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政府方針として米輸出量増加が掲げられる

安全保障
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お米の話、ずっと気にしてはいたのだけれど、政府もやっと重い腰を上げたらしい。

コメの輸出量 2030年に35万トンまで増やす目標掲げる方針 政府

2025年3月12日 12時28分

政府は、パックごはんなどを含めたコメの輸出量を2030年に35万トンまで増やす新たな目標を掲げる方針を固めました。輸出向けも含めコメの生産量を増やし、国内で需給がひっ迫した際に国内向けに回すなど柔軟な運用を行うねらいもあるとみられます。

NHKニュースより

これに関しては批判も随分集まっているようだが、僕は歓迎したい。

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農政の失敗と方向転換

米価コントロールの不確実性

先日取り上げようとしたニュースの1つに、こんなニュースがある。農水大臣に対するレクが足りなかった案件だ。

江藤拓農水相、食糧法に価格の安定「書いていない」4連発 実際は法律名にも条文にも明記

2025/3/4 10:06

江藤拓農林水産相は2月28日の衆院予算委員会分科会で、備蓄米放出に関連して、食糧法には価格の安定は「書いていない」と4回繰り返した。実際には法律の正式名称に「価格の安定」が入っているほか、条文にも書かれている。指摘を受けて訂正したが、担当閣僚としての資質を問う声も出そうだ。

産経新聞より

「令和の米騒動」という話はだんだん構図が見えてきて、日本の農政の誤りも浮き彫りになってきた。この時点で江藤氏は、そういう点の理解が足りていなかったということなんだろう。今は大丈夫だよね?

さて、この話は数回にわたって取り上げてきた。

スーパーの棚から米が消えたのは記憶に新しいのだが、「何故そうなったのか」は記事を書いた去年の9月頃はハッキリ分かっていなかった。だが、市場に米は流通していた需要が膨らんでいる傾向が見えていたので、需要と供給のバランスが崩れたからだという推測が立てられた。

メディアが「米が足りない」と騒いだことでその騒ぎは加速するわけだが、政府は「9月過ぎに新米が出てこれば落ち着くから」という説明をしていた。

ところが翌年3月に至ってもまだ米の価格は上がり続けている。

何故そんなことになったのだろうか?

米穀安定供給確保支援機構より

ザックリいうと、米トレーサビリティ法によって米の流通を捕捉していたハズの農林水産省が、「米生産者から消費者・外食事業者」という販売ルートを捕捉しきれていなかったために、予測を誤ったからだと思われる。

供給量に関しては、JAを通して把握される分は比較的正確に把握されるのだと思う。ただ、農家が直接小売業に販売する分は正確な予測に寄与しないため、概算の量が見積もられた可能性が高い。

一方の需要予測に関しては、POSより集められたデータ以外に例年通りに外食産業に消費されるという予測を立てたと考えられ、コレに加えて米の値上がりを見越して買い占める層がいたために大幅にズレが生じた。更にメディアが煽るとこで売り惜しみ、買い占めが加速したことが例年にない値上がりを招いたということなのだろう。

つまり、去年9月に新米が販売されて供給量が増えると見込まれた分よりも買い占めが勝ったということなのだろう。随分と、投機的な米の売買が行われていたようだし。

「米の安定供給」という欺瞞

米の販売自由化によって、農家が直接業者に米を卸すことが可能となった。その結果、買い占め売り惜しみなどの捕捉が難しくなった。

お米は生鮮食品なので、基本的には長期保存が出来ない。政府はこの点を考慮して玄米の状態で(精米品よりは長期保存が可能)、温度・湿度をコントロールしながら長期保存をしている。しかし、民間ではそれがちょっと難しい。

それでも、大手スーパーなどは大量一括購入をした上で、保存設備による保存をやっているようだ。大型冷蔵があれば年単位で保存が可能である。ただ、大手スーパーの取り扱う米の量はPOSデータを吸い上げることで捕捉が可能なんだけど、農協と大手スーパーのデータだけでお米の流通が捕捉できなくなっているのが、現状である。

その上で、お米の需要が減少しているので、生産量を絞るのが農水省の仕事だとお役人は勘違いしていた。

お米の生産を続けて貰うためには、価格維持が必須である。そのために生産量を絞り、絞るためには減少する利益を補填する為に補助金を注入する。そういう誤った政策をずっと続けてきたのが農水省なのだ。

批判ばかりしても仕方はないが、販路拡大の努力をしてこなかったのは農家の責任か、農協の責任か、或いは政府の責任か、と、そういう観点で考えると、流通をコントロールしていた農水省の責任、つまり政府の農政が間違っていたということなのである。大雑把に言うと、だが。

