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EV販売の失速と苦戦する米GM

北米ニュース
この記事は約8分で読めます。

事業失敗する企業があれば、成功する企業もあるわけで。ただ、この2社には共通項を感じるね。

GM、中国事業で7500億円超の損失計上へ 工場閉鎖も

2024年12月4日 22:23 (2024年12月4日 22:34更新)

米ゼネラル・モーターズ(GM)は4日、中国事業で2024年10〜12月期に50億ドル(約7500億円)超の特別損失を計上すると発表した。減損損失や工場閉鎖などの費用が含まれる。上海汽車集団(SAIC)との合弁で手掛ける中国事業は現地勢との価格競争で販売台数が減り、赤字が続いていた。

日本経済新聞より

前のめりで支那との商売を加速させたGMが巨大損失を計上するに至ったが、そういえば似た構図を日本でも見たよね。

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EV戦略は混迷を極める

日産・ホンダの苦境

そう、日産自動車だ。

9000人リストラ「痛恨の極み」 苦境の日産、原因は米国と中国

2024年11月7日 20時02分

日産自動車が苦境に陥っている。7日に発表した2024年9月中間決算では、米中の二大市場で不振が続いていることなどから大幅な減益となった。人員や生産能力を大きく削減し、資金調達なども進める。だが、短期間で反転攻勢への道筋を付けるのは難しそうだ。

朝日新聞より

ああ、ホンダもそうだね。

コラム:日産とホンダ、苦境克服に統合の選択肢

2024年11月29日午後 4:30

トヨタ自動車の国内最大の競合2社は、力を合わせて現在抱える問題に打ち勝つ時が来たのかもしれない。日産自動車の苦境はより鮮明で、業績不振を受けて生産能力と人員を削減する緊急再編策打ち出した。ホンダの四輪車事業も精彩を欠いている。

ロイターより

この日産とホンダの共通点は何かと言えば、EVに舵を全力で切った2社であるという点だ。「これからはEVだ!」とそう信じて疑わなかった2社だが、蓋を開けてみると世界のEV販売台数は失速しており、かつ、その市場の大半はアメリカと支那で分け合っている状況だ。

世界のEV販売台数の推移を見ると、前年比1.5倍くらいのスピードで伸びてきた2023年までの勢いは衰え、2024年は半期を過ぎて去年よりも伸びが鈍い。

そしてそのトップシェアはアメリカと支那が握っている。

売れない車を作っていたら、そりゃ、苦境に立たされるのも無理はない。

日本国内でもEVは売れない

そもそも、お膝元である日本国内での状況が芳しくない。

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日本国内の新車販売台数でトップシェアはHVで53.4%、2位にガソリンエンジン車で41.4%。BEVとPHEVを合わせても2.2%しかシェアがない。

img

その上で、輸入車のシェアが日本車よりも高いのである。国内でこの状況なのだから、如何に売れないかが分かる。

日本国内の事情は特殊であって、海外と傾向は異なるという風に思われる方も多いとは思うが、海外でもEVの販売台数は伸びていない。販売価格に関していえば更に状況は悪い。

中国BYD、過当競争下でシェア拡大と増益を両立

2024/09/13 8:30

中国の自動車市場では激しい価格競争の長期化により、多数の自動車メーカーの経営が苦境に瀕している。そんな中、成長性と収益性の両面で競合を圧倒するパフォーマンスを見せているのが比亜迪(BYD)だ。

同社は8月28日、2024年上半期(1~6月)の決算を発表した。売上高は前年同期比15.76%増の3011億2700万元(約6兆1358億円)、純利益は同24.44%増の136億3100万元(約2777億円)を計上し、2桁の増収増益を達成した。

~~略~~

注目すべきなのは、上半期のEVとPHVの販売台数が前年同期比28.46%増加した一方で、自動車関連事業の売上高の伸び率は同9.33%にとどまったことだ。販売台数と売上高の伸び率に大きな落差が生じたことは、価格競争の影響(による車両1台当たりの収入減少)の表れにほかならない。

東洋経済より

世界市場でEV販売の伸びが一番高い市場は何処かといえば、実は支那なのだ。ところが支那でのEV販売の落ち込みは激しく、支那でトップシェアを誇るBYDですら新車価格の値下げというか利益率を削った販売を行わざるを得ない。

