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プーチン氏、米・イラン協議の仲介役で合意

ロシアニュース
この記事は約10分で読めます。

アメリカとウクライナの話はややコメントしにくい状況で申し訳ない。ただ、トランプ氏の意図が分かりにくいことが多く、ニュースを追っても理解できないケースが結構あるので、現時点ではこの関連のコメント返しについても少し間を置きたい。ホットなニュースではあるので、興味はあるんだけどね。

プーチン氏、米・イラン協議の仲介役で合意 核協議巡り申し出

2025年3月5日午前 8:39

ロシアのプーチン大統領がイランの核兵器開発プログラムを巡る協議で米国との仲介役を担うことに合意したと、関係筋が4日明らかにした。

ロイターより

その話と関連はするのだけれど、ロシアがイランの話にくちばしを突っ込んできたというニュースを紹介したい。

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ロシアがプレイヤーに復帰するか

対イラン交渉の窓口

ロシアとイランの関係を考えれば、ロシアがここに出てくるのは割と自然なことではあると思う。

トランプ政権、対イラン交渉でロシアに支援要請 米報道

2025年3月5日 10:02 (2025年3月5日 10:04更新)

米ブルームバーグ通信は4日、トランプ米政権が対立するイランと核問題などの交渉実現のため、ロシアに仲介の支援を求めたと報じた。ロシア側は同意したとしている。ロシアのペスコフ大統領報道官は同通信に「米・イランは全ての問題を交渉で解決すべきで、(ロシアは)達成のため尽力する用意がある」と強調した。

日本経済新聞より

トランプ氏個人なのか、トランプ政権全体でそうなのかはイマイチわからないのだが、随分と大きな絵を描いているようだ。

トランプ氏とプーチン氏は「交渉の余地あり」ということで、トランプ氏側からイランとの関係修復関与をロシアに依頼したとの報道である。トランプ氏自身の発信も、トランプ政権からの発信も、況してやロシア側の発信も信用して良いか疑わしいところがある。ただし、この件に関しては「そういう交渉があっても不思議ではない」とは思える。

トランプ政権はロシアが侵攻するウクライナで停戦仲介に動いている。ロシアが長年敵対する米国とイランの仲介を本格化させれば、米ロが外交上の相互依存関係を深めることになりそうだ。

日本経済新聞「トランプ政権、対イラン交渉でロシアに支援要請」より

ロシアの手を借りてでも、イランとの関係を修復する必要がトランプ氏にあるのか?というと、イスラエル問題を解決するという視点からすれば必要があるのだろうと思う。

ただし、イラン側にはアメリカと交渉する余地がある様には思われない。

ただ、イランの最高指導者ハメネイ師は2月の演説で、トランプ政権との対話は「賢く名誉なことではない」と反対を明言。交渉実現のハードルは極めて高い。

日本経済新聞「トランプ政権、対イラン交渉でロシアに支援要請」より

交渉が成り立たない相手というのは、世の中に結構いると思うんだ。

イラン保守派の台頭

イランは、正式名をイラン・イスラム共和国という宗教原理主義国家であり、立憲共和制を採用しているという建前ではあるが、その実、宗教をベースにした独裁国家である。

イスラーム共和党が三権を掌握して国家を形成し、現時点でも大統領制を採用しつつも最高指導者はラフバルと呼ばれる宗教指導者であり、イスラム法学者から選出される。

現職者はアリー・ハメネイ氏だが、35年もイランのトップに君臨し続けており、実質的に独裁体制になっている。ただ、御年85歳と高齢なので、次期最高指導者の選出が待たれる状況ではある。任期は終身とされているので、何時になるのかは不明だが。

そして、現状は「今のままだと経済が苦しいよね」という雰囲気は出ているらしい。

だが、こういった状況の中で、イラン保守派とされる一派が対米融和に対して批判する雰囲気になっている。

イラン保守派、「経済失策」と政権批判 経済閣僚を罷免

2025年3月3日 17:39

イランの保守強硬派が、対米融和を唱える改革派のペゼシュキアン政権への批判を強めている。保守派が多数を占める国会は2日、「経済失策」を理由にヘンマティ経済財務相の罷免を決めた。主要閣僚の失職は痛手となり、今後の政権運営に影響を及ぼす可能性がある。

