この記事を書くにあたって、皆様にお詫びをしておかねばならない。何の話かと言えば、米の価格の話である。
石破氏はようやく「迅速に物価高対策をしろ」などと言い始めたようで、呆れたが、謝った言説を披露したからにはその点はお詫びしないとね。
石破首相 物価高への対応を指示“迅速に実行を 備蓄米活用も”
2025年2月4日 10時54分
物価高への対応をめぐり、石破総理大臣は閣僚懇談会で去年の経済対策に盛り込んだ施策を迅速かつ効果的に実行するとともに備蓄米を活用してコメの安定供給を図るよう関係閣僚に指示しました。
NHKニュースより
先ずは石破氏の指示について紹介しておこう。
米価はコントロール出来るか
何よりまずお詫びを
それにしても「備蓄米活用」ねぇ。効果があるとも思えないんだが……。
先日、記事を書こうと思ったニュースにこんなものがある。
農相「備蓄米の条件付き販売可能に」米価高騰で見直しへ
2025年1月24日 11:34 (2025年1月24日 17:46更新)
江藤拓農相は24日の閣議後記者会見で、政府が備蓄するコメを放出し、全国農業協同組合連合会(JA全農)などの集荷業者を対象に販売できるように運用を見直す方針を表明した。国が買い戻す条件を付ける。足元ではコメの品不足で米価が高騰しており、消費者などから備蓄放出を求める声が出ていた。
日本経済新聞より
そもそも「足下では米の品不足で米価が高騰」という認識が、ズレているのではないか。
おっと、その前に謝罪の概要を示すべきだろう。
先ずはお詫び申し上げたい。


こちらの記事で、「令和の米騒動」という事態が発生して、色々なデータを見た上で一時的な動向だろうと考え、価格は次第に落ち着くだろうと評価していた。
だが、米価は上がりつつけて、今では去年の同月比2倍位の価格になっている。
原因分析を間違ったとは思っていないが、予測に関しては完全に外したことを、ここにお詫びさせて欲しい。

12月の時点での民間在庫は300万トンを切って253万トンと在庫率38%まで悪化している。新米が出回っているにもかからず、在庫率が回復していないのである。
今年も高価格帯維持が続く
さて、米価の値上がり状況を踏まえて、今後の推移を考えていく。そもそもお米は市場原理が働いていないので、価格下落要因は新米切り替えの時期に古米になることくらいしかない。
政府は当初、新米が出れば落ち着くとの見通しを示していた。しかし、江藤氏は同日、「今年に入っても高い状況が続くのではないか」と価格高騰が長期化する可能性を指摘した。
日本経済新聞「農相「備蓄米の条件付き販売可能に」」より
したがって、9月以降に値下がりする傾向を見せるどころか、どんどん値上がりした状況を見るにつけ、今後値崩れするタイミングは今年の9月まではないという風な予測ができる。
しかし、市場には米の備蓄があるわけで、そうすると一体、備蓄米放出というのは何のために行われるのか?という疑問が生じる。
反対意見も
で、備蓄米の放出は未だ行われていないのだが、反対意見は出ているようだ。
政府の“備蓄米放出”にJA福井県五連が反対姿勢 「生産調整で需給バランスを合わせてもらう」【福井】
1/27(月) 19:02配信
JA県五連の宮田幸一会長は27日の定例会見で、政府の備蓄米を放出する準備を進める考えについて、反対の姿勢を示しました。
農林水産省は24日、緊急時にしか放出できないことになっている備蓄米を、コメの価格高騰を理由に放出する準備を進めていると発表しました。
Yahooニュースより
JA福井県五連が反対意見を述べているのだが、個人的に聞いたJA関係者の意見も似たようなものだった。
備蓄米を出したところで値段は下がらないと。
また、コメの価格の今後について宮田会長は「卸売業者に販売するコメの相対価格は、令和7年産の新米が出るまでは今の価格の水準で推移するだろう」とした一方、「今年春ごろの作付けが去年より増えれば、コメの相対価格は多少下がる」との見方を示しました。
Yahooニュース「政府の“備蓄米放出”にJA福井県五連が反対姿勢」より
僕も同じ意見なのは、上に書いた通り。では何故そんなことになるのかと言えば、米の流通方法がこんな感じになっているからだ。

米生産者からJAなどの出荷業者が買い付けて販売するケースと、直接生産者から買い付けるケースがあって、両方とも米トレーサビリティ法によって捕捉している。
行方不明のお米
ところが、現実はそうではなかった。捕捉していると思っていたデータを点検したら、消費者に届くべきお米17万トンが届いていない実態が分かったというわけだ。
消えた「茶わん26億杯」分
2025年2月1日 2:00
