上がる時もあれば下がる時もあるのだが、ロシアはコレしか売るものがないんだよね。原油取引価格が下がると経済にも悪影響は出る。
ロシアの原油価格が50ドルに下落
2025年4月7日(月)14:50
ブルームバーグの報道によると、世界的な原油価格の下落により、ロシアの主力原油であるウラル産原油の価格が1バレル50ドルまで下落した。
RBC-UKRAINEより
これもトランプ氏のせいである。
戦局に影響
原油価格は世界的に下落
日本語版のBloombergは報じていないし、英語版は有料記事なので、Bloombergを引用するRBCからの引用である。
アルガス・メディアによると、バルト海沿岸のプリモルスク港産のウラル原油の価格は4月4日に52.76ドルまで下落した。3年以上前に侵攻が始まって以来、ロシアの原油は世界の指標であるブレント原油に比べて大幅に安い価格で取引されている。
RBC-UKRAINE「ロシアの原油価格が50ドルに下落」より
ロシアの主要産業のうち、原油は外国への輸出をして外貨を稼ぐ手段としては非常に重要である。

データが古いが、傾向は大きく変わっていない。外貨獲得手段としては圧倒的に「鉱物性燃料」、つまり原油と天然ガスに依存している。
ゴールドマン、原油価格予想を下方修正 関税と供給増踏まえ
2025年4月4日午後 2:34
ゴールドマン・サックスは、今年の北海ブレント原油先物の平均価格予想を5.5%引き下げて1バレル=69ドルとし、米WTI原油先物は4.3%引き下げて66ドルとした。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の供給増と、世界貿易戦争がリセッション(景気後退)の引き金となるリスクを挙げた。
ロイターより
さて、コレが先日のニュースで、北海ブレント原油の先物平均価格予想が1バレル=10ドルまで下落したよという内容である。
ウラル産原油はこの価格より概ね10ドル前後低い価格で取引される傾向にあるのだけれど、更に低い1バレル=53ドル程度だったということなので、価格の低迷の影響を色濃く受けたと言えるのだろう。
トランプ氏のせい
なお、北海ブレント原油の価格は、トランプ氏の影響が大きいと分析されている。
原油は3日、22年以来の大幅な下落率を記録した。トランプ米大統領が2日に発表した貿易相手国への相互関税や、OPECプラス有志国による生産拡大決定が圧迫要因となった。
ロイター「ゴールドマン、原油価格予想を下方修正」より
理屈としては単純で、世界経済が減速するので原油取引量も減るのだろうと予測されているってことだね。
先物取引は景気動向に影響されやすいので、順当な結果であるとは言えるのだろう。特に支那との関係でかなり貿易が停滞しそうだしね。
で、北海ブレント原油の価格が下がるとそれに連動してウラル産原油の取引価格も下がる。そうすると、ロシアはかなり貿易でも苦戦することになりそうだ。
アルガス・メディアによると、バルト海沿岸のプリモルスク港産のウラル原油の価格は4月4日に52.76ドルまで下落した。3年以上前に侵攻が始まって以来、ロシアの原油は世界の指標であるブレント原油に比べて大幅に安い価格で取引されている。
RBC-UKRAINE「ロシアの原油価格が50ドルに下落」より

