シリアの話、需要は多分ないんだけど。
シリア反体制派、中部要衝へ進攻 政権軍、市外へ退却か
2024年12月05日22時32分配信
内戦下のシリアでアサド政権への攻勢を強める反体制派勢力が5日、政権が支配下に置いてきた中部の要衝ハマに進攻した。
時事通信より
ただ、随分と状況が変わりつつあるのと、その状況が変わった理由が興味深かったので記事にした。
中東情勢はロシアの弱体化が如実に影響
反政府勢力がハマー市内に
先ずは前回の記事を。
電撃作戦、と言う訳ではなかったとは思うのだけれど、予想外に善戦してアレッポの奪還を成し遂げたのが反政府勢力であったと思う。
国営メディアによると、政権軍は5日、反体制派がハマ市内に入ったことを認めた上で「市民を市街戦に巻き込まないようにするため、軍を市外に再配置させる」と表明。反撃の構えを示しつつも、劣勢によって市内からの撤退を示唆した。
時事通信「シリア反体制派、中部要衝へ進攻」より
で、今回はハマーである。アサド政権が行ったハマー虐殺(1982年2月)の舞台となった都市が、反体制派に奪還されたというのは、反体制派にしてみたら象徴的な出来事だろうね。

そして首都ダマスカスに随分と近づいたよ。
反体制派は先月27日に大規模攻勢を開始し、北部の要衝アレッポをほぼ制圧。その後は北西部イドリブ県全域など支配地域を広げながら南下した。首都ダマスカスと北部を結ぶ交通の要衝で、シリア第4の都市であるハマも掌握すれば、アサド政権には大きな痛手となる。
時事通信「シリア反体制派、中部要衝へ進攻」より
記事で「アサド政権に大きな痛手」とあるが、シリア政府軍はなんでまたここまで押し込まれるような事態になったのだろう。
シリア政府軍、内政に苦慮
さて、シリア情勢がさっぱりわからなかったので、色々記事をあさってみたのだが。驚くことに、最近までシリア政府が掌握していたのは国土の6割程度だったらしい。

前述のHTSがイドリブを中心としたアレッポの西を押さえ、トルコの支援を受ける「シリア国民軍」(以下、SNA)がアレッポの北などトルコとの国境沿い、トルコがテロ組織として敵対しているクルド労働者党(PKK)およびクルド人民防衛隊(YPG)と関係の深い「シリア民主軍」(以下、SDF)が東部のクルド人居住地域、アメリカの支援を受ける「シリア自由軍」(以下、SFA)が南東部のヨルダンおよびイラク国境付近を押さえていました。
JB pressより
ほほう。
アサド政権がシリアの掌握が出来ていたのが、ロシアの支援があったからという事は知ってたけれども、一時、支配地域が3割以下になった後ロシア軍の支援を貰って盛り返した模様。
それが崩れたのが、ロシア軍の助力が減ってしまったってことなんだろう。
今回の反政府勢力の攻勢を察知したアサド大統領は、HTSがアレッポに迫るよりも先にモスクワに飛び、プーチン大統領に空爆支援を懇願しています。しかし、それでも攻勢が開始される前に空爆は行われていません。HTSがアレッポを陥落させた後、アレッポやHTSの根拠地であるイドリブに対して爆撃を始めています。しかし、これらは市街地に対する無差別な攻撃で、軍事的にあまり意味のある攻撃になっていません。
JB pressより
結局のところ、そういう事なんだろうね。
イスラエルの影響
そして、イスラエルの影響もあったと分析しているね、JB Pressでは。
この内、シリアに大きな影響を及ぼしたのがヒズボラの壊滅です。レバノンも、シリアと同様に内戦が続いており、南部はヒズボラが支配していました。ヒズボラは、イランから支援を受けるだけでなく、シリアからも支援を受けていました。その代わりに、ベイルートやレバノン南部の港からダマスカスへの物流を、ヒズボラが助けています。
シリアは、地中海沿いに狭い海岸線をもっていますが、首都ダマスカスはレバノンの東側にあるため、ダマスカスに海から物資を運ぶなら、レバノン経由の方が陸上輸送路を短縮できます。
本来であれば、レバノン政府が貿易を仲介することで得られる関税を回避することができていたと思われますし、ロシアやイランからの軍事物資も、ヒズボラが支援し、レバノンを経由していた可能性があります。
JB pressより
イスラエルがレバノンを攻撃してヒズボラの力を削いだことが、今回の作戦に影響していたらしい。
イスラエルとヒズボラ停戦1週間も互いに攻撃 合意守られるか
2024年12月4日 20時32分
中東レバノンでは、イスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間の停戦が発効し4日で1週間となりましたが、互いに停戦違反行為があったと非難して攻撃を行うなど反発を強めていて、合意が守られるのか懸念が深まっています。
レバノンでは、イスラエル軍とヒズボラの戦闘をめぐり11月27日に停戦が発効してから、4日で1週間となりました。
イスラエル側はヒズボラによる停戦違反行為に対応するためだと主張して空爆を続け、これに対しヒズボラ側も2日に国境周辺にあるイスラエル軍の拠点にロケット弾を発射しました。
NHKニュースより
停戦後もヒスボラは攻撃を受け続けているので、流石にシリアに何か手を貸すなどと言う展開にはならないんだろうね。
それにしても、シリアとはテロリスト互助会みたいな感じなのかな?
ロシアの支援は今後どうなる
さて、弱体化しているアサド政権は、アレッポを掌握され後数日であっさりとハマーまで押し込まれてしまったのだが、ロシアの支援があればまだ挽回可能なんだろうと。
ロシア、シリア指導部との連帯表明 「反体制派に外部から支援」
2024年12月5日午前 11:16
ロシア外務省は4日、国外から支援を受ける「テロリスト集団」による攻勢に対抗するシリア指導部の行動を強く支持すると表明した。
シリア反体制派はこの1週間に過去数年で最大の前進を果たしており、北部の要衝アレッポをまず制圧し、現在は別の主要都市ハマ近郊で政府軍と戦っている。
同省のザハロワ報道官は記者団に「われわれはこの(反体制派による)攻撃を強く非難する。シリアで新たな武力衝突を誘発し、暴力のスパイラルを広げようとする外部勢力の扇動と包括的な支援がなければ、彼らがこのような大胆な行為に乗り出すことはなかっただろう」と指摘。「われわれはシリア指導部との連帯を表明する」と述べた。
軍事筋によれば、ロシアは反体制派を標的に空爆を強化している。
ロイターより
ただ、空爆支援といっても、ロシアの航空戦力ってウクライナで随分削られちゃっているんだけれども。
これに関して航空万能論様のところの地図が素晴らしかったので紹介しておく。

