近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
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サボタージュする戒厳軍の兵士達

韓国陸軍
この記事は約11分で読めます。

うーん、良い話風の記事になっているけど、コレって本当に大丈夫?

韓国「戒厳軍」兵士の一部、任務放棄・コンビニで待機…「上層部の暴走に振り回されず抵抗」

2024年12月10日 16:00

韓国で3日に発令された非常戒厳の際、韓国軍防諜司令部が100人の部隊員を選挙管理委員会などに派遣したものの、この部隊員たちが任務を放棄し、現場付近を徘徊したり、コンビニで時間をつぶすなどして、実質的に命令を拒否していたことが明らかになった。

AFPより

軍隊において上司の命令に服従するのは当然で、命令に違反すれば懲罰の対象になる。ただ、「抗命権」というのがあって、これは過去に日本の国会でも取り上げられている。

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軍隊組織としてはヤバイ

日本における抗命権の話

ええと、こちらがその顛末。

明白かつ重大な違法がある上官の命令と自衛隊員の服従義務に関する質問主意書

自衛隊法第五十七条は、上官の命令に服従する義務として、「隊員は、その職務の遂行に当つては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と定めている。また、上官の命令に服従しない者に対しては、同法第百十九条や第百二十二条による罰則が定められている。

一方、前書きにおいて防衛省で実際の実務を担当する官僚が執筆したと紹介している「日本の防衛法制」(内外出版、二〇一二年)では、自衛隊法第五十七条に関し、「命令に明白かつ重大な違法があると認められる場合には当該命令は無効であり、それに服従する義務はない」と記述されている。

この記述は、本条に関する政府見解と同じということでよいか。同じならば、今後も本解釈が明確に維持されるのかを明らかにされたい。また、異なっているのならば、「明白かつ重大な違法がある」上官の命令に対する自衛隊員の服従義務について具体的な政府見解を示した上で、今後も当該見解が維持されるかを明らかにされたい。

右質問する。

参議院「質問主意書」より

質問は、自民党所属の藤末健三氏から提出され、故安倍晋三氏の名前で答弁されている。

参議院議員藤末健三君提出明白かつ重大な違法がある上官の命令と自衛隊員の服従義務に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。    

参議院議員藤末健三君提出明白かつ重大な違法がある上官の命令と自衛隊員の服従義務に関する質問に対する答弁書  

特定の書籍における個別の記述について、政府として答弁することは差し控えるが、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第五十七条に規定する上官の職務上の命令については、重大かつ明白な瑕疵がある場合、すなわち、当該上官の職務上の命令が無効である場合を除き、自衛隊員はこれに従わなければならないものと考える。

参議院「答弁書」より

簡単に言えば、日本政府の立場としては「重大かつ明白な瑕疵がある場合」以外は上官の職務上の命令に従ってね、というもの。

至極真っ当な回答である。

この話は恐らく世界中の軍隊でも成立する話ではあるんだけど、じゃあ、韓国の今回の話に適用可能かって言うと……。

韓国における今回の事案

今回、韓国大統領の非常戒厳の宣言に基づいて、軍隊が動員されている。

韓国 検察がキム前国防相逮捕「非常戒厳」めぐり 韓国メディア

2024年12月11日 2時22分

韓国の尹錫悦大統領に「非常戒厳」を進言したとされ、内乱などの疑いで逮捕状が請求されていた金龍顕前国防相について、複数の韓国メディアは、10日夜遅く、検察に逮捕されたと伝えました。ユン大統領が宣言した「非常戒厳」をめぐって政権の幹部が逮捕されたのはこれが初めてです。

NHKニュースより

直接の命令を下したのは国防相を辞任した金龍顕氏で、この上司の命令を上官が受理。

韓国検察 陸軍特殊戦司令部を捜索 “非常戒厳”で国会突入

2024年12月11日 13時36分

韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」をめぐり、検察は11日、国会に部隊を突入させた陸軍の特殊戦司令部を捜索していると明らかにしました。

NHKニュースより

実行したのは陸軍特殊戦司令部で、ここの隊長が顔出しをして釈明している。

「議員150人超えてはならない。引きずり出せるか」 国会投入の特殊部隊に=韓国

2024.12.09 15:22

韓国の尹錫悦大統領による3日夜の「非常戒厳」宣言を受けて国会に投入された陸軍特殊戦司令部の特殊部隊、第707特殊任務団長のキム・ヒョンテ大領(大佐)は9日に記者会見を開き、特殊戦司令官から「(議事堂内の)国会議員が150人を超えてはならない。引きずり出せるか」という趣旨の指示を受けたと明らかにした。

