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シリア反政府勢力が反撃

中東
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争いは、世界各地で起こっている。シリアは内戦状態が続いていて、しばらく状況は膠着していたんだけど、唐突に事態が動いたね。

シリア反政府勢力、アレッポの一部を掌握

2024年11月30日

シリアの反政府勢力が29日、同国第2の都市アレッポで複数の地区を掌握した。イギリス拠点のNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、同日夕方の時点で、反政府勢力が市の半分以上を掌握している。

BBCより

当然、こういった話に繋がる何か予兆がある筈なんだけど。

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中東戦争の様相

内戦続くシリアの面倒な情勢

現在まで続くシリア内戦は、2011年1月26日の騒乱が切っ掛けで始まっている。アラブの春の影響だとされているが、随分と血なまぐさい春があったものである。

とにかくそれ以降、現シリア大統領であるバッシャール・アル=アサド氏と、民主化要求運動を武力で突きつける反政府勢力との間で、激しい戦闘行為が行われている。

厄介なのは、現アサド政権を支えるのがロシアやイランである一方、民主化運動を援助するのが欧米を始めとする民主主義国家であるという点だ。面倒なことにテロ組織ISILやらテロ組織アルカイーダやらが入り乱れて、戦火を拡大している点だ。

シリアでは、バシャール・アル・アサド大統領の政府が2011年に民主化運動を弾圧した後、内戦が勃発。これまでに50万人以上が命を落としている。

アサド政権に対立する武装勢力の多くは、混乱に乗じて広範な領土を掌握した。これにはジハーディスト(イスラム聖戦主義者)も含まれる。

シリア政府はその後、ロシアや他の協力国の支援を受けて、失った地域の大部分を奪還した。

イドリブは反政府勢力の最後の拠点で、主にHTSが支配しているものの、トルコ支援の反政府勢力やトルコ軍も駐留している。

BBC「シリア反政府勢力、アレッポの一部を掌握」より

民主化要求している勢力と、反政府系テロリスト達が手を組むという意味不明の展開もあって、「アサド政権の圧政が問題だ」という当初の主張も、色褪せてしまった。

アレッポ制圧

で、今回は反政府系勢力が第2の都市アレッポを武力制圧したということなのだが、数年間にわたって膠着していた状況が動いたという意味でもある。

反政府勢力系チャンネルでは29日、「我々の部隊はアレッポ市内に進入し始めた」という声明が投稿された。

BBCが検証した映像では、中世にさかのぼるアレッポ市内の城塞から約7キロ離れた通りを、複数の戦闘員が走っている。

BBCが検証した別の映像では、アレッポ大学近くの地域から荷物を持って歩く大勢の姿が確認された。この映像は、反政府勢力が市内に進入したとHTS系メディアが主張する場所から、3キロ離れた場所で撮影されている。

BBC「シリア反政府勢力、アレッポの一部を掌握」より

これがシリアの地図なのだが……、現在戦火が燃え盛っているイスラエルの隣国なんだよねぇ。

イスラエル対シリア

ええと、イスラエルの話題を出した理由は、イスラエルとシリアとの間でも散発的に戦闘行為が行われているからだ。直近でもこんなことが。

イスラエル、ダマスカス近郊のヒズボラ施設を攻撃 シリアは非難

2024年11月5日午前 6:07

イスラエル空軍は4日、シリアの首都ダマスカス近郊にある武装組織ヒズボラの情報施設を攻撃したと表明した。シリア国内の重要インフラに対する攻撃の一環としている。

イスラエル空軍は「ヒズボラの情報本部はシリアに支部を設置しており、これには独立した情報収集や調整などのネットワークが含まれている」としている。

ロイターより

イスラエル、シリア国境付近のヒズボラ戦略基地を破壊 停戦発効前

2024年11月28日午前 7:31

イスラエル軍は27日、レバノンとの停戦が発効する数時間前に、シリア国境付近にある親イラン武装組織ヒズボラの主要戦略ミサイル基地の一つを破壊したと発表した。

イランの支援を受けて地対地ミサイルの製造や精密兵器の保管に使用されていた地下施設をイスラエル軍の戦闘機が攻撃したという。

イスラエル軍は「シリア国境付近の地下施設で、その近さからこの場所はシリアやレバノンから何千もの武器の部品やテロリスト工作員が密輸される中心地点だった」と述べた。

ロイターより

ヒズボラ掃討作戦に関しては、イスラエルはレバノンとも事を構えていて、このブログでもその辺りの話には触れている。

この辺りの国家の地図上の国境と、テロリスト達の認識は全くかけ離れているので、ヒズボラはレバノンでもシリアでも活動している。で、イスラエルはそれを口実にシリアにも空爆を仕掛けているんだよね。

