産経新聞はバカなのか、分かってやっているのか。
「米が真珠湾で日本攻撃と言っているようなもの」英元首相、米大統領に反論
2025/2/20 10:28
ロシアのウクライナ侵攻を巡ってトランプ米大統領が「ウクライナは（戦争を）始めるべきではなかった」と発言したことに対し、英国のジョンソン元首相は19日、X（旧ツイッター）に「当然ながら戦争を始めたのはウクライナではない。米国が真珠湾で日本を攻撃したと言っているようなものだ」と投稿し、反論した。
産経新聞より
だれもがXを読める時代に、こんなことを報道する意味が分からない。
報道の真意は不明だが
レトリックは全文を引用すべき
Xのポストを引用すれば、この記事は終わりである。
念のために、全文引用しておこう。
When are we Europeans going to stop being scandalised about Donald Trump and start helping him to end this war?
Of course Ukraine didn’t start the war. You might as well say that America attacked Japan at Pearl Harbor.
Of course a country undergoing a violent invasion should not be staging elections. There was no general election in the UK from 1935 to 1945.
Of course Zelenskyy’s ratings are not 4%. They are actually about the same as Trump’s.
Trump’s statements are not intended to be historically accurate but to shock Europeans into action.
In particular the US can see $300bn of frozen Russian assets – mainly in Belgium. That is cash that could and should be used to pay Ukraine and compensate the US for its support.
Why is Europe preventing the unfreezing of Putin’s cash?
The US believes Belgium, France and other countries are blocking. It’s absurd. We need to get serious and fast.
～～対訳～～
我々ヨーロッパ人はいつになったらドナルド・トランプのスキャンダルに惑わされるのをやめて、この戦争を終わらせるために彼を助けるようになるのだろうか？
もちろん、ウクライナが戦争を始めたわけではない。アメリカが真珠湾で日本を攻撃したと言うのと同じだ。
もちろん、暴力的な侵略を受けている国が選挙を行うべきではない。英国では1935年から1945年まで総選挙は行われなかった。
もちろん、ゼレンスキーの視聴率は4％ではない。実際にはトランプとほぼ同じである。
トランプの発言は歴史的に正確であることを意図しているのではなく、ヨーロッパ人にショックを与えて行動を起こさせるためのものだ。
特にアメリカは、凍結されたロシアの資産3000億ドル（主にベルギー）を見ることができる。それは、ウクライナへの支払いや米国への補償に使われる可能性があり、また使われるべき現金である。
なぜヨーロッパはプーチンの現金凍結解除を妨げているのか？ 米国は、ベルギーやフランス、その他の国々が阻止していると考えている。ばかげている。我々は真剣に、そして迅速に取り組む必要がある。
Boris Johnsonのポストより
お分かりだろうか？
ボリス・ジョンソン氏のポスト全文を読めば、レトリックを使ったモノだと言うことが分かる。確かに、トランプ氏の発言内容を「Of course」を使って繋いで否定しているけれども、一番大切な序文を飛ばしてどうする。
もうちょっと丁寧に説明すると、以下の文章構造になっている。
