近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
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米軍在沖縄海兵隊、一部がグアム移転開始

安全保障
この記事は約7分で読めます。

産経新聞もダサイ記事を書いているなぁ。

中谷防衛相、米軍在沖縄海兵隊のグアム移転開始を名護市長に伝達「可能な限り早期に移転」

2024/12/14 19:37

沖縄県を訪問している中谷元・防衛相は14日、名護市内で渡具知武豊市長と面談し、在日米軍再編に伴う在沖縄米海兵隊の米領グアム移転の第1弾として、沖縄県に駐留する米海兵隊の先遣隊が移転を始めたと伝えた。グアム移転はインド太平洋地域で日米同盟の抑止力を強化しつつ、沖縄の基地負担を軽減する狙いがある。

産経新聞より

まさか、日本の外交安全保障政策の概要を把握せずに書いているのか、或いは知っていて触れていないのか。

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ロードマップに沿った計画

基地移転計画

産経新聞の記事では、「米海兵隊のグアム移転」にしか触れていない。

今年2月、木原稔防衛相(当時)は玉城知事との会談で「辺野古移設が唯一の解決策だと考えている」と理解を求めたが、玉城知事は「ただちに工事を中断し、対話に応じてもらいたい」と反対の立場を強調。15日の中谷氏との会談でも、玉城知事は改めて反対の立場を伝えるとみられる。

産経新聞「中谷防衛相、米軍在沖縄海兵隊のグアム移転開始を名護市長に伝達」より

そして、辺野古移設の話を最後に持ってきているけれども、その当時防衛大臣であった木原稔氏の説明で「辺野古移設が唯一の解決策」という話と、グアム移転の話はほぼ無関係だ。

先ずは、日本の外務省のサイトから記事を引用していく。

再編実施のための日米のロードマップ(仮訳)

平成18年5月1日

2005年10月29日、日米安全保障協議委員会の構成員たる閣僚は、その文書「日米同盟:未来のための変革と再編」において、在日米軍及び関連する自衛隊の再編に関する勧告を承認した。その文書において、閣僚は、それぞれの事務当局に対して、「これらの個別的かつ相互に関連する具体案を最終的に取りまとめ、具体的な実施日程を含めた計画を2006年3月までに作成するよう」指示した。この作業は完了し、この文書に反映されている。

~~略~~

(b)兵力削減とグアムへの移転

  • 約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。
外務省のサイトより

在日米軍の再編計画に関しては、確かに普天間基地移転の話と共に計画されてきた話である。大枠として、「沖縄の基地負担軽減」という目的があって、コレが実行されたというのが今回の冒頭のニュースである。

このロードマップには4つの計画が示されている。

  1. 普天間飛行場代替施設
  2. 兵力削減とグアムへの移転
  3. 土地の返還及び施設の共同使用
  4. 再編案間の関係

これらは全てパッケージになっていて、沖縄との交渉で全て了承されたものだ。

溝は埋まらず

ただ、朝日新聞などはまたぞろこんな記事を書いている。

中谷防衛相と玉城・沖縄知事が会談 「負担軽減に全力」も溝埋まらず

2024年12月15日 21時29分

中谷元・防衛相は15日、沖縄県庁で玉城デニー知事と会談した。石破政権発足以来、中谷氏と玉城氏の会談は初めて。ただ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる対立が続く中、両者の歩み寄りは今回もみられなかった。

朝日新聞より

何というかね、Xでポストしたんだけど、沖縄側が全力で溝掘っているのだから、埋まるわけがない。

沖縄県に負担が重いという事実はあるとは思うんだけど、それを「公平な負担を」という話にするのであれば、沖縄振興予算は無くしても良いよね?毎年、3,000億円程度突っ込んでいるんだけど、それが反日違法ロビー活動に使われるんじゃ、たまったものではない。

この沖縄県と北海道に甘い政策が、左派勢力を付けあがらせている気がするんだが、そういう反感を買うような政策は改めた方が良いよ。

会談後、中谷氏は記者団に「沖縄の方々の気持ちに寄り添って、基地負担の軽減に全力で取り組んでいく」と述べ、石破政権として沖縄との対話を重視する姿勢を強調した。

朝日新聞「中谷防衛相と玉城・沖縄知事が会談」より

防衛相の中谷氏は「話をする」というスタンスを崩してはいないようだが、そもそもこの話、「決まっていたことを履行してくれ」というだけの話でもある。

勝手にゴールポストを動かしているのは、沖縄側なんだな。

ある意味、韓国との交渉をやっているのと同じような状況というのが、なんともやりきれない。

計画は遅れているがロードマップに従っている

というわけで、計画通りであれば2014年までに沖縄からグアムに移転するはずだったのだが、蓋を開けてみたら10年もかかってしまったというだけの話で、この話は今に始まった話ではない。

