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コンブの光合成で海に炭素貯留する技術を開発する日本

環境技術
この記事は約5分で読めます。

「ふえるわかめちゃん」で有名な理研が二酸化炭素低減に一石を投じるというニュースである。

コンブの光合成で海に炭素貯留、三陸で大規模養殖を実験

2024年12月16日 5:00

三陸地方にある岩手県陸前高田市の港に面した一角。「ふえるわかめちゃん」で知られる理研食品(宮城県多賀城市)が運営する海藻の陸上養殖施設に、炭素を海で貯蔵する「ブルーカーボン」の研究の一端を担う設備が導入された。

日本経済新聞より

この話は、実は以前にも触れてた記憶がある。

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海洋炭素固定はこれからの技術

「ブルーカーボン」は海洋への炭素固定

筋が良い話か、悪い話か、という論点はあるのだけれども、研究はどんどんやって欲しいと個人的には願っている。

そもそも「ブルーカーボン」の話は昨日今日始まった話ではなく、日本だけが頑張っているという話でもない。

海外では、ブルーカーボンのボランタリークレジット制度が整備されてきています。ボランタリークレジットとは、NGOなどの民間セクターが認証するカーボンクレジットの仕組みです。日本でもジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が、CO2の吸収だけでなく、それに伴う漁獲量の増加や水質浄化、生物多様性の増加などのコベネフィットも含めたボランタリークレジットを発行しています。

産総研マガジンより

……日本語でオネガイシマス。

要は、海外でも注目されているよ、くらいの理解で良いと思う。このクレジット化というのは、僕自身は苦々しく思っている話ではあるんだけど。

ともあれ、こうした流れは国連環境計画にも盛り込まれた話。

2009年に国連環境計画の報告書「BLUE CARBON」の中で、海洋において海草等により吸収・固定される炭素をブルーカーボンと新たに命名されました。一部の国では、ブルーカーボンによるCO2削減を地球温暖化対策の一環として取り入れる動きもあります。

国土交通省のサイトより

研究はあちらこちらで進められてはいるが、それほど大きな成果が得られたという話は聞かない。また、海藻藻場は世界ではブルーカーボン生態系扱いをされていないので、この話は若干イレギュラーである。

が、植物に二酸化炭素を吸収させよう!だから植林しようね、という話を海でもやるよと言うことなんだよね、簡単に言うと。

色々な技術

で、海洋への炭素固定の方法は色々ある。

「海洋における主なネガティブエミッション技術」として、色々紹介されているのだけれども、大別すると「物理化学的な貯留ポテンシャルを利用した技術」と「海洋生態系を利用したブルーカーボン技術」の2系統がある。

そのうち、植物を使うとイインジャナイの?というのが冒頭のニュースである。

ただこの手の技術は、海洋環境がどのように変化するかということも見極めていかねばならないので、実証結果を得るためにかなり時間を要する。

何故、「こんぶ」なのか

さて、理研が何をしているかという話を少し説明していきたい。

ネガティブエミッション技術の実用化に向け、海藻類の大規模養殖生産技術とブルーカーボン効果の研究開発・実証に取り組む

理研食品株式会社※(本社:宮城県多賀城市、社長:宮澤亨)、理化学研究所、長崎大学のコンソーシアムは、海藻類のブルーカーボン効果に関する研究において、福島国際研究教育機構(略称:F-REI)が公募する、令和5年度「ネガティブエミッションのコア技術の研究開発・実証」委託事業に採択され、1月26日付で委託契約を締結しました。

理研ビタミン株式会社のサイトより

これは理研のサイトからの引用なのだけれど、福島国際研究教育機構の公募で実証実験をやるよという報告である。

冒頭のニュースはその成果に関する記事だね。

で、何をやっているのか?というと、1年生マコンブ(以下コンブ)とヒトエグサを使って二酸化炭素を吸収するよという実験である。

その実験結果なんだけど……。

収穫したワカメとオキナワモズクの炭素含有量の測定結果から、調査した養殖漁場の合計 5.2 km2の面積における炭素固定量は約44トンと試算されました。

理研のサイトより

44tが多いのか少ないのか良く分からない。

コンブは、地球上の光合成を行う生物の中で最も高いCO2吸収能力を持っています。光合成によって吸収したCO2の一部は分解されにくい多糖類となって海の中に放出され、炭素の貯蔵につながると期待されています。