ロシア財務省が想定している原油価格は1バレル=70ドルだと言われていたが、先日の報道では60ドル近くになると予想を修正している。
ロシア財務省は先月、2025年の平均原油価格は同国の年間予算で設定された1バレル当たり70ドルではなく、60ドル近くになると予想していると発表した。このシナリオでは、財政赤字はGDPの1%を超えない程度に増加すると同省は予測している。
RBC-UKRAINE「ロシアの原油価格が50ドルに下落」より
ところがここから更に下回っているのが現状で、赤字ギリギリで原油輸出をするということになりかねない。詳細は不明だが、1バレル=50ドルは赤字になるとの噂。どこから赤字からかは知らないが、現状でも利益は相当削られている。ただでさえ輸送コストが上がっているので、随分無理して原油輸出しているようだが、それも厳しくなってきている。
ロシア密輸タンカー群「対策はまだ5%」 「影の船団」が破壊した国際海洋秩序を立て直せ
2025/4/8 15:00
トランプ米大統領が進めるウクライナ侵略戦争の停戦交渉はたいへん難しいものだ。先行きは予断を許さないが、対ロシア制裁やウクライナ支援の強化でロシアを弱めなければ、プーチン露大統領は真摯な交渉に応じないのではないか。
~~略~~
キーウ経済大(KSE)の調査によれば、今年1月にロシアが輸出した原油の86%が「影の船団」によるものだった。石油・天然ガス収入は露国家予算の約3割を占めるため、ロシアの戦費を減らす上で「影の船団」対策は急務だ。
産経新聞より
ロシア産原油は違法タンカーによって輸出されているようで、コレの取り締まりが進んでいない状況ではあるが、原油価格が下落することでこの「影の船団」にも打撃を与えることが可能である。
ロシアとウクライナの話を深掘りする気はないが、トランプ関税がロシアの経済に打撃を与えたことで、そちらの戦局にも影響するという不思議な構図になっているという話である。多分、直ちに影響は出ないとは思うが。
追記
あー。
原油先物価格 約4年2か月ぶりに1バレル=55ドル台まで値下がり
2025年4月9日 22時20分
9日の原油市場はトランプ政権による「相互関税」でアメリカと中国の貿易摩擦が激化し、世界経済が減速するという懸念が強まり、国際的な原油の先物価格が一時、およそ4年2か月ぶりに1バレル=55ドル台まで値下がりしました。
NHKニュースより
下り最速の原油価格急落。
当然、ウラル産原油も下がっているだろうけれど、この価格も昇降が激しいから。
ロシア産ウラル原油、価格上限割り込む 世界的な相場安で
2024年9月11日午後 12:39
ロシア産ウラル原油価格が10日、西側諸国が同国への経済制裁として設定した、ロシア産原油の取引価格上限の1バレル=60ドルを割り込んだ。ロイターの試算で明らかになった。世界的な原油相場安が背景にある。
ロイターより
これは去年9月の記事で、この時は1バレル=60ドルを割り込む勢いだった。が、今回は先物価格がこの水準まで下がってしまったので、北海ブレントも更に下がると思われる。そして、それに連動するウラル産原油も、ね。

状況的にはまだしばらくこの傾向は続きそうなので、ロシアの焦燥感を煽る結果になりそうだ。尤も、この手の取引価格は上がったり下がったりというものなので、傾向を見て一喜一憂しても仕方がないんだけどね。
コメント
トランプおかげでプーチン苦し。何がどうなるかわからないもんですね。
トランプ氏、まさか狙ったわけではないでしょうに。プーチン氏も苦笑いですかね。
横合いから失礼。
>これもトランプ氏のせいである。
お説の通り、だと思います。
目に見えるところ、センセーショナルな所だけを騒ぎ立てると、その裏で進行する別件を見落としがち、というのもあるのでは。
ロシアは今、失業率が下がって内需ウハウハ、みたいな分析がありますが、それは実際そうなのでしょうけど、鉱物資源と燃料と、なにより人的資源を先食いして文字通り食い潰してますから、今がピークでここから苦しくなるのでは。
何きっかけでバランス崩すか分からないですが、一度崩れるとあっという間に崩壊するかも……
※個人的にはして欲しい。
原油輸出は、ロシアの歳入の3割を占めているそうなので、国際原油価格の大きな下落は、いまのロシア政府にとってかなりの痛手でしょう。これを受けて、外資のほとんどいないロシア株も冷水を浴びせられ2%落ちた模様。
今後の展開次第ですが、火の車状態のロシア財政が一層窮乏すれば、トランプ大統領の関税カードは、期せずして、ウクライナ停戦に向けての対露カードになるかも。
ただ、支那がロシアに助け舟を出しそうで、そうなると本末転倒なのですが。
クレムリンは大騒ぎみたいですね。
そして状況は既に変化していて、1つのニュースに一喜一憂するのが馬鹿らしいというか。
僕の分析では支那はロシアに助け船出している場合じゃないのですよ。関税戦争の結果、アメリカへの貿易額を失うとこれがまたかなりの悪影響が予想されるわけで。
ロシアに組みするとヨーロッパへの足がかりも崩れそうなんですよね。