~~略~~

キム氏は「戒厳宣言下で国会活動が保障されなければならないことを知らなかった」としたうえで、「知らなかったことも私の責任。隊員を内乱罪になりかねない危険に陥れたことを謝罪する」と述べた。

聯合ニュースより

「内乱罪」にあたるかは知らなかったらしいが、命令を受けて組織を纏め、国会に突入する作戦を実行した。このことについて謝罪をしているのは別の問題として、隊長が知らなかったのに隊員が知っていたとも思えない。

抗命権の行使にあたるか

で、「共に民主党」の議員は……。

与党「共に民主党」のイ・ギホン議員(国会情報委員会所属)が明らかにした情報によると、同司令部は3日夜、中央選挙管理委員会、中央選挙世論調査審議委員会、選管選挙研修所、タレントのキム・オジュンが運営する施設「世論調査コッ(花)」の4カ所に、それぞれ25人ずつ部隊員を派遣した。

しかし、現場の証言にによると、この100人全員が指示された現場には入らず、近くのコンビニでラーメンを食べたり、周辺を徘徊したりして時間を稼ぎ、最終的に国会が戒厳解除要求決議案を可決した後に部隊に戻ったとされる。また、「世論調査コッ」に向かうよう指示されたチームは、漢江の橋付近をうろついていたと報告されている。

AFP「韓国「戒厳軍」兵士の一部、任務放棄」より

あれ、AFPの誤植かな。「共に民主党」は未だ最大野党のハズなんだが、与党になっているぞ。

さておき、部隊員達は命令を実行することなく、コンビニでラーメンを食べたり、周囲を徘徊したりして時間稼ぎをしていたようだ。

……ダメじゃないかな。

恐らくではあるが、韓国憲法を読んでいれば77条5項に抵触する可能性のある、国会への突入と議員排除に関しては抗命権が成立する可能性がある。学のある隊員であれば、多分そこは理解できている。

だが、選挙管理委員会への突入に関しては77条3項の範囲内の作戦であると認定できそうだ。つまり、記事では良い話風の内容になっているが、上官の命令無視が成立する可能性が高い。

イ・ギホン議員は「防諜司令部がユン大統領の内乱事件を主導した中核組織であることが判明しているが、イ・インヒョン防諜司令官らの暴走に振り回されず、抵抗した若手幹部や部隊員がいたことも忘れてはならない」と指摘した。

AFP「韓国「戒厳軍」兵士の一部、任務放棄」より

内乱事件であったと判断されたのは、この騒ぎのあった後の話。上司からの命令の内容が「コンビニでラーメンを食べろ」「施設周辺を徘徊しろ」であったならば、まあ納得はできる。

だが、どう控えめに見積もっても、部隊員によるサボタージュだろう。韓国陸軍はこの程度の組織である事を、世界に晒してしまって大丈夫か。

国内で行う異常な作戦という空気が軍内部にあった可能性は勿論あるわけだが、結果論でこの話を本当に片付けて良いかは僕には疑問だ。

逮捕された警察庁長官

ただ……、韓国においては正しい選択だった可能性があることだけは言及しておきたい。

警察が自らのトップ緊急逮捕 内乱容疑、議員の国会入り妨害―韓国

2024年12月11日12時11分配信

韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」宣言を巡り、警察の特別捜査団は11日、組織トップの趙志浩警察庁長官とソウル警察庁トップの金峰埴長官を内乱容疑で緊急逮捕した。3日の戒厳令に際し、国会に議員が入ることを警察官に妨害させた疑いなどによる。

時事通信より

なんと、韓国警察の内部に組織された特別捜査団は、警察庁長官と警察庁トップを緊急逮捕してしまったのである。

国会議員が国会に入ることを警官に妨害させたという行為が、内乱罪を構成すると判断されたらしい。

更に大統領も捜査令状が出されて容疑者扱いである。

韓国 警察が大統領府など捜索 令状には容疑者を大統領と明記

2024年12月11日 16時19分

韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」をめぐり、警察は11日、大統領府や警察庁などの捜索に着手したと発表しました。韓国メディアによりますと、捜索の令状には内乱などの疑いで容疑者はユン大統領と明記され、大統領への強制捜査はこれが初めてだとしています。

