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韓国憲法裁判所が弾劾請求基準を引き下げ判断

大韓民国ニュース
この記事は約9分で読めます。

コメントで教えて頂いたのだが、これって結構おおごとのような気がする。

弾劾訴追の議決定足数、「大統領権限代行は151人」と認めた憲法裁に韓国法曹界から批判の声「巨大野党が政府を無力化できる判決」

2025/03/25 11:55

24日に憲法裁判所は、韓悳洙首相に対する弾劾審判請求を棄却しつつ「大統領権限代行の弾劾案を議決する際、議決定足数を大統領基準(200人)ではなく国務委員=閣僚=基準(151人)で行うのが正しい」という判断を示した。

朝鮮日報より

タイトルには「引き下げ判断」と書いたが、正確には「規定がなかったが、判断を下した」ということである。

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弾劾を多用できる韓国

代行弾劾は閣僚基準でOK

こちらの記事でも書いたのだが、韓国首相の韓悳洙氏の弾劾訴追は棄却された。

……その前に、何が起こったのかを少し纏めておこう。

  • 2024.12.3 :韓国大統領、尹錫悦氏による非常戒厳の宣言
  • 2024.12.4 :韓国国会により「非常戒厳」の解除要求決議案を可決
  • 2024.12.7 :尹錫悦氏(現職大統領)に対する弾劾決議否決
  • 2024.12.8 :前国防相の金龍顕氏を内乱罪手動の疑いで緊急逮捕
  • 2024.12.14 :尹錫悦氏に対する弾劾決議可決。同日、首相が大統領代行に就任 
  • 2024.12.26 :韓悳洙氏(現職首相)に対する弾劾決議可決。同日、経済副首相兼企画財政部長官であった崔相穆氏が大統領代行の代行に就任
  • 2025.1.20 :尹錫悦氏、内乱罪の疑いで逮捕、拘束
  • 2025.3.7 :尹錫悦氏、拘束期限が切れたために釈放
  • 2025.3.24 :韓悳洙氏、弾劾裁判の請求棄却。同日、首相の職務復帰

こんな流れであり、記事中には韓悳洙氏の弾劾裁判の請求棄却について、憲法裁判所の判断は以下のようなモノだった。

  • 請求棄却 5人
  • 請求容認 1人
  • 請求却下 2人

この判断のうち、「却下」に関して以下のように説明している。

というのも、今回は「大統領の弾劾」の立場の人物に対して首相の弾劾という形で訴追してきたのだけれど、代行の弾劾に関しては法律上明確な規定がない。それ故に、閣僚に対する訴追(大統領訴追に関しては2/3の賛成が必要だが、閣僚訴追に関しては過半数で足りる)をやってきた。

だけど、そもそも大統領代行の立場なのだから、大統領に対する弾劾規定を援用すべきなのでは?という解釈があるのだ。

本ブログより

この話が、「「大統領権限代行の弾劾案を議決する際、議決定足数を大統領基準(200人)ではなく国務委員=閣僚=基準(151人)で行うのが正しい」という判断を示した。」という意味になる。

つまり8人中6人が、大統領代行の弾劾は閣僚基準でOKだったよという判断をしたわけだ。

冒頭の記事ではこのように説明されている。

憲法裁は24日、「大統領権限代行中の首相に対する国会の弾劾訴追に適用される議決定足数は、本来の身分上の地位である首相に対する弾劾訴追議決定足数である『国会在籍議員の過半数賛成』であって、この事件の弾劾訴追は適法」と判断した。裁判官8人中6人が同意見を出した。

朝鮮日報「弾劾訴追の議決定足数、「大統領権限代行は151人」」より

そもそも代行を弾劾するということが、前代未聞であるためにルールが決まっていなかったことは仕方がない面はあるのだが。

乱発可能

前回の記事ではそのことの重要性に気がついていなかったが、代行の代行を行っていた崔相穆氏に関しても同じ判断となる。

尤も、韓悳洙氏が職務に復帰したことで、崔相穆氏の代行の代行の任は解かれるのだから、次に弾劾される場合には閣僚基準で行われるのは当然ではあるのだが、しかし弾劾請求理由が代行任務中の判断であった場合に、それはどうなんだろうか?という疑義は生じる。

