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【韓国】原州〜江陵複線鉄道公社アーチ型橋脚崩壊事件

橋シリーズ
この記事は約7分で読めます。

コメント頂いて、そういえば過去に取り扱った記事があったなぁと思い出した。ただ、データが消えてしまった関係で、再構成することに。

原州〜江陵複線鉄道公社アーチ型橋脚崩壊

2016-01-25 00:00:00

橋脚にわたされた仮設施設物崩壊

鉄道施設公「川寒さで鉄骨収縮」

警察「原因分析後不良など捜査」

原州~江陵複線鉄道工事区間のアーチ橋を支えるための仮設施設物が崩壊した。韓国鉄道施設公団(以下公団)側は最近、強寒波で鉄骨が収縮したことを事故原因と推定しているが、一部では不良工事疑惑も提起されている。

江原日報より

さて、前回の記事にもコメントは頂いたんだけど、改めて書いておく。

この手の事故はどこの国でも発生し得る。でも、韓国の場合は事故に至る経緯とかが救いがないんだよね。

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手抜き施工だったのか設計ミスだったのか

観光誘致のために

ええと、前の記事のリンクを貼っておく。

で、もう1つは「似た事案」ということで、クウェートの橋の事案を紹介しておく。

こちらは床版ごと落ちたケースなのだが、2016年に発生したアーチ型橋脚崩壊事案も、架設された床版が落ちている。

この「原州~江陵複線鉄道工事区間」の江陵鉄道なのだが、李明博氏の肝煎りで着工した案件だった。

李大統領 原州~江陵鉄道の効果に大きな期待

2012/06/03 13:01

李明博大統領は1日、江原道の原州~平昌~江陵を結ぶ複線鉄道、原州~江陵電鉄の着工式に出席し、鉄道開通による効果に期待を示した。

李大統領は着工式のあいさつで、最高時速250キロの高速鉄道が完成すれば首都圏と東海岸地域が直接つながることになり、江原道の観光レジャー産業に好影響を与えると述べた。特に長期的な観光誘発効果について期待を寄せた。

Wowkoreaより

観光誘発効果ねぇ……。

江原道(カンウォンド)の観光スポット10選!韓国旅行で行きたい「冒険の州」を紹介 | Klookブログ
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韓国の観光地って、田舎方面に行くと「自然しかない」という話になりがちなんだけど、本当に観るべき所が少ないんだよね。韓国の自然って、日本の自然ほど豊かな情景を描いてくれるわけじゃないし、旅行に行ってわざわざ見るのか?という。

江原道への交通手段拡充に関しては、完全に「将来に期待」という側面が大きかった。この段階で平昌のスキー場もイマイチだったみたいだし(冬季オリンピック後も良くなったという噂は聞かないが)。

で、問題になった部分はここ。

部分的に高架を作る必要があって、何故かアーチ型の構造を採用しようとしたんだ。

冬の寒さがいけないんだ

さて、2016年1月24日のこと、事件は起こった。

問題のアーチ型構造物が崩れちゃったのである。

これ、早朝に発生したトラブルだったので、怪我人などは出なかった。が、大騒ぎになった案件だ。

なお、こんな感じの施工状況だったんだけど、これが崩れたみたいだね、「寒さ」で。

24日午前6時16分頃、江陵市城山面の原州~江陵鉄道工事区間のアーチ型橋脚を支持するための施設物の一部が崩れ落ちた。河川側からアーチをなす一方の橋脚が台座と落ちながら傾き、衝撃で施設物を支えていた中央支持物も一緒に傾いた。人命被害は発生しなかったが、仮設施設物が傾いただけに、二次事故予防のために警察は事故現場近くの35番国道の車両を全面統制した。事故直後、公団江原本部側は「最近突然天気が寒くなり、鉄骨構造物が収縮して今回の事故が発生したと見ている」と明らかにした。

江原日報「原州〜江陵複線鉄道公社アーチ型橋脚崩壊」より

原因は、「突然天気が寒くなった」と発表された。本当かよ、という突っ込みは、当然行われたが。

一応擁護しておくと、鉄骨の構造物であっても収縮することはあるのだ。鉄の温度変化は1mの長さの鉄材が1℃上昇で11.7μm伸びる。10℃上昇で117μm伸びるのだ。

10mの鉄材なら、10℃上昇すると1.17mm伸びる!常温が20℃と仮定して、寒波の影響で-10℃まで下がったとすると30℃の温度差がある。だから、その3倍の3.51mm縮んだというわけだ。

……擁護にならなかった。

しかし、わずか1週間ほどの寒さに鉄骨施設が崩れた点や、毎年都内冬の寒さが大きな変動幅がない点などを勘案すれば、公団側の説明はむしろ疑問を生んでいる。パク・チャングンカトリック関東大土木工学科教授は「今回の寒さが歴代最も寒かったのではなかったという点を見たとき、鉄骨が収縮して事故が発生したという説明は言えない」とし「設計が正しくなったかと図面通りに施工がなされたかなどを細かく見てみなければならない。

