おおぉ。関税戦争がここでも勃発か。
中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%
2025年3月8日午後 12:05
中国は8日、カナダの農産物や食品の一部に関税をかけると発表した。カナダが中国の電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を適用したことへの報復とみられる。
ロイターより
タイトルを読んでも意味がわからなかったのだが、記事を読んでみるとコレ、トランプ絡みっぽい。
カナダも参戦?
支那のほうがダメージが大きそうだが
ロイターの記事では支那がカナダからの輸入品に関して関税をかけるということなんだけど、支那って何を輸入していたんだっけ?と疑問に。
商務省によると、カナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に3月20日から100%の関税を適用。水産物と豚肉に25%の関税をかけるとした。
ロイター「中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%」より
なる、ほど?
7 主要貿易品目
- (1)輸出 石油・ガス、自動車等輸送機器、石油精製品、非鉄金属、貴金属、航空宇宙製品及び部品等
- (2)輸入 自動車等輸送機器、医薬品・医療機器、石油・ガス、石油精製品、コンピュータ・周辺機器等(2022年、カナダ統計局)
8 主要貿易相手国
- (1)輸出 米国、中国、英国、日本、メキシコ
- (2)輸入 米国、中国、メキシコ、ドイツ、日本
(2024年、カナダ統計局)
外務省のサイトより
カナダの主力商品に関して、アメリカとの話の時にも調べたのだが、カナダにとってはアメリカが第1の貿易国で、支那は第2の貿易国である。が、大半はアメリカ相手なんだよね。
一方、支那はというと、カナダから輸入するのは菜種油にその関連商品(油かすを含む)や豚肉、水産品である。つまり、カナダから輸入する主要品目に高率関税をかけたということになる。
カナダは昨年、中国から輸入するEVに対し100%の関税を課すと発表した。中国製の鉄鋼とアルミニウムについても25%の関税を課す方針を示した。
ロイター「中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%」より
カナダが輸入するEVや鉄鋼、アルミニウム製品に関しては、トランプ氏の言いがかりによって随分と締め付けが厳しく、時刻の産業を守るためにはここを締め上げざるを得ない。
EVにしても鉄鋼、アルミニウム製品についても、支那から随分と安いものを輸入していたようだが、どれも他から買えるしね。
アメリカの関税
そもそもトランプ氏は鉄鋼やアルミニウムに関して関税をかけるというような発言をしており、3月12日に発動する予定になっている。
アメリカ輸入の鉄鋼とアルミに25%関税 各国の間で反発や懸念
2025年2月12日 5時57分
アメリカのトランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課すと表明したことに対し、各国の間で反発や懸念が広がっています。トランプ大統領はすべての国が対象だと強調していますが、各国は直接交渉によって適用の除外を求めていくものとみられます。
NHKニュースより
当然ながら、カナダを迂回して鉄鋼製品やアルミニウムがアメリカに入ってくるというルートも阻止したいだろう。
カナダのトルドー首相は11日、訪問先のフランスのパリで記者団の取材に応じ「今後数週間、アメリカの政権と話し合い、こうした受け入れがたい関税がアメリカとカナダの人々に与える悪影響を強調していく」と述べました。
そして、アメリカがカナダからの鉄鋼製品やアルミニウムに関税を課した場合、対抗措置をとるのか問われたのに対し、トルドー首相はそうしたことが起こらないよう望むとした上で「そうなった場合にはわれわれの対応は断固とした、明確なものになるだろう」と述べました。
アメリカ鉄鋼協会によりますと、アメリカが去年輸入した鉄鋼製品のうちカナダからの製品は22%あまりを占め国別で最も多くなっています。
NHKニュース「アメリカ輸入の鉄鋼とアルミに25%関税」より
どれくらいの割合の鉄鋼製品やアルミニウムが迂回状態にあるのかはよくわからないが、カナダにとってはアルミニウムは主力商品の1つであり、鉄鋼製品も対アメリカ輸出製品の中では有力な商品の1つなので売上低下は阻止したい。
一方で、支那は鉄鋼製品やアルミニウムの過剰生産分をなんとか海外に売りつけたいと考えており、カナダもそのターゲットになっていたのだが、アメリカを口実に関税を引き上げた感じなんだよね。
カナダの経済も随分とガタが来ているので、取引先大手のアメリカの機嫌を損ねたくなというのが本音のようだけれど、これを機に支那からの影響を減らしたいという思惑もありそうである。
世界はこれから、ブロック経済に向かって進んでいくのかも知れない。
追記
カナダからの豚肉輸入量
コメントの中で「豚肉」の話が出ていたので、少し情報を整理したいと思う。
中国農業農村部は2024年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2024-2033)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は23年の総括と33年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
