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「基本的に企業間の問題」との寝言を披露する石破氏

北米ニュース
この記事は約10分で読めます。

バカだなぁ、本当にキミは。

石破首相「基本的に企業間の問題」 USスチール買収巡り 展開注視

2025/1/12 11:52(最終更新 1/12 11:52)

石破茂首相は12日に放送されたBSテレ東の番組で、日本製鉄によるUSスチール買収がバイデン米大統領の判断で阻止された問題について、「政府として言うべきことは言うが、基本的に企業と企業の問題だ。民と民がお互いのためとはなんなのかを話し合うべきだ」と述べ、日本製鉄による訴訟も含め今後の展開を注視する考えを示した。

毎日新聞より

構図としては確かに企業間の問題だったのだけれど、バイデン氏が出てきた時点で「企業間の問題」ではなくなったのだよ。

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企業間の問題だったが今はそうではない

安全保障の土俵に上がった

さて、前回の記事のリンクを貼っておこう。

そもそも、バイデン氏は「国家安全保障の問題だ」と口にした。口にした以上は、安全保障の問題だと日本も理解すべきであり、そのように動いて行かざるを得ないはずなのに、どうして「基本的に企業と企業の問題だ」になるのやら。

もう、日本製鉄の出来ることは殆どないんだぞ?

本質的には企業間の問題であるのは事実だけど、そんな「原則論」を話すステージは終わったのだ。バイデン氏が終わらせたというべきだが。

そうすると、石破氏は現実から目を背けても仕方があるまい。

バイデン大統領を提訴 日本製鉄の買収計画の行方は

2025年1月16日 16時58分

日本製鉄が目指すUSスチールの買収は1月3日、バイデン大統領に阻止された。

アメリカと密接な関係にある日本の企業による買収が国家安全保障上の懸念を理由に禁止されたことに衝撃が広がっている。

さらに命令に反発した日本製鉄は違法な政治的介入があったとして、バイデン大統領の提訴に踏み切った。

NHKニュースより

日本製鉄が国家を相手に訴訟をする段階に入っているが、この期に及んで「企業間の問題だ」というのはおかしいだろう。「政府も言う事は言うが」という他人事であって良いはずがない。

クリーブランド・クリフスの介入

さて、この話でややこしいのは、クリーブランド・クリフスの存在である。このクリーブランド・クリフスもアメリカ製鉄企業で、USスチールと似たり寄ったりのシェアらしい。

米クリフス、USスチールの安値買収を模索か 日本に「気をつけろ」

2025年1月14日 21時30分

日本製鉄による米USスチールの買収計画を違法に妨害したとして両社に提訴されている米クリーブランド・クリフスが、USスチール買収に再び意欲を示した。一度は日鉄に競り負けたクリフスだが、日鉄による買収計画の実現が困難さを増しているなか、米同業との連携により買収の可能性を探ろうとしているもようだ。

朝日新聞より

そのアメリカ企業がUSスチールの企業買収を仕掛ける意欲を見せているのだが、日本製鉄に競り負けた腹いせでバイデン氏に手助けして貰った構図になっている。

もう、メチャクチャである。

米CNBCテレビなどの報道によると、クリフスとニューコアの米同業2社が手を組み、USスチールの買収を計画しているという。ただ、その価格は1株30ドル台後半。USスチールの株主総会が2024年4月に承認した日鉄計画の55ドルより大幅に安く、株主の承認を得るにはハードルが高そうだ。

朝日新聞「米クリフス、USスチールの安値買収を模索か」より

安く買い叩いても、競争力のない鉄鋼企業が出来上がるだけである。主要鉄鋼企業の粗鋼生産量を比較したランキングを示しておこう。引用元は日本製鉄からである。

見て分かる通り、生産量だけなら支那企業が上位で犇めき合っている。USスチールはなんと24位で、クリーブランド・クリフスは25位。ニューコアは15位なのでやや上にいるが、所詮この程度だ。

コラム:USスチール買収合戦、米クリフス側にも鉄鋼業界共通の課題

2025年1月15日午後 6:14

米鉄鋼大手USスチールを巡る買収合戦は終結からほど遠い状況だ。同業クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は13日、米鉄鋼最大手で電炉メーカーのニューコアと組んでUSスチール買収を目指すと表明し、日本製鉄が150億ドルの買収計画を断念するのは時間の問題だと述べた。ただ、現段階で未定の提示額は低くなる見通しで、USスチールと鉄鋼業界全体が直面する課題を映している。

