スパイ防止法はよ!
次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」
2025/3/1 14:12
次世代潜水艦などへの搭載が検討されている全樹脂電池技術の機微情報が中国企業に流出した恐れがあることが分かった。
産経新聞より
困ったものだね。
技術流出が確定したわけではないようだけれど、分かっている話を繋ぎ合わせると流出したのは間違いなさそう。どのレベルの情報が持ち出されたのかは不明だが。
産業スパイ案件
対応が甘い日本政府
現在、二次電池の機微技術流出というのは、国家の利益に大きく関わる。
先日もこんな話に触れたが、現在、この手の話に対応するための法律というのは不競法(不正競争防止法)、外為法(外国為替及び外国貿易法)があるが、法の射程が産業スパイの取り締まりで、被害の実態が明らかにならないと対処が難しい。
そうすると、研究所からの技術流出は「損害額の算定」の意味でかなり厳しい。
経済産業省もそれなりに技術流出に対応しようとは考えているようなのだけれど、図利加害目的の認定がなかり厳しく適用が難しい。
一方、罰則はかなり緩い。
- 自然人:10年以下の懲役若しくは2,000万円(海外使用等は3,000万円)以下の罰金 又はその併科
- 法人:5億円(海外使用等は10億円)以下の罰金
外国のスパイが日本の技術を盗み出したと認定された場合でも、10年以下の懲役か3,000万円以下の罰金(またはその併科)ということになっている。しかし、事実が判明するのはスパイが帰国した後のことになるケースが多いので、実際に適用されるケースは少ない。
仮に今回盗み出された可能性のある技術が潜水艦に用いられ、或いは他の軍事技術に用いられて、日本人に被害が及んだ場合にどんな罰則に適用が相当なのだろうか?現在の法律構成では、恐らく対処は出来ないだろうが。
しかし、取り締まりが出来ないのは国益に関わることになるのだ。
全固体電池を開発するAPB社
さて、この話は一体どのような話なのか。
固有技術を持つAPB社(福井県越前市)が中国企業と関係が深いとみられる日本企業に経営権を握られ、中国側に機微情報が漏れたとみられる。武藤容治経済産業相は2月27日の衆院予算委員会分科会で、実態について経済安全保障の観点から「調査したい」と述べた。
産経新聞「次世代電池技術、機微情報が中国に流出か」より
どうやら福岡県にあるAPB社という会社から技術漏洩があった可能性があるということだ。
一部報道について
2024.11.22
北國銀行グループの投資会社が東京地裁に会社更生法手続き開始の申し立てたとの報道がありましたが、この件については、申立人により2024年11月21日付で取下げられたとの通知を受けました。 今後、開示すべき事項が判明した場合には、速やかに公表いたします。
APB社のサイトより
これの関係の記事が幾つかAPB社のサイトに開示されているが、どうやら資金繰りがかなり悪化していたようだ。その辺りが狙われた感じはするんだけど、詳しいことは分からない。
ただ、このAPB社、かなり技術力を高く宣伝していたらしく、NEDOにも参加していた。そして、NEDOから支援が停止された。
APB社への支援
Q:NEDOが支援しています全樹脂電池を開発しているAPBに対して、メインバンク側が会社更生法の適用の申立てをしたことが分かりました。一方、NEDOも研究開発事業の一時停止を命じたということも併せて分かりまして、現状についての大臣の受け止めと、また、今後の支援の方向性について、NEDOは量産化に向けた一気通貫の支援の在り方を議論している中でこうした事態が起きていることを踏まえまして、お考えをお聞かせいただければと思います。
A:ご質問のAPB社に対しましては、グリーンイノベーション基金事業、いわゆるGIですけれども、車載用を想定しました全樹脂電池の高容量化に関する研究開発事業を支援してきたところだと承知をしています。 同事業では、定期的に事業の進捗等を評価して、その見直しや中止を行うステージゲート審査を設けているところであります。今お話しされたのは、多分そのことだろうと思いますが、11月12日の審査委員会において、車載用電池としてはエネルギー密度の達成が十分でない等、APB社は目標達成が困難な状況にあり、支援継続の基準を満たさないと判断されたと承知しています。 APB社について、それ以上のコメントは個々ということで控えさせていただきますけれども、一般論として、次世代蓄電池の開発競争が、国際化上、激化している中で、全樹脂電池に限らず我が国が強みを持ち得る有望な技術については、今後ともしっかりと必要な支援を講じてまいりたいと思っております。
経済産業省のサイトより
なお、APB社の創業者は元日産自動車の技術者で、リーフの車載電池の開発に関わった人物らしい。
このAPB社の技術が、流出しては困るものだったかどうかは、わからない。少なくともNEDOはNGを出したようだが、技術的に劣っているというよりは車載用の全固体電池にとっては要求仕様未達という話なので、潜水艦に搭載が出来ないかというとそうではないと思う。
お家騒動
で、この話、破綻危機の内幕に関して創業者がインタビューを受けているんだよね。
