そりゃまあ、怒るよねぇ。
アゼルバイジャン大統領、旅客機墜落の責任認めるようロシアに促す
2024/12/30
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は29日、ロシア南部へ向かっていたアゼルバイジャン航空の旅客機が墜落し38人が死亡した25日の事故について、責任を受け入れるようロシアに求めた。国営メディアのインタビューで発言した。
BBCより
アゼルバイジャンとしても、ロシアに責任があることを認めて、何らかの賠償をしない限りは許すことは出来ないだろう。
対応次第では親露派国を失う
撃墜されたことに激怒
本件は、先日触れたこちらのニュースの続報である。
風邪で寝込んでいる間に事態が進んで、記事を書いた時点ではロシア側は声明を出していなかったけれども、流石に黙ったままというのは不味いと考えたのだろう。
プーチン大統領、アゼルバイジャン大統領に旅客機墜落めぐり謝罪 ロシアの責任認めず
2024年12月29日
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は28日、隣国アゼルバイジャンの旅客機がロシア領空からカザフスタンに墜落した事故をめぐり、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領と電話協議し、「ロシア領空で悲劇的な事態が発生した」と謝罪した。ただし、ロシアに責任があるとは言わなかった。
BBCより
一応声明を出したものの、「ロシア領空で」「悲劇的な事態が発生」したことを謝罪したのみ。ロシア軍が撃墜したことに関しては謝罪をしなかった。
流石にこの態度にアゼルバイジャン大統領のアリエフ氏は激怒。で、冒頭のコメントを出したわけだ。
アゼルバイジャン国営メディアのインタビュー記録によると、アリエフ大統領は事故について29日、「ロシア当局は、ガスシリンダーがどれか爆発したなどの説を提示」しているが、これは「ロシア側が問題を隠蔽(いんぺい)しようとしていると、明確に示すものだ」と話した。
さらにロシアではバードストライク(機体と鳥の衝突)が原因だという説が一部で支持されていることを、アリエフ氏は問題視し、ガスシリンダー爆発説もバードストライク説も「愚かで不誠実」だと批判した。
アリエフ氏は、飛行機の撃墜が偶発的な事態だったことは認めつつも、墜落から最初の3日間にかけて「ロシアからはひたすら、ばかばかしい説が聞こえてくるだけだった」と述べた。
BBC「アゼルバイジャン大統領、旅客機墜落の責任認めるようロシアに促す」より
この件に関してはJSF氏が優れた解説を出していたので、紹介しておく。

少々長いのと、断片的な材料から撃墜事件だと判断していることから、掻い摘んで要約すると、以下の通り。
- 墜落前の機内映像からは左側主翼のフラップ・トラック・フェアリングの後部上側に損傷が見られる。
- 墜落前の段階で尾部点検アクセスハッチが開いている。
- 墜落後に確認できた機体後半部分の垂直尾翼と左側の水平尾翼に無数の穴が開いている。
この3点の状況が写真や動画より確認できるので、バードストライク説や内部爆発説は否定でき、特に3番目の点から対空ミサイルの近接爆破による損傷が原因で墜落した可能性が高いと説明している。
アゼルバイジャンは親ロシア派だった
以前、ナゴルノ・カラバフの話を書いた。
ロシアの都合によって争いの絶えなかったアゼルバイジャンとアルメニアとの間の紛争地、ナゴルノ・カラバフの所有権に関して決着がついたというニュースなのだが、この話はアルメニアが民主化を進めて非ロシア化を進め、トルコの支援を受けようと立ち回っていることが関係していると説明した。
そして、この件から1年後、つまり今年の8月には、関係強化の約束をしている。
ロ大統領がアゼルバイジャン訪問 首脳会談、関係強化で一致
2024年08月20日14時00分配信
ロシアのプーチン大統領は19日、旧ソ連構成国アゼルバイジャンの首都バクー郊外でアリエフ大統領と会談し、関係を強化する方針で一致した。