エーリック農畜産業振興機構より
支那国内での豚肉生産量は5934万トン(前年比4.0%増:2023年のデータ)で、輸入量は155万トン(同11.7%減)である。
輸入量が多い順に並べてみるとこんな感じ。
順位 | 国名 | 輸入量の割合 |
---|---|---|
1 | スペイン | 27.0% |
2 | ブラジル | 23.7% |
3 | デンマーク | 情報なし |
4 | 米国 | 情報なし |
5 | オランダ | 情報なし |
6 | カナダ | 情報なし |
これらの6か国で、中国の豚肉輸入量全体の75%を占めている。
カナダの対支那豚肉輸出量は詳細は不明だが、2023年の1~7月のデータによると10万3200トン。同期間の全体輸出量が60万1900トンで、そのうち中国向けが約17.1%を占めている。
2022年は16万トン(前年比36.5%減)の輸出だったので、2023年もほぼ同レベルだったと推測される。
アフリカ豚熱の蔓延
支那では、近年アフリカ豚熱の蔓延によって豚肉生産量の落ち込みが問題になっていた。

一番生産量が落ち込んだのが、2020年でこの頃にカナダからの豚肉輸入量を増やしていたと考えられ、現在は生産量が回復してきたために輸入を絞りつつあるようだ。
というか、支那国内ではやや生産過剰気味なのである。
世界最大の豚肉生産・消費国、中国で豚肉価格が高騰から一転大暴落 翻弄される国際市場=高橋寛
2021年7月6日
昨年から急拡大を続けてきた中国の養豚業が、ここへきて大きな壁にぶつかっている。過剰生産によって中国内の枝肉価格が大暴落しているのだ。中国は国内豚肉需給の窮迫によって枝肉輸入を拡大してきた経緯があり、今後、中国の輸入抑制が国際価格の下落を招くのは必至で、日本の畜産関係者の間に衝撃が走っている。
~~略~~
ところが、である。中国内の枝肉価格は21年1月6日の週に36.33元と最後のピークを付けた後、生産量の増加とともにつるべ落としに下がり続け、6月23日にはついに14.10元と、ASF発生以前(18年1月)の価格をも割り込んだのである(図2)。
週刊エコノミストOnlineより

支那国内のアフリカ豚熱は駆逐されてはいないようだが、それでも生産過剰と景気減退に影響されて豚肉価格の下落。長らく低水準で推移しているようだ。
中国、長引く「豚肉デフレ」 CPI低空飛行の一因に
2024年4月17日 10:06
中国の食卓に欠かせない豚肉の価格低迷が長期化している。食肉消費量の6割を占める豚肉価格は中国の物価への影響も大きい。政府も生産目標の変更など供給過剰対策を打ち出し始めた。
日本経済新聞より
そうすると、輸入量を増やしたいとは思わないんだろうね。
豚肉は支那にとって大切だが
というわけで、カナダと支那との間の話で見る限りは、豚肉輸入に支那が高関税をかけたことでカナダの畜産業が困るものの、支那にとっては豚肉の輸入量が減ったり価格が上昇することには困らないと思われる。
主な輸入先はブラジル(輸入量に占める割合は28.3%)、スペイン(同25.7%)、デンマーク(同8.2%)などであり、これらで6割以上を占めている。
エーリック農畜産業振興機構より
支那の豚肉輸入割合において、カナダはデンマークの8.2%以下。豚肉の生産量の上昇と、豚肉消費量の減退などの支那国内事情を考えれば、今回の関税引き上げで困るのは寧ろ代替輸入先の少ない菜種油なんじゃないかな。尤も、菜種油は他の油でも代用できるので、どうしても菜種油でないとということもないんだろうと思う。
コメント
米国が引き起こした関税戦争が、カナダと支那に飛び火した格好で、カナダは支那との貿易を見直さざるを得なくなった。
この趨勢が拡がると、確かに世界経済が地域ブロック化していく懸念があります。EUとか、CPTPPとか、BRICSとか、枠組みはいろいろありますからね。
色々な枠組みがあって、各国は色々なアプローチをしています。
が、方向性としては貿易自由化が行きすぎたことで、国内産業の保護が出来なくなって各国が苦心していることが問題として表面化したことなのだと思います。
そうすると、揺り戻しが出てブロック経済化が進み、地域紛争に発展する……。歴史は繰り返すのでしょうかね。
あの国は豚肉が(値上がったりしたりして)手に入りにくくなると、まずいんじゃなかったでしたっけ?
北京政府にとって豚肉不足は不味い
アメリカからの輸入をカナダに切り替えた
日本が得をした
アメリカ・カナダに変わる生産国は無い
アルゼンチン・ブラジル・オーストラリアは豚肉よりも高い牛肉を買えと言うスタンス
アフリカ豚熱の蔓延によって、支那国内での豚肉生産量は一時期大きく落ち込み、現在は回復傾向にある様です。
その生産量の低下のお陰で価格高騰し2022年頃は随分と値上がりしていましたが、生産過剰によって現在はその半値くらいになっているようです。
支那の主な輸入先はブラジル(輸入量に占める割合は28.3%)、スペイン(同25.7%)、デンマーク(同8.2%)で、カナダからの豚肉輸入量は割合としては大したことがありません。
そのような情報を整理して考えると、おそらくはカナダからの豚肉輸入に対する関税引き上げは、さほど影響がないものと考えられます。