最終的にはイスラエルはイランとの対立は避けられないと思うんだけど、今の所は本格的な戦争に発展するところまではいっていない。

単に、「今の所は」と言うだけの話なんだけど、イラン側はやや抑制的ではある。ただ、正面衝突を避けているだけで、実際に裏では暗躍しているんだけど。

とまあ、少し話が逸れたけど、要はシリア政府はイスラエルとの対立に掛かりっきりになっていた可能性が高い。

反政府勢力

そんなわけで、イスラエルとの国境側に気を取られていたら、という感じの分析はできる。朝日新聞なんかはそんな論調だね。

シリア反体制派、第2の都市アレッポを制圧か 識者「政権支配に隙」

2024年11月30日 16時30分(2024年11月30日 20時18分更

在英のシリア反体制派NGO「シリア人権監視団」(SOHR)は30日、反体制派がシリア北部にある第2の都市アレッポに攻勢をかけ、大部分を制圧したと発表した。アサド政権軍は「反撃のため一時的に撤退する」と表明。アレッポは2016年にロシアやイランの支援を受けた政権軍が奪還した反体制派の拠点で、近年膠着(こうちゃく)していたシリアの戦闘が再び激化する可能性がある。

SOHRによると、北西部イドリブを拠点とする過激派組織「シャーム解放委員会」(HTS、旧ヌスラ戦線)などの反体制派は27日、政権支配地域への進軍を開始。29日にイドリブから約50キロ離れたアレッポ県の中心都市アレッポ市内に進攻し、30日までに政府施設や収容所を含む市の大部分を制圧したという。

アサド政権軍は声明で、反体制派が重火器やドローンなどを用いてアレッポなどを攻撃していると発表。29日時点で反体制派に「甚大な損害を与えた」として撃退作戦を続けるとしていたが、30日、「反撃の準備のため部隊を再配置する」として地上部隊の一時撤退を表明した。

朝日新聞より

それにしても、反政府勢力の主体は「シャーム開放委員会」ね。括弧書きで書かれているが、これ以前はヌスラ戦線を名乗るテロ組織で、シリア内戦開始当初は「もっとも成功した自由シリア軍の同盟組織」とアメリカに評価されて、西側の支援を受けていたんだよね。

ところが内戦開始後、色々やらかしてしまった結果、今ではテロ組織認定を受けている。もともとアルカイーダ系の組織だし、ヌスラ戦線の掲げる方針は「アメリカとイスラエルはイスラムの敵」という内容が含まれている。

敵の敵は味方理論で支援した感じだけれども、結局、テロリスト集団であったことに変わりはない。中東情勢は実に厄介である。そしてその厄介なところに首を突っ込んでしまうのがアメリカなのだ。

最終的にはイスラエル対イランという直接対決の構図は避けられないのかもしれないが、否応無しにアメリカはココに参加することになる。世界情勢はまた一段と混沌とするだろう。

追記

んーと、ロシアが結構大変?

シリア反体制派が北部要衝の大部分制圧、政権側ロシアは攻撃実施

2024年12月1日午前 11:44 

シリア軍は30日、北部の要衝アレッポに押し寄せたイスラム主義の反体制派「シャーム解放機構(HTS、旧ヌスラ戦線)」が主導する大規模な攻撃で数十人の兵士が死亡したと発表した。

ロシアの通信社によると、同国の国防省はシリア軍を支援するため反体制派への攻撃を行ったと発表。ロシアはシリアのアサド政権を支援している。

シリア軍司令部は、反体制派がアレッポの大部分に侵入したと認めた。反体制派はアレッポの空港も掌握したとしている。

ロイターより

シリアとロシアの戦闘機が反体制派が支配するシリア北西部を空爆

29 Nov 2024 12:11:51

シリア軍と反政府軍の情報筋によると、ロシアとシリアの戦闘機は木曜日、数年ぶりに領土を獲得した反政府勢力の攻勢を押し返すため、シリア北西部のトルコとの国境付近を空爆した。

過激派組織ハヤト・タハリール・アル・シャム率いる反体制派は水曜日、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領が支配する北西部アレッポ県の12の町や村への侵攻を開始した。