江原日報「原州〜江陵複線鉄道公社アーチ型橋脚崩壊」より

まあ、真っ当な技術者であれば「設計ミス」か「施工ミス」と言わざるを得ないだろうね。

平昌冬季五輪の前に

で、批判を受けて、公団側は反論をしたようだ。

これに対し、鉄道施設公団は「2018年の平昌冬季五輪のために行われている工事であるため、手抜き工事をするなどありえない」と反発している。

レコードチャイナより

手抜き工事じゃなければ、設計ミスじゃないの?とは思うのだが、とにかく手抜き工事は否定した。

「崩落部分はソウルから行くと平昌を通り過ぎたちょっと先の終点近くだが、路線全体の工期への影響は大きいだろう」(同)

鉄道橋の着工は昨年8月で、同月には五輪開催を踏まえた工期短縮のため政府が2920億ウォン(約287億円)の追加予算(15年度)を決めたばかりだった。

ZakZakより

が、工期が遅れていたので工期短縮のために色々画策していたのは事実である。

結果的に色々とケチはついたが、路線は完成したようだ。

韓国、高速鉄道の新線公開 平昌五輪へ輸送力強化

2017年11月21日 17:15

韓国の高速鉄道「KTX」を運行する韓国鉄道公社は21日、ソウル郊外の西側に立地する仁川国際空港と同国北東部の江陵を結ぶ新線を報道陣に公開した。新線は2018年2月の平昌冬季五輪で選手や観客を運ぶ主力の輸送手段になる。現在は高速バスを乗り継いで3~4時間かかるとされる、同空港と五輪の氷上競技が催される江陵の所要時間は約2時間20分に短縮される。

日本経済新聞より

2017年11月には完成して平昌冬季五輪の開催に華を添えたのではあるが、実際には輸送力が足りずに大変な大会となった。何というか、宿泊施設が足りずにソウルから選手をピストン輸送するような事態になったんだよね。もちろん、これは鉄道の不備ではないんだけど。

さておき、工事を間に合わせるためにアーチ型の構造を採用するのは止めて、一般的な構造の橋脚を採用したそうな。

それは良かったね、結局間に合ったのだし。

不正の疑い

ただ、この工事に関しては、後日こんな報道が。

原州~江陵複線電鉄工事の不正疑惑

2017.05.31

国策事業である原州~江陵複線電鉄工事を担当した韓国鉄道施設公団の関係者と業者関係者が相次いで立件されるなど、様々な不正が発生している。原州警察署は30日、原州~江陵複線電鉄の一部工具事業を担当したA工務店の現場所長チェ某(56)氏とB監理会社の団長イ某(54)氏、C下請け会社の代表パク某(60)氏など業者関係者33人を業務上横領などの容疑でそれぞれ立件した。

警察の調査結果、彼らは虚偽の税金計算書などで設計変更工事代金を膨らませて12億ウォンを横領し、下請け選定代金などで7億3000万ウォンを得た疑いだ。チェ氏は2015年12月、点実践工事区間の設計変更過程で虚偽の既成などで12億ウォンの既成金を韓国鉄道施設公団に請求した後、これを横領し、イ氏はチェ氏らの虚偽の設計変更を黙認するなど、既成金横領を共謀した疑いだ。

韓国メディアより

設計ミスがあったかどうかは定かではないが、この鉄道工事に関しては2017年6月にトンネルの天井崩落事件があって、これも設計ミスによって問題が発生し、それの対策で杜撰な工事をしたら更に事故に繋がったという。

当然、橋梁崩落の件も設計ミスの疑いはかかるよね。原因は追求されていないようなんだけど(報道が見つからないという意味)。

施工ミスとか、設計ミスとか、そういうことの結果、トラブルに至ることはあるのだ。が、問題はトラブルを「なかったこと」にして問題点の追求をしない。なんか不正疑惑にも関わっている可能性があるんだけど、騒ぐと企業にダメージが来るので黙っている。そして、別のところで事故を誘発しかねない。

一事が万事そんな感じなんだけど、いい加減過去の事例から学ぶと言うことを知った方が良い。特に、建設関係の話はトライ&エラーを積み重ねてこそという側面があるんだから。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    記事再構成ありがとうございます。

    まあ、韓国は、本邦を「歴史に学ばない」とかおっしゃいますから。
    この程度は「歴史」に含まれないのでしょうね。

    ※歴史=存在しない記憶、という説も……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      これも五輪の時に散々突っ込み入れたネタだったんですが、さて、その後の記事を探してもトンと見つからない。
      「存在しない記憶」に整理されちゃったんでしょうね。

  2. きたやまひと より:

    今日は。
    >原因は、「突然天気が寒くなった」と発表された。
     そういえば、2018年12月に韓国ご自慢のKTXが脱線した時も、寒さでレールが収縮したことが原因と鉄道公社の社長が話していました。勿論、韓国の設計基準に寒暖による素材の伸縮は考慮されていますよね。たぶんあります。あるんじゃないかな…以下略。というのは冗談としても、アーチ構造は古代から使われている技術ですから、設計あるいは施工ミス(含む中抜き)のどちらかとしても、OINKの一例なのでしょうね。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      そういえばそんなこともありましたね。
      そりゃ、韓国の寒さは厳しいらしいので、そういうこともあるとは思います。ですが、そういうのは設計時点で考慮されるべき話でありまして、事故原因だと説明されるのは余りに情けない。
      アーチ構造を採用するなら採用するで、事故が起こらないように工事して欲しいものであります。