石炭火力発電を悪者にする世界的な流れになっているんだけど、バカバカしい話なんだよね、これも。
石炭火力、35年までに廃止 G7環境相会合で合意―伊報道
2024年04月30日00時43分配信
イタリア北部トリノで開催中の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は29日、2030~35年までに石炭火力発電を廃止することで原則合意した。
時事通信より
北欧がぶっ飛んだエネルギー政策をやりつつあるというのは、よく知られた話ではあるんだけども、2035年までに石炭火力発電廃止を原則合意?!だと。北欧がどんな選択をするにしても、日本は巻き込まないで欲しい。
世界の石炭火力発電の実情
日本の石炭火力発電
以前も何本か石炭火力発電の話については言及しているのだけれども、あらためて簡単にまとめておく。
日本の石炭火力発電はかなりの発展を遂げていて、従来のものよりも高い性能を示すものが出てきている。

将来的には石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)といった方式に切り替わっていくと言われている。
これらの発電方式は世界最高水準であると言われているんだけど、あまり知られていないようだね。

ただ、二酸化炭素排出量に関してだけ言えば、劇的に改善しているかというと、そんなことはない。

「何割かはマシになりそうだ」というレベルではある。それよりもLNG火力発電のほうが二酸化炭素排出量は少ないんだよね。ただ、石炭そのものの保存性・安定性という意味では優れた燃料で、かつ安いのが魅力ではある。まあ、最近はそれもちょっと怪しいけど、それは後述することにしよう。
新規建設終了
で、こんな感じで長年日本は石炭火力発電の開発をやってきたのだが……。
石炭火力発電所の新規建設終了、温室効果ガス削減で-岸田首相
2023年12月1日 23:56 JST 更新日時 2023年12月2日 11:56 JST
岸田文雄首相は1日、脱炭素に向けて国内で「排出削減対策の講じられていない」新規の石炭火力発電所の建設を終了する方針を示した。アラブ首長国連邦のドバイで開催されている国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で表明した。
Bloombergより
これは去年末の記事。
この記事はタイトル詐欺で、新規の火力発電所を建てないってわけではなく、排出削減対策の講じられていない新規の石炭火力発電は建設しないという話である。ただ、そういうメッセージを出さざるを得なくなった、という意味では後退だろう。
そして、メディアは揃いも揃って石炭火力発電大嫌いなのは何故なんだろうねぇ。
経済産業省の資料によると、日本では23年から24年にかけ3基の石炭火力発電所の運転を開始する計画があり、政府関係者は首相の発言が建設中の発電所に影響することはないと記者団に語った。
日本政府は発電時のCO2排出量がゼロの水素やアンモニアを利用して発電することで脱炭素を図る方針も示しているが、石炭と混ぜて燃やす「混焼」を前提としていることなどから、この取り組みは化石燃料産業を温存する政策だとする批判も根強い。
Bloombergより
ともあれ、新技術開発は続けるし排出削減対策を講じた新規の石炭火力発電所の建設を、この時点では否定していない。
体制の見直し
ただ、冒頭の記事の通り、北欧は完全に石炭火力発電を悪者扱いするスタンスになっている。日本としても丸っと無視するわけにはいかない状況である。
それが影響してか、Jパワーも方針転換を打ち出した。
Jパワー、石炭火力発電所5基を休廃止 2030年度までに
2024年5月9日 20:11
Jパワーは9日、2030年度までに国内で運転する石炭火力発電所5基を休廃止すると発表した。発電容量ベースで同社の国内火力発電の3割に当たり、残る発電所は脱炭素燃料との混焼や、石炭由来の水素を燃料にする石炭ガス化複合発電(IGCC)に転換する。世界的に脱炭素の圧力が強まるなか、構造転換を急ぐ。
同社が発電所ごとの休廃止計画を明らかにするのは初めて。高砂火力発電所1、2号機(兵庫県高砂市)は28年度に、松島火力1号機(長崎県西海市)は24年度末までに廃止を予定する。竹原火力3号機(広島県竹原市)と松浦火力1号機(長崎県松浦市)は廃止か、予備電源としての休止のいずれかとする。
日本経済新聞より
石炭ガス化複合発電(IGCC)はそこそこ技術的に裏付けがとれて、発電も順調に行えているという判断なんだろうと思う。これに刷新していくというのが、Jパワーの方針である。
これについてすら、メディアは批判しているんだけどね。

