偶には嬉しいニュースもね。
日本版GPS衛星「みちびき」H3ロケット5号機で打ち上げ成功
2025年2月2日 22時14分
スマートフォンなどの位置情報の精度を高める日本版GPS衛星「みちびき」が、2日午後、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケット5号機で打ち上げられ、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功しました。
NHKニュースより
めでたい。
H3ロケットとみちびき
H3ロケット打ち上げ成功
H3ロケットの打ち上げだが、1号の打ち上げ失敗(2023年3月7日)から、4号の第2段エンジン不具合等、不安なニュースが多かっただけにメディアを中心にネガティブな指摘が多かった気がする。
そういえば、4号の時の話は記事にしていなかったな……。
H3ロケットはおととし1号機の打ち上げに失敗し、対策を講じたあと、今回の5号機まで4機連続で成功しました。
NHKニュース「日本版GPS衛星「みちびき」H3ロケット5号機で打ち上げ成功」より
何にせよ、無事に打ち上げ成功できて何よりである。
H3ロケットに関して言えば、コストダウンへの道はまだ半ばなので、もうちょっと頑張って欲しいところ。1号機から5号機までの型式は「H2-22S」というものだが、コストダウン版は「H3-30」で、30形態と呼ばれているのだが、1号機の失敗を踏まえて令和7年度まで計画が後ろ倒しされている。つまり、今年中に30形態の打ち上げが試される予定になっている。
今後に期待したいのと、先ずは実績の積み上げを続けていって欲しいと思う。
みちびきとGPSの違い
さて、記事では「日本版GPS衛星」と書かれているが、ちょっと正確ではない。
みちびき(準天頂衛星システム)とは、準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムのことで、英語ではQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)と表記します。ただし、「準天頂衛星」という場合には、準天頂軌道の衛星と静止軌道の衛星の両方を合わせて呼ぶため、準天頂軌道の衛星を区別する必要がある場合は「準天頂軌道衛星」といいます。
みちびきのサイトより
GPSの仲間には違いないが、GPS(Global Positioning System)とは異なる軌道を通る人工衛星で衛星測位を行うことが出来る。GPSはる全地球測位衛星システムなのに対して、みちびきはQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)と呼ばれる


軌道が異なるので、測位する地点が異なる。
みちびきの準天頂軌道は、南北非対称の「8の字軌道」になり、北半球に約13時間、南半球に約11時間留まり、日本付近に長く留まる。これにより、GPSより精度の良い測位データが得られることになる。
そして、GPSとの互換があるので、日本ではGPSデータに加えてみちびきのデータを使うことができ、格段に精度の良い測位データが得られる。
GPS利用の精度は誤差10m程度(民生用)だとされていて、スマホなどは他の電波も利用してこの誤差を数m程度に抑えている(注:GPS衛星の更新により、現在は更に精度があがっているとされている)。
みちびきの利用により、この誤差を0.5m以下に抑えることが可能となるとされている。
この機能が将来、みちびきのすべての機体に搭載されれば、精度が飛躍的に向上し、スマートフォンなどで位置情報を受信した際の誤差が現状の最大10メートルから1メートルまで改善されるということです。
NHKニュース「日本版GPS衛星「みちびき」H3ロケット5号機で打ち上げ成功」より
NHKでは1m程度ということにしているけれども、公式サイトではもう少し精度の向上が期待できるとされている。「センチメータ級測位補強サービス」と説明されているけれども、専用の受信端末であれば(スマホなどで使う想定ではない)誤差数cmで測位を行うことが可能となる。
スマホの場合は誤差1m程度だけれども、これまでのようにビルの影などに入って位置情報を失う頻度が低くなるので(建物内やトンネルの中は無理)、一般人も恩恵にあずかることが可能だ。
7機体制に
そして、今年はこのみちびきの打ち上げを更に行い、高精度の測位データが得られるようになる予定である。
ロケットに搭載された「みちびき」は、GPSのような位置を特定する機能を持つ人工衛星で、現在は日本付近の上空で4機体制で運用されていて、スマートフォンなどの位置情報の精度を高めるために使われているほか、電波が通じない場所での緊急地震速報の配信などにも役立てられています。
政府は今回の衛星を含む3機を新たに打ち上げ、現在の4機体制を7機体制に拡充して運用する計画で、実現すれば海外の衛星に依存せず、日本の衛星だけで位置情報を提供することが可能になるとしています。
NHKニュース「日本版GPS衛星「みちびき」H3ロケット5号機で打ち上げ成功」より
スケジュール通りに行けば、令和8年度中に7機体制に持ち込むことができる。

