近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
スポンサーリンク

全人代で「消費回復」が前面に押し出される

中華人民共和国ニュース
この記事は約7分で読めます。

予想されたような内容だけ?本当に?

焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に 技術も重点分野

2025年3月5日午後 5:55

中国は5日開幕した中国全国人民代表大会(全人代)で、低迷する個人消費の喚起を、技術革新や工業生産よりも重視する姿勢を示した。

ロイターより

正気なのか?

スポンサーリンク

消費喚起で経済成長

個人消費の喚起を!

ええと、前回の記事のリンクを。なお、記事を読む前に予めお断りしておくが、この記事は前の記事の焼き直しみたいな内容になっている。だって、全人代の発表が、事前に予想される範囲で留まって目新しさがなかったのだから仕方がない。

この記事の中で、こんなことを書いた。

さておき、全人代で「何か」が発表される期待があるのは事実だ。

そしてそれは、恐らくは「個人消費を拡大」することと、「科学技術発展に力を入れる」ことを重点に政策が発表されるのだろうと予想されているが、デフレの真っ只中でそんな発表をすれば笑われるだけだ。いや、有望な投資先の紹介は意味がある?

弊ブログより

まさか、ねぇ。

李強首相は恒例の政府活動報告で、今年の経済成長率目標を昨年と同じく5%前後に設定するとともに、内需刺激と消費拡大に向けた「特別行動計画」を約束した。

これまで中国当局は、消費者の懐にカネを入れるような政策を取ることをためらってきた。しかし、米中貿易戦争再発の様相を呈する中、自国製品を海外ではなく国内で買ってもらうためにも、そうした政策の重要性は増すとみられている。

ロイター「焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に」より

そりゃ、内需拡大するに越したことはないんだろうけれど、前回も書いたように支那経済が疲弊しているのだから内需をどうやって拡大するのか?という話にはなるでしょうよ。

その答えが、「消費者の懐にカネを入れるような政策」らしい。本気だろうか。

具体的な消費喚起

で、その消費拡大策の1つがこれ。

今年の消費拡大策の一つが、昨年から始まり、現在は電気自動車(EV)や家電を対象とする下取り補助制度の大幅な拡充だ。同制度の支援に向けた超長期特別国債の発行計画を3000億元(約412億6000万ドル)とし、昨年より1500億元増額した。

財政省の報告書は「このプログラムをより多くの製品に拡大し、補助金の請求手続きを改正、古い製品のリサイクルシステムを改善することで、高額製品の消費を大幅に拡大させることが可能になる」としている。

ロイター「焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に」より

EVの購入拡大と、下取り補助制度の充実である。更には家電の買い替え促進らしい。これに3000億元(約6兆2000億円)突っ込むのだとか。

経済成長目標は5%前後とやや弱気なんだけど、この辺りの数字は国家統計局の手腕に掛かっているのであってないようなものである。

子育てや高齢者介護、医療支援の強化も打ち出した。消費者が安心して支出するためには、社会のセーフティネット整備が必要との認識からだ。このほか、デジタル・スマート製品、文化、観光、スポーツへの支出拡大や、消費を刺激するために免税店関連の規則改正も打ち出した。

ロイター「焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に」より

更に、様々な面での消費喚起政策に加えて医療や福祉を充実させる予定なのだとか。

この原資となる超長期特別国債の期間は、20年、30年、50年の3種類だそうな。そして、この超長期特別国債は一般会計には計上されない

日本政府とは大違いの対応だな!

いや、そうして考えてみると、習近平氏の政策は実に理に適っているのかも知れない!

人口減少で経済は先細り

なお、支那は既に人口減少の局面を迎えている。

中国の人口 推計14億828万人に 3年連続で減少 政府発表

2025年1月17日 14時17分

中国政府は、去年末の時点の中国本土の人口が推計で14億828万人となり、前の年に比べて、139万人減ったと発表しました。人口が減少したのは3年連続です。

NHKニュースより

この数字も怪しいものだが、まあ正しいとしよう。

出生率は、「一人っ子政策」下の2000年~2015年は11.90~14.57‰の間で推移、全面的に「二人っ子政策」に転換した2016年以降は、13.57‰(2016年)、12.64‰(2017年)、10.86‰(2018年)、10.41‰(2019年)、8.52‰(2020年)、7.52‰(2021年)と右肩下がりに低下した。なお、総人口は5億4,167万人(1949年)から、10億72万人(1981年)、12億1,121万人(1995年)、13億756万人(2005年)と推移、2021年は14億1,260万人。死亡率は20.00‰(1949年)から徐々に低下、大躍進政策の影響で一時25.43‰(1960年)に、その後1965年以降は一桁台で推移し、2021年は7.18‰。
JETROより

