今朝の記事ともリンクする話なのだが、こちらも少し整理しておいた方が良いように思う。
トランプ氏、日本など相互関税「90日間停止」-対中125%に引き上げ
2025年4月10日 2:24 JST 更新日時 2025年4月10日 9:04 JST
トランプ米大統領は9日、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対して、高水準の「相互関税」を90日間停止することを承認したと明らかにした。一方、中国に対しては関税を125%に引き上げた。
Bloombergより
凄いなぁ、ジェットコースターのようだ。
関税戦争勃発
経済ジェットコースター
何というか、トランプ氏の横暴っぷりは前代未聞ではある。アメリカ以外の国がこんなことやったら、全世界から総スカンを食らうこと請け合いである。いや、アメリカも大体そんな感じになっているだろう。
ただ、個人的には「トランプ氏だからなぁ」と納得してしまう部分も。随分麻痺しているのだろうか?
さておき、全世界向けに高水準の関税を発動するぞと脅していたトランプ氏、高率関税に関しては唐突に方針転換した。
世界56カ国と欧州連合(EU)に対する高水準の相互関税が発動された約13時間後というタイミングで突如、トランプ氏は方針を転換した。相互関税の発動を受けて金融市場がさらに混乱し、リセッション(景気後退)懸念も強まり、トランプ政権に対しては経済界や投資家から政策を見直すよう求める圧力が強まっていた。
トランプ氏はホワイトハウスで方針変更の理由を巡る記者団の質問に対し、「国民が少し行き過ぎていると思った」とし、「彼らは少し興奮し、また少し恐れていた」と語った。
Bloomberg「トランプ氏、日本など相互関税」より
こ、このジジイは!
とまあ、怒りはさておき、このインパクトによって何が起きたのか?といえば、経済への大幅なプラスの影響である。
トランプ氏の発表を受け、米株式相場は2008年以来の大幅高となり、S&P500種株価指数が9.5%高、ナスダック100指数は12%高で取引を終了。外国為替市場では円がドルに対して下げに転じた。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは米リセッション予想を撤回した。
トランプ氏はその後に大統領執務室で、「見ての通り、株式市場は記録的な好パフォーマンスとなっている。それが続くよう願う」と話した。
Bloomberg「トランプ氏、日本など相互関税」より
こ、このジジイは!(二回目)
90日の猶予
さて、トランプ氏の方針は突如として転換された。いや、即時関税発効という話が猶予されたという話ではある。欺されてはいけない。
トランプ氏は米東部時間9日午後1時18分(日本時間10日午前2時18分)ごろの自身のSNSへの投稿で今回の決定を発表した。「75カ国余り」が貿易問題を巡り米国との交渉を申し入れ、「私の強力な呼び掛けにより、いかなる形でも報復していない」と指摘。「90日間の一時停止を承認し、この期間中の相互関税を大幅に引き下げて10%とする。即時発効する」と表明した。
Bloomberg「トランプ氏、日本など相互関税」より
トランプ氏の意図としては、「関税はかける、かけるといったが、それは即時ではなく、10年後でも可能」……、失礼、10年後ではなく90日後なのだが、「この間で交渉してこい!」ということだろう。
リアル利根川は止めて欲しいのだが、とにかく関税の問題は猶予されたのである。
石破首相 トランプ大統領と電話会談 担当閣僚が関税協議継続へ
2025年4月8日 6時58分
アメリカの関税措置をめぐり、石破総理大臣は7日夜、トランプ大統領と電話で会談し、担当閣僚を指名して協議を続けることで一致しました。今後、担当閣僚の人選を進めるとともに、あらゆるレベルで粘り強く措置の見直しを求めていく方針です。
NHKニュースより
そして、ボンクラの評価が高い石破氏だが、アメリカ関税措置に驚いて早速トランプ氏にお電話をした。
この内容は明らかにされていないが、電話時間は25分程度だと報じられている。石破氏は英語が話せないので、通訳が入ったことを考えると、正味10分程度の内容であったと思われる。碌な話し合いになったとは思えない。
だが、結果的には評価されたらしく、優先交渉権を貰った。

これでしっかりとした協議が出来ればというところだ。が、見方を変えれば完全にトランプ氏の術中に嵌まった感じだな。
トランプ関税巡る日米交渉、米側は財務長官ら2人を任命「生産的なやりとり楽しみにしている」
2025/04/08 20:55
政府は8日、米国による関税措置の見直しに向けた対米交渉の担当閣僚に赤沢経済再生相を充てる人事を発表した。米国のトランプ大統領は、ベッセント米財務長官とグリア通商代表部(USTR)代表を日本との貿易交渉担当に任命し、交渉の枠組みが固まった。関税のほか、通貨や補助金などについても交渉が行われる見通しだ。
