なかなか愉快な記事があったので紹介しておこう。
Vol.99 充電不要の太陽光EV登場 EV市場に一石を投じるか?
2025.02.25
日本にいるとなかなか実感できないが、EVは世界で着実に普及している。特に2020年以降の伸びが顕著だ。IEA(世界エネルギー機関)によると、EV販売は2024年に約1,700万台に達し、世界で販売される自動車の5台に1台以上がEVだという。
エネフロより
記事は、EV需要が増えていて日本だけ取り残されているというようなことが書かれている。随分な記事だが、本当だろうか?
EVの販売台数はこれからも伸びるのか
2023年のEV販売台数
記事では2023年のEV販売台数について言及されている。
2023年のEV販売台数の大部分は、中国(60%)、欧州(25%)、米国(10%)が占めている。現在の世界各国の脱炭素政策が続く限り、2030年の小型EV販売台数は3倍の4,300万台超に達し、小型車の総販売台数の40%を占めると予測している。
エネフロ「Vol.99 充電不要の太陽光EV登場」より
この傾向が続けば、2030年には現在の3倍に達するのだとか。


データを見ていくと、6割は支那で売れているということらしい。だが、売れまくっている割には保有台数の割合はやや低い。
市場1位の中国は、2023年の電気自動車販売台数が810万台と世界の約60%を占めています。電気自動車の総台数は2190万台で、世界の電気自動車のうち、半分以上が中国に存在します。
第2位の市場はヨーロッパで、2023年の電気自動車販売台数は330万台と世界の約25%を占めています。電気自動車の総台数は1120万台で、世界の約28%の電気自動車はヨーロッパに存在します。
ヨーロッパの中でもっとも市場が大きいのはドイツです。ドイツでは2023年にEV補助金が停止となり、電気自動車販売台数は2022年83万台から70万台へと減少したものの、依然としてトップの座を維持しています。次いでフランスが47万台、イギリスが45万台となっています。
EV充電エネチェンジのサイトより
数字から見ると、EVは支那で売れまくっていて、ヨーロッパではEV補助金が停止となった影響で販売台数は低下しつつも依然として多数のEVが走っているのだとか。
支那でEVが発達している理由
それにしても随分と支那はEV化が進んでいるね。
中国、乗用車買い替えの補助金制度更新-ハイブリッド車やEV対象
2025年1月8日 15:11 JST
中国は、電気自動車(EV)やハイブリッド車など燃費効率の高い車の販売下支えに向け、車の買い替えに最高2万元(約43万円)の補助金を支給する制度を更新した。
国家発展改革委員会(発改委)が8日公表した文書によれば、古い車から新しいEVやプラグインハイブリッド車に乗り換える買い手には2万元、排気量2リットル未満のガソリン車購入者には1万5000元の補助金が支給される。古い車の対象範囲も拡大された。
~~略~~
同制度の下で昨年は370万台強の新車が購入され、自動車販売は9200億元相当に達したという。
Bloombergより
EVへの買い替えは手厚いようだが、この他にも企業側に開発費などに補助金を出す制度が積まれていて、結果的に安く販売できるようになっている。
中国EV「独走」の裏側! 政府補助金、地方支援…内燃車より「4割安」のコストダウン、そして行きつく過剰生産の現実
3/3(月) 5:51配信
現在、世界の電気自動車(EV)市場で存在感を示しているのは中国企業だ。2025年1月4日付の日本経済新聞(ウェブ版)には「世界のEV販売とは 上位10社の半数、BYDなど中国勢」という記事が掲載されており、それによると2024年7~9月期のEV世界販売台数では、上位10社のうち半数が中国企業となっている。
~~略~~
中国のEVは2018年の段階では内燃車に比べて16%高かったが、2022年の時点では14%安くなった。特に小型車は2018年の段階では71%割高だったが、2022年の時点では 「37%割安」 になっており驚異的なコストダウンが進んでいる。燃料代(電気代)を比べてもEVの方が安く、コロナ禍以降消費のダウングレードが進むなかで「安いEV」が選ばれている状況がある。
Yahooニュースより
様々な優遇政策が積まれているが、中央政府からの補助金以外に地方政府からの手厚い保護措置があるようで。
特にバッテリー製造企業への応援があって、開発資金援助などを得てコストダウンを成功させている。
こうした補助金の影響だけではなく、自国市場効果と呼ばれる自国内で大量にEVが販売されることでの経済効果が生まれて、EVの販売価格低下が一層進んでいるのだという。このことが、支那内での爆発的なEV販売台数の伸びにつながっているのだとか。
他方で、生産過剰による経営状況の悪化という問題を抱えており、雨後の筍のように生まれたEVメーカーが淘汰される状況でもあるようで。
海外でEVの販売が頭打ちになる理由
さて、では支那のEVが海外に売られて価格破壊が起きるのか?!といえば、そういう展開にはなりにくいのが実情のようだ。

