新年早々に扱うネタではないんだけど、去年からの続報を扱っていこう。
韓国 旅客機事故 コンクリートの構造物に衝突で被害拡大か
2025年1月1日 19時08分
韓国南西部の空港で乗客乗員179人が死亡した旅客機の事故では、胴体着陸した旅客機が空港の外壁の手前にあったコンクリートの構造物に衝突していたことが明らかになり、韓国の複数のメディアは、この構造物との衝突で被害が拡大したという見方を伝えています。
NHKニュースより
韓国の航空機事故の話だ。被害者の方には改めてお悔やみを申し上げたい。
被害拡大の原因
事故に関する情報整理
前回の記事はこちら。
もうちょっと整理しておくべきだったとやや反省しているが、色々情報が出てきたので一度整理したほうが良いかもしれない。

事故にあったのは済州航空7C2216便。事故機はボーイング737-800。

737シリーズはベストセラー機ではあるが、最近、幾つかこの737-800機は油圧トラブルの話もあって、やや心配な面はある。
このような理由から大手老舗、そして後発のLCCとともに人気モデルのひとつだった737-800ですが、チェジュ航空機の29日の着陸失敗事故では、着陸装置を展開しないまま着陸する「胴体着陸」に失敗し、外壁に激突、結果として乗員2人を除く179人が犠牲になりました。
さらに30日には別の737-800を用いたチェジュ航空便が、離陸後着陸装置の異常のため、引き返すというアクシデントが発生しています。
こうしたことをうけ、韓国当局は着陸装置、エンジンなどの主要システムの整備記録などを対象に、同国内の航空会社で使用されている737-800、およそ100機を調査する方針であると報じられています。
なお、事故の要因はまだ「調査中」となっているほか、チェジュ航空でこそこうした「降着装置のトラブル」が相次いでいる一方で、日本を含む韓国外の航空会社で737-800の着陸装置に不具合が多発している、もしくは問題が相次いでいるといった報道などは確認できません。
乗り物ニュースより
何故か、済州航空が保有する737-800機にトラブルが相次いでいるんだよね。
着陸時の失敗
さて、先ずは、衝撃のポストから。
着陸時の動画なのだが、スピード早すぎたというのがよく分かる。事故機は、一度着陸をやり直して、旋回して逆方向から着陸を試み、胴体着陸となってしまった。
着陸許可からの9分間、事故機に何が? 韓国、今後の調査の焦点は
2024年12月30日 22時46分
韓国の務安国際空港で旅客機が着陸に失敗して炎上し、179人が死亡した事故で、韓国当局の説明などから、事故機が一度着陸をやり直し、旋回して逆方向から胴体着陸を試みたなど、当時の状況が一部明らかになった。着陸許可がおりてから事故が起きるまで、約9分間。事態はどう急転していったのか。
韓国当局によると、事故機は29日午前8時54分に着陸許可を受け、57分に管制塔は「バードストライク」に注意するよう事故機に伝えた。59分にパイロットは鳥との衝突に言及しながら遭難信号を出してゴーアラウンド(着陸やり直し)を実施。旋回して午前9時に逆方向から再び滑走路への接近を試み、1分に滑走路(約2800メートル)に向けて着陸許可を受け、2分に車輪が出ないまま胴体着陸。3分に機体が壁に衝突し、炎上した。
朝日新聞より
ゴーアラウンド担った理由は良くわからないが、どうやら最初はランディングギアが出ていたという噂もあるだけに、どうしてゴーアラウンドをして、旋回して着陸したかもイマイチ不明である。ゴーアラウンドは、鳥が沢山いたから避ける目的だったと言われているが。
あと、滑走路に着地した地点が随分と滑走路中央寄りだった理由も気になる。随分、速い速度で着地トライをしているのもね。
このあたりは、回収されたフライトレコーダーが解析されれば、分かるのかもしれない。
