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原発割合に関するNHKのアホな世論調査に呆れる

報道
この記事は約8分で読めます。

いや、もう、これ、報道で煽るための材料でしょ。

今後の原発割合 回答分かれる NHK世論調査

2025年1月15日 5時02分

NHKの世論調査で、今後、原子力発電の割合をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「増やすべき」が21%、「今のままでよい」が30%、「減らすべき」が31%などと回答が分かれました。

NHKニュースより

こんな質問されたら、「そもそも前提は何なのか」と詰め寄る事請け合いである。こんなコタツ記事書くくらいなら、しっかり調査報道してくれよ。受信料は何に使ってるのさ。

というわけで、本日は軽めの話題にさらっと触れておく。隣国の大統領拘束とか、なかなかなニュースが流れる中、こんな話題で申し訳ないのだけれど。

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エネルギーの安定供給を前提とすべし

エネルギー基本計画案がおかしい

さて、この話の馬鹿馬鹿しさは、そもそも政府が出した新しい「エネルギー基本計画の案」というのがおかしいところを、誰も説明していないところだと思う。

まあ、政府の出すエネルギー基本計画は、往々にして夢見がちであると僕は評価している。将来見込まれる技術をあてにして計画を立てているのだから、「計画」などという名前を付けてはいけないと思うのだが、「そういうもの」だと理解するよりあるまい。

どちらかというと、「基本方針」であって、断じて「計画」ではない。

文句を言っても始まらないので、中身を見ていこう。

エネルギー基本計画とは 経済成長と脱炭素、両立図る

2024年12月18日 2:00

▼エネルギー基本計画 エネルギー需給に関する政策について政府が中長期的な基本方針を示したもの。政府のエネルギー政策の土台とされ、エネルギー政策基本法で策定が義務付けられている。おおむね3年ごとに見直しており、今回の改定は第7次の計画にあたる。2040年度に目指すべき再生可能エネルギーや原発などの電源構成を示す。

日本経済新聞より

エネルギー需給はベストミックスでなければならないという方針は、取り下げられていないようだが、再生可能エネルギーに傾倒している姿勢は変わらないらしい。

だが、そもそも再生可能エネルギー発電(自然変動電源)は任意に発電量を調整したり出来ない不自由な発電方法である。従って、自然変動電源を使う為には、蓄電設備を用意しなければ話にならない。

その前提があるはずなのに、「エネルギー基本計画」に関する報道は、そこには触れていないんだよね。

蓄電池について

報道には触れられていないのだけれど、基本計画には流石に言及がなされている。

災害の激甚化が進む中で、各地域における国土強靱化の観点も踏まえ、防災力・レジリエンスの強化に資する避難施設・防災拠点等の公共施設等への再生可能エネルギー及び蓄電池の導入を積極的に推進する。

~~略~~

再生可能エネルギーの主力電源化にあたり、出力の変動する再生可能エネルギーの電力市場への統合を進めるため、揚水発電や蓄電池の活用など、調整力の確保を進めていく。さらに、再生可能エネルギーの導入余地が大きい地域と需要地をつなぐ地域間連系線の整備を推進する。また、再生可能エネルギーを最大限に活用する観点から、その出力制御量の抑制に取り組む。

~~略~~

足下、再生可能エネルギー導入拡大に伴い、火力全体で稼働率が低下し、収益性の低下や燃料の安定的な確保の難しさが増すことなどによって安定的な稼働が難しくなり、休廃止に向けた動きが徐々に進展しているが、変動性再生可能エネルギーの発電量が少ない状態が長く続きやすい冬の悪天候時などを念頭に置くと、再生可能エネルギー及び蓄電池によって火力を完全に代替することは難しいと考えられる。また、データセンターや半導体工場の新増設等による将来の電力需要の増加も見据える必要もある。

~~略~~

電力システムの柔軟性を供出するにあたり、蓄電池は、再生可能エネルギー等で発電された電力を蓄電し、夕方の需要ピーク時などに電力供給する調整電源として、DRは需給バランスを確保するための需要側へのアプローチ手段として重要である。2021年度から補助金による系統用蓄電池の導入支援を行い、2023年度に開始した長期脱炭素電源オークションにおいても応札対象とし導入促進を図っている。また、各電力市場で取引可能となる等、環境整備が整いつつあり、系統用蓄電池の接続検討受付件数は増加している。一方、価格競争に陥り安全性や持続可能性が損なわれる懸念や系統接続の長期化、各電力市場での収益性評価が不十分である等の課題も顕在化している。このため、支援措置における事業規律を確保するための要件等の検討や収益性の評価等を通じ、安全性や持続可能性が確保された蓄電池の導入を図ること等が必要である。