社説でご高説を垂れ流すのが朝日新聞のやり方なのだが、どうしてこういうときだけ便利に「オウベイガー」と言っちゃうのだろうか。
日本だけ努力する意味はない
ちなみにG7が幾ら吠えたところで、世界の二酸化炭素排出量は減ったりはしない。
中国のCO2濃度、公表の1・5~3倍で増加…環境省が観測衛星で分析しCOP28で発表へ
2023/12/08 05:00
環境省は、中国の二酸化炭素(CO2)濃度の年間増加量が、中国が公表している排出源などの情報を基に計算された数値の約1・5~3倍に上るとする報告書をまとめた。中国の情報が不正確な可能性があるという。報告書は9日にも、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で発表される。
讀賣新聞より
これは以前も引用したことのある記事なんだけれども、支那の出す数字は全般的に信用出来ないという話の延長線上にあって、実は二酸化炭素排出量も発表された数字の1.5~3倍なんじゃないかという分析結果が出ている。

2020年のデータがこちらで、この時の支那の二酸化炭素排出量は10,081万tってことになっていた。そして、その上で更に積み上げる予定だとされている。

で、この数値の1.5~3倍なんじゃないかという分析を加味すると、実質的には世界で排出される二酸化炭素の総量の半分が支那からってことになる。
二酸化炭素排出量ビジネスは、欧米各国に努力をさせておいて支那だけは「そんなこと知るか」と言わんばかりに石炭に頼っている。
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こちらの記事でも出ているが、脱炭素は色々な意味で支那抜きでは語れないのである。そして、ヤツらにはやる気はないのである。それはこちらの棒グラフを見ていただければわかると思う。これは各国における発電電力量に対する発電方式の比を比べたものである。

笑っちゃう話だが、支那における発電の主役は石炭火力であって、それ以外の発電方法は2割程度なのである。なお、アメリカも結構石炭火力を使っているね。

なお、発電電力量に石炭火力発電の利用割合をかけたグラフにしてやると、虚無感は増すね。支那は日本の10倍以上の二酸化炭素を排出している計算になる。この数字は上の円グラフの割合とも良くあっているので、まあ大きな間違いはないのだろう。
これ見るだけで、G7の合意に何の意味があんの?と疑問に思う(支那は参加していないからね)。まあさ、いつも言ってることなんだけどね。もう、アメリカと支那だけ頑張れば良いよ。此れでなぜ各国足並み揃えて脱炭素という話になるのかが理解できない。
日本は石炭火力発電を諦めるのか
将来的には
で、日本はどうするのか?という話なんだけど、令和4年の方針と令和5年の方針を紹介しておく。
令和4年の方針だと「高効率石炭火力発電技術の技術開発・実証」となっているのだけれど、令和5年の方針だと「次世代の高効率石炭火力発電や脱炭素燃料との混焼による脱炭素型の火力発電への置き換え」と、一歩踏み込んだ表現になっている。令和6年の方針がどうなるのかは不明だが、現時点では高効率の石炭火力発電という方針は変えないと思われる。
これが世界に理解を得られるかどうかは、正直輸出していくしかないと思っている。
……なんだけど、実は日本はこの方針を撤回しちゃっているんだよね。

外国からの圧力に屈した形だね。
あとは、石炭価格が上がっているのもちょっと問題ではある。

開発した技術は無駄にならないと思うけれど、ここまで値上がりすると石炭火力発電を推進するメリットが失われてしまう。
核融合発電開発を前倒し
で、最近出てきた話がこちら。
核融合発電、30年代実証へ新法 技術開発や人材育成支援
2024年5月9日 18:00
政府は次世代技術である核融合発電の実証開始時期を2030年代に早めるため、技術開発や人材育成の支援に向けた新法をつくる方針だ。核融合は脱炭素に貢献する将来技術の一つと見込まれる。国が主導する形で民間企業と実証する環境を整える。
日本経済新聞より
おいおい。