この勢いだとホムズまで押し込まれるのは時間の問題になってきたね。
今後どうなるのかは分からないが、ロシアが無理をするのならウクライナの方が一息つける可能性はある。そういえば、ウクライナ戦線が珍しく反攻できているという話もちょろっとひっかけたのだが、それが本当ならシリア戦線が拡大すると色々と影響がでるのかも?
追記
こ、これは。
反体制派、要衝ホムスに迫る アサド政権軍劣勢―シリア
2024年12月06日22時17分
内戦下のシリアでアサド政権へ大規模攻撃を仕掛けた反体制派は6日、中部の要衝ホムスに向けて進軍し、ホムス近郊の複数の町を掌握した。在英のシリア人権監視団が明らかにした。反体制派は5日に中部ハマの制圧を宣言したばかりで、劣勢が鮮明な政権軍への攻勢を加速させている。
時事通信より
ホムスが落ちるとアサド政権は港へのアクセスを失ってしまうので、いよいよヤバいことになってくるんだが、ハマーから40kmの距離をあっという間に詰めてきたか。
反政府勢力が強いというより、政府軍が潰走しているってことだよね。これ、下手すると首都ダマスカスを政府軍が失う展開すらあり得るかも。
数日でこの展開とは。
追記2
そしてさらに蜂起する反政府軍。
アサド政権、深まる苦境 南部でも蜂起、主要都市の陥落相次ぐ
2024年12月7日 20時00分
内戦下のシリアについて、在英の反体制派NGO「シリア人権監視団」(SOHR)は6日から7日にかけ、アサド政権が南部ダラアや東部デリゾールの支配を失ったと報告した。政権側の主要都市が相次いで陥落し、中部の要衝ホムスにも反体制派が迫る。政権は日に日に苦境に陥っている。
朝日新聞より

そうかぁ、ホムスはもう危ないのか。そしてデリゾールとスゥェイダ、ダラアも支配を失ったようだ。
コメント
なるほどウクライナとシーソーか……。
しかしアラビアのロレンスからこっち、ぞうっとこの辺りはゴタゴタしてるなぁ。
ううむ……中東全域のテロリストネットワークに、ロシアの暗躍。すけえなゴルキディアスの結目てしたっけ、こんがらがっている。物流から何からテロリスト間で関係構築されてる辺り、なんか米国の中東への介入は何一つ成果を生まなかったって話してせうか?
混乱はまだまだ終わらない事だけ理解できました。
トランプ氏がこき下ろしていましたね、バイデン氏を。
アメリカはシリア情勢に上手いこと介入できなかったのは事実だと思いますよ。
ダラアとスウェイダは、首都のすぐ目と鼻の先(100キロくらい)。
位置的に、米英が裏から軍事支援しているのかもしれませんね。
アサド大統領は、さすがに今回はヤバいと考えたらしく、
プーチン氏に軍事支援を緊急要請しただけでなく、
家族をモスクワに残してきた、という報道も出ているようです。
ネタニヤフ氏は、機を見るに敏ですから、ヒズボラを追い詰めるために、
ダマスカスを空爆しても不思議ではありませんね。
それがイランの影響力を殺ぐことにもなれば一石三鳥ですし。
ネタニヤフ氏が出て来る前に決着が付いてしまったようですね。
アサド氏は一体何処に行くつもりなのか。
Moscow Timesが、アサド大統領とその家族がモスクワに避難していると伝えました。
https://tinyurl.com/4jdtx4sm
マクロン大統領が、シリアの体制転覆を歓迎するコメントを発表しています。
どうやらフランスは、シリア新政府樹立に介入しそうです。
ロシアのラブロフ外相は、開催中のドーハ・フォーラムで、シリア反政府組織を
米国の傀儡と非難しました。また、すべては国連決議違反であると主張しました。
まだまだロシアもシリアに介入し続ける気満々のようです。
https://www.youtube.com/watch?v=x-ZZAFzBIgE
モスクワとしては、何としてもシリアでの権益を維持したいと考えているのだと思います。
従って、新政府樹立に介入してアドバンテージを得たいと考えていることに矛盾はないでしょう。
フランスは……、相変わらずの風見鳥っぷりですが、国内がグダグダですからパフォーマンスしたいんでしょうね。
各国の思惑が錯綜する状況は続きそうですよ。