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「野菜石鹸」騒ぎとNHKの不見識

報道
この記事は約8分で読めます。

丁寧なコメント頂いたし、触れておいたほうがいい話なので。

薬機法違反とアレルギー問題が指摘され…NHKが放送した「野菜石鹸」が大騒動!

2025年2月11日 18:00

2月4日にNHK首都圏ネットワークで放送された、「廃棄野菜で作られた石鹸」の内容が波紋を広げている。

Asagei Bizより

実は、ニュースが出るんじゃないかと待っていたんだけど、NHK、謝罪まだぁ?放置して良い問題じゃないから!これ。

それと注意喚起を。自然由来の石鹸は、アレルギーを引き起こす危険性があるので、成分の明記されないオーガニック商品は試すべきではない。本来、雑貨、食器洗い&洗濯用石鹸​というカテゴリー分類の石鹸は、手袋などを用いて使うべき商品なのだ。「無添加」という表示にも注意すべきだ。

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深刻なアナフィラキシー

コメントを頂いたので

コメントを頂いたのはこちらのオーガニック絡みの記事に、だ。

さて、この話は、「ねーさん」の記事に詳しい。

NHK横浜は、まだポストを削除していない模様。

x.com

削除した時用に、スクショも紹介しておこう。

記事を書いた時点でNHK横浜のポストのリンクはちょっとおかしなことになっているので、NHKのサイトの方はもう対策済みかもしれない。

茶のしずく石鹸事件

さて、それで、ねーさんのサイトでも紹介されている、「茶のしずく石鹸」事件の話を少し詳しく書いておこう。

「茶のしずく石鹸」の自主回収について

厚生労働省医薬食品局安全対策課

 小麦を加水分解した成分を含有した旧「茶のしずく石鹸」(愛称)(平成22年12月7日以前に販売された製品。以下同じ。)の使用者において、パンや麺類など小麦を含有する食品を食べた後に運動した際に全身性のアレルギー(運動誘発性のアレルギー)を発症した事例が報告されたことを受けて、製造販売業者が旧「茶のしずく石鹸」を自主的に回収しています。

  • 回収対象の製品は平成22年12月7日以前に企業が出荷したものです。回収対象の製品をお持ちの方は、この製品を使わないようにしてください。
  • 回収対象の製品をお持ちの方は、下記の「返品・交換や製品についての問い合わせ先」にご連絡ください。
  • 回収対象の製品を使用していた方で、小麦食品摂取後に息苦しくなるなどの運動誘発性アレルギーを経験した場合には、速やかに医師にご相談ください。 旧「茶のしずく石鹸」を使用したことにより発症する小麦アレルギーの診療可能施設のリストが以下の「関連情報へのリンク」のリウマチ・アレルギー情報センターホームページ(別ウィンドウで開くhttp://www.allergy.go.jp/allergy/flour/003.html)で公開されていますのでご参照ください。
厚生労働省のサイトより

事件を起こしたのは株式会社悠香という福岡県の企業で、各種化粧品や医薬部外品を製造販売している会社で、現在はアリナミン製薬が全株式を取得して完全子会社している。

2005年から2010年にかけて述べ467万人に対して販売されたのが、問題を起こした「茶のしずく石鹸」である。トータル4650万個も販売されたので、かなりのヒット商品であったと言える。

が、この石鹸、加水分解コムギを使った商品で、使用者に深刻なアレルギー症状を引き起こしてしまった。はっきりした症状が出て通院するなどした数は2,000人以上、うち1,300人が訴訟に踏み切った。被害割合は少ないものの氷山の一角の可能性もある。優位に有害性があるとの認定をすべき事案だ。

そも加水分解コムギは食品や化粧品に広く使われているものであり、酵素や酸、アルカリなどを使って加水分解してタンパク質を細かくした製品である。現在は安全性を確保するために分子量3500ダルトン未満にするように定められている。実は、世界各地からアナフィラキシー報告があって、分子量3万ダルトンの加水分解コムギに対して高い反応性が報告されている。

