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日米首脳会談は成功?!

外交
この記事は約8分で読めます。

石破氏の言動に不安しか感じていなかったのだが、日米首脳会談は概ね成功だったと言っていいと思う。石破氏の会談も破綻なく終わったようだし、事前の色々な仕込みが功を奏したと思っている。

その中で注目していたのは日本製鉄の件だ。

トランプ大統領 USスチール「買収でなく投資」 日鉄と来週会談

2025年2月8日 18時03分

日米首脳会談を受けてアメリカのトランプ大統領は、日本製鉄による「USスチール」の買収計画をめぐり「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意した」と述べました。
そのうえで、来週、日本製鉄の幹部と会談し、協議する考えを示しました。

NHKニュースより

交渉の余地を残せたという意味で、評価に値することだろう。

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交渉の余地を残せただけでも成功

国家安全保障の懸念?

さて、前回、バイデン氏が「買収計画禁止命令」を出したところで、記事を書いている。

今回、USスチール側も日本製鉄に買収されることに乗り気だったにも関わらず、全米鉄鋼労働組合(USW)の強硬な反対運動に負けてバイデン氏も禁止命令まで出してしまう展開であった。

そして、バイデン氏が口にした理由が「安全保障上の懸念」という、ちょっと意味のわからないものだった。

確かに、アメリカの製鉄所を日本企業が買収するということについて、アメリカの鉄鋼業界に強い忌避感が生まれるのは理解できるし、アメリカの製鉄業界が日本のものになるという印象を与えれば、それは「安全保障上の懸念」だろう。

これについて、石破氏はこんな惚けた発言をしてしまった。

いやいや、そりゃねーだろう、と。

この記事でも言及したが、USスチールの売上は世界で24位程度。アメリカ国内ならば、15位のNucor社の方が売上が大きい。

そして、前回言及しなかったが、このニューコア社は日本の大和工業と合弁事業を開始(1988年)し、ニューコア・ヤマト・スチールカンパニー社として事業を行っている。大和工業の持株比率は49%で、この他にもヤマトコウギョウアメリカ・インクという会社を作ってアメリカ事業の統括などをしている。

USスチール社は歴史ある鉄鋼企業ではあるけれども、いろいろな意味で大規模な投資が必要な時期なのである。

印象の問題

では、何故反対されたのか?といえばUSWが反対したから、に他ならないわけだが……。

トランプ大統領は7日、ホワイトハウスで石破総理大臣との首脳会談のあとの記者会見で、USスチールについて「われわれにとってとても重要な会社だ。私たちは会社がなくなってしまうのを見たくなかったし、実際にそうなることはないだろう。買収は印象としてよくない」と述べました。

印象かよぉ。

しかし、実利はともかく印象も大切ではあるので、交渉の余地を残したということは大きな意味があるだろう。

この中で、マッコール委員長は「日本製鉄がUSスチールに引き続き関心を持っていることに対するわれわれの懸念は変わらない。日本製鉄は、わが国の市場に鉄鋼製品を不当に安く輸出してきた歴史があり、『貿易詐欺の常習犯』だと証明されている」としています。

そのうえで「トランプ大統領にはアメリカ企業による代替案を模索することによって、国内の鉄鋼業界の長期的な未来を守り続けることを要望する」とコメントしています。

NHKニュース「トランプ大統領 USスチール「買収でなく投資」より

そして、USWとしても「買収でなければ」という意思表明をしているのだから、このあたりが落とし所なのかもしれない。

交渉はこれからだが

だが、そもそも日本製鉄としてもUSスチールを買収したうえで乗っ取るという計画ではなかった。日本製鉄側は、アメリカにおける鉄鋼事業を拡大するうえで「スケールメリット」を確保したかったという側面が大きい。

日本製鉄の米USスチール買収交渉が再び動き出す可能性がでてきた。トランプ米大統領は7日、「買収ではなく、投資で合意した」と表明した。今後、米政府と協議することになるが、「投資」が何を示すかは明らかになっていない。玉虫色の内容といえ、交渉の先行きは依然として不透明だ。