時事通信より
分かり易く親ロシア路線を突き進む約束をしたわけだ。にも拘らず、アゼルバイジャンの国民が多数乗るアゼルバイジャンの旅客機が撃墜された挙句、「責任はロシアにない」という姿勢を示したのだから、そりゃ怒るよ。
クレムリンによると、プーチン氏はアリエフ氏に対して、旅客機が目指していたロシア・チェチェン共和国グロズヌイの空港に繰り返し着陸しようとしていたことや、「当時はグロズヌイ、モズドク、ウラジカフカスなどがウクライナの無人機で攻撃されている最中で、ロシアの防空システムがそうした攻撃を撃退した」最中だったことを認めたという。
BBC「アゼルバイジャン大統領、旅客機墜落の責任認めるようロシアに促す」より
国際社会ではロシア側につくことは非常にリスキーである。にも拘らずロシアと一蓮托生を選んだのだから、分かり易い利益が得られなければやっていられない。
否定は難しい情勢
さて、こういった状況で、様々な証言から、ロシア軍の誤射である可能性が高くなっている。
客室乗務員のズルフカル・アサドフ氏は、旅客機がチェチェン共和国の上空にいた際に「外から何かが衝突」したと話していた。
アゼルバイジャンのベテラン操縦士、タヒル・アガグリエフ氏は、同国メディアに対し、ミサイルの破片で、機体を制御する油圧装置が損傷したと話していた。「ミサイル自体が機体に命中したのではなく、ミサイルの破片が当たった。ミサイルは機体に到達する前に、約10メートル離れた地点で爆発した」のだという意見だった。
米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官も27日、当該機がロシアの防空システムによって撃墜されたかもしれないことを示す「初期の兆候」をアメリカが確認していると記者団に話していた。
BBC「アゼルバイジャン大統領、旅客機墜落の責任認めるようロシアに促す」より
今の所は、状況的に極めてロシア側に不利な証拠が色々と出てきていて、ロシア軍の誤射であることは否定しにくくなっている。
そして、アゼルバイジャン大統領のアリエフ氏は、有耶無耶で終わらせる気はない模様。
アゼルバイジャン墜落機 フライトレコーダー調査はブラジルで
2024年12月30日 21時00分
カザフスタン西部で起きたアゼルバイジャン航空の旅客機の墜落で、カザフスタン政府が設置した事故調査委員会は、墜落の原因を調べるため回収されたフライトレコーダーをブラジルの専門機関に送ると発表しました。
NHKニュースより
撃墜された機体がブラジルのエンブラエル社が製造したエンブラエル190だからという事情もあると思うが、NHKも指摘する通り第三国で分析したほうが客観性の高い結論が得られるという事情もあると思う。
この一件から、アリエフ氏の政治は独裁的ではあってもアゼルバイジャン国民の事を向いているという風に考えていいと思う。少なくとも自身の利益の為に下した決断ということはなさそうだ。そして、そうだとすると、ことと次第によっては、ロシアから離れていくという覚悟の現れのようにも思える。
が、先日のシリアの件といい、今回のアゼルバイジャンの件といい、ロシアは他国を守ることを考えていないという事実が露呈してしまった。その余裕がないという事でもあろうが、それはなかなか厄介な事態でもある。
追記
また文句を言っているね。
アゼルバイジャン大統領 “墜落の責任はロシア代表者らに”
2025年1月7日 8時29分
アゼルバイジャンのアリエフ大統領は6日、先月、ロシア行きのアゼルバイジャン航空の旅客機が墜落したことについて、「責任はロシアの代表者らにあると確信を持って言える」と述べ、ロシアのプーチン政権を批判しました。
~~略~~
一方、墜落した旅客機が製造されたブラジルで行われていたフライトレコーダーの解析について、担当したブラジル空軍は6日、作業を終え、抽出したデータを調査を担うカザフスタン当局に引き渡したと発表しました。
NHKニュースより
解析には未だ時間は必要な模様。
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