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韓国大統領が検察に起訴される

大韓民国ニュース
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もうなにか凄いことになっているな。

韓国検察が尹大統領を起訴「共犯事件の証拠など検討」 現職初、1度も取り調べできぬまま

2025/1/26 19:53

韓国検察は26日、「非常戒厳」宣布を巡る内乱首謀などの罪で尹錫悦大統領(64)を起訴した。

産経新聞より

ちょっと目を話していたら、どんどん話が変わってきていてナカナカ不思議な国である。少しだけ整理しておく。

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内乱罪は漂流する

何故か逮捕された韓国大統領

ええと、前回の記事はどれだったっけ。

高位公職者犯罪捜査処(公捜処)がソウル西部地裁に逮捕状を申請して受理され、ユンユンが拘束されたのが1月15日のこと。

この時点で2つの問題があったことは以前指摘した通りだ。

  • 公捜処には内乱罪に関する捜査の権限がない
  • 本来なら逮捕状が出されるはずがない公捜処に対して逮捕状が発行された

何故こんな事が起きてしまったのかというと、そもそも韓国大統領は本来不逮捕特権がある。だから逮捕されることはあり得ないのだが、例外的に内乱罪の適用があれば逮捕可能であるとされている。

大統領を拘束するためには、内乱罪が適用されなければならない。だから内乱罪の疑いがあるとなったわけで、これの判断をソウル西部地裁が行ってしまった。司法にあるまじき警察権の侵害が発生してしまった。

つまり因果律が逆なのである。公捜処が大統領の拘束ありきで動き、その理由が内乱罪の適用だというわけ。

本来の流れであれば、大統領は内乱罪に問われるの値する行動を起こしてしまった。警察はそれを捜査する必要がある。本来管轄すべきソウル中央地裁が捜査令状を出す。しかし内乱罪の適用をすべき証拠がない。だから、大統領任期中は拘束が出来ない、という流れになる。前国防相が内乱罪で起訴されて裁判中であるので、ここで証拠があがれば大統領の逮捕という流れになる可能性はあるが、それをやるのは警察である。

そこが問題にされないのが韓国の不思議なところである。

もう1つ問題なのは、ユンユンが拘束される前にいた場所というのは、大統領の許可がないと入場できない場所なのだが、その許可を偽造して公捜処は建物内に突入してしまった。実は今回の逮捕劇、二重の意味で違法逮捕なのだ。そこが指摘されないのも不思議なところである。

ユンユンは取り調べに応じなかった

さて、こういう状況に陥った検察のトップだったユンユンは、何が問題か当然に理解していたはずで、取り調べ拒否を貫いた。

韓国の尹錫悦大統領、取り調べ拒否続く 捜査当局の出頭要請に応ぜず

2025年1月20日 15時20分

内乱を主導した容疑で逮捕された尹錫悦大統領に対し、合同捜査本部に加わる高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)は取り調べのため20日午前10時に拘置所から出頭するよう求めたが、尹氏は応じなかった。尹氏の弁護団は同日午前、「(出頭は)難しい」と韓国メディアに答えた。尹氏は逮捕された19日も、公捜庁による出頭の要求を拒否していた。

朝日新聞より

朝日新聞は何故ユンユンが取り調べに応じていないのかを書いていないのだが、もしかしたら問題点を理解していないのか、分かっていて書いていないのかどちらかだろう。

公捜庁には捜査権限がないのだから、取り調べに応じる義務もないのだから応じないのは当然である。

で、どうなったかというと、公捜処は驚くべき行動に。

捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」は19日に尹氏を逮捕したものの、尹氏の取り調べ拒否で捜査は難航。公捜処が予定より早い23日に起訴権を持つ検察に事件を送致したのを受け、検察は2月6日までの勾留延長を申請した。

地裁は24日に公捜処が捜査・送検した事件に関して「検察が捜査を継続する理由があるとはみなし難い」との判断を示した。検察によると、2度目も同様の趣旨の理由を示したという。検察は「検察には補完捜査権がある」と訴えていた。

産経新聞「尹大統領の勾留延長、ソウル中央地裁は2度目の申請も認めず」より

なんと、捜査を諦めて検察に投げてしまったのである。

検察にとっては大迷惑

困ったのは検察である。

何しろ、公捜処は全く捜査ができなかった。捜査ができていない状態で、検察に捜査権を引き渡されても困るのである。何故なら、検察は捜査令状をとっていないからユンユンの捜査ができないからだ。

驚きだね。

困った検察はソウル中央地裁に「捜査していい?」とお伺いを立てたのだが、ソウル中央地裁としてはソウル西部地裁が公捜処に捜査令状を出し、それについては合法と認めている。故に許可できない。事実、2度「ダメだ」と断っている。

ソウル中央地裁の理屈としては、この捜査令状によって捜査が終了し検察に引き渡されたのだから、追加で捜査する理由は無いとの判断で、ここは筋が通っている。

実は、高位公職者犯罪捜査処法の定めによって、捜査は公捜処が行い起訴は検察が行うことになっている。ムン君が検察の力を削ぐためにそのように画策したのだ。だから、検察が追加捜査するというのはそもそも法律に予定されていないのだから、却下するしかない。

