先日の続報なんだけれど、楽韓Webさんのところでも扱ってたな、このネタ。
韓国で相次ぐ地盤沈下、対策人員はわずか12人…探査装備も不足のまま
2025年3月31日 10:00
直径20メートルの巨大な地盤沈下がソウル市江東区で発生し、30代男性が命を落とすという重大事故が起きた。地下の安全に対する国民の不安が高まっているものの、これを管理する人員や予算が著しく不足しているという現実が明らかになっている。
AFPより
機材が足りない、人材が足りない、やる気がないと。
起きるべくして起こった
シンクホール大国
先日のニュースがこちら。
簡単に纏めると、以下のように。
- ソウル市江東区の道路でシンクホールが発生
- 通行中のバイクと車が被害にあい、バイクの運転手は死亡
- 原因究明を!
とまあこんな感じだったのだが、以前も言及したように、韓国におけるシンクホール発生は非常に多い。
最近5年韓国957カ所でシンクホール発生…面積は2.9㎢、汝矣島に匹敵【独自】
記事入力 : 2024/09/18 14:05
ソウル市西大門区延喜洞の城山路近くで8月30日午前8時40分ごろ、道路の沈下が発見され、交通が規制された。前日のシンクホール(地盤の落ち込み)の発生で、運転手2人が重傷を負った地点から約30メートル離れた地点だ。
~~略~~
韓国国土交通部(日本の省庁に相当、以下同じ)によると、全国に毎年100以上のシンクホールが発生している。2021年には142個、22年には177個、昨年は161個が発生した。ここ5年間で発生したシンクホールは計957カ所で、毎月16カ所ずつ発生していることになる。
朝鮮日報より
だいたい、2日に1箇所か3日に2箇所の割合で韓国の何処かにシンクホールが発生している計算になる。
このブログでも幾つか取り上げているね。
結構前から問題になっていたハズなんだ。だが、人材は少ないらしい。
国土交通省によると、現在、地盤沈下に対応するために設置された国土安全管理院の専任チームは、わずか4チーム12人しかいない。地盤探査機材も、道路用車両3台と狭小地域対応用6台の計9台しか保有しておらず、全国で相次ぐ事故に対応するには明らかに不十分な水準だ。
AFP「韓国で相次ぐ地盤沈下、対策人員はわずか12人」より
3日に2件なら、4チームでも十分!ということなのだろうか?調査は直ぐに終わると言うことなのかな(錯乱)。いやいや、シンクホールが発生する前に調査が必要だから、この理屈はおかしい。
日本でも調査の手が足りないと嘆いているけれど、それの比ではないね。
地下安全管理に関する特別法
韓国政府は、取り敢えず法律は作っていたらしい。
政府は2018年に「地下安全管理に関する特別法」を施行し、深さ10メートル以上の掘削工事に対し事前の地下安全影響評価を義務付けた。また、老朽化が進む地域や道路の地盤に関する共同調査も義務化された。
AFP「韓国で相次ぐ地盤沈下、対策人員はわずか12人」より
でも、人員や装備にお金を使うことはなかった。
2018年といえば、ムン君が大統領をやっていた時代(2017年5月~2022年5月)なので、景気対策として公務員を大量に採用(老人を中心)していたハズだ。
人手だけなら十分確保できるレベルだったのに、実際にはそういった調査にお金を注ぎ込むことはなかったし、地下インフラの整備もやらなかった。
ここ5年で発生したシンクホールのうち、半数以上(57.4%)が上下水道管の損傷などにより発生した。主に古いパイプから水が漏れ、土砂が流失し、道路が崩れたのだ。環境部によると、全国の上下水道管は延べ40万キロに及んでいる。このうち老朽管は約7万2500キロと、全体の18%に上っている。
ソウル市は市内の老朽上下水道管の交換や洗浄に3兆ウォン(約3200億円)近い予算がかかると推算している。檀国大学土木環境工学科のキム・ドゥイル教授は「上下水道管は都市インフラの中心」とし「今後シンクホールによる事故を防止するためにも、予算を優先的に編成しなければならない」と警鐘を鳴らす。
朝鮮日報「最近5年韓国957カ所でシンクホール発生」より
分かっていても出来なかったのか、やる気がなかったのか。
国土安全管理院はこれら地下安全管理事業を担い、自治体の要請に応じて地盤共同調査を支援する。しかし、調査人員や装備の不足から点検までに時間がかかり、同院の「地盤災害探査現況」によると、自治体からの調査要請に対する実施までの平均所要日数は220日に上る。
AFP「韓国で相次ぐ地盤沈下、対策人員はわずか12人」より
調査も間に合ってなかったようなんだが……。
2024年の地下安全統計年報によると、過去5年間に光州、蔚山、大田、全北などの自治体で実施された地中レーダー(GPR)による共同調査は年間100件未満にとどまっている。
地下安全法の施行規則では、GPR調査は5年に1度の実施義務しかないため、調査頻度が低すぎるという批判が絶えない。毎年1回以上実施が義務付けられている目視調査では、精度が劣るという問題も指摘されている。
朝鮮日報「最近5年韓国957カ所でシンクホール発生」より
まあ、調査をやっても修理する工事に使うお金の余裕がないので、韓国政府としてもなかなか痛し痒しということかもしれない。
放置
なお、今回の事故に関しては、道路沈没を確認していても、補修していなかったらしいので、何というか「調べてもねぇ」とは思う。この辺りは楽韓Webさんのところでも言及されているけれど。
[単独]国土部、4ヶ月前明日洞シンクホール周辺で「路面沈下」を確認
入力2025.03.27 午後7時42分
政府がソウル江東区明洞明一洞で大型シンクホール(地盤沈下)が発生する4ヶ月前に実施した安全点検の際に、道路が陥没する「路面沈下」現象を発見したことが確認された。路面沈下は代表的なシンクホールの前兆現象として挙げられる。シンクホール発生の危険性が検出された後も、政府とソウル市の積極的な事故予防措置が行われなかったという指摘が出る。
NAVERより
危ないところが多すぎて、対策に手が回っていなかったのか、そもそも工事するお金が工面できなかったのか。
管理院では、地下空洞(穴)が発見されなかったことを理由に、点検結果を「異常なし」と結論付けた。 また、「路面沈下区間の下部の地盤状態は良好であることが調査された」とし、「路面沈下区間は注意観察を行い、必要に応じて安全対策を行う必要があると判断される」と警告措置した。
NAVERより
うーん。

そもそも、この写真を見ると、道路に横ヒビが幾つも走っている。これって、崩れたから出来たわけではなくって、凹んできたから入ったヒビだと思われるので、コレだけでも結構危うい状況だった疑いがある。
手前の人が二人写っている右側にもくぼみっぽいモノが目視で確認できる。
分かっていて放置していた可能性が高いのだ。
調査、無駄じゃない?