ここで、ダルトンの定義は分子や原子の質量を表す単位で、分子量と数値的に等しい。だから、数値が少ない方が粒子が細かいってことだね。

で、粒子が大きめの加水分解コムギを使うと、食物アレルギーを引き起こすことがわかったのは、実は最近のこと。皮肉にも日本全国に周知する事となったキッカケこそが茶のしずく石鹸事件であった。繰り返しの使用はリスクを高めるようだ。

コメントでは経皮感作に関して詳しく説明頂いているので、アレルギーに至るプロセスに関してはここでは割愛させてもらう。

このあたりのサイトにも詳しく書かれているので、興味があれば確認いただきたい。

Q&A | 藤田医科大学医学部 アレルギー疾患対策医療学講座
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当然、NHKでもニュースで取り上げられていた。そりゃそうだろう、この食物アレルギーは深刻なアナフィラキシー(生命の危険につながる危険な症状を含む)を引き起こしたのだ。

薬事法に触れるリスク

さて、今回のNHKの報道で問題となるのは、こういった過去の事案に絡んで、使用者に深刻な症状を引き起こしかねないリスクを注意喚起しなかったことと、薬機法に触れる可能性があるからだ。

番組で紹介された石鹸は、廃棄されるキャベツをジューサーに投入し、ココナッツオイルやオリーブオイルなどを混ぜ合わせるなどして、「畑の香りがするせっけん」として販売されているものだった。だが、番組を見た一部視聴者から、《石けんの製造は薬機法に規定があるので、内容によっては法に触れる可能性がある》と指摘されたのだ。社会部記者が言う。

「確かに石鹸は、場合によっては化粧品や医薬部外品として規制対象となり、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に抵触する可能性はあります」

Asagei Bizより

石けんの製造販売については、化粧品製造業や化粧品製造販売業の許可を取得し、化粧品製造販売届け出を行い、製品ごとの製造承認を取得し、成分について基準に準拠する必要がある。

日本石鹸洗剤工業会 JSDA部会・委員会の活動
石けん・洗剤について、身近な暮らしの情報から、安全・環境の話など、これは便利という情報を満載。国内大手メーカーのほとんどが加盟する団体のページです。

こんな注意喚起もなされていて、なろう系主人公達が気軽に異世界で売りまくっているけれども、現実世界ではかなり厳しい規定の元での販売が行われている。

x.com

NHK横浜もこの指摘に焦って「台所用」だと指摘したのだけれど、問題はそこではないのだ。

新たなアレルギーを発症するリスク

薬事法や薬機法などで細かな規定が設けられた理由は、上で紹介したように経皮感作によるアレルギーを引き起こすリスクがあるからであり、実際に社会的に大きな問題になった。

騒動を受けて、石鹸を生産する農園は7日、インスタグラムで、「私たちの認識が甘かったことを深く反省しております」と謝罪。今後については、「用途以外の使用を避けるよう注意喚起を徹底し、手袋の使用を推奨するなど、適切な使用方法を明記いたします」とし、過去の関連投稿を削除している。

Asagei Bizより

野菜石鹸を作った農家、はらくら農園はインスタグラムでお詫びを掲載したうえで、色々なサイトで売られていた販売を取りやめたようだ。

が、販売自体は継続する積りらしい。そりゃ、NHKで取り上げてもらって大々的に売り出そうと製品を作ってしまったのである。廃棄すれば大赤字では済まないので、その気持はわかる。

まだ、一部のサイトでは情報訂正なされていないしね。

農家が作った野菜のせっけん - Knot Magazine
1年を通じて多様な野菜が生産されている横須賀だが、農家を悩ませているのが、大きさが不揃いなどの理由で市場に出せず、捨てられてしまう『規格外野菜』。そういった野菜や果物を活用し、手づくりせっけんを製造しているのが長井にある『はらくら農園』。つ...