明峰コミュニティ協議会より

でも、コンブは効率が良いらしいんだよね。

海に溜め込む

だが、相対的に陸地の植物と比べて海の植物の方が吸収率が高いことは分かっていて、特に日本は海に囲まれる環境なので、研究する価値は高いだろう。

ブルーカーボンはCO2の吸収率(生きものが排出した量に対する吸収した量)が約30%で、植物の約12%と比較して高く、貯留期間も水中で安定的なため数十年から数千年と長い(植物は数十年~数百年)。日本は藻場やマングローブなどのブルーカーボンを見込める海域の面積が比較的広いことから、海草・海藻とそれらの藻場の両方を含めた吸収量の算定方法を検討していた。そして2023年、環境省温室効果ガス排出量算定方法検討会で算定方法が確定された。海草・海藻・藻場の吸収量の算定方法の提出は世界で初めて。

RM NAVIより

日本の二酸化炭素排出量は、2022年度で約10億8,500tと試算されている一方で、日本のブルーカーボン生態系による二酸化炭素の吸収量は年132万t程度だとされているので、そこを増やしていこうという試みは興味深い。

新たに設置したのは4台の大型の水槽。1台当たり5トンの水が入る。発光ダイオード(LED)の光が照らす水槽の中で、11月にコンブの種苗を育て始めた。

日本経済新聞「コンブの光合成で海に炭素貯留、三陸で大規模養殖を実験」より

冒頭の記事では、LEDの光を当ててコンブを育成しようという話で、今までの藻場より深い海域で育成ができるか?という研究のようだ。コレが成功すれば、コンブを着床できる海域が大幅に増えることになるので、二酸化炭素回収量も大幅に増やせる。

残念なことにこの手の研究は、事業性が低いために資金確保が難しいこともあってあまり進んでいないようだ。

ただ、多数の二酸化炭素が海洋固定可能だよという結果が出ることで、カーボンオフセットの議論が一気に変化する可能性はあるわけで。

現状でも、海での二酸化炭素吸収割合が全体の12%だというから、ここを増やしていける余地があれば、どんどんやって欲しいと思う。

コメント

  1. 匿名 より:

    呆れるしか無いけど、FCS森林とかカーボンクレジット、呆れた先物市場とか「EUの詐欺」でしかない、、、

    森林:認定基準はポリコレみたいな項目ばかりで、最も重要なCO2吸収のエネルギー効率の項目が見当たらない(笑)

    カーボンクレジット:EVメーカーてのは要するに CO2出す場所を発電所に移す低効率な道具を売ってる商売で

    CO2を1mLも減らしてる訳じゃない。のにクレジット沢山貰えるらしい(笑)

    同じことをEVより遙かに高効率かつ膨大に実施してる「膨大な電車鉄道網」を持つ わーくに は膨大なカーボンクレジット得られて当然のハズだがEUルールでは貰えないらしい(笑)

    そもそも科学、技術で考えるなら 植物光合成のエネルギー効率は、遺伝子操作スーパー植物でもソーラーセルの1/20~1/10程度

    CO2固定を真面目にやりたいならソーラーセル電力を用いた工業電気化学(C1プロセス)が現状ベスト

    が 変なEUルールが今は世界で巾効かせてて政策や国際市場が決まる利権構造が出来上がっている以上、日本も対抗上コンブとかやらざるを得ないのかな、、

    そのうちEVみたいに破綻するはずだけど、もう少し長持ちしそう?故 対抗せざるを得ないのか、

    まあ付帯効果:例えば牛のエサに海草混ぜるとゲップの温室効果ガスが激減だがエサ代爆上がり の保障とか、

    名目上、副次的効果だが実質有益 な分野は多くあると思うので そちら頑張って欲しい

    ただ やり過ぎると砂漠灌漑と同じ 単なる環境破壊ですので、節制忘れちゃいけないですけどね(苦笑)

    • 木霊 木霊 より:

      工業電気化学(C1プロセス)は調べてみましたが、コストは結構掛かりそうですね。
      結局、そのコストを誰が支払うのかという点も含めて社会的合意がとれなければならないという問題は変わらなそうです。
      EVに関しては色々言いたいこともありますが、カーボンクレジット沢山もらえるのがEVやソーラーパネルだというのが何とも。それ、全部、支那が作っているんですが。

      牛のエサに海藻を混ぜるとか、そういう研究も見かけました。それはそれでやっていただきたいですね。
      結局のところ、カーボンプラシングが詐欺同然の話なんですが、それを「やーめた」と言えないところが、日本の弱いところであります。
      昆布を育ててCO2が回収できれば、それはそれで良いのかなと。