まあ、5号機の打ち上げ予定は少し遅れたんだけれど、7機体制になるとGPS信号の高精度化の他にもう1つメリットがある。それはGPS衛星に頼ることなく位置情報の取得が可能となることだ。みちびきだけで位置情報の取得ができるので、GPS衛星を通じて位置情報が漏れるという心配をしなくて良いという意味でもある。
というわけで、今年のロケット打ち上げはいつもよりもうちょっとだけ期待できそうだ。
追記
コメントで指摘頂いて気がついたのだけれど、みちびきにはデータ通信機能も備えられている。

防災機関から発表された、地震や津波発生時の災害情報など、危機管理情報について、みちびき経由で送信するサービスです。このサービスは、サブメータ級測位補強サービスと同じくL1S信号を使用し、4秒間隔で災害情報などを送信します。
みちびきのサイトより
これに類する情報ツールとして、安否確認にも利用出来るシステムもある様だ。

衛星安否確認サービス「Q-ANPI」は、災害時における、避難所の情報をみちびき経由で管制局に送信し、収集する手段として利用できます。みちびきのうち、静止軌道に配置している衛星で利用することができるサービスで、「Q-ANPI」に対応したS帯の端末で利用することができます。ただし、このサービスは日本国内及び沿岸部限定のサービスです。
みちびきのサイトより
未だ整備が進められている最中のような印象ではあるが、こうした取り組みにも使えるツールという意味では、頑張って打ち上げを続けて欲しいと思う。
コメント
まだコストダウンした本来のH3エンジンじゃないようです
別ネタ
インドのテジャス戦闘機用F414-GE-INS6エンジンの納入が2年遅れている
部品を製造していた韓国企業の破綻が原因
そうなんですよね、H3-30のエンジンは未だ完成していないというか、搭載出来ていないというか。
今年、打ち上げるロケットに30形態のエンジン搭載するとされているんだけれども、多分、みちびきを優先する気がするので、先送りになりそうですね。
テジャスの方は調べてみたいと思います。
今日は。
移行はスムースにできたようで、おめでとうございます。
H3ロケット5号機打ち上げの実況を見ましたが、安定していましたね。雲が多くてすぐに隠れてしまいましたが。以前の打ち上げですと、一段目の切り離しやフェアリングの切り離しなど、搭載カメラで中継していましたが、最近はやらなくなったようで少し残念です。
今後、”みちびき”による位置精度が上がれば、将来的に車両の自動運転などに使われていくのでしょう。”みちびき”だけで運用できればすばらしいですね。
こんにちは。
結果的にはスムーズだったようですが、上手く行くかは掛けでしたよ(汗
さておき、H3の5号機は安定して飛んでいきましたね。
打ち上げ成功が当たり前になると、ニュースにもならなくなってしまうのは残念な部分はあります。が、その積み重ねが大切です。
そして、みちびきが正常に機能することが確認されましたから、いよいよ位置精度向上というところを目指せることになりましたねぇ。みちびきだけの運用が視野に入ったのも、防衛面から考えて良かったと思います。
>電波が通じない場所での緊急地震速報の配信などにも役立てられています。
どうやらデータ通信もある程度可能らしいのが心強いですね。
台湾有事では、海底ケーブル切られまくるでしようから
そう見ると、H3は打ち上げペイロード6トン越えの凄い宇宙ロケットなのに、何故に「みちびき 」だけ?
と思ったら みちびきも5トン近い超ヘビー級衛星でしたか(^^;
スペースXのSTARLINK衛星は200kg強で単純計算だとH3では20機以上 上げられるし、
台湾有事を睨むなら、買って来て みちびき と混ぜて上げるのも、手かも知れませんね。
あ もちろん買って来て、日本仕様・みちびき通信中継機に改造し、H3で混ぜて上げる。です。
運良ければソフトウェア変更だけで可能だろうし。
データ通信の性能に関してスルーしていたので、追記させていただきます。
確かに重要な視点ですね。
そして、みちびきさんが重いのは勘弁してあげて欲しいです。
色々な機能を詰め込まれていますからね。
スターリンク衛星に関しては、打ち上げ高度が違うのと、ポイントが違うので何とも。
ただ、日本でもコンステレーション整備はゆっくりですが進んでいるようですよ。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/121900332/121900003/