喜ばしいニュースが報じられたので紹介しておく。
H3ロケット3号機、種子島から打ち上げ 国のレーダー衛星を搭載
2024/7/1 12:13
日本の次世代主力ロケット「H3」3号機が1日午後0時6分、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられた。打ち上げから約16分後、災害時の迅速な状況把握などに活用する国の先進レーダー衛星「だいち4号」を軌道に投入する。順調にいけば、H3による国の重要な大型衛星打ち上げの初成功となる。
産経新聞より
1号機打ち上げ失敗の時には、なかなかのお通夜ムードになったけれども。
順調に実績を積み上げる
2回目の成功
前回の2回目の打ち上げ成功の時にも記事にしたけれども、コストが下げられるという触れ込みで開発されたけれども、テストが疎かになった部分があって、1号機は失敗してしまった。
今回の打ち上げ成功で、コスト的にはどうだったのか気になるところではあるが。
H3は、現在の主力ロケットH2Aの後継。衛星打ち上げを望む企業などの使いやすさを重視し、打ち上げ費用や組み立て期間をH2Aの約半分に抑えた。
産経新聞より
この辺りはまた報じられるかも知れないけれども、前回の失敗を受けてしっかりと技術的な改善ができたのではないかと。
この調子で実績を積み上げていって欲しいと思う。
正常に分離
えーと、探したらもうちょっと詳しい記事があったので、そちらも紹介していこう。
H3ロケットの打ち上げ成功、「だいち4号」分離…実用化に大きく前進
2024/07/01 12:27
日本の新たな大型主力ロケット「H3」の3号機が1日午後0時6分頃、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。
~~略~~
発射から約16分後には目標の高度613キロ・メートル付近に到達し、だいち4号を分離した。
讀賣新聞より
だいち4号は無事に分離出来た模様。

……これは、多分想像図だな。
大地4号はLバンド(波長24cm)を使って観測するとのこと。

そうすると、地表面の観測精度が上がるよ!やったね!
なお、デジタル変換技術を使うので、観測範囲を広げることも出来るという。これが、どういう展開が出来るかは不明だけれども、単純に探知が範囲が広がるので観測回数が単純に増やせるというメリットは出るようだ。

