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ガス停止に凍えるモルドバでウクライナへのヘイトが高まる

東欧
この記事は約7分で読めます。

昨年末に非常事態宣言が出ていたが、遂にガス供給停止になってしまったね。

沿ドニエストル地方、5万世帯でガス停止 ロシア産供給されず

2025年1月7日午前 8:01

モルドバの分離独立派の沿ドニエストル地方では、5万1000世帯以上でガス供給が停止し、1500棟のアパートで暖房が使用できない状態となっている。同地方の当局が6日、明らかにした。

ロイターより

この時期のガス供給停止は、命に関わりそうだが。

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ガス紛争の影響

寒い冬に暖房がない

前回の記事がこちら。

前回説明したように、ウクライナ絡みの案件である。

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モルドバへの天然ガス供給はウクライナを通過するパイプラインによって行われる。で、ウクライナはロシアとの協定延期を行わなかったため、予定通り天然ガス供給が途絶えた。

ウクライナ経由の中欧・東欧へのロシア産ガス供給は元旦に停止されている。

ロイター「沿ドニエストル地方、5万世帯でガス停止」より

モルドバは温帯大陸気候で、夏暖かく、冬は凍てつく寒さという感じの地域である。1月の平均気温は-2℃。

なかなか洒落にならない事態である。

国民生活に影響

当然、命に関わる事になりかねないため、学校や幼稚園の再開をしないように指導がなされているらしい。

沿ドニエストル当局は対話アプリ「テレグラム」への投稿で、6日朝の時点で、計122の集落でガス供給が停止しており、一部のアパートに調理用に限定的な量しか供給されていないと述べた。また、少なくとも131の学校と147の幼稚園で暖房が使えない状態となっていることから、冬休み明けも学校を再開しないよう命じている。

ロイター「沿ドニエストル地方、5万世帯でガス停止」より

この他、工場の生産停止など経済活動も麻痺し始めているようだ。

今回の事態をモルドバの親ロシア勢力復権と隣国ウクライナに対するモルドバ領土の武器化を目的とした「安全保障上の危機」だと訴えた。

「沿ドニエストル共和国」のテレグラムチャンネルによると、同地方の計画停電は3日夕に開始。すでに温水とセントラルヒーティングが停止したほか、工場も生産停止を余儀なくされているという。

Newsweekより

断続的に停電が発生し、暖をとるために当局が住民に薪ストーブを利用するように呼びかけているとか。

契約の失効により、ウクライナはロシアから受け取っていた年間約8億ドル(約1250億円)の通過料収入を失い、ロシアの国営ガス会社ガスプロムは50億ドル近い売り上げを失うことになるという。

親ロシア姿勢で知られるスロバキアのフィツォ首相は、契約失効をゼレンスキー・ウクライナ大統領による「破壊行為」と非難し、同国への電力供給停止や難民支援の縮小を示唆している。

CNNより

というわけで、モルドバ国民の命の危機に瀕している状況で、ヘイトはウクライナに向かっている状況である。

欧州各国にも影響が

当然、ウクライナを通過するパイプラインの利用が出来なくなった事で、モルドバ以外の国にも影響が出ている。

ウクライナ、自国経由するロシア産天然ガスの欧州輸送を停止 契約失効

2025.01.02 Thu posted at 12:50 JST

ロシア産の天然ガスをウクライナ経由で欧州にパイプライン輸送する契約が1日、失効した。これより前にウクライナは国家安全保障の観点からロシアとの契約を更新しない姿勢を示していた。

ベルギーのシンクタンク、ブリューゲルによると、ウクライナ経由は欧州連合(EU)の天然ガス輸入全体の約5%を占め、主にオーストリア、ハンガリー、スロバキアに供給されていた。今後ロシア産を欧州に送るパイプラインはトルコ経由のみとなる。

CNNより

ただ、この話は事前に分かっていた話でもあり、他の国への影響は今のところ軽微なようだ。

だがスロバキアのフィツォ首相はウクライナ経由の輸入停止はロシアではなくEUに「極めて大きな」影響を及ぼすと述べたとロイターは報じた。

EUの行政執行機関である欧州委員会(EC)によると、欧州のロシア産天然ガスへの依存度は下がっており、パイプラインでの輸入は2021年に全体の40%超だったのが23年には約8%になった。

CNN「ウクライナ、自国経由するロシア産天然ガスの欧州輸送を停止」より

開戦当初から、長引けば様々な問題が出るとは予想されていたし、そもそもウクライナを通過するパイプラインにはトラブルもあったからね。

ロシア・ウクライナガス紛争

2004年にウクライナで発生したオレンジ革命以降、ロシアとウクライナとの関係は悪化していった。ウクライナの民主化運動である。この当時、東欧諸国が挙ってEUへの乗り換えを図っていたため、ロシアとしてもお膝元のウクライナがEU側に行くというのは我慢ならない事であった。

