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共食い整備が恒常化している韓国空軍のF35A

韓国空軍
この記事は約6分で読めます。

予想されていたことではあるんだけど、記事を読むと意外なことも匂わせていて、案外なんとかなっているという印象だ。

[単独]戦力化5年しか経たないF-35Aの「部品交換」350件余り—正常稼働に支障

2024.8.14 06:00

領空防衛の核心戦力として空軍が戦力化してから5年しか経っていないF-35Aステルス戦闘機の部品調達が円滑に行われず、他の航空機から部品を抜き取って装着する「部品転用」が深刻であることが分かった。

Daumより

F-35Aの部品調達に関しては、アメリカ空軍も意外に苦労しているみたいだし、仕方のない面はあるんじゃないかな。ただ、「部品転用」している理由は多分別だぜ。

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運用の難しいステルス戦闘機

整備問題を抱えるF-35A

韓国空軍のF35Aに関しては、過去にもいくつか記事を書いている。

F-35Aという戦闘機は、これまでの戦闘機とはちょっと違う感じの扱いになっていて、整備の事までしっかり考えないと運用できないことになっている。

もちろん、全般的に航空機の整備というのは非常に重要なことなのだが、F-35Aに関しては重整備拠点(数年に1度の割合でエンジンの定期検査や分解・検査整備、改修などはMRO&U(Maintenance Repair Overhaul and Upgrade)施設と呼ばれる整備拠点で行う必要がある。)が定められていて、現在、世界に4箇所しかない。

  • アメリカ:テキサス州フォートワークス工場
  • イタリア:ピエモンテ州ノヴァーラ県カーメリ工場(MRO&U拠点でもある)
  • 日本:愛知県小牧市三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場(MRO&U拠点でもある)
  • オーストラリア:ニューサウスウェールズ州ニューカッスル工場(ウイリアムズタウン空軍基地近く)

ただし、予定としては、イギリス、オランダ、ノルウェー、そして韓国にもMRO&U拠点が設置されるという報道はあった。

巨大なサプライチェーン

このようにきっちりと整備拠点を配置する理由は、ただでさえ高騰しているステルス機の維持コストを低下させる目的があるからだ。

ALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment)と呼ばれる後方支援システムを採用することで、しっかりとしたサプライチェーンを構築して部品を過不足なく届けようという発送になっているのだが、この話は日本においてはちょっと厄介であった。

そこで、安倍政権が法改正をして武器輸出の例外扱いをすることでなんとか解決。

F-35戦闘機搭載エンジン部品を米国Pratt&Whitney社向けに初出荷 ~防衛事業におけるグローバル展開を強化~

2024年05月30日

IHIは,航空自衛隊でも運用されている最新鋭戦闘機「F-35」に搭載される「F135エンジン」の構成部品の一つである第1段ファン一体型ローター(*)(以下「本部品」)のグローバル向け量産初品を,相馬工場(福島県相馬市)で製造し,米国Pratt&Whitney社(プラットアンドホイットニー,以下「P&W」)に向けて4月26日に出荷しました。

IHIのサイトより

そして漸く今年になってその実績が出来た。

話は少し逸れたが、日本でも苦労している部品関連のアレヤコレヤに関して、韓国は今のところMRO&U施設を手に入れていないので、整備にも苦労することになるのは自明なのである。そう、F-35Aを運用するためにはこのサプライチェーンに組み込まれる必要があるのだ。

共食い整備は恒常化

で、実際に「部品転用」をしているとのことだが、俗に言う「共食い整備」をやっているという意味だ。

平均年間航空機1台あたりに発生する同類転用は、2019年0.8件(40台x0.8=32件)、2020年3.4件(40台x3.4=136件)、2021年1.1件(40台x1.1=44件)、2022年0.6件(39台x0.6=23.4件)、2023年2.4件(39台x2.4=93.6件)、2024年7月までに0.6件(39台x0.6=23.4件)となる。年間発生件数に換算すると、5年間で合計352.4件の同類専用が発生することになる。

同類転用とは、航空機部品の需要が発生した際に、稼働していない他の航空機の同一部品を抜き取り、それを差し込むことをいう。簡単に言えば、A航空機が故障した時、B航空機から部品を取り出し「共食い整備」をしたという意味だ。

Daumより

合計350件の共食い整備が確認されているってな報告なのだけれども、上述したような事情があるので、ある意味仕方がない。

これに対し、空軍の関係者は「F-35Aは20万~30万個の部品で構成されており、非計画的な故障が発生した場合、調達期間が長期間かかり、簡単に購入できるものではない」とし、「整備中の航空機の同一部品で同類専用後、整備を実施しなければ、欠陥部品を確保するまで適正稼働率を維持することができない」と話した。

Daumより

部品のストックも容易ではないんだよね。一国で出来るような話ではないので、こればかりは韓国が手抜きをした結果だというわけではないのだ。

とはいえ、どういった部品を転用しているのかは不明だが、自国で共食い整備は出来るということははっきりした。恐らく、エンジン部品などの転用も可能なのだろうけれど、しかし、F-35Aの部品には全て個体識別番号が付されていて、認識する仕組みになっているはずだ。

それ故に、ALGSで管理が可能ということになるのだが、共食い整備しちゃった場合はどうなるんだろうか?

