これ、財務省は反対しない理由が良くわからない。日本経済新聞も、反対じゃないの?
経済対策を決定、非課税世帯に3万円 補正予算13.9兆円
2024年11月22日 5:00 (2024年11月22日 18:45更新)
政府は22日の臨時閣議で総合経済対策を決めた。物価高の影響を特に受ける住民税非課税世帯に1世帯あたり3万円を支給する。半導体・人工知能(AI)分野への投資促進策も盛り込んだ。実質GDP(国内総生産)を21兆円程度、成長率を年率1.2%ほど押し上げる効果を見込む。
日本経済新聞より
国民民主党の主張する減税案は7兆円も税収が減るから反対だ!と、叫んでいて、13.9兆円を一般会計から支出する必要のある経済対策には文句が出ない……。
相変わらず経済対策にはならない駄案
総合経済対策は1世帯当たり3万円支給
しょぼい!
物価高の影響を特に受ける住民税非課税世帯に1世帯あたり3万円を支給する。
日本経済新聞「経済対策を決定、非課税世帯に3万円」より
目眩がしてくるショボさである。
住民税非課税世帯って、単身者の場合は給与収入が概ね100万円以下なんだよね。「貧困家庭にお金を配るのは良いことじゃないか」という人はいるかも知れないが、大半の人は関係ない政策になっている。
住民税非課税世帯とは 全世帯の24%が対象
2024年11月21日 2:00
前年の所得が一定水準を下回るなどの条件を満たし、住民税が課税されない世帯のこと。世帯構成や居住地域によって異なるものの、単身者の場合は給与収入がおおむね100万円以下で非課税となる。国民健康保険料や国民年金保険料の減免措置が適用されることが多い。医療費の負担軽減措置、保育料の無償化や学費減免などの対象にもなる。
日本経済新聞より

実は今回の3万円程度給付というのは、高齢者世帯へのバラマキに等しいのである。
そして、高齢者の多くはお金をさほど使わないので、経済効果は薄いと言われている。
厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、住民税非課税世帯(課税の有無が不詳の世帯含む)は全世帯数のうち24%だった。同年の全世帯数(5431万世帯)から試算すると、およそ1300万世帯と推定される。世帯主が30〜39歳の世帯は3%で、70〜79歳の世帯は37%だった。年金受給者は控除が大きいため現役世代よりも高齢者が対象になりやすい。
日本経済新聞「住民税非課税世帯とは」より
そして、年金受給者は控除が多い。これが何を意味するかと言うと、経済を回す稼ぐ世代から税金を徴収して老人に配るという意味になる。
正直、僕だって老人に対して「貧乏しろ」とか言う積りはないのだが、だからってこんなのを「経済対策です」と言われても困るのだ。どう考えても経済効果は薄い。
国民民主党案との決定的な違い
これが愚劣な話だと思うのは、経済効果が薄いという意味もあるのだが、完全にバラマキだという意味もある。
振り返ってみると、コロナ禍の最初の2020年に当時の安倍政権が国民1人当たり10万円を給付したのが始まりだった気がする。これで堰が崩れたのか、その後も住民税非課税世帯向けに、2021年と2022年にそれぞれ10万円、2023年夏に3万円、2023年末から2024年初にかけて7万円の給付が実施された。そして、2024年秋にまたもや3万円を配るということが決まったようだ。
第一生命経済研究所のサイトより
実のところ、住民税非課税世帯は74.7%が65歳以上で占められている。そして、自民党の票田だとも言われている。
住民税非課税世帯への給付は子育て世帯は子ども1人あたり2万円を加算する。学校給食費の減免など地域の実情に応じた対策に充てる重点支援地方交付金を活用する
日本経済新聞「経済対策を決定、非課税世帯に3万円」より
だから、「子育て世帯には~」とあるが、対象となる世帯は実は僅かなのである。
自民、公明両党は10月の衆院選で過半数を割り込み少数与党となった。補正予算案の成立に協力を得るため、国民民主党が重視する「年収103万円の壁」の引き上げ方針を経済対策に明記した。
日本経済新聞「経済対策を決定、非課税世帯に3万円」より
その上、協議することは決まったものの、合意には至っていない国民民主党案はおそらくこれで潰される。
年収の壁の話は2度ほど触れているが、コチラは正に働き盛りの人々が対象になる話である。そして、減税する話をしだすと経済効果が出てしまった場合に財務省が困る。「再び減税を」という話になりかねないからだ。
しかし、個人的にボランティアをやっていた時代があったが、行政の予算というのは極めて歪である。予算執行がされなかった場合に翌年その予算が減らされる。だから、「減らされないように使ってしまおう」というおかしなインセンティブが働くのである。
使わなかったら返せば良いと思うのだが、そうはならないのがお役所の世界なのである。そういう意味で、財務省的にクリティカルなのが国民民主党案なのだ。
景気対策にはならない
というわけで、かなりの予算を盛り込んだのに、殆ど意味がないのが自民党案ということになる。
年収の壁引き上げ、富裕層の適用制限案浮上
11/23(土) 16:17
年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」引き上げに関し、一定所得以上の富裕層への適用を制限する案が政府、与党内で浮上していることが23日分かった。減税の恩恵を受ける対象を絞ることで税収の減少幅を圧縮する狙い。
Yahooニュースより
こんなアホなことも考えているみたいだしね。
大体、どうして相変わらず「給付」なのだろうか。集めて配る方式から抜け出せない自民党は、本当にそれでいいと思っているのかが謎である。