農林水産省が備蓄米放出に否定的だった姿勢を軟化させて運用指針を見直した背景には流通段階での深刻なコメ不足がある。昨年11月時点の統計から試算すると、少なくともコメ約17万トン(お茶わん26億杯分)が市場に出回らず「行方不明」になっている。新たな買い手の台頭と在庫の分散で、状況把握に苦労する当局の姿が浮かぶ。
日本経済新聞より
こりゃ、米騒動(1918年)が沸き起こるな。「国が買い戻す条件を付ける」などと阿呆なことを言っているけれども、市場に安い米が出回れば値崩れするのは避けられない。
そして、その損害を負担するのはJAや生産者から直接買い付けをした業者だということになる。そりゃ、JAは反対するよ。
結果論としては、去年の夏の時点(7月に決定しないと間に合わない)で備蓄米放出をしていれば、価格上昇は免れた可能性はあるが、一方で生産者には非常に不評な政策になっただろう。何故なら、今回の米価の値上がりで米農家は、燃料費高騰などの影響でこれまで生産する度に赤字になるような状況を改善出来たからだ。
ともあれ、去年9月頃の決定は、「市場に十分に米がある」という判断であったのだが、しかし蓋を開けてみると「そうではなかった」という。17万トンもブレがあると、価格予想出来ないだろうに。
で、そのお米が何処に消えたのか?といえば、恐らくは業者の倉庫の中。状況的に引き延ばせば高価に売れる状況が続くのである。お米の売り惜しみをしている可能性が高いわけだ。お米は温度管理すれば半年くらいは玄米の状態で保管しておけるので、急いで売るバカは居ないというわけだ。
僕が予測を誤った原因も流通量が把握されている前提であったためで、その前提が崩れてしまうと考えていなかったことが問題であった。改めてお詫びを。
そして、流通の多様化が進んでいるので、もはや政府が流通量を管理するのは現実的ではないことに気がつくべきだと思う。お米の備蓄ということはやっても良いと思うけれども、流通管理はもはや機能していない。
実質的な減反政策も止めた方が良いよ。
追記
輸出米か……。
コメ輸出3割増 海外向け確保、国内高騰・制度に課題
2025年2月4日 17:16
農林水産省が4日に発表した2024年のコメ輸出額(援助米を除く)は、前年比27.8%増の120億円と過去最高だった。米国や香港のおにぎり店や日本食レストランで取扱量が増えた。国内のコメ価格が高騰する中、輸出用米の生産を渋る農家も出てきており、国内外の需要増に対応できる柔軟な生産体制や制度設計が急務だ。
日本経済新聞より
米の輸出は増えているとは言え、その量は大したことはない。
1~7月の日本のコメ輸出量 去年同期比20%以上増 過去最高に
ことし1月から7月の日本のコメの輸出量はアジアやアメリカで日本食レストランでの需要が大きく伸びていることから去年の同じ時期より20%以上増えました。この期間としては最も多いということです。
農林水産省によりますと、ことし1月から7月の日本のコメの輸出量は2万4469トンで去年の同じ時期より23%増えました。
NHKニュースより
半期で2万5千トンそこそこだと、通年で5万トン程度だ。2023年の日本の米の輸出量は3万7186トンなので随分増えた印象はあるのだけれど、それでも17万トンが行方不明の現状を考えると、全くたいした量ではないね。
コメント
生産コストの上昇+問屋が値上がりを見越して出荷しないが原因
市場原理が働いていないところが問題なので、米の流通システムの見直しが必要なんでしょうね。
この話、恐らく、例えば(笑)
新宿会計士さんも中のヒト?なのか、情弱高齢者層の買い貯めのせいにして、
トピを短い期間に何度も立て、反論には たちまち潰しレスが多数ついて滑稽(必死だな)でしたが、
米はいつも農協直営店で買ってる身からすると、2024年4月には、店員さんから
「入荷が怪しくなり今後ヤバイ見込み」との言、
「値上がりするの?」と聞くと「先の事は判らない」と、恐らく立場上 コトバを濁す。
なので買い貯めしましたが、米不足報道の遙か前ですよね?
あと、自分で統計データ当たると不足でした。ネット世論雰囲気にも反し、反論もメンドクサイ(笑)
この調べ事で ついでにヒットした農林中金のヘマによる2兆円もの巨額損失
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-28/SQPXI3T0G1KW00
これの穴埋めの為の高値誘導と考えてば、辻褄は、まあ、あいます。証拠ないけど(笑)
なので、この言説は誹謗中傷なのかも知れませんが、 農林水産省は本来調査すべき案件じゃないかな?
しないでしょうけど(笑)(天下りさき?)