尤も、オレンジ革命(2004年11月22日~2005年1月23日)は失敗に終わっているんだけどね。

ただ、ウクライナ国内では民主化への熱が燻る結果となり、ロシアとの関係は悪化することになる。

ウクライナ、ガス滞納金一部返済 ロは協議継続に前向き

2014年5月31日午前 4:48

ウクライナのヤツェニュク首相は30日、未払いとなっている天然ガス代金として7億8600万ドルをロシアに支払ったことを明らかにした。

ただ、ロシア国営ガス会社ガスプロムが6月7日までの代金(滞納分含む)としている約52億ドルを大きく下回った。

ロイターより

ガス料金の滞納をやらかしたり、抜き取りをしたり……。

ガスプロム、モルドバ向け供給を削減へ…ウクライナでガス抜き取りと主張

2022/11/23 18:20

ロシア国営ガス会社ガスプロムは22日、ウクライナの隣国モルドバ向けに輸送しているロシア産天然ガスの供給を、28日から削減すると発表した。同社は声明で、ウクライナでガスが抜き取られていると主張している。

讀賣新聞より

ウクライナもかなりロクデモナイことをやっていたのは事実である。尤も、これはロシア側にも問題があって、契約していた料金を一方的に値上げして支払えと言ったり、ガスの供給停止をしたりと、なんというかどちらが悪いと一概に言いにくい状況であった。

このウクライナとロシアの間におけるガス供給・料金設定を巡る争いは、2006年頃から断続的に行われていて、遅かれ早かれ今回のような事態に陥るとは言われていたんだよね。

ただ、モルドバなど東欧諸国がウクライナへのヘイトを高める結果になる一方で、ロシアに対する信頼も低下しているような状況になっている。ロシアの国力失墜は、ウクライナ戦争が終わったとしても加速しそうである。

追記

コメントで教えて貰ったが、沿ドニエストル共和国も苦境に立たされているようだね。

親ロシア派の支配地域で電力不足 モルドバ、ガス輸送停止で

2025/01/07

今月1日からウクライナ経由の欧州向けロシア産ガス輸送が停止したことに伴い、ウクライナの隣国モルドバ東部にある親ロシア派支配地域「沿ドニエストル共和国」が電力不足に直面している。7日からは1日計8時間の計画停電が実施される。

共同通信より

まあ、当然の帰結なのだが、モルドバの一部地域である以上はモルドバと似たような状況に陥るのと、周辺国との関係が余り宜しくないので、直接支援しては貰えない。

そういう意味では、孤立無援状態になっているのだろう。

いや、そもそも構図としてモルドバが沿ドニエストルから電力を購入していたという格好だったんだよね。モルドバは親EU路線に切り替えてから、慌ててルーマニア側から電力を供給して貰えるように設備を揃えている最中なんだけど、それが間に合ってはいない(現時点でモルドバの電力需要の8割を担っていた)ようだ。

一方、沿ドニエストルはロシアからの天然ガス供給が途絶えたために、電力の発電も覚束ないと。

こちらの記事はなかなか面白いことが纏められているのでリンクを貼っておく。

ウクライナの契約更新拒否で、ロシアを悩ます思わぬ伏兵が登場 ドニエストル川両岸でエネルギ―危機勃発へ、崩れた“三方よし” | JBpress (ジェイビープレス)
新年早々、ドニエストル両岸(モルドバと沿ドニエストル)でエネルギー危機に陥る可能性が出ている。 2025年度の天然ガス供給をめぐり、ロシア・ガスプロム社とモルドバガス社との契約交渉(1/5)

簡単に要約すると、今まではモルドバのエネルギー事情を沿ドニエストルがロシアからモルドバ宛てに供給する天然ガス供給で賄ってきたが、これが途絶え、今度はモルドバ経由(トルコ経由)で沿ドニエストルにエネルギー供給が行われることになりそうだと。

沿ドニエストルは、これまでロシアからの天然ガスを未払い状態で15年間も利用し続けてきた上に、無策だったので、立場の逆転によって極めて厳しい状況に追い込まれそうだという。

案外、沿ドニエストルは消滅する日が近いのかも知れないけれど、ロシア軍が動き出すのだろうか?ウクライナで手一杯になっている状況みたいだけれど。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    天然ガスパイプラインがいつ再開されるか、いまの段階では誰にもわかりませんね。
    モルドバの汎用エネルギーは、ガスと電気と熱水ですが、いまはルーマニアから
    電気を輸入して急場を凌いでいるそうです。
    他方、沿ドニエストルでは、エネルギー源が枯渇寸前のようですよ。
    https://tinyurl.com/msyb4fk6
    放っておくと、これは人道問題だとEUが騒ぎ始めそうです。

    • 木霊 木霊 より:

      ルーマニアからですか。
      確かに買っているようですが、いつまでも買い続けるというわけにも行かないでしょう。

      どうするんですかねぇ……。