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F-35A戦闘機導入にあたって懸念を示すドイツ

北欧ニュース
この記事は約9分で読めます。

F-35A戦闘機絡みのニュースを取り上げようと思う。

「F35戦闘機にキルスイッチ」 導入予定のドイツで懸念「米側の判断で機能停止できる」

2025/3/10 11:37

ウクライナ問題を巡り米トランプ政権と欧州諸国が対立する中、ドイツが米から来年導入を予定しているF35戦闘機に、米側の判断で機能を停止できる「キルスイッチ」が仕掛けられるのではないかとの懸念がドイツ国内で出ている。欧州メディアが報じた。

産経新聞より

産経新聞さんさぁ、「欧州メディアが報じた」じゃなくって、もうちょっと内容に踏み込んでよ。

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ドイツはF-35A導入に懸念を示す

キルスイッチが仕込まれている!!

この報道のキルスイッチの意味するところが不明だが、アメリカの判断でドイツが購入したF-35Aの飛行が出来なくなるという意味であれば、「そんな馬鹿な」という話になる。

https://twitter.com/rockfish31/status/1898943290591838714

早速、JFS氏が突っ込みを入れていたが、実際にそんなことが可能かというと、難しいだろうと思う。

いや、直接的な意味で、ボタンを押したらドイツが買ったF-35Aが飛べなくなるということは無く、流石に記事内でもテレグラフが「そんなアホな」と突っ込みを入れていると紹介していた。

独紙ビルトは8日、「キルスイッチは単なる噂ではない。しかし、それを使わなくても、ミッションシステムで簡単に飛行機を地上にとどめさせられる」「米がウクライナに対して行ったのと同じことをF35に行う可能性があるなら、契約のキャンセルを検討すべきだ」とする専門家のコメントを伝えた。

一方、英紙テレグラフは9日、「F35はいつでも自律的かつ独立して使用できる」「F35は遠隔操縦の航空機ではない」とするスイスやベルギーの国防担当者の見解も報じた。

産経新聞「F35戦闘機にキルスイッチ」より

ただ、この話、ドイツ紙の懸念は全く見当違いという訳でもないとは思う。

ウクライナにF-16戦闘機(ブロック50相当)を提供したアメリカだが、最新のF-16を提供したわけではないし、F-16の性能を十分引き出すためにはアメリカの軍事情報提供が不可欠である。

アメリカ、ウクライナとの情報共有を一時停止

2025年3月6日

アメリカのマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は5日、同国がウクライナとの情報共有を一時停止したと明らかにした。ロシアの侵攻を受けるウクライナに対するアメリカの支援について、疑念がさらに強まっている。

BBCより

米国、ウクライナとの情報共有停止をほぼ解除-トランプ大統領

2025年3月10日 10:37 JST

トランプ米大統領は9日、米国がウクライナとの情報共有の停止をほぼ解除したと明らかにした。同氏は、ウクライナとロシアを和平合意に向け交渉のテーブルに着かせようとしている。