ARAB NEWSより

ウクライナとの戦線を維持しながら、アサド政権へのサポートもしなければならないというのは、結構大変なのでは。

ロシア軍にシリア政府を支援する余裕がそれほどあるとも思えないんだけど。

コメント

  1. 山童 より:

    ああ……イスラム国が消えてもあの辺りはまるで変わらないですね。アサド久しぶりに名を聞いた(苦笑)本国より難民の津波がEUに与えた影響の方を注目し過ぎて忘れてました。ロシアだけでなくエルドアンも、イスラエルくんが収まるまで、んな事に関わってる余裕ない気もしますが。
    しかしアサドらをシーア派とするのイランはどう考えてるんだろう?
    あそこ山岳宗教で、実はスンニ派の中での
    イズマィリ派(中世の暗殺教団で有名な)みたいな「異端派」ですわね。
    たしかアサドの親父か何かが、些細は忘れましたが、何かの折に「シーア派と認めろ」とイランの宗教指導者を脅して認めさせたとか佐藤優氏が言ってたなぁ。
    まぁ異端派と言えばサウジだってスンニ派では異端派なのですけれど実は。
    あと気になるのはイランですねぇ。
    民心はもう宗教国家なのに嫌気がさしているようですし。それにあの国のシーア派てのは、8代目のカリフだかが行方不明(死んでるに決まってるだろ!)になってからこっち、ずうっと「お隠れ」になっていて、ハルマゲドンが来たときに降臨して、世界を楽園に変えるとか、どっかの毒ガス撒いたカルト集団みたいな教義を持ってるのすが……
    現代のイラン人は、んな事をガチで信じているのだろうか??
    信じているのならば、核戦争も怖がらない可能性がある。ここ解らないんですねぇ。
    イスラムは本当によく解らない。
    オスマン・トルコ帝国を解体したのが、そもそもの失敗だった気がします。あそこはなんだかんだ言って、中東と西アジアをきちんと「西側にも理解できるように」まとめていたのに。

    • 山童 より:

      そういや最近、スーフィズムでしたかね、
      イスラムの中の秘教というのか、くるくる踊って秘儀を会得するとか言うのが復活してるそうてすなぁ。ようするにアレか?
      ええじゃないか…とかアレすかね?

    • 木霊 木霊 より:

      アサド政権も生きながらえてはいますが、ロシアの後押しあってこそという側面が強いので、現状は厳しくなっても仕方がないのかと。
      そして、アサド政権も国内の掌握には手を焼いていて、それ故に反政府勢力を押さえ込めないと言うことなのでしょうね。
      ご指摘のように、あの辺りの山岳地帯はアサシンの家系が多いようですから、代々テロリストを輩出する結果になっていても不思議はありませんね(偏見)。

      ただ、指導者がいないと統制がとれた動きができませんから、指示系統に宗教的指導者が絡んでいるのは間違いないのでしょう。
      そうすると、この辺りの話はイスラエルと何が違うのか、という気がしてしまいます。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ロシアがシリアから兵を抜いた&機を見たトルコが後押しした、ってのをどこかでチラ見しましたが、なるほど説得力はあるなと。
    ホントかどうかは知りませんが。
    レバノンがイモ引いたのもこの絡み(シリア動乱に巻き込まれたくない)だったのかも、とか。
    どこかで誰かが暗躍していて、複数の思惑が影響し合って、結果的に「思いもよらぬ」事態が起こってしまうのかな、と。

    まあ、百万が一の可能性でシリアが民主化出来たとしても、ろくな事にはならないでしょうけれど。
    ※ミャンマーの方を見ながら。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      トルコもなかなか強かな国ですから、何やら手を回した可能性はあるんでしょうけれど。
      https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c36f1729dc0513891c1ff2ac9a3544ce320744b1
      この方の分析がアテになるのか?という問題はあるのですが、工作をしていたのは間違いないと思っています。

      また、あの辺りの国家というか民族は、民主主義とは相性が悪いのでは?という気がしていますから、「アラブの春」などという寝言を言わずに、仲良く出来る方法を模索するのが健全だと思いますけどね。

      • 七面鳥 より:

        >民主主義とは相性が悪い

        民族主義は、ある意味民主主義と一番相性が悪そうですよね。
        多数決って概念が通用しないし、清濁併せ呑むとか、呉越同舟とか、その手の腹芸がビタイチ出来そうにないし……
        ※お隣の半島国を見ながら。

        ※そのあたりの「西側文化」をある程度は理解していたと思われる「バンジシールの獅子」を失ったのがなんとも……っていつの話だ。