そして、重要なポイントは、代行任務に復帰した韓悳洙氏は再び弾劾訴追される可能性が出てくるということだ。

こうなると、職務に復帰した韓首相が馬恩赫憲法裁判所裁判官候補者を任命しない場合、進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が単独で韓首相を再び弾劾することもあり得る。法曹界からは「巨大野党が政府を無力化できる判決を下した」という批判が出た。

朝鮮日報「弾劾訴追の議決定足数、「大統領権限代行は151人」」より

諸外国には弾劾のルールが違うところも多いので、説明がちょっと難しいのだが、日本の場合はどうかというと内閣不信任決議がそれにあたる。国会では個別の閣僚に対して不信任案提出をすることができ、他の議案に優先して審議を行わねばならない。とはいえコレのカウンターとして内閣信任決議という手続きがあって、一事不再議という原則もあるので、野党側も不信任決議を乱発して審議妨害という手段は割と国会の会期末まで使われることはない。

ところが韓国には一事不再理(一事不再議)という原則が働かないらしく、韓悳洙氏を再度弾劾訴追可能となっている。

凄い国だよ。

不都合な弾劾

反対した二人の理屈は、なかなか説得力はあるのだが、その辺りは他の裁判官はどう聞いていたのだろうか。

両裁判官はまた「現行法上、長官は弾劾対象になるが次官はそうではない」とし「本来の職位のみを基準として弾劾訴追要件を定めたら、次官が長官の職務を代行する過程で憲法や法律に違反しても弾劾訴追そのものが不可能になる問題が生じる」と述べた。

朝鮮日報「弾劾訴追の議決定足数、「大統領権限代行は151人」」より

ルール的には、閣僚の代行というのは定められているが、代行した次官に弾劾が適用されないという話になってくる。

この辺り、実際直面した場合にどのように扱うのか興味はある。

閣僚に対する「大量弾劾訴追」で国務会議(閣議に相当)そのものが無力化されかねないという懸念も出ている。国務会議は国務委員(閣僚級)11人以上が出席することで開催できるが、この開催要件を充足できなくなりかねない、という話だ。部長判事出身のある弁護士は「憲法裁が多数党の横暴に名分を与えたものであって、これは明白に三権分立原則に背く」と語った。

朝鮮日報「弾劾訴追の議決定足数、「大統領権限代行は151人」」より

そして、記事の結論は「裁判所が多数党に有利な判決を出した」ということなんだけれども。

まあ、多数党に有利という点は民主主義の宿命ではあるので、そこはどうかと思う。だが、弾劾要件は職務に付随するという考え方の方が適切であるように思うのと、それよりも一事不再理(1回審理したら同じ理由では再審理をやらない)の原則は守るべきだと思う。1年に30回以上も弾劾訴追が行われるのは異常というしかない。裁判所はその辺りも容認したと言うことなので、韓国らしいといえばそうなのだろうけれど。

追記

こんな記事に、追記を付ける必要があるとは。

憲法裁で9戦全敗中なのに…謝罪代わりに弾劾棄却された韓悳洙首相を再び弾劾で脅す共に民主党【3月26日付社説】

 2025/03/26 13:00

韓国野党・共に民主党の朴賛大院内代表は25日、韓悳洙大統領権限代行に対し「馬恩赫裁判官を直ちに任命しなければ、それは弾劾の理由になる」と発言した。憲法裁判所が弾劾を棄却し、韓悳洙代行が職務に復帰した翌日から「再弾劾」をちらつかせ脅迫したのだ。

朝鮮日報より

そして、意味が分からないのもいつもの通りである。

一事不再議は何処へ行ってしまったの?え?韓国国会には存在しない?韓国憲法裁判所にも存在しない?もうメチャクチャですな。

共に民主党は同日、崔相穆副首相に対しても「韓首相以上に重大な弾劾理由がある」「罷免は避けられない」と批判した。馬恩赫候補者任命問題を口実に、崔相穆副首相の弾劾訴追を強行する構えだ。

~~略~~

共に民主党が提出した弾劾案はすでに30回に達し、うち結論が出た9回は全て共に民主党が敗北した。ところが共に民主党執行部は誰も反省も謝罪もせず、それどころか韓悳洙代行の再弾劾と崔相穆経済副首相の弾劾を今なおちらつかせている。