Bloombergより

この事態を受けて、ドイツが動揺したというのは理解できる。出来るんだけど、この情報共有に関しては、ウクライナが一方的に受け取るだけの体制だから問題なんだと思う。

一方で、アメリカの気分1つで戦術を大幅に変えなければならないというリスクを抱えることも事実ではあろう。

F35Aの整備拠点の話

産経新聞はこんな書き方をして記事を結んでいるのだが、いや、煽るなよ。

航空自衛隊は平成29年からF35の配備を進めている。

産経新聞「F35戦闘機にキルスイッチ」より

キルスイッチは仕込まれていないし、航空自衛隊のF-35Aに問題のあるような書き方をしているけれども、国内組み立てだぜ。

三菱重工業、F-35のFACOは順調に推移

2022.10.06

三菱重工業は航空自衛隊の最新鋭戦闘機「F-35A」の最終組立・検査施設(FACO)を担う。米国外でFACOが設置されているのは、日本とイタリアの2カ国のみだ。

航空新聞社より

ブラックボックスを仕込まれている可能性は否定しないけれども、流石にキルスイッチの話は「蓋然性がない」と否定すべきなんじゃないかなぁ。

ただ、F-35Aは整備拠点を採用国全てに設ける訳ではなく、重整備拠点を作ってそこで整備するというタイプの戦闘機である。

そうすると、韓国みたいな事になる国家も出てくるわけだ。

これが、F-35Aの運用の足かせになる点は否定できない。

紆余曲折のあるドイツ

ちなみにF-35Aの導入について、ドイツは随分と迷っていたようだ。

やっぱF-35導入します! 翻意のドイツ空軍に予算承認 ロシアへ強烈な牽制&日本にも利点

2022.12.17

ドイツ連邦議会の予算委員会は2022年12月14日、同国空軍が求めていたF-35A「ライトニングII」ステルス戦闘機の調達資金を承認しました。

ドイツ空軍では、長年運用してきた「トーネード」攻撃機の後継機として、今年(2022年)3月にF-35Aの導入が決まっています。今回、連邦議会がそのための資金を承認したことで、計画はより具体的になる模様です。

乗り物ニュースより

計画通りであれば2026年に最初の8機が導入される計画である。

ステルス戦闘機+核兵器 ドイツ「トーネード」後継にF-35を採用 F/A-18はキャンセル

2022.03.15

ドイツ国防省は2022年3月14日、老朽化した「トーネード」戦闘爆撃機の後継としてアメリカ製のF-35戦闘機を導入すると発表しました。

~~略~~

ちなみに、昨年2021年12月にはフィンランドもF-35を選定しており、今回のドイツの決定はそれに続くものです。これによりドイツは、世界で17番目のF-35導入国となります。

乗り物ニュースより

ドイツは、予算的に F/A-18E/Fを導入する積もりだったけれども、ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けに考えを改めたらしい。

今回のドイツの懸念は、こういった「F-35A導入」に反対する勢力がいることに関係しているようにも思える。

まあ、国防を担う戦闘機の選定なのだから、慎重になることは分かる。でも、他に選択肢があるのかと言えば悩ましいところ。

ドイツ、戦闘機「ユーロファイター」を20機追加購入へ-軍備拡張で

2024年6月5日 19:30 JST

ドイツのショルツ首相は、戦闘機「ユーロファイター」20機を追加で発注する意向を明らかにした。同国政府は数十億ユーロ規模の軍備強化計画を推進している。

Bloombergより

ユーロファイターは積極的に導入する積もりみたいだけど、トランシェ4を採用したのはドイツだけ。今後の発展性を考えると不安の残る状況である。

そうすると、やっぱりF-35Aの導入はせざるを得ないんじゃないだろうか。

FCASは漂流

もう一つドイツの戦闘機の話で気になるのがFCASの話である。

フランス、ドイツ、スペインが第 6 世代 FCAS 戦闘機の開発に合意

19 11月2022

フランス、ドイツ、スペインは、第 6 世代戦闘機 FCAS (Future Combat Air System) の開発で合意に達しました。 このプロジェクトの評価額は 100 億ユーロを超え、この種のものではヨーロッパで最も高額です。 

aeroflapより

構想図は出ているモノの、なかなか計画的に進まない第 6 世代戦闘機 FCAS (Future Combat Air System) の開発だが、なかなか格好は良い。

これはエアバスの提案した機体のシルエットだが、フランスとドイツとで主導権争いをやっていることも関係して、なかなか話が前に進まない。

Europe is unprepared for risks from Russia and Trump, says Airbus boss

Europe is unprepared for war with Russia or the risk that Donald Trump could withdraw the US from Nato and needs to ramp up spending on defence equipment, the boss of Airbus has said.

Guillaume Faury, the chief executive of Europe’s biggest aerospace and defence company, said it was a “defining moment” for the continent’s defence industry, after Russia’s full-scale invasion of Ukraine in 2022 brought war to western Europe’s borders.

~~略~~

Faury said: “We need to cooperate between European countries, including the UK, because we are in businesses where scale matters. The US has scale and they’ve gone for one fighter. We’ve gone for three different fighters.

the guardianより

業を煮やしたエアバスは、GCAP計画もFCAS計画に統合すべきとか言い出した。

いや、日本としては計画が遅れるだけなので、そういう話は勘弁願いたいのだけれど。

インドも導入?