次世代電池のAPBが破綻危機 創業者「わなにかかった」
2024年12月25日 2:00
次世代電池の一つ「全樹脂電池」を開発中のスタートアップ、APB(福井県越前市)が経営破綻の危機にひんしている。メインバンクである北国フィナンシャルホールディングス(FHD)傘下の投資子会社が、東京地裁にAPBの会社更生法適用を申請し、その後取り下げるなど、経営権を巡る争いで混乱が続いている。資金繰りが悪化していたことが背景と見られる。
~~略~~
トリプルワン出身の大島氏がAPB代表に就いていることで、堀江氏が懸念するのが技術の海外流出だ。23年ごろから、大島氏は堀江氏に対して中国企業との業務提携を度々提案してきたという。「中国の電池メーカーが開発した電池をAPBで造れないか」「全樹脂電池の技術情報について質問が他社から来た」などとの問い合わせがあったという。
あるAPBの関係者は「大島氏とのメールのやり取りには中国企業と見られる会社に全樹脂電池の技術情報を流したり、提携に向けて中国企業とNDA(秘密保持契約)を結んだりした内容があった」と証言する。堀江氏は懸念点の一つとして「(現経営陣が)全樹脂電池の技術を中国企業に売りかねない」と主張する。
日本経済新聞より
お家騒動に関してはノーコメントとしたいが、会社経営にトリプルワンという企業が絡んでいたことが今回の騒ぎに繋がったようだ。
そして、こういったケースで技術流出する場合には、日本政府には止められない可能性が高いね。
セキュリティークリアランス制度
現在は、セキュリティークリアランス制度が運用基準の最終案が纏められた段階。これが開始されれば、もうちょっとマシにはなると思うんだけど。
ただ、背景情報についてのチェックがやや甘いのは気になる。
“重要情報へのアクセス限定制度”の最終案 個人情報を調査
2025年1月22日 17時09分
経済安全保障上、重要な情報へのアクセスを国が信頼性を確認した人に限定する「セキュリティークリアランス」制度の運用基準の最終案がまとまりました。本人の同意を前提に、国が家賃の滞納や飲酒のトラブルの有無などの個人情報を調査するとしています。
~~略~~
それによりますと情報を扱う当事者本人の同意を前提に個人情報を調べるとしていて、国籍や学歴、職歴のほか、犯罪歴、それに、いずれも過去10年の精神疾患の治療、飲酒のトラブル、家賃の滞納、クレジットカードの使用停止の経験の有無なども含まれます。
NHKニュースより
このニュースを見る限りは、今回のケースでの情報流出は止められないことに……。
やっぱり、スパイ防止法が必要では?或いは産業スパイ防止法として、外国への機微技術流出を止める法制化が必須だと思う。
不正競争防止法では、法律構成上、不正競争が生じ得ない国家同士の問題に対処できないんだよね。スパイ防止法が望ましいのだけれど、それが無理ならせめて技術流出防止を前提とした法律作ろうよ。
コメント
APB社の電池については、安全性は確かにいいのかもしれませんけど、容量・寿命などなど眉唾で見ておりました。まあ車載では今の状態では無理そうだな、良くてもまだ時間がかかりそうだなと。
「安全」だけなら、初代プリウスのニッケル水素だって今のリチウムイオンに比べたら安全ですからね。車載用途(車体駆動用としての)じゃなけりゃ選択肢は他にもありますし。
閑話休題。
スパイ防止法は必要ですね。
適応範囲はもちろん大事です。ですが、中国国籍の方は、中国の法律上、みんなスパイになり得るので、もっと国会で議論してほしいところです。(・・・それなのにビザ緩和とは・・・)
「知る権利」だと選挙で選ばれてもいないマスコミがガチャガチャ言おうとも、国民の安全のほうが上だと思うのですがね。
P.S.
経産省が情報管理強化の目的で執務室を施錠したのは当然。こんな当たり前のことでマスコミが騒ぎましたが、施錠したらいけないんでしょうかね。話が散らかるのでこのへんで。
APB社の電池、どこまでモノになったのかは興味深いのですが、車載電池に限定しなくとも、充電速度が速ければ十分に使い道がありますし。
出力の問題もありそうなので、直ぐには製品化は難しいのかもしれませんね。
スパイ防止法、少なくとも産業スパイに関して専門取り締まり機関を作らないと、なかなかどうして。
現行法制でも、しっかり取り締まる事が出来ればあるていどの効力が出せます。もちろん、今回のケースのように網をかけるのが難しい部分もあるのですが、現行法制下でも積極的な取り締まりが出来てるとは言い難いですから。
こんにちは。
このニュース、開発元の親会社が親中というか中国の資金で動いている、という記事を昨日見て頭抱えました。
確かに、そういうのだと規制は難しいのですが……
もう、軍事関係は防衛省が丸抱えするしかないか……
というかしろ。
※最大の問題は、中国に言われて金で動くクソ売国奴どもが、政治にも経済にもマスコミにもごまんと居ることなんでしょう。
こんにちは。
SC法制をとにかく施行して、更に網をかけていく手法を模索しないとダメですね。
軍事関係は、工廠を作る必要があるのではないでしょうか。砲弾などの製造だって、やれる体制にしないと有事の時に対応できませんし。