トランプ氏は日米首脳会談後の記者会見で「買収」は何度も否定し、「投資」だと話した。「投資は大好きだ」としたが、その真意は不明だ。

日本経済新聞より

日本経済新聞は懸念を示しているが、しかし日本製鉄とUSスチールの間で既に買収の条件に関しては話し合いができている状態である。そして、まさに現地への投資を計画しているのが日本製鉄であったことは既に報じられている。

日本製鉄がUSスチールに求婚する理由

1月 16, 2024

日本製鉄が米国のUSスチールの買収を表明した。鉄鋼国内最大手が大型M&Aに動く背景は何か。世界の製鉄業界の動向から読み解く。

~~略~~

一方のUSスチールは米国で粗鋼生産3位の高炉/電炉一貫の鉄鋼メーカー。高級鋼の生産が可能な最新鋭の「電炉」技術を持つ。エネルギー代が安価な米国では「電炉」の普及が7割程度まで進み、USスチールも電炉の能力増強計画を推進中だ。同社は北米生産拠点で使用する鉄鉱石を自給できる鉄鉱石鉱山も保有していて、生産に有利な条件となっている。カーボンニュートラル化への積極投資も行っている。米国内の複数拠点で高付加価値の自動車用鋼板の製造が可能として、グローバル事業の拡大を狙う日本製鉄とのシナジーが高い。

japan-forwardより

そういう意味ではトランプ氏が日本製鉄との交渉で何を持ち出してくるか分からないという不安はあれど、アメリカとしても支那の安値鉄鋼に市場を食い荒らされるのは我慢ならないと考えているし、アメリカ国内の雇用を増やすということには興味があるだろう。

名前が重要らしい

ただ、「USスチール」の名前が重要だということだ。

そして「2週間前にUSスチールの人たちが日本の代表者とともに私に会いに来た。私は『われわれは日本が好きだが、買収させるわけにはいかない。それはUSスチールだからだ』と伝えた」と明らかにしました。

NHKニュース「トランプ大統領 USスチール「買収でなく投資」より

うんまあ、気持ちはわかるよ。

名より実を取る選択はアメリカにとっても大切な筈なんだけど、そういうことではないんだろうけれど。

まあ、とにかくこれから交渉するという展開なので、「よくやった」というところまでは言えないし、おそらくはトランプ氏の掌の上という可能性はあるんだろうけれど、それでも可能性を残したというところで、石破氏はしっかり仕事をしたとは言えるのだろう。

追記

石破氏の評価が低い・嫌われているのは仕方のない面はあると思うのだけれど、今回の話はあくまで日本製鉄の話が進んだという点が重要だ。

計画修正案、石破首相が米に提示 投資の増額、首脳会談で―日鉄のUSスチール買収

2025年02月09日21時07分

日本製鉄によるUSスチール買収計画を巡り、石破茂首相が7日(日本時間8日)日米首脳会談で、買収後の投資額の積み増しを含む修正案をトランプ米大統領に示していたことが9日、分かった。関係者が明らかにした。詳細は判明していないが、日鉄が約束している総額27億ドル(約4000億円)以上の投資計画を大幅に増額する内容で、日鉄側と事前調整した上で提示したとみられる。

時事通信より

どうやら、事前に日本製鉄との調整が済んでいたようで、トランプ氏に対して石破氏が事前に用意されたセールスをしてきた感じの構図なんだけれども、それでも日本のトップの仕事で他の誰にも代替できない大役を務めたのだということなのだろう。

「米国の家来としてお土産を持って行っただけ」社民・福島瑞穂氏は首脳会談の首相批判展開

2025/2/9 19:33

社民党の福島瑞穂党首は9日、石破茂首相が7日の日米首脳会談でトランプ大統領が表明したパレスチナ自治区ガザ住民の域外移住やパリ協定の再離脱に言及せず、対米投資を1兆ドル規模に引き上げる方針を伝えたことを批判した。「何ひとつ日本の立場として問題提起せず、米国の家来としてお土産を持っていっただけ。それはダメでしょう」と産経新聞の取材に語った。

産経新聞より

こういう意見もある。

この意見が的外れかどうかは別に検証するとして、評価すべきところがなかったという意見には賛同できない。ただまあ、今後上手いこと進めばいいな、ということではあるんだけど。

追記

お墨付きが来た!