こちらのJETROのデータは2021年までしかないため、翌年から人口減少は始まってはいるのだが、観ての通り出生率は右肩下がりで歯止めがかからず。そして、死亡率は横ばい。少子高齢化が進んでいるのは分かるだろう。1960年頃と1964年頃に死亡率のピークが出ているのは、文化大革命(1966年~1976年)の影響である。出生率の方は似た時期に谷間が出来ているね。

「子育てや高齢者介護、医療支援の強化」を打ち出したのは、それを意識してのことだろう。だが、支那での出生率は韓国よりはマシだが、それでも1.0%近辺をウロウロしている。今、その政策が功を奏したとしても、効果が実感できるのは少なくとも出生率が2.06を超える辺りまで回復してからだ。経済的な意味が出るのは、子供達が働き始める時まで待たねばならない。

しかし、若年失業率は15.7%(2024年12月現在)で、恐らくこの数字は偽装されていて、実態は30%以上ではないかと疑われている。就職できる人口が減れば出生率も低下する。

このタイミングで、「内需拡大を!」と言われても、なかなか支那人民はついてはいけないだろう。まずは生きるために働かねばならない。

人口減少は超長期特別国債の返済にも大きく影響してくる。まあ、国家が続く限りロールオーバーしていけば良いのだろうけれど、穴を塞がないとね。不良債権処理はやっておいた方が良いよ。

技術革新で経済活性化

重点分野

さて、そしてやっぱり技術開発に力を入れるんだそうな。

政府活動報告は、人工知能(AI)にも何度も言及した。国内新興AI企業ディープシークの台頭を背景に、若手の科学者やエンジニアに強力な支援と「重要な責任」を与える計画とし、「中国は、探求を奨励し、失敗を許容する革新を可能にする環境づくりに努める」と述べた。

バイオ製造、量子技術、エンボディドAI(身体性を持つAI)、第6世代移動通信システム(6G)技術など「未来の産業」を育成する方針も示した。

仮想現実(VR)、高度コンピューティング、オープンソースの半導体設計「RISC─V(リスクファイブ)」において発展の推進を目指し、資金援助を増やし、ベンチャーキャピタル投資の成長を促すとした。

ロイター「焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に」より

色々と目玉商品が並べられている印象だけれども、ちょっと気になるワードがあった。

ザン氏は、報告書が「効果的な投資」と強調しているのは、半導体で見られた大規模な国家介入からの脱却、自立に関する当局の姿勢軟化を示唆すると指摘。「当局は、全ての分野で自給自足を達成することは非現実的かもしれないと認識し、既存の地位を守ることよりも将来の技術開発を主導することに重点を置いているようだ」と述べた。

ロイター「焦点:中国全人代、経済不安で「消費回復」前面に」より

「大規模な国家介入からの脱却」だって。

半導体事業で、国家が後押ししていたのは知っているけれども、そんなに大規模な梃子入れをやっていたのか。

随分と欲張りな目標のように見えるが、あちらこちらに種を蒔かないと芽吹かないのは事実。

何処までその時間的猶予が作り出せるかは見物であるが、しかし、超長期特別国債で資金を作り出すのは侮れない。誰が国債を購入するのか?はやや疑問ではあるが。

軍事部門にも金を使うぜ

そして、相変わらず「国防費」にも金を使う予定らしい。

一方、国防予算は3年連続で7.2%増と成長率を上回る高い伸びを維持した。予算額は1兆7846億元(約36兆8000億円)で、日本の25年度防衛予算案(8兆6691億円)の約4.2倍の規模となる。

時事通信「成長率目標「5%前後」据え置き」より

流石に二桁伸びは厳しかったらしいが、それでも成長率を上回る数字が設定されたようだ。

習政権は「世界一流の軍隊建設」を目指し、最新兵器の配備を急いでいる。3隻目となる空母「福建」は今年前半にも就役する見通し。昨年12月には、無人機を搭載する大型の新型強襲揚陸艦「076型」が進水したほか、ステルス性能の高い「第6世代」とされる戦闘機の初飛行も行ったとみられる。