讀賣新聞より
まあ、しっかり交渉して欲しい。現時点では10%の関税がかけられることまでは撤回されていないのだし。
支那には125%
さて、そんな中、猶予されずに高率関税を適用される国がある。それが支那だ。
こちらの記事でも触れたが、支那はアメリカとのチキンレースをお望みらしいのである。
中国 米追加関税の対抗措置を発表 米の輸入品 84%に引き上げ
2025年4月9日 22時18分
中国政府は、アメリカのトランプ政権が中国からの輸入品への追加関税をあわせて104%に引き上げたことへの対抗措置を発表しました。10日、発動するとしていたアメリカからの輸入品への追加関税の税率を34%から50%引き上げて84%にするとしています。米中間の貿易摩擦が激しさを増し、世界経済に打撃を与えるリスクが一段と高まっています。
NHKニュースより
アメリカが支那に対してかけた関税は、20%+34%+50%で、あわせて104%となっていた。これに対して支那が84%にしたる!と、対抗措置を発表。
これについて、中国財政省は9日夜、10日、発動するとしていたアメリカからの輸入品への追加関税の税率を34%からアメリカ側と同じ50%を上乗せして84%にすると発表しました。
財政省は「アメリカが対中関税をさらに引き上げた行為は誤りに誤りを重ねるもので、中国の正当な権益を深刻に侵害し、ルールに基づく多国間貿易体制を著しく損なうものだ」としています。
NHKニュース「中国 米追加関税の対抗措置を発表 米の輸入品 84%に引き上げ」より
支那が対アメリカ関税を引き上げるのは、勝手にされれば宜しいと思う。アメリカの関税引き上げを「ルールに基づく多国間貿易体制を著しく損なうもの」と批判しながらも、自分も関税を引き上げたのだからどの口が言うのかと呆れるのだが。
だが、これに対してアメリカは更に付き合うことにしたらしい。
一方でトランプ氏は、中国が交渉を拒否しているとして関税を引き上げると説明。「世界の市場に対する中国の敬意の欠如を踏まえ、米国は中国に課す関税を125%に引き上げる。即時発効だ」とSNSでコメントした。
Bloomberg「トランプ氏、日本など相互関税」より
トランプ氏「即時発効だ!」
うんうん、頑張ってくれたまえ。125%(対支那)対84%(対アメリカ)だと、支那がちょっと負けているね。更にドン!だ。(違
Office365が!
なお、これとは別に即時発効されたものがこちら。
Microsoft、BGIに「Office365」提供停止 米中緊張影響か
2025年4月9日 10:00
米マイクロソフトが中国遺伝子解析大手の華大基因(BGI)に対してメールを含む業務ソフトの提供を停止したことがわかった。
複数の従業員と3日に社内で送信されたメールのスクリーンショットによると、BGIの従業員はマイクロソフトの業務ソフト「ワード」「パワーポイント」「エクセル」「チームズ」を含む多くの「オフィス365」サービスに接続できていない。
日本経済新聞より
すげーな、日本にもキルスイッチ仕込まれているわ。この記事の詳細は不明なので、どんな規模での出来事なのかとか、華大基因に対してだけの措置なのかとか、サッパリ不明である。
ただ、OneDriveが使えなくなったのは笑う。いや、該当者は笑えないのだろうが。
そもそも華大基因は何をしたのやら。
健康アプリ使っただけなのに 中国が狙う1.2億人の情報
2024年9月2日 2:00 (2024年9月8日 8:25更新)
米中対立の激化とともに深まった世界の分断は経済と安全保障を切り離せない時代をもたらした。強権国家が自国の要求を他国にのませようと、輸出入の制限や関税で圧力をかける姿が目立つ。
日本経済新聞より
どうも、アメリカは支那がゲノムデータなどを狙っていて、製薬を含めて規制しようとしているらしい。
中国バイオ企業との取引制限法案、米下院が可決 無錫薬明康徳など
2024年9月10日午後 7:15
米下院は9日、国家安全保障上の懸念を理由に中国の無錫薬明康徳新薬開発や華大基因(BGI)など複数のバイオテクノロジー企業との取引を制限することを目的とした法案を可決した。
ロイターより
今回の事態はそれ絡みの可能性があるのだが、何れにしてもきな臭い動きになりつつある。そういえば、無関係だと思うが昨日僕のPCがWindows Updateの事故に巻き込まれて起動不能になった。困るよねぇ、マイクロソフト君。
まあ、支那共産党としてはこういった事態も予測はしていたようで、OSや半導体の自主開発に邁進していた。
だから、一時的にマイクロソフトの嫌がらせが起きたにせよ、支那は華麗に回避していくかもしれない。