エネルギー基本計画より

言及している部分を何カ所かピックアップしたが、残念なことにフワッとした言説しか盛り込まれてはいなかった。「蓄電設備は自然変動電源を利用する上では必須だよね」といいつつも、どの規模で必要なのか?には触れていない

自然変動電源が、発電しない時期にはどうしたって蓄電設備から電力供給をしなければならないわけで、その設備の建設、維持をする費用は一体何処から出すのかは設定されていないようなのだ。

需要予測は頭打ちに

今後の電力需要予測に関しては、電力広域運営推進機関の予測に基づくとこんな感じになっている。

これから余り伸びないという風に予想しているんだね。

しかし、EV化推進などを織り込んでいる数字のハズなんだけど、現状よりは増えていくけれども2033年頃には需要が減少に転ずる予測になっている。

この通りの電力需要動向になるとして、現状よりは需要は増えるのだろう。そうすると、発電能力は増強しなければならないのだけれど、そこを自然変動電源で補おうとするのはい、些か常軌を逸している。

つまり、第7次のエネルギー基本計画案というのは、その程度のことしか書いていないのである。それに基づいて質問をしている時点で、NHKの世論調査の意義を疑ってしまうのだが。

原発の割合を増やすべきか

ただまあ、そういう状況を皆さんが踏まえた上で質問に回答したという前提に立つと、面白い結果ではあると思う。

質問は以下のようなものだったらしい。

政府は、新しいエネルギー基本計画の案で、2040年度に「再生可能エネルギー」を最大の電源とする一方、これまで「依存度を低減する」としてきた「原子力」も最大限、活用するとしています。

今後、原子力発電の割合をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「増やすべき」が21%、「今のままでよい」が30%、「減らすべき」が31%、「ゼロにすべき」が8%でした。

NHKニュースより

「ゼロにすべき」という回答をした方も8%程いるようだ。案外みんな冷静だなという印象。

この回答を見ると、少なくとも5割は原発は活用していこうぜ、という風に読める。「減らすべき」も加えると8割は原発を使うことに関しては賛同しているわけだ。

「増やすべき」は、新設をしろという意味なのだが、「今のままで良い」は今の割合のままで良いという風に理解する場合には、新設を許容(リプレースするということになると思うが)することになるね。

現状で、原子炉の新設が出来なければ徐々に原子力発電比率は減っていく。「減らすべき」と考えている人の多くは、この路線で減らしていくということを意図しているのだろう。「ゼロにすべき」を選んだ方は、時間軸を設定されていないことを鑑みても「ちょっと落ち着こう」と言っておきたい。

設問が悪い

というわけで、NHKニュースの世論調査のこの質問に関しては、そもそも設問が悪いという結論に至った。

エネルギー基本計画を題材にしたのであれば、エネルギーの安定供給が可能かどうかを前提に話をすべきではないだろうか。

「原発の割合をどうすべきか」などと聞いたところで、現時点で新規に原子炉を建てられるような場所は日本には存在しないのである。

そうすると、次世代型原子炉の開発は必須だろう。

次世代型原子炉「革新軽水炉」 新規制検討で会合設置へ

2024年10月9日 12時41分

政府が開発と建設を推進する次世代型の原子炉の一つ「革新軽水炉」について、原子力規制委員会は新たな規制が必要になるかどうか検討するため、メーカーなどから開発の状況や規制に関する意見を聞く会合を設置することを決めました。

「革新軽水炉」は、現在の原子炉をベースに安全対策などの技術を改良するもので、政府が原子力発電の最大限の活用に向け、開発と建設を推進する次世代型の原子炉の一つに位置づけられています。

NHKニュースより

これに関しては、そもそも三菱重工が革新系水炉のコンセプトを発表したからこそ成り立つ話でもある。

三菱重工が電力4社と新型軽水炉のコンセプト、安全性高め新基準に適合

2022.09.30

三菱重工業は、従来の加圧水型軽水炉から安全性を高めた「革新軽水炉」のコンセプトを公表した。

日経XTECHより

「実施可能な設計検討はほぼ完了した」、三菱重工が革新軽水炉開発の現状を説明

2024.05.31

三菱重工業取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の泉澤清次氏は、次世代の原子炉となる革新軽水炉の現時点での開発進捗について、「サイト(設置場所)が決まらない中でやれる設計検討はほぼ終わっている」と明らかにした。2024年5月28日の「2024事業計画(2024~2026年度)」の説明会の中で分かった。