日米共同声明に抗議 日本公使に「強烈な不満」表明―中国

2025年02月10日19時18分配信

中国外務省は10日、劉勁松アジア局長が在中国日本大使館の次席である横地晃公使を呼び、日米首脳会談の共同声明について厳重に抗議したと明らかにした。東シナ海、南シナ海や台湾問題での日米の連携強化をけん制した。

時事通信より

えぇ、どうして日本だけ呼ばれたのよ。

横地晃次席による劉勁松・外交部アジア司長とのやり取り(2025年2月10日)

令和7年2月10日

2025年2月10日、外交部において、劉勁松アジア司長から横地晃次席に対し、先般行われた日米首脳会談について、中国側の独自の立場の表明がありました。横地次席からは、我が国の立場をしかるべく説明するとともに、中国をめぐる諸懸案について我が国の立場を改めて申し入れました。また、双方は、日中関係や共に関心を有する課題について意見交換を行いました。

在支那大使官のサイトより

なお、在支那日本大使館次席の横地晃氏は「我が国の立場をしかるべく説明」し「我が国の立場を改めて申し入れた」模様。

横地氏は毎度のことで、お疲れ様です。

台湾問題巡り主張交わす 在中国日本大使館の横地次席が中国側と会談:朝日新聞
在中国日本大使館は22日、同館の横地晃次席が、中国外務省の劉勁松アジア局長と会談したことを明らかにした。日中関係や日中韓協力をめぐり意見交換をしたといい、調整が進んでいる日中韓首脳会談(サミット)が…
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まあ、お仕事だからしっかり務めを果たしてくれることを期待したい。

コメント

  1. 山童 より:

    まぁ…そうですけど。交渉はこれから!
    政治家は実績を出してこそナンボ!
    悪いけど交渉の余地を残しただけでは実績とならない。残せただけマシなのは事実てすが、マシな事をやれるのは我が国の統率者として当然で、それは入学願書を期限内に出しました程度の事と思います。
    バイデンが異常なのであって、トランプ氏が
    クールに判断しただけで、別に「実績」言うほどの事とは思われませぬ!

    • 木霊 木霊 より:

      トータルの評価は別の記事に書きましたが、今回の「日米首脳会談は成功」で良かったとは思っています。
      それは、石破氏の能力ではなくて事務方の努力の賜であるとは思いますが、それでも交渉担当者は石破氏ですから、やり遂げた点は評価しても良いのだろうと思っています。

  2. 山童 より:

    やれる事はせんぶやった?
    何を威張ってんたコイツ?
    当たり前だろうに。お前の仕事はコンビニの店員か? バイトが出来る限りの事をしたら褒めてあげなきゃいけない。
    しかしお前は一国の首相だろ?
    やれる事はぜんぶやるのが当たり前だろう! やっぱりシナの手先か?

  3. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    日米の事務方がやれるだけのことはやった、というのが七面鳥の感想ですが、石破氏は、下馬評を裏切ってかなりの高成績を収めたと思ってます<今回の訪米

    USスチールだって、「あくまで投資だから」って言って、最低限の役員だけ送り込んで、株も半数未満に抑えて、あとは外堀を埋める(他の株主を籠絡させる、下請けや原料も抑えちゃう)を進めて、その分の『投資』も件の1兆ドルに含めちゃえばいい。誰も文句言えない。

    官僚に、上手いこと石破さんを踊らせる手を使える奴が居た、そんなところでしょうかね。
    ※その後のNHKの放送までは、流石に事前の答案が作れなかった、と。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      USSの話はどう転ぶかは。
      もうちょっと後に出るハズの日本製鉄の発表を待っておきたいと思います。株式5割以上を保持というのは無理なようですが、アメリカ側の発言の趣旨を考えれば仕方がないでしょう。
      石破氏にとっては「やれることはやった」で良いと思いますよ。僕自身はそんなに期待していません。