追記
見たくなかったなぁ。
ソウル江東区明逸洞の大規模な地割れ(シンクホール)事故発生地が2年前、ソウル市の用役報告書で「要注意地域」に挙げられていたことが分かった。
地下工事の時、地中の現況をあらかじめ調べることができる「3次元統合地図」事業も4000億ウォン程度をかけて始めたが、どんぶり勘定式運営で活用度がますます下落するなど対策も適当ではないという指摘が出ている。
28日、共に民主党のパク·ヨンガプ議員室がソウル市から提出された「ソウル都市鉄道9号線4段階延長事業建設工事地下安全影響評価用役」報告書によれば、事故発生地点近隣は地盤が軟弱で沈下量が大きい所と分析された。
報告書は「事故地点付近の停車場断層帯区間は沈下量が比較的大きく、ここに掘削工事をしたり仮施設を設置·解体する時、計測結果に留意して安全な施工をしなければならない」と指摘した。
毎日経済より
この話は、地下鉄工事をするにあたってソウル市が調査した結果、調査報告書に「要注意地域だ」と明記されていたという話。
起きるべくして起きた事故、起こるまでは起きていない、何とも韓国らしい。
特に報告書は、この一帯に上水道管が通っているうえ、掘削によって地下水が流入し、地盤強度を引き続き低下させる恐れがあると指摘した。 ソウル市は自主的にこの一帯をシンクホールの危険が最も高い5等級に分類していた。 にもかかわらず、地盤沈下の危険を点検するための指標透過レーダー(GPR)探査はまともに行われなかった。
毎日経済より
うーん、この。
そして、これがこのケース1件だけのハズもなく。
建設会社は建技研を通じて地図を紙の図面やデータの形で請求した後、受け取ることができる。 地下10メートル以上の深さで工事する現場では、この地図を使用して上下水道と電気·ガス線、通信線、地下鉄と地下車道、地下商店街と地下駐車場などを把握しなければならない。
しかし、民主党のチョン·ジュンホ議員室が国土部から提出された資料によると、この地図の紙図面の提供件数は2022年755件から昨年499件に大きく落ちた。 データ提供件数はこれよりはるかに少なく、同期間も31件から26件に減少した。 ある大型建設会社の関係者は「紙の図面とデータを全て搬出要請をしても保安問題上10日以上かかるほど手続きが難しいうえに紙の図面を受け取りにいちいち直接行かなければならず不便な点が多い」と話した。
深さ10メートル以上の工事で、義務的にこの地図を活用しなければならないが、これがきちんと守られているのかも疑問だ。
毎日経済より
「不便だから使っていない」「安全性ナニソレオイシイノ」という。まさに金にならないところを疎かにする感じの運用である。
何というか、対策人員はわずか12人とかそういうチャチな問題ではなかったことだけはハッキリしたよ。
コメント
こんにちは。
楽韓さんの所でちょいちょい出てくる格言@韓国。
「有事にあってはまず政闘」
「事故は起こるまで起こらない」
まだまだありそうですね、一度リストアップしておきましょうか……
こんにちは。
確かに格言ですね。
「事故は起こるまで起こらない」って、トンチというかなんというか。ですが、それを地で行くのが韓国なんですよね。
人口縮小問題と、早期退職が強いられる社会なのが、現場の技術継承に影を落としてるのでは?
リーマン・ショックとかアジア通貨危機とか、それにIMF管理下になったり。その時にいわば日本の氷河期世代みたいな、職場の技術が途絶えた世代をたくさんいると。
ただ……私は氷河期世代というのがよく解らないんてすよねぇ。
知ってる氷河期世代って、みなエンジニアや経営者や公務員で、典型パターンを観た事がないので。
韓国における少子化、高齢化、早期退職は、色々な面で悪影響がでているようですね。
本件とどう関わっているのかは分かりませんが、影響している可能性はあります。でも、特殊技能を持つ方を積極的に再雇用すれば良いのにと、そう思います。
氷河期世代に関しては、なんというかノーコメントで。
恐らく、僕自身もその真っ只中ではありませんが影響のある世代であると言われていまして。色々と仄聞はしますが、本人の能力と無関係かというと、そうでもないんですよね。ただ、チャレンジできるチャンスが少なかったのは間違いではないと思いますよ。