~~略~~

自動車業界団体はクリフスとUSスチールの合併に反対し、高炉製鋼や電気自動車(EV)用モーター向け電磁鋼板市場を独占する恐れがあると訴えている。クリフスは電炉事業をニューコアに売却することにより、こうした懸念に対処する可能性がある。

ロイターより

そして、アメリカの鉄鋼業界的な問題もあって、何故か自動車業界団体はクリーブランド・クリフスがUSスチールを買収するのに反対しているんだよね。

電磁鋼板がポイント

ええと、構図としてはバイデン氏が全米鉄鋼労働組合(USW)の訴えを聞いて、日本製鉄のUSスチール買収に口出しをした。

日本製鉄としては、破格の条件を提示してUSスチール買収に動いたのに、政府から待ったがかかってしまったのである。

USW会長、日鉄による提訴は「根拠がない脅迫だ」

2025年1月11日 9:25

全米鉄鋼労働組合(USW)のデービッド・マッコール会長は10日、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチール買収を巡って違法な妨害行為があったとして同氏を提訴したことを受けて反論を表明した。マッコール氏は日鉄の提訴は「根拠がない脅迫だ」とし「軽薄な申し立てから組合を強く守る」と強調した。

日本経済新聞より

で、日本製鉄はUSWを訴えることになって、バイデン氏に対しても訴訟を起こす構えだ。

これについてUSWは「国家安全保障」を盾に抗弁する模様。

同日、提訴を批判する動画を公開した。マッコール氏はバイデン米大統領が中止を命じた日鉄による買収は「我々の工場の将来を脅かし、国家安全保障を危険にさらすことは明らかだ」と話した。

日本経済新聞「USW会長、日鉄による提訴は」より

更にこんなことも。

その上で、USスチールは日鉄による買収提案以前に、老朽化したペンシルベニア州のモンバレー製鉄所への投資を中止し、USWに属さない同州南部の電炉工場への投資を優先したと強調。「日鉄は買収後もUSスチールのこの計画を踏襲し、電炉に生産を移すことは明らかだ」とし、雇用を脅威にさらすと批判した。

日本経済新聞「USW会長、日鉄による提訴は」より

USWにとって、日本製鉄のやり方が気に入らないということらしいのだけれども、日本製鉄側の提案は投資される工場の地元にとっては非常に魅力的であったようだ。

日本製鉄がUSスチールに求婚する理由

1月 16, 2024

日本製鉄が米国のUSスチールの買収を表明した。鉄鋼国内最大手が大型M&Aに動く背景は何か。世界の製鉄業界の動向から読み解く。

~~略~~

一方のUSスチールは米国で粗鋼生産3位の高炉/電炉一貫の鉄鋼メーカー。高級鋼の生産が可能な最新鋭の「電炉」技術を持つ。エネルギー代が安価な米国では「電炉」の普及が7割程度まで進み、USスチールも電炉の能力増強計画を推進中だ。同社は北米生産拠点で使用する鉄鉱石を自給できる鉄鉱石鉱山も保有していて、生産に有利な条件となっている。カーボンニュートラル化への積極投資も行っている。米国内の複数拠点で高付加価値の自動車用鋼板の製造が可能として、グローバル事業の拡大を狙う日本製鉄とのシナジーが高い。

japan-forwardより

このサイトの説明が分かり易かったのだが、日本製鉄はUSスチールを買収した上で、電磁鋼板をアメリカ国内で作りたいと考えている。なお、電磁鋼板の技術は日本製鉄は世界でトップレベル。ポスコや支那企業にその技術を漏らしてしまって大変なことになったが、しかし技術的アドバンテージは未だ有している。

これを更に発展させたいというのが、日本製鉄の目論見なのである。そして、それをやられると、急成長しているクリーブランド・クリフスには都合が悪い。

そもそもクリーブランド・クリフスは、アメリカ国内で買収を繰り返してのし上がった企業であり、2020年のアルセロール・ミッタルUSAを買収したことで生産力が大幅に上がった。そして、電磁鋼板を主力商品に位置づけているんだよね。

そうすると、MGAを掲げるトランプ氏にはどのように響くのか。構図としては粗鋼ランキングで示したように、支那の鉄鋼生産力が世界の市場を食い荒らしているのだから、対抗する為に日米で組む。それが、アメリカの安全保障に資するということを主張したいところだが。