実用化は2050年だって話だったはずなのに、これを2030年代に20年も短縮する気らしい。ちょっと日本政府の正気度を疑う話だ。SAN値チェックした方がいいんじゃあないか?おそらく、研究者は凄い顔してこのニュースを見たと思うよ。
だが、この話には支那の方針なども影響している可能性があると踏んでいる。

これが去年のニュースなのだが、なかなか前のめりになって支那は研究開発を急がせている。

嘘か誠かかなりの研究成果も出したとしているしね。
一方で、支那としても日本の研究開発状況は気になるようで。

この記事はほぼタイトルしか読めないのだが、内容は概ね想像出来る。というか、恐らくはそんな話はいくらでもあるだろうという風に思う。
とにかく、石炭火力発電への開発に力を入れる方針はもはや取れないので、次世代の発電方式の模索を加速するというのが日本の方針となっていくだろうと思われる。なかなか思い切った方針転換ではあるが、もはやそういう道筋しか残されていないんだよね。
尤も、核融合炉は技術的に見て制御の難しい発電方法なので、未だ次世代原子炉の方が可能性は高いんだけどねぇ。
追記
アメリカの話を見つけたので、追記しておく。
米国の火力発電、32年から排出90%削減 石炭廃止が加速
2024年4月26日 6:24
バイデン米政権は25日、米国の火力発電所の温暖化ガス排出量を2032年から90%削減する規制を導入すると発表した。既存の石炭火力発電所と新設の天然ガス火力発電所は二酸化炭素(CO2)回収・貯留装置(CCS)を設置する必要がある。米国で火力発電の減少が加速しそうだ。
日本経済新聞より
バイデン氏は本気でこんなことを考えているのかな?
米国の発電量の2割弱を占める石炭火力については、①2039年以降も運転予定なら32年から排出の90%を回収・貯留する②38年までに稼働停止するなら32年から天然ガスを40%混焼する――といった対応を求める。
4割強と米国の電源構成で最大比率を占めるガス火力については、既存の発電所を規制の対象外とした。
日本経済新聞「米国の火力発電、32年から排出90%削減」より
石炭火力もガス火力も「無くせ」という方針になっているんだけど、流石にちょっと無理があると思うよ。現状では、二酸化炭素回収・貯蓄装置の設置目処も立っていない。
これ、何で補うつもりなんだろうか?
コメント
オバマが悪者にして、アパラチア山脈ぞいの炭鉱を片端から閉鎖して、鉄鋼が韓国に奪われて、虫の息だったラストベルトの工場が枕を並べて討ち死に。
その結果、自殺とフェンタニルだらけになった。民主党はロクな事をしない。
民主党はほんと、碌なことしませんよね。
アメリカだって、今の方針を推し進めると苦しいはずなんですが。
中共が安価な石炭火力発電で経済的優位を手にする。
ロシアが天然ガスの販売先を手にする。
環境ファシズムは、悪の枢軸を利する戦略兵器か?
支那やロシアがプロパガンダ作戦を展開して、地球温暖化がー、二酸化炭素がーとやっていることは明らかです。
そして、実際にその手先になって動いている自然エネルギー財団は、政府に見事に食い込んでいましたよ。
こんにちは。
核融合発電ですが株式会社ヘリカルフュージョンが2034年に稼働を目指すとのことを受けてるのだと思います。
※多少の胡散臭さはありますけど。
フランスを筆頭に欧米もその辺りを目指しているみたいですね。
2030年代から寒冷化が始まる確率が97%と提唱している学者もいますので手のひらクルクルする欧米がどうなるか見ものです。
こんにちは。
>メディアは揃いも揃って石炭火力発電大嫌い
「西側の」が抜けてますぜ。
メディア的には、火力も核も「東側のはクリーン」ですからね。
本当に、キッシーには
「円安でのエネルギー価格高騰に対し、原発再稼働で対応する!エネルギーインフラの確保と安定化、これは国是である!責任は自分が取る!」
と一言言って欲しい。
これが言えれば、希代の名宰相になれるのに。