中国BYD、サプライヤーに値下げを要請=報道
中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)がサプライヤーに値下げを要請している。同国のインターネットメディア澎湃新聞が27日、BYDから漏えいした26日付の電子メールを情報源に報じた。

値下げ攻勢はテスラが火付け役になったのだが、そもそも支那経済の傾きはEV販売にも大きな影を作っているのだ。

この話と日本のEV市場にどのような関係があるかといえば、日本車EVは輸入車EVに価格競争で全く太刀打ちできないということである。

支那と手を組んだのが失敗

で、GMの話に戻るのだが。

GMは今後、SAICとの中国合弁事業の価値を26億〜29億ドルの範囲で引き下げると予想している。その上で、工場の閉鎖や事業再編に伴う27億ドルの追加費用がかかるとしている。内訳や詳細は明らかにしていない。

一連の費用は24年10〜12月期に特別損失として計上する。GMの広報担当者は4日、「合弁相手とのリストラ計画の最終決定に近づいている」とコメントした。

開示資料によると、GMの監査委員会が中国での合弁事業の投資価値の下落は「一時的なものではない」として減損損失の計上が必要であると判断した。同日の米株式市場の時間外取引でGMの株価は1%以上下落した。

日本経済新聞「GM、中国事業で7500億円超の損失計上へ」より

簡単に言うと、支那国内でEVの値下げ合戦が苛烈を極め、支那国産EVの販売シェアが高く輸入車の出る幕が内状況になっているため、利益が出せない構造になっている。

何というか、上海汽車集団(SAIC)との合弁は大失敗に終わった事を、GMはそろそろ自覚すべきである。

GMは24年に入り、中国事業の苦戦を受けて研究開発部門のリストラや生産能力の削減を進めてきた。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は7月、「中国の固定費削減は十分ではなく、合弁相手と事業の再構築を進めている」と表明していた。

日本経済新聞「GM、中国事業で7500億円超の損失計上へ」より

ダメコンの為にも合弁解消と撤退を視野に入れるべき時期に来ているのだ。

そもそも支那国内においてEV販売のシェア拡大というのは、外国企業には容易ならざる道である。その理由は、補助金の存在だ。

中国のEV補助金で海外自動車メーカー総崩れ、ホンダとマツダの選択

Oct. 22, 2024, 07:30 AM

中国政府が経済対策として新エネルギー車(EV、PHVなど)への買い替えに補助金を導入し、中国の自動車市場が活気づいている。一方でその恩恵を受けられていないのが、ガソリン車を主力とする合弁メーカーだ。かつて中国市場で販売台数トップだった独フォルクスワーゲンや、日系メーカーの中でいち早く足場を築いたホンダが大きく数字を落としているが、同社のEV工場が武漢で稼働を始めるなど、反転に向けた動きも起きている。

Business Insiderより

EV市場は支那の国策で、国内メーカーを優遇する為に補助金を直接的にも間接的にもジャブジャブと投入している。

流石にその状況を見かねたのが欧州である。

欧州の調査委員会によれば、BYDが支那政府から直接受け取った補助金は2018~2022年で5410億円相当で、更に二次電池開発やEVの拡販に対する税制優遇、加えて支那国民が国産車を買う場合に得られる補助金と税制優遇と、1台生産するにあってどれだけの補助金が突っ込まれているのかという状況である。

中国BYD、政府補助金200億円を取得 EV関連で - 日本経済新聞
【広州=川上尚志】中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は2日、中国政府から13億4000万元(約200億円)の補助金を受け取ったと発表した。2017年に販売したEVなどに対する補助金で、資金繰りの改善や負債の圧縮などに充てる。ただ新...