NHKニュースより

今回のケースで職権濫用は恐らく成立すると思うが、内乱罪は本当に成立するのか?そこの判断は裁判所がやっているはずだけれど、残念なことに裁判所は情治主義を採用していると揶揄される程左寄りなので、令状は発行されたということになるんだろう。本当に成立するかはまた別に判断されるんだろうが。

いずれにせよ、前代未聞の大統領への強制捜査である。

こうした事態を考えていくと、己の身を守るために命令違反したのだという風には理解できてしまう。でも、軍隊の命令系統にポピュリズムが入り込む国ってヤバイのでは。これも、韓国の伝統なのかもしれないが。

独裁国家に「独裁的」と揶揄される韓国

なんというか、世も末だね。

こうした事態を見た北の将軍様から辛辣なコメントが。

北朝鮮が初報道「衝撃的」 韓国戒厳令、独裁と批判

2024/12/11

北朝鮮メディアは11日、韓国の尹錫悦大統領が3日夜に「非常戒厳」を一時宣言したことについて「独裁の銃剣を国民に突きつける衝撃的な事件が起きた」と初めて報じた。武装した軍を動員したものの約6時間後に解除に追い込まれたことや、国会の弾劾訴追案の動きにも触れて尹政権を批判した。

国際社会から「韓国社会の脆弱性が露見した」との見方が出ているとし、自国の体制の優位性をアピールした。北朝鮮メディアは、戒厳令の前にも尹政権の退陣を求めるデモが韓国内で開かれていることを繰り返し報じてきた。

共同通信より

オマエがイウナ事案である。

だが、北朝鮮メディアから「独裁的」と言われても仕方がない。そもそも、戒厳令は民主主義の権能を一時的に停止させる手続きなのである。本来であれば、これは安全装置として機能させなければならないところ、機能せずに停止してしまった。

前の記事でも言及したが、韓国の現状を見るに国家的危機に直面している。それも主に経済面で、ではあるが政策が前に進まないように工作しているのは最大野党の「共に民主党」なのだ。寧ろ、「コイツら北の工作部隊じゃないの」と思う程の活躍っぷりである。

後の歴史家が、どのような評価を下すんだろうか、この話。

追記

また、こんな記事が出ちゃった。

韓国国会で軍靴脱いでスマホゲームに夢中の将軍…5分間生中継

2024.12.11 10:45

非常戒厳事態関連の国会緊急懸案質疑で、空軍のある2つ星将軍が軍靴を脱いでスマートフォンでゲームをする場面が捉えられて論争になっている。この将軍は野党議員から「何を考えているんだ」と叱責を受けたが、「停会中(会議が一時中断されること)の個人時間だった」として一部擁護する世論もある。

中央日報より

このやる気の無さは凄いな。

10日午後、国会国防委員会では非常戒厳事態関連の全体会議が進められた。この日の会議には国防部長官職務代行である金善鎬次官と戒厳司令官を務めた朴安洙陸軍参謀総長、郭種根前特殊戦司令官とキム・ヒョンテ第707特殊任務団、李鎭遇首都防衛司令官、イ・ギョンミン国軍防諜司令部参謀長、キム・デウ防諜司令部捜査団長らが出席した。

この日の会議は戒厳宣言認知時点と出動経緯、主要任務と尹錫悦大統領の指示事項などを巡る攻防が続き、夜遅い時間まで続いた。

その後、会議がしばらく中断した午後7時40分ごろ、食事を終えて帰ってきた空軍のある2つ星将軍が軍靴を脱いで靴下をはいた足の指先を動かしながらスマートフォンゲームを楽しむ様子が捉えられた。この様子は国会放送などのユーチューブ(YouTube)ライブを通じて生中継されていたが、該当将軍はこれに気づいていなかった。

約5分間ゲームをしていたこの将軍は、会議場に入ってきたある関係者がカメラを指し示して生中継されている事実を知らせると、スマートフォンを下ろして姿勢を整えた後、一度カメラ側を振り返った。