国営メディアによるとヘンマティ氏に対する罷免の採決には、出席した273人の国会議員のうち保守派を中心に182人が賛成した。

日本経済新聞より

中東情勢は反米を軸に結束している部分があるので、今更融和政策をということに反対する勢力がいることは分かる。

イランとしてはイスラエルの件もあるので、余り先鋭化したくないという本音はあるんだろう。散々裏で糸を引いてきたが、矢面に立つ積もりはあるまい。

新たな核合意はあるのか

そして、経済面を考えるとアメリカの経済的な圧力は嬉しくない。

トランプ大統領 “イランに制裁措置強化含め最大限の圧力を”

2025年2月5日 20時36分

アメリカのトランプ大統領は敵対するイランに対し制裁措置の強化を含め最大限の圧力をかける方針を明確にしました。

NHKニュースより

ウクライナとの交渉の時にもやった手法だが、最初にひっぱたいておいて、交渉を纏めるやり方である。なかなか露骨だが、DVではお馴染みの手法なので有効なんだろうね。

トランプ大統領がイランに対し最大限の圧力をかける方針を示したことを受けて、イランのアラグチ外相は5日、これまでのアメリカの経済制裁への対応を念頭に「最大限の圧力は失敗した試みだ。また試しても、また失敗する」と述べ、けん制しました。

その上で「もし主な関心事がイランに核兵器を求めさせないことであるなら、それは問題ない。イランはNPT=核拡散防止条約の締約国であり、立場は明確だ」と述べ、改めて核兵器を持つ意志はないと強調しました。

NHKニュース「トランプ大統領 “イランに制裁措置強化含め最大限の圧力を”」より

イランが核兵器を保有しないという話も信頼できないが、しかし、言質を取っておくことには意味があるのか?という気にはなる。

しかし、独裁国家との外交って本当に意味があるかは正直疑問を覚える。特にイランは大統領と交渉しても最高指導者が「ダメ」といえばそれまでなのだ。支那なら習近平氏、ロシアならプーチン氏、北朝鮮なら金正恩氏と話が出来ないと、交渉をしたことにならない。トランプ氏は独裁者に憧れでもあるのだろうか?

ともあれ、ロシアの方針として、国際交渉の場に復帰してきて、経済制裁などを解消させたいという話なんだろうと思う。トランプ氏との関係でそれが叶えば、世界地図も随分書き換わりそうなんだけど、プーチン氏にその力があるとは思えないんだよな。ロシアも随分とその力を落としたから。

追記

イランの経済状況と対イラン制裁

コメント頂いて、そういえばこのブログではイランの経済状況について言及してこなかったことに思い至ったので捕捉しておきたい。

経済相を罷免、副大統領は辞表 イラン政権へ国会強硬派が圧力高める

2025年3月5日 7時00分

イランのペゼシュキアン政権に対し、国会の保守強硬派が批判を強め、3月に入って主要閣僚が罷免され、副大統領が辞表を提出した。制裁下で悪化する経済の責任などを追及するかたちで改革派のペゼシュキアン大統領への圧力を高めている。

朝日新聞より

途中で引用した日本経済新聞の記事では、「対米融和を唱える改革派のペゼシュキアン政権への批判」とさらっと流していたのだが、そもそもイラン経済は非常に宜しくない。

「最強」制裁継続でさらに深刻化するイランの人々の暮らし

2021年03月29日

2015年にイランとEU3(英国、仏国、ドイツ)+3(米国、ロシア、中国)の間でイラン核合意が結ばれ、本合意は国連の安全保障理事会で承認された。この合意はイランがウラン濃縮活動の制限等を行う代わりに、イランの核開発に対抗して行われてきた経済制裁を解除するものである。しかし、 2018年5月、国際原子力機関(IAEA)がイランの核合意履行順守を確認しているにもかかわらず、米トランプ政権はイラン核合意を離脱し、2018年8月に「最強」のイラン制裁を再開した。