韓国旅客機事故の原因調査続く、専門家は様々な要因指摘 フライトレコーダー解析に1カ月か
2024年12月30日
韓国南西部・全羅南道の務安空港で29日午前、胴体着陸した済州(チェジュ)航空の旅客機が滑走路を越えて壁に激突して炎上した事故で、当局による原因調査が続いている。
~~略~~
破損の影響で、フライトデータレコーダーの解析には1カ月かかる可能性があると、同メディアは調査担当者の話として伝えた。
BBCより
1ヶ月以上先になりそうだけれども。
違法なコンクリートの構造物
この記事で取り上げるのは、胴体着陸を試した航空機が激突し炎上した原因になったコンクリート構造物について。
一方、胴体着陸した旅客機は、空港の外壁の手前にあったコンクリートの構造物に衝突していたことが明らかになり、韓国の複数のメディアは、この構造物との衝突で被害が拡大したという見方を伝えています。
NHKニュース「韓国 旅客機事故 コンクリートの構造物に衝突で被害拡大か」より

これ、「ローカライザー」と呼ばれる旅客機の誘導装置の土台で、コンクリート製の構造物であった。
滑走路先にコンクリートの壁…英航空専門家「これまで見たことがない」「犯罪に近い」 韓国・務安空港事故
2024/12/31 11:15
179人が犠牲になった務安国際空港旅客機事故について、英国の航空安全分野の専門家は「滑走路先に設置された壁との衝突が大惨事の決定的な原因」と指摘した。
~~略~~
リアマウント氏は「この種の構造物はあんな場所にあってはならない」「滑走路から200メートル離れた場所に強固な構造物が存在するなど、これまで見たことがない」と指摘した。
国土交通部(省に相当)の関係者は30日のブリーフィングで「滑走路の端からコンクリートの外壁まで251メートルあった。(ローカライザーは)航空機が方位を計器板で確認できるようシグナルを送る方位角施設だ」と説明した。これに対してリアマウント氏は「多くの方位角施設は折りたためる形になっている」と指摘する。
リアマウント氏は「航空機が壁と激突していなければ、柵を突き破って道路を通り過ぎ、隣接する空き地で停まっていたはずだ」とした上で「航空機がスピードを落として停止するのに必要な空間は十分にあった。柵を突き破る際に多少の被害は出ただろうが、それでも乗客は助かったと思う」との見方を示した。
朝鮮日報より
図解するとこんな風になる。

この構造物の違法性がやや問題となっているんだよね。
国土部はブリーフィングを通じ、「務安空港ローカライザーは、航空障害物管理詳細指針上、縦断安全区域外に設置されており、「空港障害物とみなされるすべての装備や設置物は壊れやすい台座に装着しなければならない」という規定が適用されない」と明らかにした。
空港・飛行場施設及び離着陸場の設置基準第21条によると、終端安全区域は着陸台の終端(端)から最低90mは確保するが、240mを勧告基準として提示している。務安空港の着陸台の端からローカライザー堤防までは250m程度で、終端安全区域である199mから外れている。
NAVERより
ローカライザーアンテナは、地面に設置されるのが一般的なのだが、何故か武安空港のローカライザーアンテナは強化コンクリートの土台が設けられて設置されていた。それも、当初はなかったけれど、追加工事で強化したらしいんだよね。
この構造が問題とか、位置が一般的なものとは異なるので、専門家は批判的な意見を出しているものの、安全設置基準を完全に逸脱しているかと言うと、そうではないようだ。

普通はこんな感じに敷設され、航空機が着陸する際に誘導する設備なんだが、着陸時、航空機の正面に来るように設置される。終端安全区域から199m先に設置されているから、「壊れやすい台座に設置する義務はない」としているし、実際、はっきり決まっていない、というのが実情らしいんだけど……。
滑走路が短い