中央日報「韓国国会で軍靴脱いでスマホゲームに夢中の将軍」より

休憩中のことだから、僕自身はとやかくいう積もりはない。ただ、緊張感の無さを指摘されても仕方がない面はあるだろう。

本件の関係者は陸軍で、空軍だから関係ないといえばそれまでなんだけど……。

いや、思い出してみれば過去にこんなとんでもないニュースもあったな。

韓国軍で指揮権に対する「下剋上」、国防省が捜査…任務は「北朝鮮情報」

2024年7月6日 13:00

韓国で対北朝鮮情報戦と特殊戦を担当する国防省直轄の国軍情報司令部の将軍1人が「下克上」の疑いで捜査を受けている。

軍消息筋によると、国防省調査本部は、情報司の旅団長(准将)が司令官(少将)の指揮権に対する挑戦、いわゆる「下克上」を犯した疑いを把握し、職務排除状態で捜査を進めている。

AFPより

韓国軍の指揮系統がそもそもおかしいというニュースで、このニュースの続報は見当たらないのだが、とんでもない話である。

司令官は5月から、旅団長の情報活動に法的問題がある可能性を提起し、国防省調査本部は最近の報告過程で旅団長の悪口と暴行があったという陳述を確保したという。

AFP「韓国軍で指揮権に対する「下剋上」」より

具体的な内容が見当たらなかったので、一体何が起きたのかは不明である。「旅団長の悪口と暴行」とか、「旅団長の情報活動に法的問題がある可能性」とか、全く意味不明だったので記事にはしなかったのだが。

取り扱っている情報が何とも怪しいからなぁ。

旅団長は、北朝鮮に対する人的情報収集の責任を負う任務を担っており、司令官の陸軍士官学校の先輩だという。

AFP「韓国軍で指揮権に対する「下剋上」」より

旅団長の方が司令官よりも先輩だったことが、指揮権に対する挑戦をしちゃった原因とみられているのだけれど、何だろう、対北朝鮮という軸で見ると不安しか覚えないな。どちらかが親北派だったということを意味するわけだから。

コメント

  1. 山童 より:

    ああ…こりゃ北朝鮮と戦争になったら負けるわ。頼りにならん日米韓同盟とはいえ。
    そもそも兵士は命に従うものです。
    たとえば突撃すれば皆が全滅確定な命てあっても、全滅しても、その時間稼ぎで全軍が勝利するならば、それは勝ちであり、そのように軍隊は動く。そこで抗命は許されない。許されるのは命が明らかに敵軍への裏切り行為であったり、ジュネーブ協定の定める捕虜虐待や民間人虐殺の場合でせう。
    民間人であってもゲリラであったり、武装して指示に従わぬ者は除外される。
    んで、コンビニで暇つぶししてました……というのは、2つしかない。
    ①野党勢力が兵士たちに潜り込み、あらかじめサボタージュするようオルグしてた。
    ②上層部に野党勢力が潜入して、命が伝わらず混乱をきたすよう仕組んていた。
    どっちにせよ、兵士らが主体的に「民主主義の危機を救うために」行動した結果とは思えない。そういうケースって、ルーマニアでチャウシュスクに軍が銃を向けた時とか、よほど国民と兵士らを弾圧し、かつ「チャウシュスクの息子たち」のようなイェニチェリ的な部隊が直属軍に存在して、一般兵士は差別されていた場合とかです。
    軍隊の構造と、兵士という存在の特徴からして、ちょいとあり得ない話と思うんですよ。まぁ、どうせそのへんはウヤムヤにされるでしょうけれどね。次のムンムン的な政権によって。

    • 木霊 木霊 より:

      これが準同盟国だというのはなんとも。
      昔から朝鮮軍兵士はあてにならないという噂は耳にしましたが、こんな状況だと味方として戦うのは危険ですよね。

      そういえば、P1哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件がありましたが、あの頃から露骨におかしい感じがします。所詮、外野の意見ではありますが。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    直接に民間人と接触した兵士は、訓練用のマガジン装填してたって話も聞きましたが、映像ではまだ七面鳥は未確認です。

    で、アメリカが「今、北が降ってきたら、誰が命令出すの?」って真顔で聞いたらしいですが。
    そりゃそうなるわな……

    逆に言えば、絶好のチャンスですぜ将軍様!

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      訓練用のマシンガンだとか、マガジンに弾はなかったとか、色々言われています。噂ですけどね。
      ただ、それが本当に深刻なことであると、僕は思うわけですが、韓国ではそう思わないらしい。

      アメリカは、「こいつと同盟国やっていて大丈夫か」と思うのも当然でありまして。
      北朝鮮は……、「独裁、すげー」位しか言っていませんねぇ。黙って侵略すればあっという間にソウルくらいとれそうですが、そんな状況でもないんでしょうな。