しかし実際には、公捜処はろくに取り調べもできない状態で検察に「これで起訴してね」とバトンタッチしてきた。だから検察はソウル中央地裁にお伺いは立てたモノの、実際出来ることは殆どないのだ。

検察が取りうる判断は、この時点で以下の2つだった。

  1. 即時起訴する
  2. 期限が来たらユンユンを釈放

で、捜査令状に基づく拘束の期限がは1月27日なので、さあどうする?という選択を迫られた結果、冒頭の引用記事の通りに起訴してしまったという展開なのだ。

韓国検察 ユン大統領を起訴 内乱首謀した罪

2025年1月26日 21時15分

韓国の検察は、今月19日に逮捕された尹錫悦大統領を、26日内乱を首謀した罪で起訴したと発表しました。韓国で現職の大統領が起訴されたのは初めてです。

~~略~~

そして、韓国の検察は26日、ユン大統領を内乱を首謀した罪で起訴したと午後7時ごろに発表しました。

NHKニュースより

内乱罪で起訴したことで、ユンユンは最長で6ヶ月間、拘置所で拘束されることになった。が、公判を維持できるような捜査はできていないのだから、裁判官は頭を抱えることになるだろう。

何が何でもユンユンに内乱罪が適用されるという判決を出す使命のある韓国司法(左寄り)だが、その材料がほぼない。検察は起訴したものの、どんな理屈を付けて公判を維持するつもりなのか。なかなか興味深い。

弾劾裁判は進む

一方で、韓国の憲法裁判所では弾劾裁判が進行している。

尹大統領、大規模な兵力投入を拒否 前国防相が弾劾裁判で証言

2025年1月23日午後 8:21

内乱罪で起訴された韓国の金龍顕前国防相は23日、尹錫悦大統領の弾劾が妥当かどうかを判断する憲法裁判所の弾劾審判に証人として出廷し、自身が大規模な兵力の投入を提案したが、大統領から拒否されたと認めた。

弁護団は、尹氏には非常戒厳を全面的に導入する意図はなく、政治的な行き詰まりを打破することが目的だったと主張している。

ロイターより

これが不思議な話なのだが、この弾劾裁判においてユンユンは内乱罪についての審議は行われていない。

こちらの記事にも書いたけれども、国会で弾劾訴追をするかの決議を行った時には、その理由の1つに内乱罪を問うていた。ところが弾劾裁判をする段階になって、その訴追理由が変更されたのである。

憲法裁判所は、これを受け入れて審理を開始してしまった。

もう何がなんだかさっぱりわからないのだが、憲法裁判所的には起訴前に理由を変更されたのだからOKという判断らしいのだけれども、それは国会で決議された内容とは違うという恐るべき事態になっている(実は、クネクネ弾劾の際には理由が変更されたそうだ。余り問題にはされなかったが、よく考えてみると酷い話である)。

今のところ、ユンユンにとって不利な展開で弾劾裁判は続いているようなのだけれど(結論ありきの裁判だから)、今後はどうなるんだろうねぇ。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    某米国であからさまに行われてきた「司法の武器化」ですが、某韓国でも法手続き無視の「司法の武器化」が進んでいますね。
    我が国は大丈夫なのか。行政や官僚機構がアホでも、ちゃんと機能しているか(いや怪しいんだが)、しっかり国民が監視しないといけません。LGBT理解増進法を積極支持した最高裁判所裁判官が複数名いたことに震撼させられたばかりですから。

    • 木霊 木霊 より:

      アメリカでは法廷闘争が凄いですから、あまり「武器化」という印象はないのですが、それでも外国企業を駆逐するツールとして使うなど、結構あからさまな話はありますね。
      我が国は……、まあ、阿呆な判決出る傾向にはありますが、三審制でなんとか。国民審査をもう少し有効活用できるようにして欲しいものです。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >そこが問題にされないのが韓国の不思議なところである。

    「腐ってやがる・・・早すぎたんだ」こうですねわかります。
    その前段階の全ての政治的段階を踏んでいない朝鮮半島(常に誰かの統治下、被統治地域でしかない)にとって、民主主義(有権者に一定のモラルと教育と自制が要求される)は早すぎたんですよね。
    まあ、本邦だけで無く、世界中で、有権者の劣化による民主主義から衆愚政治への転換が起こってますが……

    ……で、
    「見せてもらおうか、『成熟した民主主義』の成果とやらを!」
    ってな状況なわけで。
    端で見ている分には面白いったらありゃしないですが、現場で当事者になるのは御免被りますね。
    何しろ、下から上まで、誰一人として『順法精神』が無いんですから。
    法治の上に人治がある、そんな国が、この21世紀に、先進国ヅラして(文字通り本当に、虎の威を借りてではありますが)威張り散らしている、なんとも滑稽、これが人類が有史以降2000年ほど使って積み上げた歴史の現在地点。
    そりゃ、神様も最後の審判したくなりますよね……

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      「その時不思議なことがおこった」というのが韓国ですから、説明が難しいですね。
      熟成された民主主義というか、民主主義に似た何かなんだろうと思っています。
      当事者になるのは、僕も勘弁して欲しいところです。