EV化を推進するためには充電施設を作らねばならないし、そのためには莫大な電力が必要となる。そして、電力は安く充電できなければならない。
ところが、「安い電力を作る」ということは先進国にとっては結構難しい。そのジレンマからアメリカは開放されようとしているが、日本などはまだまだカーボン・オフセットの呪縛から逃れられないでいる。
欧州の脱炭素、削減目標や手段で「現実路線」模索
2024年4月24日 5:00
欧州で脱炭素計画の「調整」が起きている。欧州委員会が2月に欧州議会などに提示した、2040年に1990年比で温暖化ガス排出を90%減らす目標は、日本で驚きをもって受け止められた。しかし、これは欧州気候法に基づく組織「気候変動に関する欧州科学諮問委員会」が求めた「90〜95%減」の下限にすぎない。欧州委の案では農業分野におけるメタンガスの排出削減目標の設定も見送った。
日本経済新聞より
EU、気候変動の企業ルールを緩和 欧州委上級副委員長
2025年3月3日 0:00
欧州連合(EU)欧州委員会のテレサ・リベラ上級副委員長(競争政策担当)は、世界をリードするEUの気候変動目標を堅持する方針を明らかにした。一方でEUは、低迷する域内産業を支えるため、環境規制の一部を緩和する準備を進めている。
日本経済新聞より
日本経済新聞の記事を2つ並べてしまったが、脱炭素のお題目を唱えるだけでは国民を納得させにくくなってきた事情があって、EUですら脱炭素の方針からやや遠ざかろうとしている。
このブログではドイツの失敗を色々取り上げてきたが、全体的に欧州ではエネルギー価格が高騰しており経済に悪影響をもたらす傾向にある。
電気料金が高止まりしている状況で、EVを買いたいというニーズは減退しつつある。更に、EVが普及して判明したことではあるが、冬季には燃費(電費?)がそれなりに悪化するほか、充電時間が長くかかるようになる(バッテリーが温まっていないと充電スピードが上がらない)。充電時間で課金するシステムが多いので、これもコスト高に繋がる理由となる。
家庭での充電も氷点下の環境では充電効率が悪化して、一晩で充電が完了しないどころか逆に充電が減るなんて事態も引き起こされるようだ。

また、多くのセンサーがそうであるように着雪に弱く、オートパイロットなどの便利機能が使いにくくなるというデメリットもあるよだ。自動ブレーキなども不具合を生じがちである。

こうした理由の多くはEVに限らず影響するが、EVはより多くの影響を受けやすいのである。
EV販売の2024年は支那が牽引
そういった状況で、2023年のEV販売台数は上述のような感じであったが、2024年はどうだったのかというと、販売台数の伸びはやや頭打ちの傾向にあるようだ。
世界のEV販売、2024年は25%増 インセンティブで中国販売が拡大
2025年1月14日午前 11:39
2024年の純電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車の世界販売台数は、前年比25%増の約1700万台となった。
24年12月の販売台数は4カ月連続で過去最高を更新し、中国の市場は引き続き拡大し、欧州でも販売が安定した。
調査会社ロー・モーションによると、インセンティブと排ガス規制は中国のEV販売を後押しし、英国がドイツを抜いて欧州最大のEV市場になるのを支援した。
ロイターより
とはいっても、25.8%(2023年)から25%(2024年)になった程度の話。前年までの伸び率と比べて伸びにくくなったというだけの話。相変わらず欧州でもEVは売れている。ただし、伸び率を牽引したのは支那であったという話となる。
だが日本国内におけるEV販売台数は減っちゃった。

日本が世界から取り残されていくね。
EVに太陽光パネルを採用すると
充電不要EV登場?!
しかし、EVの進化は止まらない。
とうとう、太陽光発電だけで街中を走ることのできるEVが登場したんだとか。