電気・ガス料金の補助を再開する。23年1月に開始していったん終えたものの、24年8〜10月に酷暑対策として一時復活させた。家庭の電力使用量が最も多くなる冬季の25年1〜3月に実施する。
ガソリン補助金は規模を縮小しつつ続ける。現在は1リットル175円ほどに抑えている価格上限を185円程度にする。電気・ガス、ガソリンへの補助により、25年2〜4月の消費者物価指数(CPI)の上昇率を0.3ポイントほど抑える。
日本経済新聞「経済対策を決定、非課税世帯に3万円」より
電気・ガス料金の補助は助かる面があるのは事実だし、トリガー条項の話とは全然別の議論であるのは承知しているが、そもそもこれだって集めてバラ撒く方式なのだ。
石油連盟、トリガー凍結解除に反対 「現場の混乱招く」
2024年11月22日 16:38
石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)は22日の定例記者会見で、国民民主党が訴えるガソリン価格の引き下げ策「トリガー条項」の凍結解除に反対すると述べた。同条項の有無で1リットルあたりの値段が約25円上下することから、買い控えや駆け込み需要が発生し、消費者やガソリンスタンドの混乱を招くと主張した。
~~略~~
トリガー条項の発動ではなく、上乗せ税そのものの廃止であれば歓迎する意向を示した。
日本経済新聞より
石油連盟の会長が意味不明なトリガー条項に対する反対を表明しているが、最後の一文には同意する。そもそもガソリン税などは税負担が重すぎる。

本体価格に色々な税負担がかかってきているのである。なんなら、ガソリンだけ消費税を0%にしてくれても一向に構わないのだが。
そう言えば、立憲民主党もおかしな主張をしていたな。前回の記事で紹介したが、こちらも経済対策にならないという意味で自民党案と大差ない。どちらがマシかと言われると、労働者世帯に関係ある分、立憲民主党案のほうがまだマシかもしれない。何故そんなことになっているのかと言えば、恐らくは全面的に財務省の振り付けなのだ、この政策は。そういう意味でも、自民党案は実にだらしない話である。「だらし内閣」の面目躍如である。
追記
マスコミが報じない不都合な真実が玉木氏によって言及される。
玉木氏は「地方財政は、自治体の財政状況に大きな違いがあるので一概に説明するのは難しい」旨断りを入れつつ、4つのポイントを解説している。
玉木氏のXより
- 足元の地方税収は45兆円を超えて10年前と比較すると約9兆円程度増収
- 過去10年間の上振れ額の累計は8兆円を超える水準。これらは基金の増加や標準的な行政経費を上回る歳出に費消
- 地方のプライマリーバランスは一貫して黒字を維持
- 臨時財政対策債の新規発行は3年連続で行われず、地方の債務残高も減少が続いている
ざっと読んでも理解するのはちょっと難しいのだが、要は「問題ないんじゃないの」としている。
「仮に地方税収が減少すれば、「一般財源総額実質同水準ルール」に基づき、交付税の増額等により、一般財源増額を実質的に同水準に維持することとなる」と玉木氏に明言されているが、そもそも多くの市町村が財源で不足する部分に対して、地方交付税交付金で賄っているのだから、減ったところで文句を言う筋合いの話ではないのである。
そして、議論の始まりが「7兆円の税収減がある」という、乗数効果を加味しないおかしな計算がベースになって、地方財政も当然減るよね(4兆円分程度)という話をしているんだけど、そもそもインフレ傾向で地方財政も収入が増えているのだから、その辺りの相殺をしない議論はおかしいのである。
とはいえ、実際に減収した場合に即時に地方交付税交付金が充当されるかというと、流石にタイムラグは生じるわけで。そこの手当ては必要だろう。つまり、前倒しで不足すると思われる交付金を公布しておけば、この話は解決する。その原資は国債でもなんでも発行すれば良いし、現状の税収を考えると国債を出すまでもなく手当てできる。
はい、解散、というヤツだよね。
コメント
要するに財務省丸投げで出てきた政策なのでおかしい石破自民政策。財務省が的外れ主張する原因は
①新宿会計士さん説
国民民主政策等で経済向上すると今迄のウソがばれるから
②高橋洋一氏説
バランスシートの左(黒字分)を可視化すると、天下り資金の流れがバレるから
③皆怖がって、匿名でないと言えない説、IMFやバイデン政権の増税圧力
もし日中韓あたりが経済危機になったら今ではIMFの救済能力を余裕で超えて手も足も出ないが、それでも影響力を維持したいIMF
10年前から破綻しているEU、スウェーデン、ドイツの破綻政策を日本にも踏襲させたいIMF、woke勢力
別因で30年失ってる日本としてはたまったものじゃない。
3説のうち3番はちょっと良く分からないのですが、IMFの中の人は財務省のOBが沢山いらっしゃいますから、結局のところ財務省の影響という点は否定できません。
そうすると、1も2も3も結局のところ財務省悪玉論がベースなんですよね。
また、「地方財政に影響」という話に関しては、推進派の誰も否定する人がいないわけですが、その辺りの対処も踏まえて議論して欲しいところですね。
横合いから失礼します。
七面鳥が思うに、
本命:①
対向:②
ですが、これ、鉄板の三連単ですね……
そうですねぇ、新宿会計士さんの言論は僕も信頼している部分はありますから「本命」というのも納得ではあります。
とはいえ、高橋洋一氏の発言も過激な部分が多いので、それに近い新宿会計士さんの説も説得力はあるモノの、他の説もしっかり検証したいところ。
とはいえ、本件については明らかにおかしいんですよね。地方から挙がっている声も、どうにも大げさな数字が使われているように思えますし、そもそも地方財政を中央に頼りっぱなしと言う構造そのものが歪なんですよねぇ。