できません」

    トライ自体は否定しませんよ。
    あとでナイストライ!というだけです。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ・韓国の身の丈(領海の広さ&予算)に全く見合わない
    ・戦術、戦略的に必要性がない
    この2点に尽きるわけですが……
    まあ、「チョッパリを皆殺しにするには絶対に必要ニダ!」なんでしょうね。
    普通の頭があれば、どうやって北を
    ・おとなしいまま死なせてそれから統合するか
    ・万一の暴走に備えて、火砲の射程から重要機関を逃がす
    方を優先すべきと考えると思うのですが……それが出来たら朝鮮じゃないですが。

    正直、やれるもんならやってみな、なんですが、浅い海で核廃棄物増やされるのは勘弁ですね。
    ※ポータブル炉の技術を狙ってるだろうけど、絶対に渡しちゃダメ。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      バッチ3を原子力潜水艦にしたとして、これを低濃縮ウランタイプにすると、10年で燃料の交換を行う必要があるんですが、それをやれるノウハウはないし、技術があるかも不明です。何しろ、潜水艦をぶった切った上で、燃料交換後にもう一度くっつける必要があるわけで。
      そして、その為にえらくコストがかかるわけですが、それを踏まえてデカイ潜水艦作る気なのかは、ちょっと問いただしてみたいところですね。

      • 七面鳥 より:

        >潜水艦をぶった切った上で、燃料交換後にもう一度くっつける

        進水直後は、まあそれなりに何とかなるとは思うのです。
        リアクター回りはともかく、それ以外はおおむね規制技術の寄せ集めですから。
        ※蒸気タービン推進とか無茶言わなければ。おとなしく発電してモーター回していれば。
        問題は、ご指摘の通り、燃料入れ替えの後ですね。十年程度先の話とは言え、その頃にその予算をどこから引っ張るのか、そしてなにより、そんな大手術した潜水艦がまともに再進水できるのか……

        日本海で真ん中からポッキリ、は、絶対に止めて欲しいです。

  5. 匿名 より:

    日本が持っていないモノを持つことで、虚栄心を満たしたいのでしょう。
    どう運用するか?とか、必要性?は、考えていないと見ます。
    ただ、なり行きを楽しむのが良いです。

    • 木霊 木霊 より:

      楽しめれば良いのですが、実際に使えるものが出来上がってしまうと、自衛隊としても対処できるような体制を考えねばならないわけで。
      今は味方のような顔をしていますが、本質的には敵になり得ると考えて対応する必要があります。