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セルビアの駅崩落で前建設相が拘束される

北欧ニュース
この記事は約8分で読めます。

セルビアの首都ベオグラードの北西70kmにある都市、ノヴィサドの鉄道駅で、駅舎の外側に設けられた屋根が崩落する事件が発生したのは11月1日のこと。

駅崩落で前建設相拘束 15人死亡、「一帯一路」で改修―セルビア

2024年11月22日06時47分配信

セルビアで今月、駅の屋根が崩落して15人が死亡する事故があり、検察は21日、前建設相ら12人を拘束した。地元メディアが伝えた。事故後に当局の責任を追及する抗議活動が広がっていた。

時事通信より

一帯一路の影響か?!と思って記事を書こうと調べたんだけれども……。これ、一度記事にしようとして諦めたんだよね。

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原因は明らかにされていない

報道では「無関係」と

何故諦めたのかと言えば、その時の報道では一帯一路とは「無関係」だってことだったからだ。

セルビアの鉄道駅で屋根の一部が崩落 14人死亡 駅舎は築60年

2024年11月2日 18時00分

バルカン半島のセルビア第二の都市である北部ノビサドで1日、鉄道駅の屋根の一部が崩落し、14人が死亡、複数人が負傷する事故があった。

現地メディアなどによると、同日昼、築60年の駅舎の屋根のひさし部分(約35メートル)が崩れ落ちた。駅舎ではこの数年間で改修工事が実施されていたが、崩落部分は改修対象ではなかったという。

朝日新聞より

駅舎の老朽化で崩落だったという報道を、この時は鵜呑みにしたんだけど……。この話もよく考えると不自然なのである。築60年だから危ない!という話は短絡的である。何処かが腐食していたから、とか、強い力がかかったから、とか、地震が発生した、とか、何かキッカケがないと崩落しないものである。

とはいえ、外国のニュースなので続報を得る事は諦めていたのだが……。

報道によると、改修工事は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」のセルビアとハンガリーをつなぐ高速鉄道計画の一環で行われた。詳しい事故原因は分かっておらず、野党や市民は工事情報の公開を求めている。

時事通信「駅崩落で前建設相拘束」より

それで冒頭のニュースに繋がる。

このニュースには「詳しい事故原因は分かっておらず、野党や市民は工事情報の公開を求めている」と紹介されていて、どうやら事故原因や工事範囲など含めて現地でも明らかにはされていないようだ。

ならば、前建設相が拘束される話になるというのも不可解な話。

一帯一路の沿線

セルビアという国名を聞くと、個人的に思い出すのはサラエボ事件(1914年6月28日)で、第1次世界大戦勃発のきっかけを作った事件なのだが、オーストリアの皇族がセルビアの青年将校によって暗殺される事件であった。だが、サラエボと言えばボスニア・ヘルツェゴビナの首都である。つまり単なるテロ事件だったってことになる。

ルーマニアとクロアチアに挟まれたセルビアは、第一次世界大戦以降も戦渦に巻き込まれる土地である。このことは交通の要衝であるという意味でもあり、近年は、支那の支援を受けてインフラ整備を続けていた。

そのインフラ整備に使われた原資が、支那から供給されていた。「一帯一路」構想である。

「『一帯一路』共同建設への参加は誇り」 セルビア建設・運輸・インフラ相

新華社 | 2024-05-05 08:33:33

セルビアのベシッチ建設・運輸・インフラ相はこのほど、首都ベオグラードで新華社のインタビューに応じ、セルビアは「一帯一路」共同建設の枠組みで中国と幅広く協力し、実り多い成果を収め、自国と近隣諸国の発展を促進したと述べた。

ベシッチ氏は、セルビアが「一帯一路」共同建設に参加することを誇りに思うと説明。「一帯一路」共同建設の枠組みの下、中国企業がセルビアで多くのインフラ整備プロジェクトを請け負っているとし、プロジェクトによって「人口の移動を促し、流動性を高め、地域の発展を促進することができる」と語った。

新華社通信より

新華社のインタビューを受けて、「一帯一路共同建設に参加することを誇りに思う」などと誇らしげに語ってしまったベシッチ氏だが、その6ヶ月後には逮捕される羽目に。

実際のところ、セルビアでの鉄道工事の大半は支那の企業が手掛けていた。一帯一路に関わる工事は、支那企業が関わる事が多いことでも有名である。

事故直後、同国のアレクサンダル・ヴチッチ大統領とミロシュ・ヴチェビッチ首相は責任者を洗い出し、司法の場で責任を取らせると約束。事故翌日には大臣を含む25人がノヴィサド高等検察へ出頭し尋問を受けたが、日曜日の3日には数千人の市民らがベオグラードの政府本部まで行進し、建設・運輸・インフラ大臣のゴラン・ヴェシッチ氏の辞任を要求した。