なお、普天間飛行場代替施設の建設も、2014年までの完成が目標とされていたのだけれど、未だに完成の目処は立たない。

このロードマップに従った計画が実現すれば、沖縄の基地負担は随分と減っていたはずなのだが、どういうわけだか沖縄県は常に反対を唱えているのである。まるで、負担が減ると困るかのような振る舞いである。

辺野古 護岸工事着手から7年 移設反対の人たちが海上で抗議

04月25日 18時06分

アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設をめぐり国が埋め立てに向けた護岸の工事に着手してから25日で7年です。 海上では移設に反対する人たちが抗議活動を行いました。

NHKニュースより

工事が遅れている背景には、この記事にある様な移設反対派の妨害工作の影響もある。

基地負担の軽減というのであれば、もっと合理的なやり方があったのでは?と、思わずにはいられない。だが、彼らの目的は「基地負担の軽減」などではなく、安全保障政策の妨害なので、工事が進まなければそれだけ長く活動が続けられるという下劣極まりない考えに基づく可能性が高い。

何れにしても、冒頭のニュースである米海兵隊のグアム移転の話は、以前からの決定に従って行われたものである。

この関連のポストを眺めていたら、「てーへんだー!」と騒いでた方がいて驚いたのだが、何を騒いでいたのか理解ができなかった。

そういう経緯があって、この記事を書き始めたんだけど、検索していたらこいつがヒット。

在沖米海兵隊のグアム移転の経緯・概要
防衛省のサイトより

そりゃ、防衛省はしっかり説明するよね。分かり易い図になっていて、ちょっと悔しいのだが……、まあ、当事者だから。そして、中谷氏はこれ、しっかり分かった上で交渉しているんだよね。

メディアももうちょっと分かり易く説明をしようよ。その上で、防衛力の低下を招く可能性があると報じる、或いはロードマップから遅れているという風に報じた上で、計画変更しろとか、前倒しにしろとか、そういう議論はできるとは思う。

追記

産経新聞の記事は中身がスカスカだったが、探したら讀賣新聞はちゃんと報じていた。

合意から18年、沖縄駐留の米海兵隊がグアム移転開始…基地負担の軽減が進行

2024/12/14 21:04

中谷防衛相は14日、沖縄県に駐留する米海兵隊の約100人が米領グアムへの移転を開始したと発表した。2006年に日米両政府が在日米軍再編計画に合意して以来、海外への部隊移転が実現したのは初めてで、沖縄の基地負担軽減が具体的に進むことになる。

讀賣新聞より

最初からコチラを読んでいれば、無駄なツッコミをせずに済んだのに、不覚である。

移転を開始した約100人は「第3海兵機動展開部隊」の後方支援要員で、25年中に完了させる。防衛省は移転の開始時期については明らかにしていない。

日米両政府は、沖縄県内の隊員ら約1万9000人のうち、最終的には約9000人を海外移転させることで合意しているが、残りの移転時期は未定という。中谷氏は訪問先の同県名護市内で記者団に対し、「海兵隊員の国外移転の第1弾だ。移転は今後、段階的に行われる」と述べた。

讀賣新聞より

ただ、この移転計画も最初から「難しい」と言うことは分かっている。

実は、グアム島の人口は17.3万人(2023年現在)程度。

イキナリ9,000人を移転させると、家族込みで2万人くらい増えてしまう計算に。グアムのインフラ的にも、とてもではないが現実的な数字ではない。だから、最初の移転は約100人だったのだけれど、これでも200人程度の人員がグアムに行ったと言うことを意味する。

計画を完了させるのは、結構大変じゃないかなと思うよ。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    国防総省の準機関紙「Stars&Stripes」(12/18)によると、在沖米海兵隊のグァム移転のために、現地の施設が2020年から整備されており、2025年に完成の目途らしいですのですが、木霊さんご案内の通り、在沖海兵隊の移転スケジュールについてははっきりしておらず、米軍内部で色々あるようです。
    https://www.stripes.com/branches/marine_corps/2024-12-18/marines-relocation-guam-okinawa-16204078.html

    個人的には、米インド太平洋軍は初戦でほとんど仕事のない在沖海兵隊を、支障のない範囲で後方に下げておきたいのだろう、と思っています。沖縄だけでなく、台湾も視野に入れた動きなのかもしれません。

    米太平洋空軍もグァムで施設拡張を行っているというニュースもあります。
    https://www.twz.com/construction-of-airbase-on-tinian-island-in-case-guam-gets-knocked-out-has-begun

    • 木霊 木霊 より:

      米国の思惑としても、海兵隊を最前線に置いておくよりもグアム辺りまで下げておきたいという事はあるやも知れません。
      とはいえ、海兵隊員にとって沖縄は結構魅力的らしく、朝鮮半島に配属されるのとは雲泥の差があるということを言われる方もチラホラ。

      アメリカの戦略的にはグアムに置いても然程変わらないのかもしれませんが、日本の防衛戦略を考えるとそれなりに影響のある話。
      先島諸島への自衛隊配備はもうちょっとしっかり進めておきたいですね。