時事通信「成長率目標「5%前後」据え置き」より

そして、「世界一流の軍隊設備」を目指すんだとか。

核戦力も急速に拡大させている。米国防総省は、昨年半ば時点の中国の核弾頭保有数が前年比100発増の600発を超えたと推定している。

時事通信「成長率目標「5%前後」据え置き」より

なお、「核戦力」は「国防費」に含まれず、ミサイル開発を含めて宇宙開発費の方に分類されるのは有名な話。まあ、本当かどうかは定かではないが。

とはいえ、とはいえである。軍事部門にお金を使うのはロシアを見ても、それなりの経済効果がある。大物の兵器を製造しているのも、経済活動としては優秀だよね。

ただ、軍事費を積み上げて全方位に喧嘩を売りながら、「商品を買ってください」という戦略を今までは海外向けにやってきた。しかしそれが通用しなくなりつつあるので、国内向けにセールスをやるという。もちろん、国内には治安維持の名の下に脅しながら、ではあるが。

つまり支那の路線は去年までと大きく変わらないと、そういうことらしいね。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    今朝のニュース(犬HK)で、「中国はこんなにリゾート開発・観光事業にお金投入してます!」ってやってました。
    それはもう、湯水のごとくにお金をつぎ込んでるみたいですが。
    ※正直羨ましいレベル。
    ある程度物事を知っている目で見ると「で、そのお金、どこから出てるの?」ですよね。
    「政府が資金援助」って言ってたけど、中央か地方か言ってませんでしたし。
    資金も、結局はゼネコン支援や流通大手支援に流れるわけで。
    庶民は踊らされて金使え、と。
    まあ、隣の国なんで、知ったこっちゃないですが。

    それを嬉しそうに報じる犬HK、本当にダメだこいつ、早く何とかしないと……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      彼らは見せ金の使い方が実に上手い。
      そこは学ぶべきだと思いますが、それに欺されて投資する方々がいると思うと、犬HNの罪は重いですね。

  2. 砂漠の男 より:

    今日の日経新聞に、支那政府が景気回復に25兆円を投入をするとかありましたけど、それっポッチで人民の凍てついた懐が温かくなるのかどうか。

    支那共産党はEV振興を続けるようですが、支那のEVメーカーは市場淘汰の渦中の模様。
    https://intensive911.com/car-related-topics/319802/

    紅皇帝は、勝ち残ったものが市場を支配すればいいと考えているんでしょうけど、支那製EVは技術トラブルやEVメーカーの突然の倒産などで、人民がEV離れを起こしているし、輸出相手国は輸入関税を引き上げて対抗しているので、この先どんな展望があるのやら。

    • 木霊 木霊 より:

      25兆円分のバラマキをやれば、恐らくは30兆円分くらいの経済効果は得られると思います。
      ただ、恐らくそれは需要の先食いが発生するだけで、継続的な消費行動を喚起するモノではありません。だから、支那経済が良くなるか?というと少々怪しいと思います。
      そもそもEVの販売を促進すると言っても、1度買ってしまえば数年は乗るはずですし、EVからEVへの買い換えというのは現段階で補助対象になっていないようなので、積極的な消費行動に移るかは微妙ですね。家電製品はまたちょっと事情が違うのでしょうが。

      • 七面鳥 より:

        横合いから失礼。

        EV、リセールバリューがガタ落ち(一年で半額とか嘘みたいなのも見た記憶が)で、その意味でも化石燃料車に太刀打ち出来ない、ってちょっと前にどっかでチラ見しました。
        車自体の陳腐化(SDVとかOTAとかでまかないきれない部分)以上に、電池の劣化がどうにもならない……

        中国大好き犬HKはこんな報告出してますけど、
        『車の未来 中国SDV最前線』
        https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/articles/2024_1213.html

        七面鳥が割と信頼する「池田直渡」氏によると……
        『SDVの狼が来るぞ!【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】』
        https://www.goo-net.com/magazine/newmodel/car-technology/250518/

        結果は5年以内に出ますけど、それから動いたんじゃ遅いんですよね。

        • 木霊 木霊 より:

          面白い情報をありがとうございます。
          これはしかし酷いですね……。
          犬HKの名に恥じない忠犬っぷりであり、顎が外れるかと思いました。