「もったいない」が命に関わるニュースは何処かで見かけた(2ヶ月前に買ったお惣菜を食べて食中毒を起こした事案)が、これと似たことになりかねない。

コメントで頂いたようにこれは法の不作為であって、雑貨登録で「洗濯洗剤・台所洗剤」など同列に販売をすることが可能である。

石鹸は消費者心理的に「安全性が高い」と思われているものだ。ゴム手袋を使って洗濯や台所洗剤として使用するユーザーがどれほど居るだろうか?実際には重篤なアナフィラキシーを引き起こすリスクのあるもので、市販の中性洗剤よりも厄介なシロモノであることに変わりはない。

「自然は安全」というのは、幻想なのである。

アヘンやコカイン、ヘロインといった有名な麻薬も自然素材由来であるし、カエンタケ、ツキヨタケなどの毒キノコ、トリカブトだって有名な毒物だ。テトロドトキシンだって、天然物だよ。

懲りないNHK

さて、こういった事案を踏まえた上で、調べてみたらこんなニュースが。

八代特産のしょうが使った石けん完成 販売始まる

02月29日 11時42分

八代市の特産のしょうがを使った石けんが完成し、県内の道の駅などで販売が始まりました。

~~略~~

開発した会社によると、しょうがの成分が持つ殺菌効果や保湿効果が期待できるということです。

価格は、1個税込み440円で、地元東陽町の道の駅のほか、熊本市植木町や山都町の道の駅、それに八代市内の物産館で購入できます。

NHKニュースより

あー、理解していないわ。

雑貨「生姜石鹸」

雑貨登録された石鹸なのだが、NHKは「しょうがの成分が持つ殺菌効果や保湿効果が期待できる」などと宣伝している。かなりグレーな表現で薬機法違反である可能性が高い(肌などに使用できる効能を書いてはいけない。つまり、殺菌効果はOKだが保湿効果はNGの可能性が高い)。

実際に、販売しているサイトには効果は雑貨として紹介され、他の説明は一切ない(本来は、「洗濯用石けん」「洗濯用複合石けん」「台所用石けん」「台所用複合石けん」の何れかを明記する必要がある)。

こちらのサイトにも詳しく解説されていた。

薬機法 ( 薬事法 )をクリアするには 雑貨 として 手作り石けん を売る
オークションで手作り石けんを販売している人たちはどのようにして薬事法をクリアしているのでしょうか?手作り石けん を許可なしで簡単に販売するには化粧品ではなく雑貨として石けんを販売すればOK!本日は『 手作り石けん を 薬機法 ( 薬事法 )...

報道機関なんだから、もうちょっと調べようよ。

コメント

  1. 山童 より:

    木霊様ありがとう 🥹

    • 木霊 木霊 より:

      こちらこそ、丁寧なコメント頂き感謝いたします。
      コメントの内容を噛み砕く説明をするところまで、医学的な知識が追いついていないし、そもそも十分解説頂いているので丸投げですが、その辺りはご容赦を。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    昔、意識高い系が出始めの頃、「椰子の実石鹸」がフィーチャーされて、女優が小川に足突っ込んで「お魚さ~ん、環境に優しい石鹸出来たよ~」なんて脳天気なこと叫ぶCMがテレビで流れて、『石鹸使う事自体が環境破壊なんだ!加減しろ馬鹿!』ってなって速攻取り消された、って事例があったと記憶してます(色々うろ覚えですが)。

    自然由来の素材であれば体に優しいなら、自然界に毒が存在する理由が説明付かないですよね(笑)
    あと、今のご時世、薬事法無視のものを有り難がるのは、マスコミとしてどうなのか……
    増すゴミだからいいのか。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      椰子の実の石鹸は、中に含まれるスクラブの存在が洗浄力を引き上げますが、自然由来だから安全とかそういう話とはちょっと違ったのだと理解しております。
      というか、油分を苛性ソーダを使って固める(鹸化するというのが正しいようですね)ので、大抵の場合は「全てが自然由来」などということにはなりません。灰を使ったサバイバルな石鹸作りの方法も知られていますが、苛性ソーダを使った方がお手軽ですね。でも、苛性ソーダそのものは濃度にもよりますが毒劇物指定の薬品であります。
      だからこそ、身体に使用する石鹸は薬事法などの法律によって規制がなされるわけでありまして。

      マスコミはそんなことも調べないんですよねぇ。