~~略~~

原子炉の建て替えの有力候補にもなっており、国内の原子炉メーカー3社(三菱重工、東芝エネルギーシステムズ、日立GEニュークリア・エナジー)がここ数年で主な仕様を相次いで公表してきた。

日経XTECHより

「革新軽水炉」と言いながらも、安全性を高めました程度の軽水炉なので基本構造は以前のそれと大きくは変わらない。ただ、東日本大震災レベルの災害にあっても稼働できることを目指したので、安全性が向上したのは事実である。

ただ、建設コストが膨らんでいるのは事実で、発電コストも当然上がることは予想される。そういった事を踏まえて、「増やす」のか「現状比のまま」なのか、「新設はしない」のかを選ぶべきではないのだろうか。

そうなった時に、代替発電手段は自然変動電源で、充電設備投資も必要なので大幅に電気代は増えますよ、という情報をインプットしないのは嘘だろう。

コメント

  1. 山童 より:

    8%もいるのすか? 頭わるくない??
    今のスマホ時代に何で情弱になるかね?
    てか、木霊さまの記事読めよ!と言いたい。常識的かつ普通に科学的な基礎知識は理解てきるから!
    あー、こういう人は「ドイツ偉いねー」とか言ってドイツがフランスの原発から電力買ってる事とか知らないんだろうなぁ?
    再生可能ガーとか喚いて、いまどーなってるよ。まぁ移民もそうだけど。
    TVや新聞たけじゃムリよ。そこで木霊様のような信用おけるブロガーを推しに持つのが大事になる。
    ブログもユーチューブも玉石混交です。たからゆっくり時間かけて玉なブロガーや配信者を探す大事。
    私の例なら日に2度は必ず木霊様ブログを訪れるのて、記事を読んで気になったら、キーワードをリンクサイトでググり、他のブログも探してみる。さらに必要なら図書館、本屋、古本屋、めったにないが出身大学図書館や国会図書館……と範囲を広げる。
    「オレの事を盲信しないよう」と木霊様に言われてるので、すこく気になる場合はそうしますね。まぁだいたいは地元図書館まででなんとかなりますよ。
    そういう作業って普通の人間が騙されない為の作業と想うてるのですが、それには信用おけるブロガーさんは必要!
    羅針盤になるブロガーさんがいれば、何から調べれば良いのか解る。
    8%の人ぁ、そういう人やブログを持たないのだろうなぁ。そういう人が後期高齢者になるとボケるんたよね。

    • 木霊 木霊 より:

      人は見たい物を見ますから、調べることが出来ても余り意味がないのでしょう。
      先ずは、疑問に思わないとダメなんでしょう。

      僕の未熟な記事が何かの参考になれば、幸いです。

    • 七面鳥 より:

      横合いから失礼。

      >今のスマホ時代に何で情弱になるかね?

      「水と空気と電気はタダ」と思ってるんじゃないですか?
      電気自動車含めて、家庭用コンセントと都市そのものの電気容量の区別がついてないでしょうから。
      ※「平和と安全もタダ」と思ってるかも知れません。

  2. 砂漠の男 より:

    反原発煽り記事については、朝日、毎日、東京、日経など主要オールドメディアが軒並み報じている。ちょいと検索すれば、ゾロゾロ出てきます。
    日本のエネルギー政策は、その幅広いポートフォーリオが安全保障そのもので、安全性や生産コストだけで語られるものではない。オールドメディアと日本政府は、意固地になって原子力発電を遠避け、日本の国益を毀損し続けている。どこからカネをもらっているんだか。

    トランプ第2次政権は、バイデン政権と正反対のエネルギー政策を取ることが分かっており、原子力も石炭も原油も復権します。
    特に、AIを新たな成長エンジンのひとつに掲げていますが、あの人がAI政策をけん引していて、AIのための膨大な電力確保のために、いまは止まっている原子力発電所の再開に着手しています。
    「16億ドルをかけたスリーマイル島(原子力発電所)再稼働計画の内幕」(WSJ 1/15)
    https://www.youtube.com/watch?v=Ub78DA8wyf8&

    日本は、また後れを取って負けるかもしれませんね?

    • 木霊 木霊 より:

      反原発派の主張も納得できる部分はあるのですよ。
      やはり、放射性物質の扱いは厄介ですからね。

      ただ、既に原発が日本国内に存在しており、世界中で利用されていることと、日本にとって化石燃料に頼るよりも原発も運用した方が安全性が高い事実を考えると、利用しないという選択肢はかなりリスキーだと思うんですよね。