＜A＞ ジョンソン氏の問いかけ
「我々ヨーロッパ人はいつになったらドナルド・トランプのスキャンダルに惑わされるのをやめて、この戦争を終わらせるために彼を助けるようになるのだろうか？ 」
＜B＞ トランプ氏の発言の間違った部分の例示
- もちろん、ウクライナが戦争を始めたわけではない。アメリカが真珠湾で日本を攻撃したと言うのと同じだ。
- もちろん、暴力的な侵略を受けている国が選挙を行うべきではない。英国では1935年から1945年まで総選挙は行われなかった。
- もちろん、ゼレンスキーの視聴率は4％ではない。実際にはトランプとほぼ同じである。
＜C＞ ＜B＞の発言の意図の類推
「トランプの発言は歴史的に正確であることを意図しているのではなく、ヨーロッパ人にショックを与えて行動を起こさせるためのものだ。 」
＜D＞ ヨーロッパの採るべき行動
- 特にアメリカは、凍結されたロシアの資産3000億ドル（主にベルギー）を見ることができる。それは、ウクライナへの支払いや米国への補償に使われる可能性があり、また使われるべき現金である。
- なぜヨーロッパはプーチンの現金凍結解除を妨げているのか？ 米国は、ベルギーやフランス、その他の国々が阻止していると考えている。ばかげている。我々は真剣に、そして迅速に取り組む必要がある。
切り取るのであれば、本来は＜D＞の文章を引用すべきなのだが、発言の骨子となっていない＜B＞部分を切り取っている。どう考えてもジョンソン氏の発言の真意とはかけ離れている。
こういう切り取りをするから、メディアは嫌われるのに。
他のメディアもほぼ同じ論調であるが、これって元記事がどこかにあるのかな？
ああ、47newsか。
トランプ氏がウクライナに問う戦争開始の責任
さて、トランプ氏が「ウクライナに戦争開始の責任がある」と批判しているというのは本当である。
トランプ氏、ロシアとの戦争は「ウクライナが始めた」と主張
2025.02.19 Wed posted at 09:31 JST
米国とロシアの高官が１８日にサウジアラビア首都リヤドで協議を行った。ウクライナを除いて行われたこの協議の後、トランプ米大統領は戦争に対するロシアの主張をまねてウクライナのゼレンスキー大統領を批判した。
CNNより
CNNは見事にトランプ氏の妄言を纏めていて、「大丈夫か？この人」的な記事を作っている。
トランプ氏は18日の記者会見で、ウクライナに戦争開始の責任があると示唆した。
産経新聞「米が真珠湾で日本攻撃と言っているようなもの」より
ロシア軍による侵略戦争が始まった時、ゼレンスキー氏は大統領の職にあった。故に、全く責任がないとは言わない。
だが、現実的にはロシア軍が侵略を開始したという事実は変わらない。それは国際法違反なのだが、アメリカ国内でその主張を続けてももはやウクライナ支援の理由とならない。
だからこそ、トランプ氏は「レアアース」の件を持ち出したのだが、実のところこのレアアースの話は直ぐに手を打てるような状況にない。レアアースはウクライナの領土の中のうち、ロシア支配地域に重点的に存在するのである。
トランプ氏は、ウクライナ関連の話は思ったよりも簡単に解決出来ないことに気がついたのかもしれない。「私が大統領に就任したら3日で解決する」とか、そんな話をしていた時期もあっただけに、ちょっと焦りはあるんだろう。
「独裁者」呼ばわり
さて、ちょっと面白かったのは、トランプ氏の「独裁者」発言の下りである。
トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領について、選挙を経ていない「独裁者だ」と批判したことに対して、ジョンソン氏は「暴力的に侵攻されている国が選挙をしないのは当然だ」と強調。
産経新聞「米が真珠湾で日本攻撃と言っているようなもの」より
前の記事でも触れたが、ゼレンスキー氏は選挙で選ばれている。
次のウクライナ大統領の選挙を延期している事実はあるが、ジョンソン氏が指摘するように延期に正当な理由がある。
そして、「真の独裁者」は侵略戦争をやらかしているプーチン氏なんだよねぇ。皮肉な話ではあるが、2000年からずっと独裁者を続けているのがプーチン氏なのである。一応、2008年から2012年の間は首相をやっていたが、形だけのもので、実質的な支配者を続けていた。
そんな状況下でのロシア大統領選挙が行われた結果を、民主的手続きに則って行われたなどとは評価できない。