色々な報道があるが、支那でEVを作ると優遇される状況にあることは間違いなく、それが支那企業に限定される状況となっている。それが売れ行きに反映したということになる。

この辺りの話は、コメントでも頂いていた内容だね。

過剰生産は世界に波及

更に困ったことに、支那国内で製造されるEVは国内需要を大幅に上回る。

中国製EVとは 一斉増強で生産能力過剰に

2024年10月6日 2:00

中国は国をあげて電気自動車(EV)シフトを進めている。習近平指導部が外国に頼らない供給網の構築に取り組むなか、技術面の開きが少なくキャッチアップが容易なEVに着目したとされる。中国が新エネルギー車(NEV)と呼ぶ、プラグインハイブリッド車などを含むベースでは2024年1〜8月の生産台数が700万台を超えた。

~~略~~

英調査会社のグローバルデータによると、中国の23年の自動車生産能力は4870万台にのぼる。輸出を含めた販売は3000万台ほどだ。

日本経済新聞より

鉄鋼や半導体なども支那での過剰生産の影響で非常に厄介なことになっているのだが、これは量産効果も相まって支那製品の価格競争力の源泉になっている。

しかし、この過剰生産は誰も得をしないのだ。外国にしてみれば、支那製EVが価格破壊をしてくれる上に、自国の補助金を蝕むので厄介だし、支那も国内で過当競争に邁進しているので、企業利益が上がらない状況にある。

過剰な生産力を維持することで税制優遇を受けているので、それも止められないという嫌な状況にある。

このような状況にあって、GMがEV販売に苦戦するのはある意味当然の結果である。

ところが日産は何故かファーウェイと戦略提携してしまう。誰もが「バカじゃないのか?」「日産経営陣ご乱心」と心配する事態に。

日産合弁、ファーウェイと提携 苦戦外資が中国テコ入れ

2024年11月15日 18:51

15日に開幕した「広州国際汽車展覧会」にあわせ、日本や欧州の車大手が中国企業との連携を打ち出した。日産自動車の合弁会社は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と戦略提携し、独フォルクスワーゲン(VW)傘下のアウディも現地合弁相手と新ブランドのコンセプト車を展示した。

日本経済新聞より

この辺り深掘りする気はないし、それを言ったら業績でまあまあ好調なトヨタだって支那に工場を作ったり、共同研究をやったりと多角的にやっているわけで。支那と手を組むことが一概に悪いとは言えない部分もある。

ただ、現状でEV製造に傾倒するのは国内での販売状況を考えてもかなり危ない橋を渡ることになるし、そもそも付き合いのある子会社を絶望の淵に叩き込みかねない。

米GMは巨大企業だし、国策として潰さない、或いは国内販売の梃子入れで息を吹き返すことが出来る余地はあるんだろうけど、日産やホンダはEV戦略を見直すべきだろう。それと、政府に働きかけて支那製EVの補助金はなくして貰うことだね。

コメント

  1. 山童 より:

    でもテスラが潰れないのは何故だろう??
    ヤバいから政治に手をつけようとしてるんですかね? イーロン・マスクは。
    まぁ、あの人は面白いから良いけど。

  2. 砂漠の男 より:

    日産の凋落ぶりは痛々しいほどですが、そりゃ経産省から天下りを受け入れていれば、
    判断を違えるのもむべなるかな。お上に頼った事業など成功するはずもなし。
    他方トヨタは、実のところ最先端技術開発は米国(テキサス)でやっていて、
    戦略的に自社の安全保障を構築した上で、支那での合弁事業も進めているそうです。
    世界の趨勢を把握していないと、こういう真似はできないでしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      日産は「やっちゃった」という感想しか。
      トヨタは戦略的に研究開発を続けているのが、功を奏した格好ではありますが、今回は戦略があたったということなのでしょうね。

  3. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    日産、貧すれば鈍する、ですかね。
    GMは元株主で親会社なので、凋落は哀しいですが。
    どっちにしても、中国に全ツッパするバカに明日はない。>ジャガイモ国とか。

    問題は、これら莫大な赤字のツケが、いつ、どんな形で噴出するか。
    アメリカはそれでも資本主義ですから、なんならGMのレイオフで済むでしょうが(済むのか?)、支那は公金ジャブジャブのツケが国家に行きますから、産業と違う形で博打打ちにくる可能性が……韓国もバカやって今後しばらく死に体ですから……

    今の時代は変換期であり、歴史上何度かあったターニングポイントなのだという点で、七面鳥とウチのカミサンの意見は一致しています。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      やっちゃいましたからねぇ。
      EUもかなり混乱していますが、結局のところ支那との付き合い方に失敗したという事なんだろうと思います。

      歴史のターニングポイント、そうですね。ただ、かなり多角的に事象が進んでいるので、何がキッカケになったかという話はなかなか。