ここで、もう1つ疑問視されるというか、問題視されているのが、滑走路の長さである。これは、ダメってわけではないらしいけれども。
「2.8㎞」務安空港の「短い」滑走路…「胴体着陸」のリスクを高めたか
2024年12月29日 17:15
韓国全羅南道の務安国際空港で29日起きた旅客機事故に絡み、同空港の滑走路が他の空港と比べて短いことが、胴体着陸のリスクを高めたとの指摘が出ている。滑走路がもっと長ければ、今回のように高速で外壁に衝突することはなかったとの分析も出ている。
~~略~~
事故原因についてさまざまな要因が指摘されるなか、「短い滑走路」にも焦点が当てられている。務安空港の滑走路の長さは約2.8㎞で、他の空港と比べて800~900mほど短い。
AFPより
通常の着陸であれば、2800mの滑走路でも問題はないようなのだが、今回は胴体着陸を試した状況だったので、滑走路が長ければ被害が抑えられた可能性はあるかな。
つまり、滑走路が短かった上に、滑走路の先に強固な土台を持った構造物があったことが、今回の悲劇を助長したってことになる。
まあ、タラレバを言っても仕方がないのだけれども。
追記
パイロットが知らないのは不味いよね。
<チェジュ航空旅客機事故>「コンクリート丘だとは知らなかった、てっきり土盛かと…」 務安空港利用7年のパイロット証言
2025.01.03 07:24
韓国全羅南道務安国際空港でたびたび飛行する飛行教官・パイロットは滑走路の計器着陸装置(ローカライザー)のコンクリートの丘の存在を事前に認知できなかったと証言した。
韓国メディア「聯合ニュース」によると、7年間務安空港を利用したという飛行教官でありパイロットのAさんは2日「数年間離着陸をしながら上空から目だけで丘を確認したが、てっきり土盛だと思っていた。まさかコンクリート材質だったとは想像だにしていなかった」と話した。
Aさんは「高さ2メートル・厚さ4メートルのコンクリートの塊ということが空港チャートなどにも書かれておらず、案内を特に受けたこともないので他のパイロットも知らずにいた」と話した。
中央日報より
デストラップだってことを知らなかったのは、不幸としか言いようがない。
そんな空港だが、どうやら訓練に頻繁に利用される空港だということのようだ。
Aさんは「務安空港は暇だろうと誰もが思っているが、実際は非常に忙しい」とし「国内で訓練が可能な空港がほとんどなく、どの訓練機関もほぼこちらで飛行教育を行う」と明らかにした。
中央日報より
で、管制塔は結構仕事量が多いということらしく、結果的に対応が疎かになるリスクがあると。
今回の事故に管制塔の対応に関して落ち度があったかという話は、レスキューを要請していなかったくらいの話しか知らないのだけれど、何だろうなぁ。これから、何か出てくるフラグなのだろうか。
追記2
ええと。
滑走路先の「コンクリート構造物」は業者の設計ミス…韓国空港公社がそのまま認可【独自】 務安空港事故
2025/01/03 11:55
務安国際空港で昨年初めまで続いた「コンクリート構造物」強化工事は、設計業者が誤って設計したものを韓国空港公社がそのまま受け入れていたことが2日に確認された。務安空港を運営する韓国空港公社は2020年にローカライザー(着陸誘導装置)改良事業に着手した際、壊れやすくする方法で行うよう指針を下しながらも、コンクリート構造物をさらに強化する設計を受け入れたということだ。こうして強化された構造物が今回の事故に決定的な影響を及ぼした。
朝鮮日報より
設計ミス……ねぇ。
![旅客機との衝突で破損したローカライザー。[写真 聯合ニュース]](https://japanese.joins.com/upload/images/2024/12/20241231082941-1.jpg)
じゃあ、何故、盛り土をしたのよ?コンクリート製構造物を隠すように土を盛った理由は?本当に、それは設計ミスだったのかな?