今後どうなるか

正直、バイデン氏はこれで退場してしまうのでもう彼の話をする必要はない。むしろ、トランプ氏登場後に大統領としてどう判断するかが問題である。

アメリカの威信を傷つけずに買収できれば良いのだろうけれど、出来ないのであれば、アメリカにとっても利益があることをしっかり説明せねばならないだろう。

USスチール買収計画 米次期財務長官 “再申請なら通常審査”

2025年1月17日 5時18分

アメリカのバイデン大統領が禁止命令を出した日本製鉄によるUSスチールの買収計画をめぐって、トランプ次期政権で財務長官に指名されているベッセント氏は、仮に買収計画が再申請されれば「通常どおり審査を実施する」と述べました。

今月20日のトランプ次期大統領の就任を前に議会上院では、16日、財務長官に指名されているヘッジファンドの創業者、ベッセント氏の承認をめぐって公聴会が開かれました。

~~略~~

今回、CFIUSによる審査では全会一致に至らず、判断を委ねられたバイデン大統領が今月3日、国家安全保障上の懸念を理由に買収計画に対する禁止命令を出しました。

NHKニュースより

そもそも、この買収計画について日本製鉄側に瑕疵はなかったために、対米外国投資委員会(CFIUS)は、バイデン氏に判断を丸投げしてしまった。

それが問題の発端なのだが……、どうなるんだろうね。

あ、最後に石破氏を擁護しておきたい。メディアでアホな発言をしたとはいえ、仕事はしている。

石破首相 バイデン氏に懸念払拭要求 USスチール買収禁止命令で

2025年1月14日 火曜 午前0:59

石破首相は、アメリカのバイデン大統領らとオンラインで会談し、USスチールの買収禁止命令について懸念の払拭を求めました。

石破首相は、アメリカ・フィリピンとのオンライン首脳会談を行い、バイデン大統領に対し、日本製鉄によるUSスチールの買収禁止命令に関する懸念の払拭を訴えました。

FNNプライムオンラインより

やっていることは見当違いで、本来であればアメリカに直接渡って、トランプ氏と膝詰めで直談判をすべきタイミングなんだけどね。まあ、まだ就任前なので言っても仕方がないことではあるが。え?擁護になっていない?そりゃ失礼。

追記

直接的な関係があるかどうか微妙だったので扱わなかったネタを、Money1様のところが扱っていたので紹介しておきたい。

韓国鉄鋼企業「今そこにある危機」工場を停止するしかない…「需要がない」
中国で鉄鋼会社が大変な苦境に陥っています。最大の国内需要である不動産・建設業界が壊滅的な状況に陥ったためです。上掲記事でもご紹介しましたが、中国の国内需要は粗鋼消費量8億トンしかないのに、中国の鉄鋼企業の粗鋼生産能力は10億トンもあるのです...

内容としては「ポスコが瀕死」という内容なのだが、その原因が支那のダンピングだと言うから救えない。

上掲記事でもご紹介しましたが、中国の国内需要は粗鋼消費量8億トンしかないのに、中国の鉄鋼企業の粗鋼生産能力は10億トンもあるのです。

Money1より

実は支那の鉄鋼業がヤバイのだが、ここは支那共産党の支援が入っているので潰れることはない。散々説明していることだが、支那の不動産開発はゾンビだらけである。

だから、支那で作った鉄鋼は使われなくなりつつあって、それを安く海外に叩き売ってでも消費ないとどうしようもない。なお、世界の粗鋼生産量は、2022年に18億8,540万トンで、そのうち10億トン程度を支那で生産しているのだから、その勢い足るや。

そして、そのうち2億トンを安く輸出するのだから、たまったものではないだろう。そりゃ、ポスコも苦戦するしかない。更に韓国国内での不動産開発業もバブルが弾けて瀕死である。そのとばっちりを食らうのはポスコというわけだ。瀕死の不動産開発業に求められるのは「安い鉄鋼」であって、品質の良さは二の次なんだ。

アメリカのUSスチールが「買収してくれ」と音を上げる気持ちも分かる。世界の鉄鋼業が支那に滅ぼされようとしているのだから。

コメント

  1. 山童 より:

    国家安全保障ねぇ……国の未来と安全保障を考えるならば日本製鐵に任せるべきすが。
    まず20年から半世紀のスパンで、米国の橋梁やら建造物で、老朽化したインフラがどんどん出てくる。鉄道なんか酷いもの。
    レールが曲がってて脱線とかしょっちゅう。それは鉄の老朽化なんです。
    これらをなんとかしようとすると、大量の質の良い製鉄・鋼材が必要なんてすけれど、もう、それ健全に賄える製鉄会社がアメちゃんにはないと。したがって日本製鐵に任せるのが、もっとも米国の為なのですが。祖語はムキー!で話にならない。
    あとはトランプ氏のディールで、「そちらの為でもありますよ」を納得させるしかない。しかないけど石破か………。合掌!