抗議者は、この事故を「蔓延する汚職、透明性の欠如、ずさんな改修工事」による人災だと非難した。

東洋経済オンラインより

そしてこのベシッチ氏、事故直後に責任を取らされて建設・運輸・インフラ大臣を辞任させられていたようだが、詳しいことはわからなかった。

無関係ならなぜ拘束されたのか

今のところ、支那の工事と崩落は無関係だとされている。

事故原因は現在調査が行われており、今回崩落した1964年建造の屋根は改修工事の中に含まれていなかったと発表されている。だが、セルビアの専門家は、改修工事によって建物の構造変更が行われ、間接的に屋根の崩壊を引き起こした可能性があると国内メディアを通じて指摘した。

東洋経済オンラインより

工事で、崩落した屋根に直接的に手が加えられていないのはどうやら事実らしいのだが、建物自身の構造変更があったのではないかという指摘もあるようだ。

間接的な構造変更があったかどうか、に関してはハッキリしていないんだけどね。

今回事故があったノヴィサド駅の改修工事に関連する文書は、内容がすべて機密扱いと報じられている。2021年に出された建設許可では、駅のどの側面が再建されるかについての具体的な記載がなく、透明性に関する懸念が生じていた。「ノヴィサド駅の地下道と天蓋の拡張に適応するための建築プロジェクト」と題された資料には、多数の補足資料が含まれていたものの、詳細な説明が欠けていたことが分かっている。

東洋経済オンラインより

何故なら、その関連情報が機密扱いで公開されていないからだ。なんとも、不可思議なことだね。工事資料を秘匿する理由が良く分からない。

債務の罠

セルビアは共和国制を採用していて、どちらかと言うと社会主義に親和性の高い政治体制を維持しているようだ。おそらくは支那とも相性は良かったのだろう。ヴェシッチ氏がなぜ辞任したか、また、何故、拘束されたのかは現時点で明らかではないが、事故とは関係なかったということはなさそうである。支那企業による工事が行われていたと言うことは、恐らくはそれに関連した贈賄などの事件が発覚したと言うことなのではないだろうか。

少し話は逸れるが、数年前にこんな話があった。

「中国依存からEUに鞍替え」借りた金を返さないというモンテネグロのしたたかな戦略

2021/04/26 11:00

欧州の南東部、バルカン半島に属する人口わずか62万人の国モンテネグロ。アドリア海を臨む風光明媚なリゾート地として知られるこの国をめぐって、中国とEU(欧州連合)が火花を散らしている。事の発端は、モンテネグロがEUの反対を押し切って中国から借款を得て、隣国セルビアとの間に高速道路を建設しようとしたことにある。

た。セルビアとの交通アクセスが改善すればモンテネグロ経済が活性化すると期待されたためである。しかしその採算性の低さから、EUは高速道路の建設に一貫して反対し続けてきた。そこを巧みに突いてきたのが、習近平国家主席の下で拡張志向を強める中国だった。

結局、モンテネグロはEUの反対を押し切り、中国から資金援助と技術協力を得て2015年より高速道路の建設に踏み切った。中国輸出入銀行から受けた融資は6億8700万ユーロ(約1000億円)だったが、小国であるモンテネグロの対外債務はGDP比で10%以上も膨んだ。債務の返済負担は当然、モンテネグロに重く伸し掛かった。

この資金の借り換えが迫るなかで、返済負担に耐えられなくなったモンテネグロがEUに対して支援を要請した。

President Onlineより

一般的に言われる「債務の罠」は支那が巨額の融資をして債務国を借金漬けにし、返済が滞った場合に有利な条件で支那が土地や建物を手に入れる、といったストーリーなのだが、現実はちょっと違う。

モンテネグロの例にあるように、支那が返済の目処が立たない債務を融資している実態はあるが、支那が取り立てに失敗しているケースが散見される。

支那にとっては国内で無秩序に伸ばした鉄鋼・コンクリート・鉄道製造能力など、ダブついた国内消費を海外に振り分けるという、ある意味形振り構わないプロジェクトであったのが一帯一路の正体なのだが、このモデルも最近崩壊してきている。

しかしながら、政治色が先行する中国の「一帯一路」戦略で支援された事業の多くが、モンテネグロのケースのように不採算である可能性は極めて高く、将来的に中国に多額の経済的な負担を強いることになりかねない。人口62万の小国で生じた今回のイベントは、EUと中国の双方にとって重たい意味を持っているといえよう。

President Onlineより

そして、各地で利益にならない事業拡大をやってきた支那企業が何を考えるかといえば、建築基準などの誤魔化しをやって自らの懐を暖め、さっさと手を引くというようなやり方である。首になった大臣は、そういったことを黙認する代わりに金を貰っていた……、ありそうなストーリーではある。もちろん、根拠はないので続報次第なんだけどね。

そんなわけで全容は明らかになっていないので、分かることがあればまた追記していきたい。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    安いもの買いの銭失い、ですらないですね。
    この勉強料は、世界にとって高く付きますね。

    ※「中国が豊かになれば民主化する」などという寝言に端を発する一連のお花畑の勉強料。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      いつから工事が始まったかは調べがつきませんでしたが、支那は既に各地でやらかしていますから、どうしてそういった調査をやらなかったのかと。