朝鮮日報より

弾劾案提出が30件あって、うち9件以外、つまり21件は手続き不備で却下されている。弾劾案提出の方式要件さえ満たしていなかったという意味である。

そして、9件についても全て棄却。平均弁論回数はわずか2.2回。方式は整っていたけれども、内容は検討するに値しないモノだったという意味だ。

李真淑放送通信委員長は就任から2日で弾劾訴追され、174日間仕事ができなかった。その間に放送通信委員会はほぼ機能不全状態だった。

朝鮮日報より

そりゃね、ユンユンも非常戒厳の宣言を出したくもなると思うよ。仕事をさせてすら貰えないんだから。この状態が去年の5月からずっと続いていたのだから、「何か打開策を」という発想になってもおかしくはない。

野党の共に民主党は、こうした弾劾訴追棄却に対して何の反省もせず、更に再弾劾を予定しており、かつ代行の代行になる崔相穆氏の弾劾も予定しているようだ。次は代行の代行の代行かぁ。

韓国野党5党、崔相穆大統領代行の弾劾訴追案発議

2025.03.22 08:39

「共に民主党」など韓国野党5党が21日、崔相穆大統領権限代行副首相兼企画財政部長官に対する弾劾訴追案を発議した。昨年12月27日に韓悳洙首相の職務を中断させて84日ぶりに提出された、尹錫悦政府になって30回目の弾劾案だ。

~~略~~

共に民主党・祖国革新党・進歩党・基本所得党・社会民主党議員188人が連名の弾劾案は▷12・3非常戒厳黙認・幇助▷馬恩赫憲法裁判官候補と馬鏞周大法官(最高裁判事)候補の未任命▷内乱常設特検候補の未推薦

中央日報より

空振りに終わった弾劾訴追案発議だが、崔相穆氏が弾劾されると次は誰になるのやら。

国民の力からは権性東院内代表が「前科4犯の李在明代表が国政を破壊するテロリズムの道に完全に入り込んだ」と批判した。

中央日報より

テロリストが韓国国会に公然と居座っている様はなかなか凄いの一言ではあるが、さて、憲法裁判所はどうするんだろうね。判断を4月18日まで伸ばしてしまうと、裁判官が退職してしまうので再び憲法裁判所の機能不全が心配される。

流石にそこまで引き延ばすことはないかもしれないが……。

追記2

おおっと。

韓国最大野党代表に「逆転無罪」判決 次期大統領選に弾み 

 2025/03/26 15:44

韓国のソウル高裁は26日、2022年の大統領選に絡み虚偽の事実を述べたとして、公職選挙法違反の罪に問われた最大野党「共に民主党」の李在明代表について、懲役1年、執行猶予2年とした一審判決を破棄し、無罪を言い渡した。

朝鮮日報より

無罪判決とは、驚くべき判決だな。

しかし、コレで随分と風向きが変わりそうだ。少なくとも、無罪を声高に叫びながら大統領選挙に臨む下準備が完了したことになる。尤も、問題になっている案件はこれだけではないので、裁判リスクはまだ続くのだが。

  1. 虚偽事実公表容疑 : 2審で無罪
  2. 偽証教唆容疑(公選挙法違反) : 1審で無罪
  3. 大庄洞土地開発疑惑(超過利還収放棄の背任容疑) : 審判継続中
  4. 弁護士代納疑惑(城南FCに後援金を出した企業に特恵を与えた容疑) : 審判継続中
  5. 城南市柏峴洞特恵疑惑(虚偽事実公表容疑と用途変更利益提供の容疑) : 審判継続中
  6. 城南FC不法後援金疑惑 : 審判継続中
  7. 北朝鮮不正送金疑惑 : 審判継続中
  8. 京畿道法人カード不正使用疑惑 : 審判継続中

ちょっとカウントが合わない(審判継続中なのは5件だと記事にはある)のだが、まあ何にせよいくつかの裁判を抱え、疑惑をも足られているのは事実だ。この他に前科4犯なのだが、この人物が大統領になるのか。胸が熱くなるね。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    あの、あのですね。
    はっきり言ってですね。
    韓国ちゃんについては、
    ・どうでもいいよ、もう。
    ・どっちでも良いから、早く決めろよ。
    くらいの感想しかなくて。
    いや、エンタメとしては凄く面白いんですが。
    隣国で、ブルーチームの(仮にも)最前線がこの体たらくという、ワークにはなんて罰ゲーム?的な。