    • 木霊 木霊 より:

      アメリカの鉄鋼業界は、外国から安い鉄材が入ってきて随分苦戦しているみたいですね。
      国内での消費量はかなり多いようですが、シェアは完全に外国に奪われている状態。
      古い業界体質が足を引っ張っている感じがしますから、そこのやり直しが必要かも知れません。

  2. 匿名 より:

    ここで日本国首相が前面に出てしまうと米国のナショナリズムにさらに火をつけてしまうので、表向きは無関係を装いながらも裏ではめちゃくちゃロビー攻勢かけてますよ。大丈夫

  3. きたやまひと より:

    今日は。
     トランプ次期大統領から貿易・製造業担当の上級顧問に起用されるとみられるピーター・ナヴァロが、どう絡んでくるかもありますね。対中強硬派ですが日本にも結構、きつい要求をしていましたから。国の安全保障というのはとってつけた屁理屈ですから、まともに考えれば無茶な話ですが、無理偏に拳骨も有りの国ですからどうなりますか。
     安倍総理が米国製自動車の輸入に関して、ことわけてトランプ大統領を説得したようなことができるような人材がいればよいのですが。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      ピーター・ナヴァロ氏ですか。
      かなりの保護貿易推進派ですから、日本にとっては厄介な手合いですね。
      ただ、アメリカの利益というものをどのように捉えるかで、判断も変わってくるでしょうから。その辺りを上手いこと交渉で何とか出来れば良いかと。その手の交渉を任せられる人材がいないのは、困りものですけれどね。

  4. 山童 より:

    そもそもゴンサルベスて名前じたいが、どー考えてもWASPではなくヒスパニックまたはラティーノでしょう?
    東洋人差別な事を言うとるけど、まずイタリア系ですらないと想う。おそらくは南米・中南米かイベリア半島からきた「移民」で、彼はせいぜい2世。ようするに「米国大統領になる資格のない米国人」でせう。
    んな奴に「日本は味方でない」とか言えるんかね。移民のくせに。

    • 匿名 より:

      ゴンサルベス氏はブラジルからの移民で、発音も一言聞けば米国外生まれと判るぐらい – – – ので 演説は一般米国人には一種のヒニクと響いてるとのハナシも

      https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b8cb6986fe2778ef953ffdd414b372f5dc70d99f

      • 山童 より:

        ありがとうございます。前のコメの補足とともに。
        やはり……てっきりスペイン移民と思ってたので、「テメェも一代前はフランコの国でヒトラーの仲間だろ!」と言いたいかったのてすが、ブラジルか……
        アントニオ猪木氏の出身国でもあり、皮肉にも日本と関係深い国ですなぁ。
        まぁ、表立って日本国首相が口出しすると面倒な話になるのは理解できます。とはいえ……トランプは百戦錬磨の海千山千ギャンブラーなので、学業的な文書解読力はあっても、感情を含めた機微という点では劣る彼が、安倍さんのときみたく交渉力あるか?言われると疑問符です。駆け引きはトップ会談を利用するトランプが相手だと通用する首相とは思えないです。

    • 木霊 木霊 より:

      ローレンソ・ゴンサルベス氏の出自はともかくとして、彼らが自分たちの利益を主張するのはある意味当然でしょう。
      ただ、トランプ政権が再開したわけですからそこにどう響いていくかということだと思います。
      動きがあるかどうか見守りたいですね。

  5. 砂漠の男 より:

    石破首相も自・公政権も、米国の政権過渡期という枢要な機会に、米国と対話しません。
    日本側から出向かなければ相手にされませんし、放っておけばこの先どんなトランプ砲が日本にも降り注ぐか分かったものではありません。

    トランプ政権は、当座は国内政策を優先して、日本については石破政権の次と仕切り直すつもりなのかも。もしそうなると、日本パッシングが怖い。しかも、そうなってから岩谷氏が慌てて飛んで行っても、どうにもならんでしょうし。そうならないことを願いますけど。

    • 木霊 木霊 より:

      石破氏は将来の危うい首相です。
      果たしていつまで首相でいられるかという状況なので、トランプ氏も相手にする気はないでしょうね。