これによって、災害発生時における判断が迅速化できるという事になったので、復旧作業などにはプラスになるだろう。
そうそう、だいち4号にはもう1つ特筆すべき機能があった。
AISとは、300トン以上の船に搭載が義務付けられている装置で、船の種類や位置などの情報を電波で送受信するシステムです。現在の衛星搭載型のAIS受信機は、船が混雑していると、電波が混みあって受信できなくなってしまう問題がありました。「だいち4号」では、この課題を改善する新開発のAIS(SPAISE3)を搭載し、SAR観測と連携して、船舶の航行安全に貢献します。
JAXAのサイトより
AISは航行支援システムで、だいち4号によって混雑状況を改善できるという。これが結構大切な話ではあるが、どの程度改善するのかは良く分からない。ただ、船舶の航行の安全に資する話なので、重要である。
メインエンジンのみの運用は見送り
ただ、ちょっと気になる情報もある。
また「H3」では、これまで日本の大型ロケットで活用されてきたメインエンジンと、機体両側にある補助ロケットの両方を使う形態での打ち上げだけでなく、メインエンジンのみを用いた打ち上げも可能な設計で、コスト削減には欠かせない要素となっています。
JAXAはメインエンジンのみを用いた打ち上げを当初3号機から計画していましたが、初号機の打ち上げ失敗の影響で、今回は見送り、今後実施する見込みです。
NHKニュースより
メインエンジンのみで飛ばして安くなるという触れ込みもあったのだが、3号機での実施は見送った模様。
うーん、ちょっと残念。
「みちびき」打ち上げの予定
さて、5号機が打ち上げられる予定になっている「みちびき」だが。
H3は今年度、日本版GPSと呼ばれる準天頂衛星「みちびき」を打ち上げるほか、来年度以降も月極域の水資源を探る探査車など、日本の重要な科学ミッションや安全保障に関わる衛星などを宇宙に送る予定だ。
讀賣新聞より
今年ようやく5号機打ち上げだが、みちびきは7基体制で運用される前提の衛星である。
今まで5基打ち上げて1基が引退している(初号機が引退)ので、いま4基体制なんだよね。
頑張って打ち上げて欲しいと思う。今のところスケジュールは発表されていないモノの、恐らくは台風シーズンが終わった11月頃の打ち上げになると思う。きらめき3号(順番的には「みちびき」の前に打ち上げられる予定である)との関係がどうなるのかはちょっと不明だ。
今回の打ち上げでだいち4号が衛星軌道にのり、更に実績を積み上げて行ければ、H2ロケットに代わるロケットとしてH3ロケットの運用をして行けるということになる。
何にせよ、喜ばしいことだね。
コメント
今後、H3型の運用が日本の宇宙開発分野に大きな貢献をすることは間違いないですね。
さらに、↓の解説ではサラリと記述されていますけど、行間を読めば「だいち4号」衛星は、
防災・減災分野だけでなく、軍事・安全保障分野にも大きな潜在能力をもっていることが
分ります。(某国のロケット花火も観測できそう。)
https://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c2406_2.html
「だいち4号」を軍事利用する必然性は然程ないのでは?と思っています。
とはいえ、「できるけどやらない」というのと「できない」では天と地ほどの差があるわけで。国内でのおかしな動きがないかをチェックするのには使えるのかも知れませんね。
そうでしょうね。
運用体が(たぶん)JAXAなので、将来は知りませんが、JAXAが自衛隊の領分に踏み込むことはないでしょう。
いつもの「できるけどやらない」で、周辺国や米国への陰圧にはなる、というところでしょうね。
これって固体燃料ロケットですよね?
てことは、いちど点火すると、燃焼出力の制御ができない?
兵器としての転用はムリ?
だとすると少し残念です。こいつに核弾頭と誘導装置をつけて……とか夢想したのですが。
ただ植生を透過して観る衛星は凄いですね。ユカタン半島でレーザー搭載のドローンを用いて、伝説の古代都市Zを発見した考古学チームがあります。まぁ麻薬ゲリラの拠点なので、探査はしたが発掘はムリぽいですが。
ジャングルの密な植生を透過して、伝説の猿神神殿を発見したように、こうした透過能力を使えば、いろいろと国防用に転用できる気がします。
横合いから……
ブースターは固体ですが、主エンジンは液体です。
H2の「高効率だが気むずかしい」LE-7 二段燃焼サイクル型から、H3は「効率はちょっと下がるけど安くて簡単」なLE-9 エキスパンダブリードサイクル型に変更されてます。
なお、H2のブースタ、SRB-Aはそれ単独で固体燃料ロケット「イプシロン」としても利用されてましたが、同様に、H3のブースタのSRAB-3は「イプシロン-S」として利用されるとのことです。
「イプシロン」は数々の衛星を打上げた、実績のあるロケットで、この転用と実績も充分に誇るべき成果だと思ってます。
……兵器転用?やだなあ、そんな事は……(軌道に乗せるなら500kgくらい、打上げて落とすだけなら1.5t位までイケるみたいです)
いえいえ、液体燃料ロケットですよ。
ブースターは……って、七面鳥さんが既に書かれていましたね。
兵器転用がどうかという観点は、ここでは余り重要ではないと思っています。
宇宙開発に継続性があるかという話であり、宇宙開発を継続できる限りは、軍事利用への門戸が開かれ続けるという……。ああ、やっぱり兵器転用の話になってしまいました。でも、極限領域での運用ですから様々な面での恩恵はありますよね。
先ずは打ち上げ成功は本当に喜ばしいことです。
スペースX社のファルコン9の第一段モーターは再利用することでコストダウンを図る設計だそうです。第一弾が打ち上げ、分離後に射場に戻ってくる動画は巻き戻しを見ているかのような正確性です。ファルコン9も課題が多くあるようですが、H-3が今後のロケット競争に勝ち残れるか、それとも大きな路線変更を強いられるか?コストダウンへのアプローチが大きく違うロケットですが、国産品を今後も応援したいところです。
単純にロケット打ち上げが成功したというだけで嬉しいですよね。
流石に、資金力で勝るアメリカに比肩しうるとは思えません。
ですが、ローコスト競争の面では日本に適正がありますので、是非とも頑張って欲しいところだと思っていますよ。