米国の核合意からの離脱を受け、イランは、その約1年後から、核合意で制限された以上のウラン濃縮活動を再開した。

ニッセイ基礎研究所より

前トランプ政権がイラン核合意を離脱したのが2018年5月。

同年8月には対イラン経済制裁を開始し、その状態はバイデン政権下でも維持された。この結果、2021年の記事が書かれた時点でイラン通貨リヤルの暴落は歯止めが掛からない状態であった。

図1. イラン・リヤル(IRR)の対ドル為替レートの推移

イラン通貨の暴落は、物価の急激な上昇(インフレ)を引き起こす原因となり、イランの2021年2月時点のインフレ率は48.2.%となった。

図2. イランのインフレ率の推移

核合意離脱時の2018年頃でもインフレ率は10%とそれなりに高い水準(日本は現在3%弱)だったが、2021年2月に48.2%で2021年2月時点で67.2%を記録している。月次計算なので、

これがどういう感じかというと、例えばインフレ率50%とすると、インフレ率は(B-A)÷A×100(A=基準時の価格、B=現在の価格)という式でも止められるので、200円のパン(基準時Aの価格)は、一ヶ月後に300円(現在の価格B)ということになる。簡単な算数の問題だね。

インフレが2ヶ月維持されると、このパンは2ヶ月後には450円になって、3ヶ月後には675円になる。

経済学の定義では、インフレ率50%を超えることをハイパーインフレと定義している。

これで賃金が同水準で上がっていけば良いのだが、イランにおいてはそうではなかった。全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定する指標として消費者物価指数が使われるが、イランでは5年で約3倍に。

図3. イランの消費者物価指数の推移

基準年の全国の平均的な家計消費を100として計算しているので、それが3倍になったということは3倍の収入がなければ生活は破綻することになる。

イラン暦1402年の最低賃金を27%引き上げ、継続雇用者の賃金上昇率は21%

2023年04月21日

イラン協同組合・労働・社会福祉省は3月20日、イラン暦1402年(西暦2023年3月21日~)の労働者の最低賃金などを発表した。

今回の発表により、最低賃金は日額で176万9,428リアル〔約3.7ドル、1ドル=約48万リアル(注)〕と、前年の最低賃金139万3,250リアルから27.0%引き上げられた。

JETROより

最低賃金は年間3割弱の上昇となっていて、消費者物価指数に追いついてはいない。

反政府デモ

当然、人々は暮らしていけないのでデモが引き起こされる。

イランの反政府運動で死亡した10代女性、治安部隊が性暴力後に殺害か 極秘文書をBBCが入手

2024年5月1日

イランで2022年に反政府デモに参加した後に死亡した10代の少女が、イランの治安部隊に所属する男性3人に性加害を受けて殺害されたとする報告書をBBCが入手した。治安部隊がまとめたものとみられる。(文中一部敬称略)

当時16歳だったニカ・シャカラミさんは、首都テヘランで抗議デモに参加後、行方不明となった。

シャカラミさんは9日後、遺体となって発見された。政府は、シャカラミさんが自死したと主張した。

BBCより

あー、この記事は何処かで触れた気がする。2022年の反政府デモに関しては、女性の自由に関する内容だと報じられていて、女性の人権問題でイランは国際社会から非難されているという説明であった。

しかし、上に説明したように経済制裁の影響は色濃く出ていて、イラン国民の中には不満が蓄積されていた。そこへ10代の少女が殺されたという話が出てきて、大規模な反政府デモに繋がったという構図である。

イランがこのように経済的に困窮している背景には、国内のインフレに関連し、その原因はアメリカにあるというのがイランの指導者のロジックである。

しかし、例えば2019年にもガソリンの値上げに対する抗議デモが起き、イラン革命防衛隊が投入されて国民が虐殺されたという話が出回った。何が真実かは良く分からないが、少なくとも上に紹介したグラフのように、2019年には激しいインフレの波が押し寄せていて、反政府デモとの関連があったことは否定できない。

イラン反政府デモ弾圧、死者1000人超か、米発表
【12月6日 AFP】米国は5日、イランで発生したガソリンの値上げに対する抗議デモへの弾圧で、1000人超が死亡したとみられると発表し、弾圧はイラン革命以降最悪の国内問題と指摘した。