そもそも、ローカライザーアンテナをガッチリ固定する意味が良くわからない。
まあ、今後は注意すべきって話にしかならないんだけれど。
追記3
出てくるとは思っていたけれども。
「海外航空券が3万ウォン?」 LCCの低価格競争が整備不良を呼ぶ
2025. 1. 5. 07:00
179人の死者を出した済州航空旅客機惨事の余波が低コスト航空会社(Low cost carrier・LCC)忌避現象につながっている。済州航空だけでなく、全体的なLCCが低価格競争の中で整備費用を減らそうと安全を背負っているのではないかという懸念が広がった結果だ。国内LCC業界20年の歴史上最大の危機になるという見通しも出ている。
~~略~~
過去8年間、国内LCCのうち、国土交通部が提示した整備人員の勧告基準である「航空機1機当たり12人」を満たしたのは、たった2社(済州航空・イースタ航空)だけだった。済州航空は12人をわずかに超えて「ぎりぎり」レベルであり、ジンエアー・エアプサンなどは10人にも満たなかった。
Daumより
整備不良問題は、韓国の航空機業界全体に言えることで、恐らくは大韓航空くらいじゃないかな、マシな整備ができるところは。それ以外はかなりヤバイ。LCCならば更に人手不足や技術力不足が深刻なようで。
そもそも韓国空軍がかなり整備不良問題に悩まされている状況だから、民間なら尚更である。
韓国地方空港73%が赤字に労働力難…安全が脅威を受けている
2025.01.06 14:55
韓国の航空機事故史上最も多くの死亡者が務安国際空港で発生したことを受けて地方空港や格安航空会社(LCC)に厳しい目が向けられている。国土面積や航空需要などを考慮すると、空港・航空会社が多すぎるという指摘もある。
5日、航空情報ポータルシステムによると、韓国には17カ所の空港がある。このうち特殊目的空港であるソウル・静石空港を除くと旅客機が離着陸できる空港は15カ所となっている。仁川国際空港を中心に金浦・金海・済州・大邱・清州・務安など6カ所の地域に拠点空港があり、主に国内線の需要を担当する地方空港がさらに8カ所ある。
地方空港のほとんどは経営状況が良くない。韓国15カ所の空港のうち11カ所(73.3%)が赤字だ。
中央日報より
そして、空港も貧乏なので設備がショボくなっていると。
狭い国土で高速鉄道を一生懸命作っているので、地方空港の有り難みが薄いという構造に。まあ、そうなるとトラブルも起こりやすいよね。
コメント
こんにちは。
この件、当初はパイロットを腐するコメントを旧ツイッターで散見しましたが、最近は見なくなりましたね。
バードストライクによるエンジントラブルは確実なようで、しかもこの空港は韓国一(≒世界一?)バードストライクの起こりやすい空港だったとか。
とはいえ、ギヤが出なかったのは不自然ではあります。ゴーアラウンドは風向きとか進入角とか思うように行かなかったのかも知れませんが、接地こそ綺麗なのにその位置が滑走路の半分を超えているとか、よほど急いで下ろす必要があったか、そうするしか出来なかったか……ボイスレコーダが残ってるといいのですが。
で、件のコンクリですが、これが無ければ全員生還も出来た可能性があったと思うと、残念でなりません。
てゆーか、常識で考えれば、オーバーランするかも知れない位置にトーチカ置くか?って話ですよね。完璧に殺意マンマンで殺しにきてるとしか思えない。
しかも、こんなのが他の空港にもあるらしいですし……
「目に見えている不安全事項をガン無視してた」韓国型事故の一つなんでしょう。
そんなもので命を落とした方の、冥福を祈ります。
こんにちは。
パイロットの判断がどうだったのか?に関しては、フライトレコーダーの解析が終わるまでは保留です。
やや腑に落ちない行動が散見されるのですが、胴体着陸をしてでも着陸しなければならない事情があったのかも知れません。
不幸が重なったので、被害者が多くなってしまった点は、本当に残念だと思いますよ。