ところで、F-35A戦闘機に関してトランプ氏の発言が物議を醸している。

またもトランプ大統領が爆弾発言!? “情報漏洩リスク”あるアジアの大国に最新戦闘機F-35購入を提案 その目論見とは

2025.03.11

アメリカのトランプ大統領がインドに対しF-35戦闘機を購入しないかと持ちかけています。しかし、これにはさまざまな障害があります。過去には、同様のリスクからトルコへのF-35引き渡しを拒否したことも。インドはどうでしょうか。

乗り物ニュースより

記事にもある様に、アメリカはトルコへのF-35Aの販売をキャンセルしている。購入をキャンセルするケースはあるが、販売を拒否するケースは珍しい。

トルコへの引き渡し拒否の理由は、「ロシア製対空兵器を使っているから」というもの。確かにインドはロシア製のS-400地対空ミサイルシステムを保有している。

この地対空ミサイルシステムが「使えない」という噂も出てはいるが、F-35Aを迎撃する方法を模索されると困るのだろうね。

インドもロシアからS-400を購入しているのだけれど、良いのかな。

ロシア、インドヘのミサイル供給開始 米は制裁発動か

2021年11月15日午前 9:50

ロシアの通信社によると、同国はインドへの地対空ミサイルシステム「S400」の供給を開始した。米国がロシア製兵器の購入を巡りインドに制裁を科す可能性がある。

ロイターより

アメリカはインドにもトルコにもS-400購入にあたって制裁を課していたハズなんだが……。

インドのF-35導入を考えるうえで、トルコの事例を引き合いに出すことは避けられないでしょう。トルコは、アメリカとの防衛協力関係において重要な位置を占めており、F-35の共同開発にも参画していましたが、トルコがロシアからS-400を導入することを決定すると、アメリカはF-35の技術的な機密漏洩のリスクを高めると警告し、最終的にはトルコをF-35計画から外す決定まで下しました。

このような前例があるため、インドがF-35を導入する場合、同じようなリスクが指摘されることは間違いありません。インドがロシア製兵器を保持しつつF-35を受け入れることが、技術的、戦略的に問題を引き起こすのではないかという懸念が残ります。

乗り物ニュースより

実現性については疑問が残るところではあるが、支那への牽制的な意味合いはあると思う。

おそらく、ドイツはこの辺りの話も絡めてF-35Aの話の是非を議論し出す可能性はある。日本としても気になる話だよね。

コメント

  1. 匿名 より:

    ドイツのF/A-18やF-35導入はニュークリアシェアリングが目的
    タイフーンにはアメリカ製核兵器運用能力が無い
    そしてフランス空軍のラファールがドイツに出張する羽目になる

    • 木霊 木霊 より:

      そういえば、その話は忘れていました。
      そりゃ、フランス空軍のラファールが出てくるなら、他の選択肢は出てきますよね。

  2. 匿名 より:

    米国に後ろから撃たれた場合、具体的にはデータ共有・衛星通信拒否された場合、のF35含む戦闘機運用リスクの技術的考察。

    1. 敵味方識別
    2.戦術データ通信
    3.拡張データリンク

    (3は勝手に命名:F35の強みと言われるアレ)

    1.敵味方識別
    :普通のレーダー電波は無視するが、味方軍レーダーには自分の位置を知られないよう こっそり応える。
    – – – 一種の暗号通信&軍事衛星通信が確実。

    2.戦術データ通信:文書 + 座標データ位で間に合う通信なら衛星なしでも可能

    3.拡張データ通信:データ量的に、見通ししか届かないUHF~SHF電波が必要
    – – – 要するに衛星通信必要

    結局、紛争時に軍事衛星ポコポコ打ち上げられる米国に後ろから撃たれると、F35は第5世代機のメリット失います。

    更に1.敵味方識別:
    は 世代や米製、欧州製、殆ど関係なく&致命的なので、

    米露中の次に衛星打ち上げ能力ある わーくにの商売チャンスか?(苦笑)

    • 匿名 より:

      フレンチ「ミーのアリアンで打ち上げるざます」
      イタリアン「ウチの固体燃料アリアンが完成すれば・・・」

    • 木霊 木霊 より:

      日本はみちびきを打ち上げていて、更に補完する方針ですから韓国にとっては羨ましいみたいですね。
      一方日本がドイツ方面に衛星を打ち上げるのは、やや難易度が高いと思います。
      赤道に向けうちあげるならありかも知れませんが、渋滞していますからね、あの領域は。

      • 匿名 より:

        あれ?
        わーくに商売うんぬんは付け足しジョークで、「ドイツの懸念は尤も」だと言う主張だったんですが、
        このままボカしとかないと、マズイすかね?

        • 木霊 木霊 より:

          いや、マジな話、「みちびき」さんの打ち上げと「使えるようにする」のは我が国にとってとっても大切だと思っていますよ。
          7機体制になるのは来年なんですが……、トランプ氏就任を見越していた、なんてことはないんでしょうね。

          そして、心配ならやっぱり「負担軽減」を理由に基地と駐留軍を少なくしていく必要があるでしょう。
          自衛隊の駐屯地を増やす必要もありますしね。

          • 匿名 より:

            話が噛み合って無い気がしますが、、、脳内スルーしてより噛み砕くと(^-^;

            1.敵味方識別
            :軍事衛星経由 の戦術データリンクで応答返さないと味方に撃たれる。

            即ち、米に情報共有停止 例えば link16中継衛星通信を停止されると致命的。

            嫌なら民間機同様の公開ビーコン常時発信 = ステルス機能の放棄

            3.拡張データ通信 : 見通しに味方がいなければ(ステルス任務なら当たり前)、軍事衛星経由、
            やはり米に衛星通信止められると機能せず。致命的

            いずれも、高速双方向通信が可能な低軌道の軍事通信衛星の戦術データリンクのハナシ。

            衛星携帯用イリジウム衛星やスターリンク衛星なら、相当頑張れば(大変だけど)代替出来るかも知れないけど、

            みちびきとか静止軌道衛星とかの高高度だと、、、つらい、、最近は大丈夫なんですか?
            電波強度と頻度的に、原子炉積まないと無理な印象なんですが、、、

            結論(個人的見解です)

            わーくにF35未納分はキャンセルが正解(キャンセル嫌ならソースコード寄こせのディール?)

            GCAP絡みと衛星打ち上げバーターで
            英伊にNATO戦術データリンク互換プロトコルのソースコード要求&H3で軍事通信衛星打ち上げ、

            ぐらい しないと、わーくにF35どころか、F2 、F15もヤバイ気が、、、

          • 木霊 木霊 より:

            話の理解が出来ておらず申し訳ない。不勉強でした。2023年年頃にLEO衛星を介したLink16通信テストをしていたという報道は見つけましたが、アレが運用されるのでしょうかね。オーストラリアのJP9102/SATCOMプログラムは中止されていたので、現時点でLink16運用に衛星通信は不要だという理解でした。もうちょっと勉強してみます。

          • 匿名 より:

            >現時点でLink16運用に衛星通信は不要だという理解でした。もうちょっと勉強してみます

            LINK-Xとか戦術データ・リンクは何かの総称だったり歴史的経緯が云々で、、、、「プロトコルをまともに追いかけるのは泥沼」と思いますよ。
            例えばLINK-16には衛星を必要とする部分とそうでない部分、ステルス無関係な部分、関係ある部分色々あり、全貌把握は、、、

            代わりに「避けられない物理的制約」から考えるとプロトコル以前に制限が見えます。

            「ステルス機が敵味方識別信号を送る」ことの意味
            は敵には判らない(信号送ってること、送ってる位置)ように見方に発信すること。

             電波通信ならば見通し外に届く電波は敵に知られる可能性がある。ならば見通ししか届かない電波、具体的にはUHF以上の高周波を使う必要があります。
             かつ送信先は「見通し位置の中継機」「同じ方向に敵がいない」に限られる。
             
             これは未來のスウォーム編隊ネットワークならともかく現代では殆どの場合、可能な
              「見通せて敵にも知られない宛先」
            は頭上すなわち「衛星」に限られる。