センサー・フュージョンなるシステムも採用しているので、完全に一致する部品を転用しないと色々不味い気もするのだが。

予定通り2027年に済州島にMRO&U拠点が作られると、部品のストックももう少し余裕ができる可能性はあるが、それまでは今のような運用を続けざるを得ないのかもしれない。

だが、実は韓国空軍の運用するF-35Aは故障もかなり多い事がわかっている。

その原因ははっきりしないが、運用そのものに何かしら別の問題を抱えている可能性はありそうだね。

F-35Aだけではない

ただ、この話は何もF-35Aだけにとどまらない。

それだけでなく、戦時作戦統制権転換の必要条件である監視偵察分野の核心戦力として、2019年12月から4機を導入し運用中のグローバルホーク(RQ-4)も修理部品の確保が難しく、同類専用が頻繁に行われているという。

Daumより

記事にグローバルホークの話もちょこっと出ているが、こちらのグローバルホークは実はアメリカ本国でも運用が見直されて、2027年会計年度までに前記退役させる計画が発表されている。

つまり、部品調達においてかなり不利な条件になりつつあるという意味だ。

日本は3機、韓国は4機導入しているのだが、ブロック30というアメリカ空軍では既に2022年に全機退役しているバージョンである。ブロック40との共通部品は多いが、部品の供給に難があるという点では同じである。

外国の兵器を採用すると、常に付いて回る問題ではあるのだが……、予定通りの運用ができないという意味でも、戦力維持に疑問符がつきまとう。日本も努力しているとはいえ、似たような問題を抱えているのは事実なので、頑張って解決すべき問題なんだろうと思う。

ただ、日本が韓国と手を組むという選択肢はナシだな。

コメント

  1. 玄米茶 より:

    >F-35Aの部品には全て個体識別番号が付されていて、認識する仕組み
    個体識別番号が一致しない機体の重整備をやってくれるところはあるのだろうか? ゲーム機とかPCとかの「このシールを剥がしたらメーカー保証の修理は受けられませんよ」ってのと同じで、整備拠点以外で部品を換えてしまったら、もう正規の整備は受けられないような気がするのですが……。つぎはぎ機体をこっそり正規整備するために、韓国にMRO&U拠点を設置しようとしているんでしょうかね

    • 木霊 木霊 より:

      この点、ハッキリはしないのですが、あまりきっちりと個体識別番号の不一致を問題にしてしまうと、現場レベルでどうにもならなくなるはずなので、かなり甘く設定が為されているとは思います。とはいえ、管理しなくて良いという意味にはなりませんし、型式不一致のチェックがどうなっているのかも不明です。
      ブラックボックスを開けてしまう韓国の悪癖は今も続くようですが、流石にこれでやらかすと更に部品供給が滞ることになると思うので、多分やらないと思います。でも、韓国だからなぁ。
      MRO&U拠点の設置は、ある程度纏まった数のF-35Aを運用するのであれば必須であると思いますから、ツギハギ機体を隠すという意図は多分ないとは思いますが、悪用はするのでしょうねぇ。

  2. 匿名 より:

    壊れた部品の始末が気になる。
    本中華方面に廃棄していそう。
    共喰いだと、廃棄記録が誤魔化せそうだから。
    米国にバレたらお仕置きかな。

    • 木霊 木霊 より:

      壊れた部品の廃棄は確かに気になりますね。
      支那に売りつけている可能性は十分にありますが……。
      アメリカもある程度は韓国の行動を織り込んでいるとはいえ、許すかどうかはまた別の話ですからね。

  3. きたやまひと より:

    今日は。
     定期的に交換が必要な部品もあるでしょうし、況してや故障した部品の交換も加わると、作戦可能な機体は、相当、減っているでしょうね。重整備やアップグレードの時期も迫っており、置物だらけになりそう。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      定期点検と定期交換という話を考えると、MRO&U拠点がない国家がF-35を運用しようというのは色々と不都合なんですよね。
      実際、韓国で使えるF-35Aは40機中半分もないという噂を聞きます。
      KF-16の改修にあたっても、随分と揉めたみたいですしね。
      (当初、KF-16の近代化改修を受けたBAEは、送られてきた機体を見てびっくりしたと言います。予定されていた範囲意外のメンテナンスが必要で、とても見積もりで出した金額で収まらないと。追加請求をしたら韓国側に逆ギレされて喧嘩別れという事態になったみたいですね。裁判はどうなったのでしょうか?)

  4. 匿名 より:

    北朝鮮相手にF35なんて必要ないでしょう。
    北の空軍相手にステルス性能は宝の持ち腐れでは?
    見栄で持っている最新鋭機だから、稼働率は御愛嬌。
    買ったことで目的達成。
    あんなの飾りです。

    • 木霊 木霊 より:

      ソレを言っちゃうと、この時点でこの話は終了なんですよね。
      正直、北朝鮮と戦争中なのに、なぜステルス戦闘機が必要なのか僕にはさっぱりわかりません。優先すべきはKF-16辺りだと思いますよ。

  5. 七面鳥 より:

    こんにちは。
    遅刻コメント失礼します。

    共食い整備自体は、どこの国でも大なり小なりやってるはずで、ある程度は当たり前の部分がありますが……
    韓国ちゃんのは、そもそも予備エンジンも買ってないという。なんたる豪気!そこに痺れry

    そもそも論として、F-35のエンジンは常に過負荷で寿命が短くて問題になってますから、この件は、これからじわじわと韓国空軍の首を絞めるんじゃないかと思います。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      製造国のアメリカですら、共食い整備やっていることがあるようですからねぇ。
      日本も例に漏れずで、問題は部品取りされた機体どこまで放置されるか?なんだと思います。
      そういう意味では韓国さん、予備エンジン1基だけという意味分からない強気の選択をしていますから、どうするのやら。