だが、何れにしてもこの流れが続くとアメリカと支那との断裂は決定的なものになって、日本は恐らく「どっちにつくの」との決断を迫られる展開になる。というか、既になっている。
交渉で打開できるのか
さて、そうなってくると、この話はどうなるのやら。
投資家らの関心は今後、中国にシフトし、同国が再び対米関税率を引き上げるか、それとも交渉にオープンな姿勢を示唆するかに向かいそうだ。トランプ氏は中国に交渉に応じるよう強いるため、対中関税率をさらに引き上げる必要性に関し、「それは想像できない。もっとやらなければならない状況は考えられない」との考えを示した。
Bloomberg「トランプ氏、日本など相互関税」より
ええと、今のところ対支那関税率のこれ以上の引き上げは考えていないような話が出ているが、既に125%である。そりゃ、これ以上増やす意味があるのか分からない。
ただ、これも「交渉の手段だ」というのがトランプ氏のやり方だと思うので、支那が交渉に乗ってくれば方向は変わっていく可能性は残っている。残っているけど、どうなんだろうなぁ。
中国株反発、「国家隊」が買い入れ-台湾株価指数は24年以来の安値
2025年4月8日 17:17 JST
中国株は8日の取引で反発。前日の急落を受け、「国家隊」と呼ばれる政府系ファンドが株式を買い入れた。中国人民銀行(中央銀行)は市場を安定させるため、こうした株買いを資金面で支えると表明した。
Bloombergより
中国首相、積極的経済政策の必要性を強調 「外部衝撃に対応」
2025年4月10日午前 1:40
中国の李強首相は9日、「外部からの衝撃」で中国の経済の安定運営に逆風が吹く中、より積極的なマクロ経済政策を、時期を逃さず展開する必要があると述べた。エコノミストや企業家とのシンポジウムでの発言として、国営新華社が報じた。
ロイターより
随分と混乱しているようだが、支那が自身の経済政策の失敗を認めてアメリカとの貿易に望みを繋ぐような展開はちょっと想像出来ない。現時点では、支那は真っ向からトランプ氏の姿勢を否定して、「俺こそが正しいのだ」「オマエは間違っている」とやっているのでね。
多分、ここの関係は当面絶望的なままだろう。
経済戦争は次の段階へ
これ、しかし支那はロシアに全掛け(オール・イン)する気なのだろうか?前の記事でも少し触れたが、軍事的にも一体化してウクライナ戦線を戦う話になってくるのか、というかなりきな臭い話が出ている。
このような状況を踏まえ、格付け企業フィッチは4月3日、「政府債務の国内総生産(GDP)比率が今後数年で急激に上昇する」として、中国のソブリン格付けを「Aプラス」から「A」に引き下げた。
苦境に陥りつつある中国政府は4月4日、すべての米国産輸入品に34%の追加関税を課すと発表した。面子を重視する中国政府のいつもの強面対応だが、米国がさらなる制裁を講じる可能性が高く、貿易戦争が沈静化する目途はまったく立たなくなっている。
Yahoo!ニュースより
支那に優しい格付け企業だが、流石に「ちょっと不味いんじゃね」という判断になっている。だが、この情報は4月4日時点の話。4月10日現在は更に状況が悪化している。
トランプ・ワールドは、一日先の展開が読めないのである。
支那にとっても変数を計算できない状況は困るのだろうが、メンツを優先する国だからなぁ。
支那は交渉で何とかするのか、それとも対立するのか。対立するならロシアと組むのか?なかなか厄介な展開になってきたね。
追記
展開が早いよ……。
中国政府が米国への旅行や留学に注意喚起 「米中の経済関係悪化」をリスク要因に挙げる
2025/4/10 07:29
中国文化観光省は9日夜、米国への渡航を慎重に判断するよう中国人旅行客に促すリスク情報を発表した。同省は、要因として「中国と米国の経済・貿易関係悪化や、米国内の安全状況」を挙げた。中国教育省も同日、米国への留学に関して「安全リスク」を考慮するよう注意喚起した。
産経新聞より
昨日の夜のニュースらしいのだけれど、結構展開早いなぁ。
ただ、何が面白いって世界中を巻き込みながらもトランプ氏は結局、対支那の構図を描きつつあるんだよね。策士なのか運が良いのか。そして、ロシアに近づきつつも気づいたらダメージを与えている。
政治は結果責任なので、トランプ氏が何をやったにせよ、狙い通りに帳尻を合わせていくのだとしたら、凄い人物だと言わざるを得ない。いや、今の時点でも十分に凄いと思うんだけどさ。歴史に名を残す変人になるか、偉人になるか、そういうインパクトを与える人物が大統領になったと言うことだけは間違いなさそうだ。
追記2
コメントでブラックロックについての言及を頂いて、気にしていたのだけれど。数日前にこんな記事を出していた。
米国はすでに景気後退下、株価さらに20%安も-ブラックロックCEO
2025年4月8日 9:06 JST