  2. 山童 より:

    さすがに温暖化とco2が無関係とは思ってないですが。ジュラ紀とか今の数倍以上の濃度だったらしいすから。また2億5000万年後には地球の平均温度は50℃に達して、順当なら哺乳類は絶滅する事になってる。
    ただ現在の温暖化がco2と無関係とは言わずとも、それが主因であるかというと大きな疑問が浮かびます。
    EUの詐欺商売なのでしょうね。前コメの方も仰るとおりに。連中は五輪教義からEV車から、さらには調査捕鯨船襲撃の海賊擁護まで、法をねじまげて、それでもダメな時は法を自分らの都合に合わせて変更する。
    偽善と屁理屈を並べるだけ、まだロシアの方が次動を予測し易くてマシだと思う。

    • 木霊 木霊 より:

      このブログでも何度も書いていますが、僕自身も地球温暖化が二酸化炭素犯人説には懐疑的なんですよね。
      これは政治的決断で解決すると思うんですが、今の政治家は日和見主義が多いので頭の痛い話であります。

  3. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >……日本語でオネガイシマス。
    外来語を全部翻訳して造語した、文明開化期の先達には頭が上がりません、本当に。
    ※なので、日本人は「英語を学ぶ必要」がない、から、英語がヘタクソなのは自明。他国は、すべからく専門用語は英語なので、英語学ばないと学問が出来ない。

    そもそも、海洋植物が二酸化炭素を吸って酸素を出したから酸素呼吸する生物が発展したわけで、その酸素が大気中で拡散したから生物が上陸出来たわけで。

    「カーボンニュートラル燃料」とかバカな事言ってないで(そんなん、植物が貯め込んだCO2を大気に戻してるだけやん、化石燃料と時間軸以外どこが違う?)、コンブ一杯育てて出汁取って鍋食いましょう!もちろん出汁取った昆布も食う。昆布巻き、ニシン巻きなんか最高ですし。

    ※まあ、ワカメを世界中にバラ撒いて「外来種」として各国の港湾に迷惑かけてる事実もありますが……だったらワカメ獲って喰えと(あいつら消化できないらしいですが)。

    • 木霊 木霊 より:

      カタカナ英語、嫌いなんですよね。
      何故、無駄にカタカタにしてしまうのか……。

      さておき、海藻を育てて二酸化炭素の吸収というのは、結構面白いなと思います。
      日本らしくていいですよね。

  4. 山童 より:

    カタカナ外来語は嫌すね。最近では英語だけてなく仏語や独語なども用いますしね。カタカナ表記を原音に近づける(無意味)ようなってから酷くなる一方。その昔、広告業界に首突っ込んだ時にやたらとスタンスだのニーズだの使うのに辟易したすが、朱に染まればに何とやらで、私も汚染された(笑)80年代あたりから顕著になってきましたが、21世紀には普通になってしまって和約すると相手が解らない状況も多々。明治の日本は人民とか共和国とか、よく和語に直してましたが。来日した中国人が自国の国名のうち、「人民」だけが漢語なの知り啞然としてましたもの。
    思うに日本人が言葉を日本語にする熱意を失ったのでないすかね?
    「電脳」と言われた時に連中の翻訳力を感心しましたが、我々はカナがあるので、
    コカ・コーラを河口可楽とするような表記上の制限が少ないでないですか。
    それと学会でも報道でも、なんか新しい造語を産み出すと偉いみたいな価値観があって、(新しい概念を産んだという幻想)どんどん造語を生み出しますしね。
    嘆かわしい話ですが、私もやってますので、
    人様の事は言えず……というアレです。
    偏見かも知れませんが、理系出身の方の方が日本語で表現しようとする向きが強く、
    文系ほどカタカナしたがるよう思える。
    文系(人文)は科学ではないので、その辺の劣等感がなせる事な気がします。

    • 木霊 木霊 より:

      カタカナ外来語も悪くはないのでしょうけれど、該当する日本語があるのにわざわざカタカナを使うのはちょっと理解できません。
      職業病でしょうか……。

      > それと学会でも報道でも、なんか新しい造語を産み出すと偉いみたいな価値観

      知られている事実でもカタカナ当てて説明すれば、新事実みたいに見えますから。
      所詮誤魔化しなんでしょう。それは、文系理系問わずそういう傾向があると思いますよ。