    「大統領代行の代行を弾劾しようとしたら、一つ前の代行が復帰したので全く意味無しでござるの巻」
    なんて前代未聞の馬鹿騒ぎを素でやる国ですから……

    こんだけムチャクチャな政令をバンバン制定して、この先の国会運営どうするんでしょうね……与野党逆転したら、全部自分にかかってくるのに。
    まあ、そんな事考えてたら、有罪判決待ったなしのミョンミョンが大統領候補なんてなれるわけがないのですが……

    ※期待することといえば、ミョンミョンが大統領になって、なんやかんやでブルーチームから文字通り「レッドパージ」されてくれると、ものすごくいろんな事がスッキリするな、って事ですかね。

  2. 山童 より:

    いや……何がなんだか?過ぎて記事を2度読みして、さらに七面鳥様のコメも読んで!なんとなく察し。
    その……弾劾ってそもそも何度もやるものてはないし、そのように想定したものでもないてすよねぇ?
    何度でもOKなら、理論上は国会期間日数たけ弾劾をすれば政治は機能しない事になる。それシステム的におかしいですよねぇ?と思わないのかな?
    たしかに韓国は開発独裁的な発展を遂げた国で、きちんと議会民主政に移行してから半世紀も経ってない。半島戦争も休戦で終えてないし。それにしても弾劾回数が青天井みたいな制度って、コレまで議会も国民も疑問に思わなかったのでせうか?
    あの民族は本当に解らない。

    • 木霊 木霊 より:

      シンクホールの記事のようなアクロバティックな話であります。
      日本でも不信任決議案は結構気軽に乱発される印象がありますが、アレは1度提出したら2度目が使えないから重みがあるわけで。
      韓国のように弾劾を連発してしまうと、本当に政府機能が麻痺してしまう。

      そして実際そうなってしまったからこその非常戒厳だったのですが、まあ無理筋でしたね。
      ミョンミョンが大統領になったら、流石にその辺り修正するんじゃないでしょうか?いや、多数派与党であるウチは安全だから手は出さないかも知れません。

  3. 砂漠の男 より:

    ミョンミョン:オレは嘘をついたことがない!(ククク…ニヤッ)
     
    控訴審逆転判決(無罪)と聞いて、こちらも(ニヤッ)としてしまい…
    再び共に民主党の天下となって、東アジアは混沌していくのかぁ、と

    • 木霊 木霊 より:

      「これは嘘をついている味だぜ」という台詞が、頭の中を過ぎりましたが。
      前科4犯大統領への序章が幕を開けましたね。

  4. 匿名 より:

    皆様ご存じでしょうが今度は大臣全員弾劾だそうで「オラ ワクワクしてきたぞ」ですが
    https://rakukan.net/article/513162002.html

    さて、元の話題
    閾値を2/3から1/2に下げたのは如何にも中途半端。
    この方向ならいっそ1/3とか1/4の賛成で議決出来るようにすると面白い。

    さすれば少数勢力でも弾劾可決可能となり、報復を恐れれば多数勢力も弾劾の乱発はし辛い 。

    一種の相互監視・牽制システムになるのか?実験して見せて欲しいですね(笑)
    勿論これは司法の領分を超えますが今の野党が暴走すれば これぐらいの自縄自縛の立法ぐらいやってくれそう(笑)

    • 木霊 木霊 より:

      流石に「全員弾劾するぞ」は口だけだと信じたいところ。
      どう考えても不経済なんですが、……韓国ならやりかねないですよね。

      そして、弾劾のしきい値を下げるんですか。
      もう、狂気の国会が開幕しちゃいますよ。

      • 七面鳥 より:

        横合いから失礼。
        「楽韓」様情報ですが、
        「全員弾劾だぞ!」の対抗手段が「お前らの政党お取り潰しにするぞ!」だそうで。
        対岸の火事、で済んでいれば、高見の見物なんですがねぇ……
        火事のついでに、赤いのが降ってきそうで……

        • 木霊 木霊 より:

          見ました。
          あれって、本気でやれるもんなんでしょうかね。
          全員弾劾もどうかと思いますが、政党のお取りつぶしって、民主主義国家でやれるとも……。
          実際、やれたとしたら非常戒厳の宣言の時だったように思います。