円安で殆どの金融機関が大儲けしてる局面で 大赤字など異常。農林中金の現経営者に経営能力ないのは明らか。
それでも潰すには大きすぎる金融機関ですか ら、バブル崩壊時の痛み伴う金融機関の整理整頓が正常な手続きのハズ
農林中金は以前にも巨額損失出してる。
放置し、ウラ救済繰り返してると
今後もヘマで日本の農業を破壊していく気がしますね
僕の予測判断の誤りは本文でお詫びいたしました。
余所様の悪口をここに書くのもお控え下さい。
そして、「多分」「恐らく」「例えば」で文章を書くのがお嫌いであれば、このサイトに来られるのは不適当だと思いますよ。ブラウザをそっとお閉じ下さい。
謝罪m(__)m
私も一応は兼業農民でもあるので(あまり戦力になってないので医療に戻るた)、取引ある方々に聞いて「そのうち下るだろ」的な事を書いてましたが、まさかね厳冬期〜春の新年になっても高値が収まらないとは思いませんでした。
色々と口を濁す返答もあったのですが、太平楽に構えていたが……人は信じたい事を信じるという結果に。いや済みませぬ。
結局のところ、この話は米の流通システムが不自然な状態にある事に原因があるのでしょう。
そこを改めるべきだという議論は、これから必要なことだと思っています。
こんにちは。
先日、おかしいと思ったのは、よく行くホムセンで売っていた「加州米」までもが「便乗値上げ」(としか思えない)していた事です。
「加州米」が、農協を中心とする流通ルートに乗っているとは思えない(個人の推論)し、日本の米不足、不作の影響でアメリカでも不作とも思えないので、どう考えても、中間業者が便乗値上げしているとしか。
人の弱みにつけ込むヤツは地獄に墜ちるといいです(そういうのが墜ちるの、黒縄地獄だったかな?)
こんにちは。
そうですか、カリフォルニア米もですか。
ロサンゼルスが燃えちゃいましたから、その影響かも知れませんね。
最近米穀不足で日本中の家庭が困っていて、米穀不足の原因は皆の関心事項ですが、
いま本会中の衆院予算委員会で、「農林水産省が日本の米に輸出補助金をつけて、米の海外輸出を促している。それも米不足の一因ではないのか。」という疑義が提示されていました。
衆議院予算委員会 ~令和7年2月6日~(3:55:00あたりから)
https://www.youtube.com/watch?v=5PktTAen-zY
議論は国会でやっていただくとして、米穀類に輸出補助金をつけて海外販促を行う政策自体は、令和4年度に農林水産省が予算措置化した「新市場開拓用米の販売拡大の取組」です。
https://tinyurl.com/587793fy
自分は日本の米政策の歴史を知らないので、この政策がどういう意味やインパクトをもつのかは判らないのですが、日本産米の海外市場は必要なのか? 個人的には農林水産省の政策を疑問に思っています。日本政府がではなく、日本の農家が必要と考えているなら話は別ですが。
現下の米不足で、冷凍食品やレストラン仕向けの業務用米を海外から輸入して米不足を緩和すればいい、という意見もありますが、それも必要なことなのか不要なことなのか。
ただ一つ主張したいことは、以前のように、海外産米を毎日の食卓で食いたいとは思わないということです。
僕の理解では、後継者不足で将来的な国産米の生産量は減る一方であるという点はナカナカ覆すことが難しい。
だから高付加価値を付けた米の輸出で稼げる構造にしようというのが、農水省の目論見だと思っています。
しかしそうすると、日本国内の米の安定供給というお題目は破綻してしまいます。現在、実質的な減反政策は未だに継続中でありますし、もっと自由に米を作らせろと。
海外からの米の輸入は、一定量受け入れるのは避けられない情勢ですが、日本の林業のように絶滅危惧種になってしまって将来展望すら見えない状況になると、外国から買った米を食べるのが普通という世界になってしまうかも知れませんね。そんなのはゴメンなので、お米の大量生産が出来るような体制作りと、自由に米を作って売れる仕組みをもうちょっと拡大して欲しいと思っています。
木霊さんのご指摘の通り、米を作りたい農家には、いくらでも自由に作らせて、自由に販売させる米農家支援体制があって然るべきですね。その上で、国内需要を超過する分については、余裕をもって他の市場に流すべきと思います。役所は農家の余った米の現金化に協力するのが筋でしょう。米が市場に出回らず、我々日本国民が困るのは本末転倒です。
飯を食うことは、人生の中でも極めつけに重要なことであり、日本人が日本の米を食わなくなることは、日本人の大切な食文化を失うことでしょう。つまり、減反政策は本質的に間違っています。