資産運用大手の米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は7日、同氏が話をしたほとんどのCEOが米国はリセッション(景気後退)下にあると考えていると述べた。その上でトランプ大統領の関税政策が世界経済を不安定にし、株価がさらに20%下落する可能性も排除しないと警告した。
Bloombergより
予想はこの翌日に事態が大きく動いたので外したとも言えるが。
フィンク氏は「長期的に見れば、売り時というより買い時だ。だからといって現値からさらに20%下落する可能性がないというわけではない」とコメントした。
米ドルについては、消費者や経済全体が関税に適応するにつれて弱含む可能性が高く、消費もおそらく減少すると予想。一方で、長期的にはトランプ氏が成長政策に重点を置くとの見方を示した。
Bloombergより
流石というか。
「今は買い時だ」と言っているわけで、この通りに全力で買っていたら、多分笑いが止まらない状態になっているのでは。「長期的にはトランプ氏が成長政策に重点を置く」という判断も、概ねあたっている気がするよ。
コメント
ジェットコースターに乗りながら豪華幕の内便当(国技館みたいな)を食うごとき記事でした。面白いが(いや…そういう場合ではないが面白がるしかない……)こう、
てんこ盛りで。
やっぱり人間核弾頭だなぁ。
イーロン・マスクが「やめて〜」と言ったそうですが。
邦貨にして10兆円を動かすとされてるブラックロックのCEOとかは、この事態をもう観てるんだろう??
ところで気になるので質問いいすか?
「キルスイッチ」のワードをお使いでしたが、それってマイクロソフトのOSとかにバックドア的にシャットダウン機能が付いていて、社の判断次第で一斉に落とす事が(遠隔操作で)てきると言う事すか??
それだとすると怖いすねインフラ的に。
いえいえ、あそこでの「キルスイッチ」の意味は、Office365って認証通らないとソフト起動が出来ないアイテムなんですよ。その認証取り消す(データを誤って消したとか言えば)だけで、使えなくなるって意味でして。
この方法は即日効果があるわけじゃないんですが、その他にもWindowsアップデートにバグを仕込んでおいて、起動不能にするなんてことも容易にできてしまって、それだと即日使えなくなるという方法も。やられたら発狂する自身があります(業務的に)。
まあ、その時点でマイクロソフト社の信用は地に落ちるわけですが、アメリカがどこかと戦争仕掛けるなら、アリなんですよね。戦闘機のキルスイッチ的な話とは違うレベルのヤバさがあります。
こんにちは。
リアル利根川……焼き土下座にならない事を祈ります。
それにしても、「関税倍プッシュだ!」的な、なんとも福本語録の似合う展開……
笑えないけど、笑っちゃいます。
笑えないけど。
そして、そんな中、わーくにのアホ外相は先日、支那韓国に修学旅行行かせるとか寝言ほざいてませんでしたっけ……早く何とかしないと。
こんばんは。
ネタが豊富で困ります。
外務大臣、碌な仕事していません。あれで官房長官の林氏の有能さが光る仕様なのかもしれませんが、それでも岩屋氏もあれで無能というわけではありません。
一番使えないのは、石破氏ですかねぇ。
支那は、米国との関税チキンレースがトランプ政権の罠だと判っているようですから、わりと冷静に軟着陸策を探しているところだろうと思われます。
今日の為替市場では、人民元が$1=RMB7.31までやや戻しましたが、市場は軟調でほとんど誤差程度の動きでした。
このところ、支那の実体経済の悪化から、ドル買い人民元売りが進んでいますが、関税戦争の煽りからの資本逃避圧力を抑えるために、支那の金融当局が米国債を取り崩して、人民元買い介入している所感があります。
中国が米国債売り? 米長期金利、報復観測で急上昇(4/8日経)
https://tinyurl.com/yxh3d2ef
日経は報復説ですが、自分は為替対策説です。支那の対米経済報復は、費用対効果が低いでしょう。悪目立ちして、トランプ大統領から追加報復を受けるリスクもありますし。
支那の浙江省・江蘇省・広東省には、全輸出企業の3割が集中していると聞き及びますが、ベトナムへの46%関税率適用で迂回経路も塞がれて万事休す、操業停止する企業が続出しているようです。
「もう付き合わない」とか言っていましたから、付き合って引き上げるのは悪手だとは思っているのでしょう。
でも、米国債を売るってことは人民元を買うことになりますから、金融引き締めになってしまいます。流動性の悪化でデフレ対策としてはあまり良いことにはなりません。あまり大っぴらに出来ませんから、これ以上は難しいのでは。
日本を迂回ルートに使われないように、注意が必要ですね。何やら、公明党が支那詣に行く気らしいので、パージの準備が必要だと思いますよ。