別に、独裁者が良いとか悪いとか言う積もりはないが、この言い分だとロシア側にも跳ね返ってくるな。
とまあ、「だからなんなんだ」という記事になってしまったけれども、日本の報道を見てもこんな感じに信用出来ない情報が多くて話にならない。ここまで分かり易いのは稀だと思うけれど。
停戦条件は折り合わない
そもそも、ロシア側の停戦条件というのは殆ど変化がないと言われている。
これは去年6月の記事ではあるが、現時点ではこちら。
ほぼ共通しているが、以下の4項目を挙げている。
- ウクライナの軍事力削減
- NATO加盟をウクライナが正式にあきらめること
- ウクライナ民族主義などの禁止
- ロシアが部分的に占領している4つの地域（ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリッジャ各州）から、ウクライナ軍が撤退すること（ロシアの主権承認）
この他に、言及されていない条件として、「ゼレンスキー氏の大統領辞任（新たな大統領選挙の実施）」「対ロシア制裁の終了」があると思われる。
まあ、ウクライナは流石にこれ全部飲む訳にはいかないだろう。ここで飲んでも数年後に更に領土を削りに来るのがロシアだからだ。つまり、これは事実上ウクライナに完全に降伏しろと言っているのに等しい。
そして、ウクライナの状況が終われば、プーチン氏は間違いなく次は別の国に牙を剥いてくるだろう。
が、アメリカはその当事者ではないのだ。まあ、そういうことを前提にして報道を理解していくべきだと、そのように考えている。イギリスも日本も、ウクライナは他人事ではない。そして、プーチン氏が失脚したとしてもロシアは態度を変えるとは思えないんだよね。厄介な国だよ。
追記
アメリカはエネルギー問題でもロシアにアプローチされているな。
プーチン氏、エネルギー市場には米ロとサウジの３カ国協議が必要
2025年2月20日 3:24 JST
ロシアのプーチン大統領は、世界のエネルギー市場には同国と米国、サウジアラビアの３か国による話し合いが必要だと述べた。
サウジのリヤドでは今週、ウクライナでの戦争終結や米ロ関係の強化を目指した米ロ高官による最初の話し合いが行われた。プーチン氏によれば、エネルギーを中心に経済についても協議したという。
Bloombergより
トランプ氏が大統領になってから、プーチン氏も息を吹き返してきた感はあるな。どのような条件で停戦するか、現実を見据えながら落とし処は早いところ見つけるべきだろう。
トランプ氏の暴言は、ある意味、ウクライナに対して譲歩を即している。完全にロシア側についた様な発言をしているが、その主張では流石にアメリカでは通せないだろうから、一部はブラフだと考えた方が良さそうだ。だけど、どれがブラフでどれが本気か分からないのがトランプ氏なんだよねぇ。面倒な。
コメント
真珠湾攻撃を英国に持ち出されるのは不愉快ですね。外務省の手落ちで宣戦布告が攻撃後に回り、不意打ちとされてしまったのは、日本の責任でもありますが。
それ言い出したら大英帝国の奴隷貿易や、インドやアフリカ諸国への略奪や、シナへの阿片戦争や、南アフリカのボーア戦争や、市場価値の1/100しかないダイヤモンドをデヴィアスと英国政府が癒着して、価格支配して騙してきたことや（007で唯一に映画化されてないボンド原作）お前らのやぅてきた事はなんやねん？？
日本から「解放」したインドネシアを、ポルトガルと組んで再植民地化したのは？
その時に独立戦争を指揮したのは敗戦した日本将兵だった！ どっちが正義なんだ？
ブリカスふざけんなよ💢💢💢
ナチスドイツのポーランド侵攻を口にきないで、真珠湾攻撃を例に出すのは人種差別てはないのか？？
一国のトップが人種差別するのかよ公の場で。滅びろ野蛮なサクソン人💢💢
我が祖国を見下しやがって、そんなにナチの子孫に媚を売りたいか？？
こんな相手でも、世界を見渡した時に、組む相手としてマシな方に分類されるのだから困ったものです。
腐ってもイギリスです。……随分と腐りきっていますけどね。
ボリス・ジョンソン氏は失言の多い方ですから、いちいちつっかかっても仕方がないのですが……、それでもわざわざ真珠湾を論うところは腹立たしいですね。
いくら文章全体を見ろ、という話であったとしても、わざわざそれを持ち出す必要はないわけで。
ロシアの事例を持ち出してでも、事例に事欠かないと思うんですよね。