食糧法の設計ミス

安定供給するために価格と供給量のバランスをとっており、需要の増加を考えていなかったのが、ザックリ「農政の失敗」である。

そして、その根拠としているのが食糧法なんだけど、そもそもこの法律、昭和17年に制定された食糧管理法をベースに作られたもので、食糧管理法は戦時下における食糧の維持が目的で作られている。つまり、設計思想そのものが古いのである。

この法律は平成6年まで維持されて、その後は「主要食糧の需要及び価格の安定に関する法律」(食糧法)に刷新されて今に至るんだけど、法律制定時の事件、1993年米騒動(平成5年)とウルグアイ・ラウンド(平成7年)の影響を受けて法制定趣旨と、運用にズレがある。

本来、主要食糧の安定供給を行うべき設計がなされたのに、外圧(ウルグアイ・ラウンド)によって減反政策が続けられたために、「価格維持の為に販路の拡大」ではなく「価格維持の為に生産調整を」という方針を採った。

しかし、需要と供給のバランスを考えると、供給が増えた時に対応できないという致命的な問題を抱える結果になる。ここに現代農業の問題点となる後継者不足という深刻な要素が加わって、需要に対する供給量が減少(天候の影響もある)したことと、自由流通の捕捉が完全ではないことも相まって、予測を誤ったために、令和6年9月の対応を失敗したのである。

結果からいえば、おそらくは8月頃に「流通量が減っているので、古米を放出します」というアナウンスをして、実際に一定量のお米を市場に出せば、ここまで価格が高騰することはなかったと思う。だが、それは結果論だ。

輸出を増やす

そういう反省を踏まえ、政府は売り先を増やす方針生産拡大の方針を示したのが冒頭のニュースである。

政府は、新年度からの農業政策に関する新たな基本計画のとりまとめを行っていて、関係者によりますと、2030年のパックごはんなどを含めたコメの輸出量の目標を35万トンまで増やす目標を掲げる方針だということです。

去年のコメの輸出量は4万6000トン余りで、7倍以上の水準になります。

NHKニュース「コメの輸出量 2030年に35万トンまで増やす目標掲げる方針」より

このニュースの間違いは、米の生産量は679万2,000t(令和6年度予測)あって、うち35万t(全体の5%程度)を輸出に回したいという話となっている。

24年のコメ、需要上回る生産 来夏の不足なお懸念

2024年10月30日 15:15 (2024年10月30日 19:30更新)

農林水産省は30日に開いた食糧部会で、コメの需給見通しを発表した。2024年の生産量は前年より22万トン多い683万トンと、24年7月〜25年6月の需要見通しの674万トンを上回ると予測した。需給の逼迫は当面回避される。需要が想定より膨らめば来夏に再びコメ不足のリスクがある。

昨年秋の主食用米は661万トンの生産に対し705万トンの需要があった。

日本経済新聞より

今回の反省としては、需要逼迫によって米価が倍になったことと、需要の変動幅を吸収するためのバッファとして米の保管体制が機能しなかったことの2点を改める必要があったと思う。

だからこそ、生産量を増やす方針に切り替えたわけだ。

また輸出額の目標も去年の実績の7倍近くの922億円とする方針で、政府は目標の達成に向けて、農地の集約化を進め、低コストで生産できるようにするほか、収量の多い品種の作付けを増やすといった取り組みを進めることにしています。

さらに、海外でニーズが高い有機米の作付けを拡大させるなどして輸出拡大につなげる方針です。

日本経済新聞「24年のコメ、需要上回る生産」より

この方針そのものは悪くはないと思う。米が不作であれば輸出量を絞ることで、国内需要を賄うことができれば、極端な価格高騰にはならないからだ。が、「農地の集約化」と「有機米の作付けを拡大」は棲み分け出来るようにコントロールが必要で、現行体制では難しかろうとは思う。

併せて、休耕したり作付け転換することで金が貰えるような補助金を止め、米を作った方が儲かる流れを作る積極的な農政の転換を図っていく必要があるのだと思う。

まあ、この辺りは方針決定したら直ぐ変わるというものでもない。地道にやるしかないね。当面、米価が下がることにはならないかもしれないが、これはこれで必要なことなのだ。

あと、方向性としては、とにかく作付面積を増やしたら儲かるんだというマインドを浸透させることかな。稲作が儲からない商売になって久しいことこそが問題だと思うんだよね。

コメント

  1. 匿名 より:

    酢飯ではなくて寿司米という寿司用の米があります
    コシヒカリの突然変異種「いのちの壱」は海外からの買付価格が高く生産が間に合っていません