まあ、このブログで扱ったように、韓国なども対イラン制裁に便乗して阿漕なことをやっていたから。

イランは経済的にかなり打撃を受けて、対外的に先鋭化しているという話は説明しやすい。

この状況でロシアがノコノコ現れて「アメリカとの対話を仲介してやる」と言われて、「じゃあ、そうしよう」とはならんだろうというのが、僕の素直な感想である。だって、イラン政府は全てはアメリカが悪いことに仕立てているのだ。アメリカに尻尾を振って経済の回復を目指したところで、国内の原理主義者達がだまっているとは思えない。

コメント

  1. 山童 より:

    トロンプの意図?
    ヨーロッパ、EUからのシナ引き剥がしでせうよ。EU諸国とくに仏独はシナと縁を切りたくても切り離せない状況ある。
    それとEUがEVを推進してきたのは、米国のオイルから独立の道を作りたかったからでせう。でEVがコケて、ロシアのガスが入らず、ところがフランスは大半のウランを仕入れているニジェールのクーデター政権によりウランを失った。それはフランスから電力を買うドイツにも大打撃。
    トランプ米国にとって、ぶん殴ってシナから引き剥がすには最適なタイミング。
    だから金食い虫のウクライナはロシアにやろうと言うことでせう。ロシアがまたガスをEUに売るようなれば、シナから欧州を引き剥がし易くなる。
    そして対シナに力を注げる!
    そこで邪魔になってるのが「侵略国を許すな」という美辞麗句で、結局はトランプののシナ引き剥がしを妨害してるのに気づかない正義感の方々です。

    • 山童 より:

      オレはウラジオストクで日本の建設廃材を埋め立て資材として売ってたのでね。
      当時のウラジオストク市当局と、マフィアどもと、そこに奴隷労働力を送り込むシナ人組織と持ちたくもない因縁を持ちました。
      で、その後ウラジオストクなど沿海州から東シベリアはシナ企業が乗り込んでいけわけですが、プーチンはこれを規制しようとしていた。そういう経緯は聞いてる。
       結論から言うと貴兄が言うような枢軸国にまでハッテンするほどシナとロスケの結束は強くない。というかテーブル下では薬室にタマ入れた状態でセーフティを外して持っている。そういう緊張感は変わらない。それは現実に胡散臭いといえ、きちんとしたビジネスで、ロスケとシナの争いに巻き込まれて弾かれかけた体験上、かように断言します。

    • 山童 より:

      イラン問題にしても、いま中東、アフリカを混沌とさせているトリガーって食糧の問題っすよ。ウクライナとロシアの二国の穀物輸出量は世界一のアメリカ合衆国に相当する。そして化学肥料に必須のリン鉱石の7割はロシア産。昨年、北欧でロシア抜きでやれそうなほどのリン鉱床が発見されましたが、運用できるのははるか先になる。
      当然にして、マグレブ諸国から中東、西アジアにかけての乾燥性気候の地域では、この二国からの「安い穀物」に頼ってる。
      これは広大なデルタ地帯を持ったエジプトですらそう。
      穀物価格の急上昇がアフリカ、中東、西アジアをキナ臭くしてる原因の一つ。
      なら、イランを丸め込むのにロシアがしゃしゃり出てくるのは納得できる。
      まぁロシアが悪いで結論が先にある人にはどうでも良い話なんでせうね。
      プロパガンダなら真実が何かは関係ないてせうから。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >イラン側にはアメリカと交渉する余地がある様には思われない。
    「そっちになくてもこっちは大ありなんじゃゴルァ!」
    ってのがアメちゃんのやり口ですからね。

    イランは、宗教的なことを除けば、割といい国「だった」はずなんですが……
    やっぱ宗教こそがガンですよね。
    ※シーア派はスンニ派に比べてマシだった印象がありますが、まあ、どっちもどっちか。
    ※原理主義で突っ走るのは、血筋を重視しない(だからこそ戒律に厳格になる)スンニ派、ってイメージがあります。

    ※だからみんなで「空飛ぶスパゲティモンスター」を崇めましょう
    ※ハスターかシュブニグラスあたりでも可、ここら辺は割と人間に好意的なので。