だいぶんイカれたデザインだな。

随分と軽量化したらしく、カーボン樹脂などを多用した設計になっているのだとか。
価格は標準モデルで約600万円(1ドル=150円換算)と少々高め。しかしながら、同社によるとすでに48,000台超を受注しているという。本格的な生産は今年後半になる見込みだ。 海外に輸出するかどうかは未定だが、米国以外でも一定の需要はありそうだ。
エネフロ「Vol.99 充電不要の太陽光EV登場」より
……お遊び感覚で乗れる人限定のような気がするなぁ。
車載の太陽光パネルは駆動用に使うのは現実的ではない
実際、トヨタのプリウスなんかも太陽光パネルを採用したモデルがあったんだけど、これがまたイマイチなんだよね。

理由は色々あるんだけど、価格が上がった割にメリットが薄いというのが現状である。それでも、デザイン的には顧客に訴求力があるのだろう。
でも、雪には弱いしなぁ。
プリウスの話はさておき、EVに太陽光パネルをつける発想はそれほど悪くないと思う。だけれど、駆動力に使うための充電をするというには太陽光パネルの性能や二次電池の性能が心許ないようだ。
住宅用のソーラーパネルは1枚あたり250〜400W程度なので、1枚400W、1日の日照時間5時間として2kWhの充電が可能ということなので、5枚のパネルが用意されていてもフル充電に8時間必要になる。日照時間を考えるとちょっと1日で充電を済ませるには足りない。
住宅の屋根には20枚とか40枚とか乗るので、家で充電するのであればという感じなんだけれど、太陽光パネルを車載するとなると通常は面積的に1枚、せいぜい2枚分くらいしか載らない。今後ナニカ技術革新があれば別なんだろうけれど、まあ、難しいだろう。
将来性を考えれば、EVに太陽光パネルを搭載するという話は面白いとは思うのだけれど、「一石を投じる」レベルではないような気がする。
コメント
こんにちは。
>市場1位の中国は
>第2位の市場はヨーロッパで
>もっとも市場が大きいのはドイツ
はい解散。
エンジン作れないから日本車締めだし→EV先行でウマー→絵に描いた餅→中国に言いように喰われる……
日経紙か読まないシャッチョサンなら騙せるかもですが、今時の目ざといのはもう騙されないでしょう。
元記事に、
『(略)太陽光発電だけで街中を走ることができるのは、車両重量を大幅に軽量化したからそれを可能にしたのがボディの材料。カーボン樹脂や、ガラス繊維強化ポリエステルを(略)軽量化だけでなく、強度も高めた(略)重量は約65%軽く(以下略)』
とありますが、あの、お値段は?
※あと、クラッシャブルエリア、足りてるのかな……
で、
『700Wの太陽電池の発電だけで1日最大約64km走ることができる』
ああ……キャリフォールニアの燦々と輝く太陽なら(デスバレーでも可)なら常に充電出来るんでしょうけれど……しかも、64km?定員2名で、エアコンはあるのでしょうか……
※こんなガラスの温室で、エアコン無しで一日64kmしか走れないなら、デスバレーだと三日目には干物ですな。
※元記事の最後、記者の履歴見て大笑い。元日産、からのフジテレビ。輝かしい経歴ですこと。
こんにちは。
発想としては愉快なんですが「一石を投じるか?」と言われると、笑いが巻き起こるくらいの話だと。
ガラスルーフの車といえば、セラというトヨタ車が昔ありましたが、ガルウイングで開閉するスバラシイ扉を採用している以外、見るべき所のないキワモノでした。
あれ、実は乗せてもらったことがありますが、夏場だと車内がめちゃめちゃ熱くなるという欠点がありました。
ソーラーパネルを沢山搭載すると、そういった弊害もありそうですね。
今日は。
確かTOKIOの企画もので、太陽電池を自動車の屋根に乗せて充電しつつモーター駆動で日本一周するという企画が昔にありました。実用新案を申請していれば莫大な収入になったかも(笑)。
電気自動車の普及は補助金頼りですし、ライフサイクルで環境負荷やコストを検討すると、いわれる程、優れた乗り物とは思えません。
こんにちは。
そういえば、TOKIOのソーラーカー『だん吉』はなかなか苦労して運用していましたね。
バッテリー不足で止まるのはお約束というか。
EVは使い物になるレベルになってはいますが、シーンを選ぶんですよね。冬季は使えないというのは、困ったものです。